【控除まとめ】払いすぎた所得税は確定申告や年末調整で還付されます
「確定申告なんて自分には関係ない」「そもそも控除や還付申告の意味がわからない」「会社の年末調整があるから大丈夫!」こんな風に思っている人はいませんか?
確かに「会社員であれば年に1回、会社が生命保険料控除などの手続きを含む年末調整」を行ってくれます。しかし実は自分で確定申告をしない限り控除や還付が受けられないものがあるんです。
もし今まで何の控除も還付申告もしたことがない場合、もしかしたら「払いすぎた税金」を返してもらいそびれているかもしれません。
この記事ではとっつきにくい「確定申告」「控除」「還付申告」についてわかりやすく解説します。「知らない間に損してた」なんてことがないよう、わたしたちが納めている税金についていっしょに勉強していきましょう。
税金における控除とは?所得から差し引かれる仕組みとさまざまな種類
年末調整や確定申告の際によく耳にする「控除」。税金における「控除」とは、支払うべき税額から差し引きできる金額のことなんです。
この説明だけではわかりにくいと思うので、この章では所得税の基本な算出方法から2種類ある控除の違いまで説明をしていきます。
もし控除の説明が不要な場合は「払いすぎた所得税が還付されるかも?還付申告で所得控除の申告をしよう」の章から読み進めてくださいね。
この場合の「控除額」とは所得金額によってあらかじめ決まっているもの。後に紹介する「所得控除」や「税額控除」の金額とは異なるものです。
日本は累進課税制度を導入しており、所得が高くなればなるほど所得税率が高くなるものの、控除額も年収に応じて設定されています。
それでは続いて、2種類ある控除について順に説明していきましょう。
- 所得控除
- 税額控除
(1)税率を掛ける前に所得金額から引かれる「所得控除」
「所得控除」とは、所得税率を掛ける前に所得金額から所得控除金額をマイナスすること。
所得税の基本的な算出方法である「所得金額」✕「所得税率」-「控除額」。この式で所得税を計算する前に、所得金額から差し引くのが所得控除です。
所得控除は全部で14種類。その中でも、最低限の生活を送っていくために設けられている、主な所得控除を紹介します。
控除名 | 内容 |
---|---|
基礎控除 | 条件なく誰でも受けられる控除。 控除額は一律38万円。 |
配偶者控除 | 控除対象となる配偶者がいる納税者のための控除。 |
配偶者特別控除 | 配偶者の所得金額が38万円以上あり、配偶者控除が受けられない納税者が対象。 |
寡婦・寡夫控除 | 夫や妻と死別または離婚などした納税者対象の控除。 |
扶養控除 | 控除対象扶養親族がいる納税者対象の控除。 |
障害者控除 | 納税者や配偶者、扶養親族が障害者となる場合の控除。 |
勤労学生控除 | 納税者自身が勤労学生の場合の控除。 |
老人扶養控除 | 70歳以上の扶養親族に適用される控除。 |
このほかにも特別な現金の支出や損害があったときのために、次のような控除が設けられています。
- 雑損控除
- 医療費控除
- 生命保険料控除
- 寄付金控除
続いてもうひとつの控除「税額控除」について解説していきましょう。
(2)算出された所得税から直接控除する「税額控除」
「税額控除」では、算出されたあとの所得税から決められた金額を差し引きます。
主な控除の種類には「配当控除」「外国税額控除」「寄付金等特別控除」「住宅借入金等特別控除」などがあります。
税額控除の場合、控除額は誰でも一定です。
一方で所得控除の場合は「税率を掛ける前に控除を行う」ため、高所得の人ほど高い控除が受けられます。
そのため「所得控除よりも税額控除の方がより公平な控除の方法といえるのではないか」という意見が増えつつあります。
給与所得がある人ならば誰でも対象!給与所得控除とは?
例えば給与などの収入金額が180万円以下の場合、給与所得控除額は「収入金額」×40%。
ただし収入金額が65万円未満の場合は、給与所得控除額は65万円となります。
転居費などが控除できる「給与所得控除の特定支出控除」
特定支出控除とは、給与所得控除額の1/2となる金額を特定支出額が超えた場合、超えた金額を給与所得控除後の金額から引くことができる控除のこと。次の6種類の特定支出があります。
- 通勤費
- 転居費
- 研修費
- 資格取得費
- 帰宅旅費
- 勤務必要経費(図書費、衣服費、交際費)
これらの合計額が給与所得控除額の1/2を超える場合には、超えた金額を控除できます。
基本的に控除の多くは「年末調整」または「確定申告」で申告できますが、この特定支出控除は確定申告でのみ申告を受け付けています。
年末調整で申告できる4つの所得控除
年末調整で申告できる所得控除は次の4つ。それぞれの内容を解説しましょう。
控除名 | 内容 | 控除額 |
---|---|---|
生命保険料控除 | 生命保険料や個人年金保険料、介護医療保険料を支払った場合に受けることができる。 | 年間の支払保険料の金額による |
地震保険料控除 | 損害保険のうち地震損害の部分の掛金に対し、控除を受けることができる。 | 年間の支払保険料の金額による |
社会保険料控除 | 健康保険、国民健康保険、厚生年金保険料、雇用保険料など。支払った社会保険料に対して控除を受けることができる。 | 実際に支払った金額の全額 |
小規模企業共済等 掛金控除 |
小規模企業共済法によって定められた共済契約で掛け金を支払ったら受けることができる。 | 実際に支払った掛金の全額 |
これら4つの所得控除のうち、節税効果が最も高いのが「小規模企業共済等掛金控除」。
