マンション売却

マンションの管理費とは?相場や売却時の注意点について解説

マンションの所有中には、管理費や修繕積立金など毎月さまざまな出費が発生します。

なかでもマンションの管理費について、次のような悩み・疑問を抱いている人も多いのでは。

  • 管理費が高いので、マンションを売ろうか迷っている
  • マンション管理費の相場を知りたい
  • 管理費を滞納しても売却できるのか知りたい

この記事では、マンションの管理費がどのような目的で使われているのか、どれくらいが相場なのかを解説。

また「売却する際、管理費はどう精算されるの?」「管理費を滞納しているマンションを売った場合、滞納分はどうなるの?」といった疑問にもお答えしていきます。

マンションの管理費とは?使い道・修繕積立金との違いを見てみよう

管理費とは、マンションの共用部分を日常的に維持・管理するために毎月徴収されるお金のこと。

国土交通省の「マンション標準管理規約(単棟型)」第27条では、管理費の使い道を次のように定めています。

マンション管理費の使い道
管理員人件費

管理人に支払われる人件費

※管理会社への委託費に含まれている場合あり
公租公課(租税公課)

国・自治体に納める税金(収益事業※を行っている場合の法人税など)や、公共的目的のために支払う費用(地方公共団体の会費など)

※駐車場を外部へ貸し出しているなどの場合に該当する
共用設備の保守維持及び運転費

共用設備の電気代や、保守点検費用などに使われる費用

備品費、通信費その他の事務費

マンション管理に必要な電話料金・郵便料金など

※コピー用紙や文房具などの備品を含む
共用部分等に係る火災保険料、地震保険料その他の損害保険料

各保険会社へ支払う保険料

経常的な補修費

設備の小修繕(共用部電灯の交換など)に必要な費用

清掃費、消毒費及びごみ処理費

共用部分の清掃や消毒に必要な費用・ゴミ処理委託料など

委託業務費

管理会社へ支払う委託料

専門的知識を有する者の活用に要する費用

弁護士や税理士、マンション管理士といった専門家への相談・顧問料など

管理組合の運営に要する費用

理事会や総会のための費用など

※資料の作成費などを含む
その他第32条に定める業務に要する費用

おもに次のような費用
・建て替えなどの検討に必要な調査費用
・防災、居住環境(近隣含む)の改善などに必要な費用

※第28条に規定する経費を除く
マンションの管理費って、修繕積立金とどう違うの?
マンション管理費は「日常的な管理のためのお金」、修繕積立金は「大規模・計画的な修繕のために積み立てるお金」です。似ているように見えて、用途は全然違います。
「マンションの修繕積立金は数年ごとに値上げする」って聞いたけど、管理費も高くなっていくのかしら?
管理費は基本的に一定であることが想定されていますが、状況に応じて管理費が値上がり・値下がりする可能性もあります。

ただし金額の変更には総会決議が必要なので、頻繁に変動することはありません。

マンションの修繕積立金の使い道や目安金額の考え方、増額のタイミングについて知りたい方は、次の記事を読んでみてください。

マンション管理費の相場はいくら?国土交通省の調査結果を見てみよう

マンションの管理費、けっこう高いのよね・・・。金額の相場はどれくらいなのかしら?
では国土交通省の調査をもとに、管理費の目安金額について見てみましょう。

国土交通省の「平成30年度マンション総合調査結果(平成31年4月26日公表)」によると、マンション管理費収入の平均は10,862円。

しかしこの金額はあくまで平均。マンションによって管理費の金額は異なり、次のように幅があります。

マンション管理費の分布
戸数(割合)
~2,500円 42(2.5%)
~5,000円 69(4.1%)
~7,500円 189(11.2%)
~10,000円 290(17.2%)
~15,000円 379(22.5%)
~20,000円 109(6.5%)
~30,000円 35(2.1%)
~40,000円 3(0.2%)
~50,000円 8(0.5%)
50,000円超 6(0.4%)
不明 558(33.1%)
合計 1,688(100%)
※月額/戸当たり/使用料・専用使用料からの充当額を除く

管理費収入月額/戸当たり/使用料・専用使用料からの充当額を除く(国土交通省「平成30年度マンション総合調査結果」をもとに作成)

※国土交通省「平成30年度マンション総合調査結果」をもとに作成
同じマンションでも、部屋によって管理費の金額は違うんでしょうか?
同調査によると「各戸の専有面積の割合に応じて算出している」というところが多いようです。
管理費負担額の決定方法
決定方法 戸数・割合
各戸の専有面積の割合に応じて算出 1,435(85.0%)
各戸均一 175(10.4%)
その他 24(1.4%)
不明 54(3.2%)
合計 1,688(100%)

管理費負担額の決定方法グラフ(国土交通省「平成30年度マンション総合調査結果」をもとに作成)

※国土交通省「平成30年度マンション総合調査結果」をもとに作成
管理組合や専有面積によって、管理費の金額は違うんですね。
はい。物件によって適正金額は違いますから、相場だけを見て「高い!」と判断しないほうがいいでしょう。

