不動産売却の流れ

不動産の売買契約で売主が用意すべき必要書類とチェックポイント

売主と買主の条件交渉を進めたあとは、いよいよ不動産売買契約の締結に入ります。

一度契約書を交わしてしまうと、簡単に取引内容を変更したり、取消したりすることができません。

「不動産売買契約書」と聞くと、肩苦しい文章や専門用語が並んで、目を通すのも億劫になるという人は多いはず。

当記事では「不動産売買契約までの流れ」「売買契約に必要なモノや書類」「契約書を読み解くポイント」などを紹介します。

「こんな内容ではなかったのに」と締結後に後悔しないよう、事前にしっかりチェックポイントを抑えておきましょう。

不動産売買契約までに売主が確認したい「購入申込書」の内容

まずはどのような流れで、不動産売買契約の手続きに入るのかをみていきましょう。

物件の内覧を終えたあと、買主に購入の意思があれば「購入申込書」が作成されます。

購入申込書とは「この条件であれば物件を買います」という、買主の購入意思を示す書類です。

この申込書の内容をもとに、売主と買主で売買の条件交渉を進めていきます。

不動産売却契約までの流れ

買主が購入申込書に記載する内容は、次のとおり。

購入申込書のおもな内容
  • 購入の希望価格
  • 資金計画
  • 引渡希望日
  • 売買契約の希望日
  • その他の要望
購入申込書で値下げ交渉されたら、どう対応すればよいですか?
多少の値下げ交渉は、覚悟しておいたほうがいいかもしれませんね。

ただあまりにも大幅な値下げの要求には安易に応じず、適正価格であるかどうかを慎重に判断してください。

購入申込書でもっとも確認しておきたいのが「住宅ローンの審査に通るかどうか」ということです。

一般的に買主は売買契約締結後、約3週間の期間で住宅ローンの本審査を受けます。

もし住宅ローンの審査が通らなかった場合、契約自体が白紙に戻ってしまう可能性も。

そこで売主は購入申込書に記載された、買主の収入や借入金、勤め先などの情報から「住宅ローン審査に通るかどうか」をチェックすることが大切です。

買主のローン審査において、売主が購入申込書でチェックしたいポイントは次のとおり。

購入申込書のチェックポイント
項目 審査に通りづらいケース
勤務先 小規模企業や自営業者である
年収や自己資金 売買代金に対してかなり額が少ない
融資額 借入額が多い
借入金 いくつかの借金がある

買主から受け取った購入申込書を見て、ローン審査に通りづらい内容であった場合は、住宅ローンの事前申し込みをしてもらうことがおすすめです。

金融機関では本審査を受ける前に、住宅ローンを組める基準を満たしているかどうか確認する、事前審査を実施しています。

事前審査で買主がローンを利用できると分かっていれば、お互い安心して売買契約に臨めますね。

不動産売買契約までに売主が用意すべきモノや必要書類

不動産売買契約の締結は、指定された契約場所に売主と買主、それぞれの担当者が集まっておこないます。

売買契約締結の際に売主が用意するものは、次のとおり。

不動産売買契約に必要なもの
  • 実印
  • 収入印紙代
  • 仲介手数料
  • 運転免許証

売買契約の際には、不動産会社に支払う仲介手数料も必要となります。

ただし手数料の全額が請求されるわけではなく、売買契約時と残代金の決済時に分けて支払うケースがほとんどです。

仲介手数料については、不動産会社と媒介契約を結ぶ際に交わした契約書にも記載されているので、事前に確認しておきましょう。

仲介手数料の計算方法や支払いのタイミングは、次の記事で詳しく解説しています。

収入印紙代(印紙税)とは、不動産売買の契約書に課税される国税のこと。

不動産取引における印紙代は、物件の取引価格によって異なります。

不動産の売買価格と必要な収入印紙代
取引価格(契約書記載金額) 印紙代
50万円以下 200円
100万円以下 500円
500万円以下 1,000円
1,000万円以下 5,000円
5,000万円以下 10,000円
1億円以下 30,000円

不動産の売買契約においては契約書原本を2通作成するケースと、1通作成し売主が写しを保管するケースがあります。

1通の場合でも印紙代は売主と買主が半分ずつ負担します。

契約書原本は2通作成されるため売主と買主のどちらか一方のみ印紙代を負担するというケースは、ほとんどありません。

次に売主が用意すべき書類をみていきましょう。

不動産売買契約における必要書類
聞いたことのない書類ばかりで、用意できるかどうか心配です。
それぞれの書類を順に確認していけば大丈夫ですよ。では一緒にみていきましょう。

