
厚生年金の被扶養者必見!配偶者控除の条件・厚生年金加入のメリット
2018年に税制改正も行われたので、ちょっと混乱してしまいますよね。
また「扶養から外れて厚生年金に入るのが必ずしも損」とは言えないので、これについても詳しく説明しますね。
この記事でお伝えする重要なポイントは、次のとおりです。
- 合計所得金額が38万円以下(給与収入の場合103万円以下)なら「配偶者控除」の対象
- 合計所得金額が38万円を超えても、123万円以下なら「配偶者特別控除」の対象
- 自身も厚生年金加入者となった場合、老齢年金などの保障が手厚い
すでに厚生年金の被扶養者になっている人は、次の目次から知りたい項目へ読み飛ばしてください。
厚生年金の被扶養者となる3つの条件
厚生年金の被扶養者となるのは、次の条件を満たす人です。
それぞれ見ていきましょう。
【条件1】被保険者に生計を維持されている
「被保険者に生計を維持されている」と認められるのは、原則次の条件を満たしている人です。
- 被保険者と同居している
- 加給年金額等対象者の場合、前年の収入が850万円未満、または所得が655万5千円未満である
加給年金については、被保険者との関係により条件・金額が異なります。詳しくは日本年金機構の公式ホームページで確認してください。
また別記事「【平成30年度版】厚生年金の支給額の計算方法・平均額」では、厚生年金の計算方法だけでなく、加給年金額の算出方法も解説しています。
【条件2】被扶養者の範囲と同居の要・不要
ただし同居していなくても扶養に入れる場合と、そうでない場合があるので注意してください。
- 配偶者
- 子・孫
- 兄弟姉妹
- 直系尊属(父母・祖父母など)
- 上記に該当しない、3親等内の親族(伯叔父母、甥姪とその配偶者など)
- 内縁関係の配偶者の父母および子
「内縁関係の配偶者の父母および子」の場合は、配偶者の死後も引き続き同居するのであれば、そのまま厚生年金の扶養に入り続けることができます。
【条件3】厚生年金の被扶養者となる収入要件
厚生年金の被扶養者となるのは、年間収入が130万円未満(60歳以上・障害者は180万円未満)の場合。
さらに、収入が次の条件に該当する必要があります。同居しているかどうかで上限が異なるので、注意しましょう。
同居の場合 | 収入が被保険者の収入の半分未満 |
---|---|
別居の場合 | 収入が被保険者からの仕送り額未満 |
・被保険者の年間収入を上回らない
・「被保険者がその世帯の生計維持の中心的役割を果たしている」と認められた場合
厚生年金の被扶養者(配偶者)が対象となる『配偶者控除』の条件
また控除を受けるためには、納税者本人の収入など、他にも満たすべき条件があります。次の項目に分けて、詳しくお伝えしていきます。
【1】配偶者控除を受けるには、年間の給与収入103万円以下が条件
「配偶者控除」とは、納税者に所得税法上の控除対象配偶者がいる場合に、一定金額の所得控除が受けられる制度のこと。
納税者本人が配偶者控除を受けるためには、年間の合計所得金額が38万円以下(給与収入のみの場合は103万円以下)であることが条件です。
また配偶者控除を受けるには、年収以外にも次の条件をすべて満たす必要があります。
- 納税者本人の合計所得金額が1,000万円以下(給与所得のみの場合は1,220万円以下)である
- 民法の規定による配偶者である(※1)
- 納税者と生計を一にしている
- 年間の合計所得金額が38万円以下(給与所得のみの場合は103万円以下)である
- 青色申告者の事業専従者として、その年を通じて一度も給与を受けていない、または白色申告者の事業専従者でない
納税者本人の合計所得金額 | 控除対象配偶者 | 老人控除対象配偶者※ |
---|---|---|
900万円以下 | 38万円 | 48万円 |
900万円超 950万円以下 | 26万円 | 32万円 |
950万円超 1000万円以下 | 13万円 | 16万円 |
配偶者が障害者の場合は、配偶者控除の他にも障害者控除などを受けられます。対象となる人の範囲や控除額は、国税庁の公式ホームページでご確認ください。
【2】合計所得金額が123万円以内なら『配偶者特別控除』の対象
これを「配偶者特別控除」といいます。
「配偶者特別控除」を受けられるのは、次の条件をすべて満たした場合です。
- 納税者本人の、その年の合計所得金額が1,000万円以下(給与所得のみの場合は1,220万円以下)である
- 配偶者が民法の規定による配偶者である※
- 配偶者が納税者本人と生計を一にしている
- 配偶者が納税者本人以外の扶養親族になっていない