逆に管理費が安い場合は、マンションに必要な管理が行われていない恐れもあるので注意が必要ですよ。これは修繕積立金も同様です。

マンションを売却すると管理費は日割り精算される

マンションを売ったら、管理費は返ってくるのかな~?
売却によって管理費や修繕積立金が返還されることはありません。

売主は原則、物件引き渡しの前日分まで管理費や修繕積立金を負担することになります。

マンションの管理費は、引き渡し前日までの分を売主、引き渡し当日からの分を買主が負担する

管理費の日割り計算が行われるのは、決済・引き渡し日です。

たとえばマンションの引き渡しが3月20日で、次月分の管理費が毎月25日に引き落とされる場合、管理費の日割り計算や支払いは次のように行われます。

管理費の日割り計算・引き落とし例(3/20引き渡しの場合)
  • 3月分の管理費は、2月25日に一旦売主から引き落とされる
  • 3月20日に日割り精算が行われる
  • 3月20日~3月31日分の管理費が、買主から売主へ支払われる

マンション管理費の日割り計算例

引き落とし日はマンションによって異なるので、あらかじめ確認しておきましょう。

また引き落とし(口座振替)の設定変更に時間がかかる可能性もあるので、なるべく早く手続きすることをオススメします。

「今はマンションに住んでいない」という場合も、所有していれば管理費・修繕積立金などは払い続けなければなりません。

また住む予定がないのなら、このような出費で損をしないよう売却を検討するのもオススメです。

マンションの管理費を滞納するとどうなる?売却は可能?

マンションの管理費が高いうえに、修繕積立金も値上げされたら今後が不安だわ。管理費を払えないと、どうなるのかしら・・・。
マンションの管理費を滞納すると、督促が行われます。それでも滞納者が応じない場合は訴訟を起こされたり、最悪の場合物件が競売※にかけられたりなどの恐れがありますよ。
競売とは

債務者が債権(住宅ローンなど)の返済をできない場合、債務者が持っている不動産などを裁判所の管理下で強制的に売却すること。売却代金は債務の返済に充てられます。

ただし多くの場合は一般的な売却より安値で取り引きされるため、滞納額が多いと返済しきれないこともあり注意が必要です。

マンションの管理費を支払えない場合は、管理組合や管理会社へすみやかに連絡しましょう。

支払いが苦しくなる前に、売ることも考えようかしら。

ところで管理費を滞納していたら、マンションを売却することはできませんよね・・・?

管理費や修繕積立金を滞納していても、マンションの売却自体は可能です。売主が延滞した分の修繕積立金は、買主へ継承される(請求される)ことになります。
そんなことが可能なんですね!でも買主は、自分が払う必要のないお金なんて出したがらない気がするわ・・・。
延滞金の有無や金額については重要事項説明書※に記載し、買主へ伝える義務があります。

そのため「売買代金で滞納を清算する」と伝えなければ、買い手がつきにくくなることも考えられますね。

重要事項説明書とは

売買契約の際に行われる重要事項説明(売買する物件や売買契約の条件についての説明)の際に、宅地建物取引士が買主に対して説明・交付する書類です。

また「管理費だけでなく住宅ローンも滞納している」「すでに競売の申立てをされている」など、通常の売却が難しい場合は任意売却も検討しましょう。

任意売却なら競売より高く売れる場合も多いですし、近所の人に知られにくいというメリットもあります。

ただし任意売却を行うには債権者(ローンの貸主である銀行など)の承諾が必要。また買い手がつかないと、最終的に競売にかけられる恐れがあることも知っておきましょう。

マンションの管理費が高いと感じるなら売却も検討しよう

マンションの管理費は物件や専有面積などによって適正価格が異なるもので、「安ければいい」というわけではありません。

しかし毎月の支払いが厳しいのであれば、売却を検討するのも1つの手です。

当サイトではマンション売却時に知っておきたいコツ・注意点不動産売却の流れについても分かりやすく解説しているので、ぜひ参考にしてください。

マンションの管理費を滞納している場合、売却自体は可能です。しかし滞納分の支払いは買主へ請求されるため、買い手がつきにくくなったり、後々トラブルになったりなどの恐れがあるので要注意。

管理費などの支払いが苦しい場合はすぐ管理会社・管理組合へ相談するなど、早めに対処することが大切です。

※記載の情報は2019年7月現在のものです。

監修者メッセージ

「マンションは管理を買え」とはよく言ったもので、管理費・修繕積立金が適正な金額で滞納なく積み立てられているという状態のマンションは、それだけで資産価値が高いと言えます。

管理費の金額・使い道に対する疑問点や、滞納問題などにお困りの場合は、マンション管理士や弁護士などの第三者に相談することが有効です。

プロフィール
不動産売却カテゴリー記事監修(吉田成志)
吉田成志
宅地建物取引士、マンション管理士、消防設備士などの資格を保有。
4年ほど専任の宅建士として不動産業者に勤務し、現在はマンション管理士・消防設備士として独立。
宅建士としての知識や立場を活かし、不動産売買時の疑問点などの相談を受けている。