延命治療とは?主な治療の種類と拒否したいときの意思表示の書き方
治療がない状態では生きられない、自力では生きられない人に行う「延命治療」。
平成25年版の高齢社会白書によると、延命治療を希望しない高齢者は全体の91%にものぼることが明らかになっています。
なぜ延命治療を選択しないのか。それは、延命治療しないほうが自然な死を迎えることができるため。延命せず穏やかに逝きたいと考えている人が増えているのです。
延命治療を選択しないようにするには、生前しっかりとしているうちに事前指示書を作成しておくことが大切です。ここでは延命治療について説明していきます。
難しい話題ではありますが、延命治療やどのような最期を迎えたいのかについて親や家族ときちんと話し合ってみましょう。
延命治療とは?尊厳死を選択したい人が増えている!
治療をしなければ死んでしまう方の命を延ばすためだけに行う治療方法のこと。根本的な病気の治療のことではない。体力の少ない高齢の方に行われることが多い治療法。
- 人工呼吸器によるもの
- 人工栄養によるもの
- 人工透析によるもの
自力で息ができなくなった場合には、人工呼吸器による治療が行われます。人工呼吸器を外せば息ができず、生きることはできません。
続いて人工栄養を管で体内に直接送る方法が人工栄養。食べ物や飲み物を飲み込む力が弱くなった場合に行う治療となります。
胃や腸に穴をあけ、管によって栄養を送る「胃ろう」や「腸ろう」。鼻の穴から管を胃や食道に通すことで栄養を送る「経鼻経管栄養」。静脈に点滴を行う「経静脈栄養」といった方法があります。
最後に人工透析とは、腎臓の働きが不十分になったことで体の中の老廃物を出すことができなくなった人の血液をきれいにする治療方法のこと。人工透析を行わなければ、「尿毒症」という病気になり、全身けいれんなどの症状が現れ、生きることが難しくなる場合も多いのです。
3つのうちのひとつ「人工透析」の場合は、これからの人生を楽しむために行う延命治療のため、前向きな治療といえます。
しかし人工呼吸器や人工栄養などの延命措置の場合は、高齢の方に施される場合も多く、死期を延ばすだけの治療となることが多いんです。
この記事ではこれら人工呼吸器や人工栄養など「高齢者に行う延命治療」について詳しく掘り下げて説明していきます。
延命治療を受けるメリットと引き換えになる「尊厳死」について考える
一秒でも長く生きたい、長く生かしてほしいと考える場合には、延命治療は必要な措置といえるでしょう。
しかし延命治療を受けることで別のリスクが発生します。
延命治療をすると尊厳死できなくなる可能性が高い
高齢者に延命治療を行うと多くの場合、穏やかな死(尊厳死)ができなくなる可能性が高いといわれています。
延命治療などを行わず自然な死を迎える場合の経過は以下の通り。
- 食事の量が減る
- 摂取する水分の量が減る
- 排尿や排便の量が減る
- 血圧が徐々に低下し始める
- 意識も徐々に薄れていく
- 死を迎える
老衰であれば少しずつ体が弱っていくため、それほどの苦しみなく穏やかに死を迎えられることも。
一方で摂取する水分の量や栄養が減ることを理由に点滴などを施すことは、場合によっては体に負担になってしまう可能性があるんです。点滴で必要のない水分を体内に入れすぎることで、肺に水が入る「肺水腫」となり、常におぼれているような苦しみを味わうことも。
延命治療したくない!親がそう言った場合どうすればいい?
高齢の親が「延命治療しない」と言った場合には、その親の意思を書面で残しておくと安心です。
リビングウィル、医療判断代理委任状などを作成しよう!
「延命治療を拒否したい」という親の意思を記す書類を、事前指示書といいます。
一般的な事前指示書は以下の3つ。
- リビングウィル
- DNR指示
- 医療判断代理委任状
それぞれの書類を、延命治療拒否のための意思表示カードとして利用することが可能です。事前指示書は、意志確認書、同意書などとも呼ばれます。
人生の最終段階になった場合に、してほしい治療としてほしくない治療について書いておく法律文書のこと。延命治療の拒否宣言書ともいえる文書。
リビングウィルは、特に延命治療について記載しておく文書であり、本人が意思表示できない場合でのみ効力を発揮する書類です。
日本尊厳死協会が発行しているリビングウィルには、延命治療の拒否や緩和医療、植物状態になったとき延命治療を中止することなどをチェック方式で記載することができるようになっています。
心臓が停止した際には心肺蘇生を行わないという意思を、主治医が診療記録に記載しておくこと。
DNRとは「do not resuscitation order」の略で、心肺蘇生拒否という意味を表す言葉です。患者がDNRを宣言した場合には、主治医が診療記録にその意思を残しておきます。
DNR指示の場合は、主治医が診療記録に記載した時点から効力が発生します。
患者が意思決定できなくなった場合に、治療に関する決定権を委ねる人を記載しておく文書のこと。
患者の意思疎通が可能な間は、医療判断代理委任状を作成していたとしても、患者の意思が優先されます。
事前指示書作成の際の注意点やポイントは?
事前指示書を作成する際の注意点やポイントは以下の5つ。
- リビングウィルと医療判断代理委任状は両方作成しておく
- 本人が元気な間に作成しておくこと
- 代理人は信頼できる人にする
- してほしくないことを書く
- 数年毎に見直しをする
この中でも、特に重要なのが、リビングウィルと医療判断代理委任状のどちらも作成しておくこと。
というのも、リビングウィルは治療に関してしてほしくないことを書いておけるものですが、その場の状況に応じるといった柔軟性には欠けているのです。その点、医療判断代理委任状はその場に応じた最適な治療方法を選択できる柔軟な方法。
どちらも作成しておけば、患者の意思に沿った治療方法で柔軟に対応することが可能です。ただし、リビングウィルと医療判断代理委任状で意見が異なった場合は、どちらを優先するのかあらかじめ決めておくといいでしょう。
不謹慎ではない!親や家族と延命治療について話し合っておこう
いずれ迎える自分の親の死。そのタイミングが近づいた際に延命治療をするべきかどうか迷わないためにも、親が元気なうちにどのような最期にしたいのか、きちんと話し合っておくことが大切です。
親と話し合わずに延命治療をしなかった場合、早く死なせてしまったのではと子供側に後悔の念が残ることもあります。
話しにくいことではありますが、親ときちんと相談し、必要ならば事前指示書を作成しておきましょう。