
早期退職後の生活を考える人必見!後悔しない早期退職の判断ポイント
定年を迎える前に会社を辞める「早期退職制度」を活用して、キャリアチェンジやセカンドライフを謳歌しようと考える人も少なくないのではないでしょうか。
東京商工リサーチの調査によると、2017年度は25社の上場企業が早期退職制度を公表し、5年ぶりに前年を上回る結果となりました。
早期退職制度を利用すれば、退職金の上乗せや失業保険を受給できる場合があり、新しい人生の幕開けの第一歩となるかもしれません。
しかし実際に早期退職後の生活を考えるうえで、制度の詳細や税金のしくみについて知ることが何よりも重要です。
この記事では早期退職後の生活を考える方に向けて「早期退職制度」の情報をやさしく、わかりやすく解説します。
2020年問題も間近!企業が早期退職制度を導入するワケ
中央労働委員会調べ「平成29年退職金、年金及び定年制事情調査」によると、206社中102社(約49.5%)の企業が早期退職制度を導入しています。
そもそも『早期退職制度』とは、定年を迎える前に勤めていた会社を退職する制度です。
制度によっては「早期優遇退職制度」や「希望退職制度」とも呼ばれることもあります。
ポストが不足し、人件費が増大する?2020年問題とは
しかし、昨今の人手不足が深刻化するなか、どうして企業はあえて早期退職者を募る制度を導入するのでしょうか?その背景には『2020年問題』と呼ばれる問題があります。
1980年代後半のバブル景気時代に大量採用された社員や、人口層の多い団塊ジュニア世代が2020年代に40代後半~50代後半になり、ポストの不足や人件費の増大が問題視されることをいいます。
2020年代には4人に1人が45~54歳になるといわれており、基本的には管理職へ昇格し賃金のピークを迎える世代に人口が集中するため、企業は人件費の圧迫を懸念せざるを得ません。
そこで早期退職制度を導入することにより、人員整理や人件費の調整を促し、企業の経営体制を整える効果を図ります。
「早期退職制度」は大きく分けて2種類ある
早期退職制度は、2つの種類に分けられます。それぞれの違いを確認してみましょう。
選択定年制
選択定年制とは、企業が業績によらず人事制度として設ける退職制度です。企業によって異なりますが、45歳・50歳・55歳などの年齢で社員が自分の意思で退職を選ぶことができます。選択定年制で退職する場合、会社側は金銭的なインセンティブとして割増退職金を設定します。
あくまで社員が自分の意思で退職を選択するため、「自己都合退職」として扱われることがほとんどですが、企業によっては「定年退職」として扱う場合もあります。
早期希望退職制度
早期希望退職制度とは、企業の経営再建や業績悪化のために、臨時で実施する早期退職制度です。早期退職希望制度や希望退職制度と呼ばれることがあります。
企業側が提示した人数や優遇条件に合わせて退職者を募り、退職希望者には割増退職金の支払いや再就職の斡旋(あっせん)などがおこなわれます。
企業側の経営事由に起因する退職であるため、「会社都合退職」として扱われます。
退職金以外にもらえるお金!早期退職における「雇用保険」のしくみ
早期退職制度を利用すると、割増退職金の給付だけでなく、国の制度として「雇用保険」を受給することができます。雇用保険とは、働く意思がありながらも失業状態である人の求職活動を促すために支給される給付金です。
給付条件は下の表の通り、勤務期間や年齢により異なります。
労働期間 | 1年未満 | 1年以上 5年未満 |
5年以上 10年未満 |
10年以上 20年未満 |
20年以上 |
---|---|---|---|---|---|
15歳以上65歳未満 | - | 90日 | 90日 | 120日 | 150日 |
労働期間 | 1年未満 | 1年以上 5年未満 |
5年以上 10年未満 |
10年以上 20年未満 |
20年以上 |
---|---|---|---|---|---|
30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | – |
30歳以上 35歳未満 | 90日 | 120日 | 180日 | 210日 | 240日 |
35歳以上 45歳未満 | 90日 | 150日 | 180日 | 240日 | 270日 |
45歳以上 60歳未満 | 90日 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 |
60歳以上 65歳未満 | 90日 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
選択定年制の場合、自らの意思で退職する「自己都合退職」となるため、20年以上勤務した場合でも年齢によらず最大150日間の雇用保険が支給されます。
一方、早期希望退職制度の場合、たとえば50歳で20年以上勤務した場合、最大で330日間の支給を受けることができます。
雇用保険で支給される金額は、退職前6カ月の給与額をベースに計算され、おおよそ退職前給与の約50~80%相当になります。
退職事由により給付期間に大きく差がでるので、早期退職による退職事由がどちらに該当するのか確認をしておきましょう!
早期退職でもらえる退職金はどれくらい?税額控除の対象に!