【売買契約の必要書類その1】登記済証または登記識別情報通知書

「登記済証(権利書ともいう)」や「登記識別情報通知書」は、売主が不動産の所有者であることを証明する書類です。

必要書類が「登記済証」または「登記識別情報通知書」なのかは、売買不動産の購入時期によって異なります。

旧不動産登記法では、登記手続きの完了後、登記名義人となったものに「登記済証」が交付されていました。

平成17年ごろから「登記済証」の交付は徐々に廃止され、代わりに「登記識別情報通知書」が交付されるようになったのです。

「登記識別情報通知書」には、12桁の英数字を組み合わせた「登記識別情報」というパスワードが記載されています。

とうきずみしょう?そんな書類、うちに置いてあったかな?
不動産の購入時に交付されるものなので、どこに片付けたかわからなくなった人も多いかもしれませんね。

不動産の所有権を移転する際は、原則として登記済証などの書類が必要となります。

「登記済証」「登記識別情報」を紛失した場合、司法書士に依頼して売主が不動産所有者であることを証明してもらう手続きが必要です。

各書類の紛失時の対応は、それぞれの事案や状況によって異なります。

もし登記関係の書類が見当たらない場合、まずは仲介不動産屋の担当者に「どうすればよいのか」相談しましょう。

登記済証を無くしてしまったときの対処法は「マンションは権利書を紛失しても売却可能!対処法・悪用対策を紹介」で詳しく解説しています。

【売買契約の必要書類その2】印鑑証明書

印鑑証明書は売買の契約者本人であることを、証明するために必要な書類。

各市区町村役場の窓口や、コンビニ店舗内に設置されたキオスク端末(マルチコピー機)より発行できます。

コンビニ交付サービスを利用して印鑑証明書を取得する場合は、マイナンバーカードが必要です。

発行手数料は数百円ほど。大きな金額が動く取引となるため、発行から3カ月以内の証明書を用意しましょう。

【売買契約の必要書類その3】固定資産税納付書

固定資産税納付書とは、土地や建物の所有者が支払う、税金の納付状況が記載された書類です。

売買契約の際は、物件の引き渡し日を基準として、売主と買主でどのように固定資産税を負担するのかを、話し合います。

固定資産税納付書は毎年5月~6月頃に、その年の1月1日時点における不動産所有者へ送付されるもの。

固定資産税の負担について買主にきちんと理解してもらうためにも、1番新しく送付された納付書を用意しましょう。

都市計画税を納めている場合は、あわせて「都市計画税納付書」も必要です。

【売買契約の必要書類その4】物件情報報告書(告知書)と付帯設備表

「物件情報報告書(告知書)」「付帯設備表」は仲介業者が用意し、売買契約までに売主が作成して、契約当日買主に渡します。

それぞれの書類内容や記載例は、次のとおり。

物件情報報告書(告知書)
内容 建物の状態や、周辺状況などをまとめた書類
記載例 ・雨漏り
・シロアリ被害
・騒音
・異臭など
付帯設備表
内容 不動産に付帯して取引する、設備や家具などを記載する書類
記載例 ・エアコン
・室内の照明
・カーテン
・ダイニングセットなど
引き渡し後のトラブルを防ぐためにも、一つずつきちんと確認しながら記入しましょう。