- その年に青色申告者の事業専従者としての給与を受けていない、または白色申告者の事業専従者でない
- 配偶者の合計所得金額が38万円超123万円以下(給与所得のみの場合は103万円超201万6千円未満)である
控除額はその年における納税者本人・配偶者(被扶養者)の合計所得金額によって決まります。それぞれの控除額は次のとおりです。
(納税者本人の合計所得金額が900万円以下の場合)
配偶者の合計所得金額 | 控除額 |
---|---|
38万円超 85万円以下 | 38万円 |
85万円超 90万円以下 | 36万円 |
90万円超 95万円以下 | 31万円 |
95万円超 100万円以下 | 26万円 |
100万円超 105万円以下 | 21万円 |
105万円超 110万円以下 | 16万円 |
110万円超 115万円以下 | 11万円 |
115万円超 120万円以下 | 6万円 |
120万円超 123万円以下 | 3万円 |
(納税者本人の合計所得金額が900万円超 950万円以下の場合)
配偶者の合計所得金額 | 控除額 |
---|---|
38万円超 85万円以下 | 26万円 |
85万円超 90万円以下 | 24万円 |
90万円超 95万円以下 | 21万円 |
95万円超 100万円以下 | 18万円 |
100万円超 105万円以下 | 14万円 |
105万円超 110万円以下 | 11万円 |
110万円超 115万円以下 | 8万円 |
115万円超 120万円以下 | 4万円 |
120万円超 123万円以下 | 2万円 |
(納税者本人の合計所得金額が950万円超 1000万円以下の場合)
配偶者の合計所得金額 | 控除額 |
---|---|
38万円超 85万円以下 | 13万円 |
85万円超 90万円以下 | 12万円 |
90万円超 95万円以下 | 11万円 |
95万円超 100万円以下 | 9万円 |
100万円超 105万円以下 | 7万円 |
105万円超 110万円以下 | 6万円 |
110万円超 115万円以下 | 4万円 |
115万円超 120万円以下 | 2万円 |
120万円超 123万円以下 | 1万円 |
配偶者の合計所得金額が85万円以下の場合、配偶者控除と同じ金額が控除されます。
扶養に入らず、自身も厚生年金加入者として働くのもオススメ
ただし事業所自体が厚生年金に加入していない・季節的な業務であるなど、加入対象者とならない場合もありますが・・・。
厚生年金加入者の扶養内で働く場合と、自身も厚生年金に加入する形で働く場合の、メリット・デメリットは次のとおりです。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
扶養内 | ・保険料の負担がない ・配偶者(扶養者)の所得税・住民税が安くなる |
・老齢年金の支給額が少ない ・収入に制限がある ・働き方や仕事内容が限られる |
厚生年金加入 | ・保険料は会社が半分負担 ・老齢年金の支給額が多い |
・保険料が自己負担になる ・配偶者控除の対象外になる |
扶養内で働く場合、年金保険料の支払い義務はありません。それに対し厚生年金の加入者は、保険料が自己負担。また手取り収入も少なくなるため「厚生年金に加入すると損」という考えの人もいます。
また厚生年金は国民年金の上乗せ(2階建て)なので、扶養に入るより老齢年金の支給額が増えます。
また厚生年金に加入した場合、条件を満たせば健康保険の傷病手当金(※1)・出産手当金(※2)など手厚い保障が受けられる場合も。
病気やケガにより会社を休み、十分な報酬が受けられないときに受給できる給付金のことです。
被保険者が出産のために会社を休んだ期間で、給与が支払われなかった場合に支給される手当金。
出産日から数えて42日前※~出産翌日から数えて56日目の範囲内で、休業期間を対象として支給されます。
いざという時・老後のことも考えて、厚生年金への加入も検討してみるといいでしょう。
当サイトでは、厚生年金への加入条件や、厚生年金へ加入するメリット・デメリットについて、パート・アルバイトの方向けに解説している記事も用意しています。
厚生年金加入者の扶養に入るかどうか、老後のことも考えて選択しよう
扶養内で働くなら、配偶者控除(配偶者特別控除)の対象となれば節税が可能。
ただし制度改正により配偶者控除の利用条件が変わっているので、よく確認してください。
自分自身も厚生年金の加入者として働く場合、保険料は自己負担です。しかし年金の受給額を多くでき、病気・ケガなどに対する保障も手厚いです。
今の手取りだけでなく老後・いざという時の備えも考え、働き方について家族で相談するのもいいでしょう。