会社員と違い退職金制度が存在しない個人事業主のための退職金積立制度のこと。個人事業主が小規模企業共済を掛けておくことにより、廃業などした際に共済金を受け取ることができます。
小規模企業共済等掛金控除には確定拠出年金も含まれる
小規模企業共済等掛金控除には、20歳以上60歳未満であれば誰でも積み立てることができる「個人型確定拠出年金(iDeCo)」や「企業型確定拠出年金」も含まれます。
これらの確定拠出年金も個人で年金を積み立てる制度です。
小規模企業共済や確定拠出年金が節税効果が高いといわれるのは、実際に支払った金額の全額が控除されるため。節税の面でみても、かなりお得な制度といえます。
iDeCoについては「iDeCo(イデコ)完全ガイド!運用のポイントと注意点を徹底解説」、企業型確定拠出年金については「企業型確定拠出年金とは?掛金を決める前に知りたい仕組みと制度」の記事で詳しく解説しています。
払いすぎた所得税が還付されるかも?還付申告で所得控除の申告をしよう
「還付申告」とは、所得税を払いすぎていた場合に確定申告することで所得税を還付してもらうこと。
確定申告には期間が定められていますが、還付申告は翌年の1月1日から5年間の間ならいつでも提出することができます。
- 医療費控除
- 雑損控除
- 寄附金控除
1年間の医療費や医薬品の購入が多くかかったら医療費控除ができる
「医療費控除」とは、実際に支払った医療費や購入した医薬品などから、保険の給付金などで補填された金額(※)をマイナスしたものが10万円を超えた場合に、超えた金額を医療費控除とすることができる制度のこと。1月1日~12月31日までの1年間の医療費が対象となります。
もしその年の総所得金額等が200万円未満であれば、10万円を超える必要はなく総所得金額等の5%の金額を超えた金額が対象です。
また医療費控除には、「セルフメディケーション税制」という特例が存在します。
ドラッグストアなどで医薬品を買った場合の購入費が1年で12,000円を超えた場合、超えた金額を控除することができる制度のこと。健康診査や予防接種を受けていることが条件となります。
セルフメディケーション税制は、医療費控除と重複して受けることはできません。
被災したら雑損控除を利用しよう
「雑損控除」とは、震災などの自然災害や火災などの人為災害、害虫による災害、盗難、横領など、自分のせいではない災害において資産が損害を受けた場合に控除できる制度のこと。
例えば、家が火災などで焼失してしまった場合などに控除を受けることができます。
控除金額は次のどちらか多い方になります。
- 「差引損失額」-「総所得金額」×10%
- 「災害関連支出の金額(差引損失額のうち)」-5万円
もし寄付をしたら寄付金控除を忘れずに!
寄附金控除とは、寄附をした納税者が対象となる制度のことです。
- 国や地方公共団体
- 財務大臣が指定した公益財団法人や公益社団法人
- 特定公益増進法人
- 認定NPO法人
- 政党や政治資金団体
- 特定公益信託
- 特定新規株式
寄附金控除の控除額の計算方法は、「寄附金の合計額」または「総所得金額の40%」のどちらか少ない方から、2,000円引いた金額です。
寄附金控除の中でも地方公共団体に寄附するものに「ふるさと納税」があります。
住宅の改修や退職したら要注意!確定申告が必要な税額控除
- 政党等寄附金特別控除
- 住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)
- 住宅耐震改修特別控除・住宅特定改修特別税額控除
- 中途退職により年末調整ができていない場合
1.政党等寄附金特別控除
「政党等寄附金特別控除」とは、政党や政治資金団体に支払った寄附金のこと。寄附金控除か政党等寄附金特別控除か、どちらか有利な方を選択することが可能です。
控除額の計算方法は次の通り。
2.住宅借入金等特別控除
「住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)」とは、個人がマイホームを住宅ローンを利用して取得した際に受けることができる控除のこと。控除額の計算方法は、住み始めた年などによって異なります。
住宅ローン控除の仕組みや申請方法は「住宅ローン控除(減税)とは?その仕組を理解して上手に利用しよう」という記事で詳しく説明しています。
3.住宅耐震改修特別控除・住宅特定改修特別税額控除
「住宅耐震改修特別控除」とは、住宅を耐震改修した場合に受けられる控除のこと。耐震改修にかかった費用の10%が控除額となります。
「住宅特定改修特別税額控除」とは、年齢が50歳以上である、要介護または要支援認定を受けているなど特定の条件を満たす人が改修工事を行った場合に受けられる控除のこと。かかった費用の10%が控除額となります。
4.中途退職により年末調整ができていない場合
中途退職により年末調整ができていない場合も、確定申告をする必要があります。
中途退職をし、年内に再就職をした場合は新しい就職先で年末調整をしてもらうことができるため、確定申告の必要はありません。ですが再就職していない場合は、所得税を払いすぎている可能性があります。必ず確定申告するようにしましょう。
知らない人も多い控除や還付申告について知っておこう!
年末調整で会社が行ってくれる生命保険料控除などは、会社に申告さえすれば、会社がきちんと計算してくれるもの。
ですが、確定申告しなければ返ってこない医療費控除や寄付金控除については知っておかなければ損をしてしまいます。
控除や還付申告は、支払う税金を少なくしてくれる、私達にとってとても重要な制度です。知らずに損をすることがないよう、しっかりと勉強しておきましょう。