不動産売買契約書の内容と各事項におけるチェックポイント

不動産の売買契約当日は買主と売主が宅地建物取引士から「重要事項説明書」を交付してもらい、重要事項について説明を受けます。

重要事項の説明では「売買契約書」の読み合わせもします。この時、営業担当者も同席することに。

「重要事項説明書」とは、取引する不動産について勘違いがないよう、宅地建物取引士が買主に対して説明・交付する書類のこと。

売買契約書って、契約当日に渡されるものなんですか?
ええ。契約当日に不動産会社の担当者が作成して、持ってきた契約書を売主と買主が確認していくのが一般的です。

不動産の売買契約書は、不動産会社の担当者が作成・持参するのが一般的

契約前にじっくり目を通しておきたい場合は、不動産会社に依頼して事前に各書類の素案をもらっておきます。

当日買主の前で契約内容の修正を要求する行為は、とても気まずいもの。

トラブルなく取引するためにも、前もって書類内容を確認しておくと安心です。

重要事項説明書」は買主を説明対象とした書類です。

売主側も内容に誤りがないかどうか、念のために目を通しておきましょう。

では不動産売買契約書の内容を、きちんと確認するための重要ポイントについてみていきます。

表下の実際に使用される契約書の画像と照らし合わせて、各項目をチェックしていきましょう。

不動産の売買契約書において、売主が確認すべき内容は次のとおりです。

不動産売買契約書のチェックポイント
チェック項目 ポイント
1.売買不動産の表示 正しい表示が記載されているか
2.売買代金と支払日 売買代金の額と買主の支払スケジュール
3.手付金と支払日 手付金の額と買主の支払スケジュール
4.土地の実測と精算単価 売買契約後に土地を実測して土地単価で精算するかどうか
5.所有権移転の日 所有権の移転および引渡日に問題がないか
6.公租・公課の精算 「固定資産税」「都市計画税」の支払負担に問題がないか
7.手付解除の期限 手付解除の期限はいつまでか
8.違約金の額 違約金の額や契約解除の条件
9.住宅ローン特約 ローン未承認時における契約解除期限はいつまでか
10.特約条項 重要な事柄が記載されていないか

不動産売却契約書の内容その1

不動産売却契約書の内容その2

契約の際は第1~23条までの細かい条文が記載された「契約条項」も、売主と買主で1つずつ確認します。

不明点があればすぐ質問できるよう、不動産の担当者にも同席してもらいましょう。

不動産売買契約における「解除条件」を軽視するのはキケン!

不動産売買契約書において、売主がとくに注意したい点は次の2つ。

「問題があった場合にどう対応するか」「どうしたら契約解除となるのか」という点です。

売買契約が締結される際は売主・買主ともに大きな安堵感があり、もしもの場合に備えた心構えがあまりできていません。

万が一問題が起きた場合、落ち着いて対応できるよう「契約解除条件」などをよく理解する必要があります。

契約後どのような場合に「契約解除」へ発展してしまうのか、代表的なケースをみていきましょう。

不動産売買契約を解除できるケース
<手付解除>

買主側の「手付放棄」または売主側の「手付倍返し」による契約解除

<瑕疵(かし)担保責任に基づく解除>

建物や土地に重大な欠陥があり、その欠陥により契約の目的が達せられない場合、買主は契約解除できる

<住宅ローン特約などによる解除>

特約の内容に応じた契約解除(住宅ローン特約で買主がローン審査に落ちた場合など)

<違約による解除>

買主が登記や売買代金の支払いに応じない、または売主が契約後に引き渡しを拒否するなどの、違約による契約解除

<危険負担による解除>

天災による物件の滅失で契約の目的が達せられない場合、買主は契約解除できる

不動産売買契約の締結から物件引き渡しまでの期間は、約1~2カ月ほど。

その間に自然災害で自宅が滅失したり、買主・売主の状況が変わったりして、契約解除に至る可能性は十分に考えられます。

売買契約書を交わす際は、解除条件の内容やもしものときの対処法まで、きちんと抑えておきましょう。

瑕疵担保責任の詳しい内容や、売却後の瑕疵リスクを防ぐ方法については、次の記事を参考にしてください。

不動産売買契約のポイントを理解してトラブルのない売却へ

不動産売買契約の際、売主は収入印紙代や印鑑証明書、固定資産税納付書などの書類を用意しておく必要があります。

「登記済証」や「登記識別情報通知書」は所有権移転の際に必ず必要なので、見当たらない場合は、すぐ不動産会社に相談しましょう。

「不動産売買契約書」は契約時に、不動産会社の担当者が作成して持参するものです。

当日に「あれ?」と思う記載がないよう、事前にもらった素案を確認しておくと、安心して契約の締結に臨めます。

またもしもの事態に備えて、売買契約の「解除条件」についても、理解を深めておくことも大切です。

万が一契約解除などのトラブルが発生した場合に、落ち着いて対応できますよ。

※記載の情報は2019年7月現在のものです。

監修者メッセージ

売買契約は重要事項の説明を受けてから契約書に署名押印します。

時間にして1時間から2時間かかる場合も。

無事契約が終了すると買主さんが必ず言う台詞が「疲れた」です。重要事項の説明の仕方によっては疲れずにリラックスして聞くこともできるのですが、わかりやすい説明を心がけるのが宅建士の務めです。

プロフィール
不動産売却カテゴリー記事監修(弘中純一)
弘中 純一
宅地建物取引士、一級建築士の資格を保有。
中古住宅・中古アパートの媒介業務・調査業務に従事し、現在は札幌市内の宅建業者にて専任の取引士を務めている。
2006年より、住宅に関する無料の相談サイトを開設し、住宅リフォームや中古住宅購入の相談に応じている。