早期退職制度における退職金の相場
早期退職には、基本的に退職金の割り増しといった優遇措置が設けられます。
退職金の割り増し金額は企業によって異なります。
さらに三越伊勢丹ホールディングスでは、早期退職による退職金に最大5000万円の増額を設定したことがニュースになりました。早期退職の割増額は、企業の業績や経営状況によって大きく異なりますが、約12~24カ月分の支給が多いです。
退職金は所得控除の対象
早期退職により仕事を辞めたとしても、その後の生活において社会保険料や住民税など公的な支払いは続きます。とくに住民税は「前年の所得」に対して課される税金のため、前年の収入が多いほど税負担が大きくなります。
しかし退職金の場合、在職中の給与や賞与の「給与所得」とは違い、「退職所得」として扱われます。
退職所得は「退職所得控除」を活用することができ、税負担額を軽減できるしくみが適用されます。退職所得控除額は勤務年数によって異なりますが、勤務年数が20年を超えるとより多くの控除額が適用されます。
退職後の生活のために必要なお金として捉えられているからこそ、退職所得は通常の給与所得よりも税負担が軽くなるように配慮されているのです。
早期退職後の生活はどれだけお金が必要?年金についても考えよう
早期退職による割増退職金や雇用保険の給付を受けることができたとしても、仕事を辞めてずっと安泰で暮らせるとは限りません。しっかりと、早期退職後の生活に必要なお金を把握し、いざ生活費に困らないよう準備をしておくことが大切です。
- 年金受給開始までの生活費
- 国民健康保険料
- 住民税
- 公的年金
- 住宅ローンが残っている場合は返済費用
早期退職をした場合、再就職をしない限りは会社で加入していた社会保険から国民健康保険に切り替える手続きが必要です。同様に年金制度も、会社員時代に会社が支払っていた厚生年金から国民年金へ切り替え、自ら年金を支払う必要があります。
55歳で早期退職し、1200万円の退職金を得た場合のモデルケース
年間の生活費が400万円であれば、退職金を除く280万円を貯蓄や雇用保険で補わなければなりません。
2800万円(280万円×10年分)の貯蓄や収入源があれば生活費は工面できるかもしれませんが、割増し退職金だけでゆとりある暮らしをすることは難しいでしょう。
再就職しなければ年金支給額は減る
年金の受給が開始されるのは65歳からです。早期退職をした場合、そのまま働かずにいれば、会社に属して国民年金に上乗せして支払っていた厚生年金の加入期間が短くなり、将来受け取れる年金総額が減ることになります。
もし無収入で支払いが難しい場合は、国民年金保険料は全額免除をすることも可能です。免除をした分、老後に受け取れる年金額も減りますが、手持ちのお金がない場合の選択肢として念頭に入れておきましょう。
早期退職後の生活で広がる人生の選択肢!そのメリット・デメリット
早期退職を選択することで、割増退職金を得られるだけでなく、人生の選択肢も広がる可能性があります。
逆にいえば、早期退職によって想定外の事態に陥り、生活に困窮してしまうリスクも考えなければなりません。
早期退職後の生活におけるメリットとデメリットを検討してみましょう。
メリット | デメリット |
---|---|
割増退職金がもらえる | 収入が不安定になる |
企業や再就職などキャリアアップを図れる | 定年までの先行きが不透明 |
場所や時間に縛られない自由な暮らしができる | 40~50代での転職市場は厳しい |
趣味や勉学などやりたいことに時間を使える | 将来受け取れる年金額が減る |
会社でのストレスやプレッシャーから解放される | 健康診断や年金なども自分で負担しなければならない |
定年を迎える前に早期退職をすることで、自由な時間を謳歌したセカンドライフや悠々自適な暮らしを目指す人も多くいます。
その一方で、割増退職金がもらえるとしても収入がなくなることに変わりはなく、起業や転職、アルバイトや資産運用などで収入源を確保しない限り、余裕のある暮らしは難しいでしょう。
貯蓄や資産がしっかりとあれば、あこがれの土地に移住をしたり、旅行や趣味を充実させたりと第2の人生をスタートさせることも夢ではありません。
大切なのは、早期退職後の生活イメージをしっかりと持ち、直近の生活だけでなく将来の暮らしを考慮した資産計画を立てることです。
早期退職を判断する3つのポイント
(1)早期退職後の不安定な生活でも十分な資産がある
いくら割増退職金もらえるといっても、収入源が途絶えることへのリスク対策が必要です。将来の年金が減ることも踏まえて、十分な自己資金が用意してあるかどうかを確認しておきましょう。
(2)キャリアイメージができている
起業や転職を考える場合、しっかりとその分野の転職市場を把握し、自身のスキルを活かせるキャリア設計を立てましょう。中高年での転職は想像以上に厳しく、安易な判断は足元をすくいかねません。
(3)家族や周囲の理解があり、適切な助言を受けている
額面での割増退職金だけに躍らされて、早急な判断をするのは好ましくありません。自分一人で判断をせず、身近な家族や同僚など、客観的な意見をもらえる場に身を置き、多角的な視点から判断しましょう。
早期退職を判断するうえで大切なことは、早期退職後の準備をしっかりしておくことです。
自分自身のキャリアや会社の将来性、転職市場や老後の年金など、早期退職による影響を十分に吟味し、早期退職後の生活を具体的にイメージしながら、慎重に選択をすることが大切です。