ETFの税金を徹底解説!確定申告の必要性と手続きの流れ
ETFといえば、少額から売買ができる、コストが安い、分散投資がしやすい等、魅力のある金融商品です。
それに加え、2013年よりスタートした日銀の金融緩和により、ここ数年で国内ETFの価格は大きく上昇しています。まさにETFは今、もっとも稼ぎやすい金融商品となっています。
ただ、ETFへの投資を通じて稼げるのは良いのですが、利益が生じる以上、税金も同時に発生するものです。
ETFへの投資を通じてリターンが生じた場合、どのくらいの金額が課税されるのでしょうか?そして、確定申告の手続きなどは必要になるのでしょうか?
今回はETFに関連した税金と確定申告に関する知識を紹介します。
ETFの税金と確定申告について
ETFとは上場投資信託のことで、証券会社に上場しているETFは誰でも自由に売買することができます。
売買ができるという点に関して言えば、株式投資とそれほど大きな違いはありません。株と同じで、安い時に買い、高い時に売れば利益を得ることができます。さらに、ETFは信用売りができるため、価格が下落している時であっても信用売りをすることで稼げるというメリットがあります。
ETFの利益というと、このような売買によって生じる利益と、分配金にかかる利益の二種類があります。
ETFの税金は、売却益と分配金それぞれの利益に対して課税されることになります。
ETFの投資で利益が発生したら、その利益に対して税率に応じた税金を払います。この税金の支払いの手続きをするために、確定申告を行います。
確定申告を怠ると、ペナルティとして無申告加算税が発生します。このような罰則を避けるためにも、必ず確定申告は行ってください。
ETFで課税される部分とは?その税率は?
ETFといっても、すべての利益に対して課税されるわけではありません。例えば、ETFの含み益などに関して言えば、課税対象にはなりません。
この時、1000円の値上がり分の含み益が生じています。ただ、いくら利益があるといっても、含み益の時点ではまだ利益は確定していません。このような未確定の利益に関して言えば、税金の対象にはなりません。
しかし含み益が出ている時にETFを売却すれば、利益(売却益)が確定しますので、課税対象となります。
ETFではこのような売却益と、さらに分配金に対してそれぞれ税金が課税されることになります。
ETFの売却益は、譲渡所得として扱われます。この所得は、給料などの所得と区分して計算される申告分離課税となります。
- 所得税 15.315%
- 住民税 5%
ETFの分配金も、売却益と同じ税率の20.315%の税金が課税されることになります。ただし、ETFの分配金は、源泉徴収されているため、支払われている時点で既に税金をおさめています。そのため、分配金の利益に関して言えば、確定申告は不要になります。
ETFの税金の取扱は株式投資と同じ
ETFだからといって、他の投資とは異なる特殊な取り扱いをするということは基本的にありません。
ETFの税金の取り扱いは、株式投資と基本的に同じなため、既に株式投資で税金の支払いに慣れている方からすれば、特にこれといって問題なくETFの税金の手続きを行えるでしょう。
ETFであろうと株式投資であろうと、年収2000万円以下の会社員で、ETFなどの所得の合計が20万円を超えているのであれば、原則として確定申告が必要になります。
専業主婦や学生などの扶養者の場合は、38万円を超えると確定申告が必要になります。
ただし、源泉徴収ありの特定口座を利用している場合、ETFでも株式投資でも、原則として確定申告は不要になります。源泉徴収ありの特定口座を使用しているということは、利益が出ると証券会社が投資家に代わって税金を払ってくれるということなので、確定申告で税金を払う必要がないからです。
株式投資であろうとETFであろうと、確定申告が面倒ならば、源泉ありの特定口座を使用すると良いでしょう。
売却益と分配金でそれぞれ税率はいくらかかるのか?
売却益とは、ETFを売却した時に生じた利益のことです。分配金とは、権利確定日にETFを保有していた時にもらえる利益のことです。売却益のことを譲渡所得、分配金のことを配当所得と区分します。
仮に、ETFの売買を通じて5万円の譲渡所得が発生したとします。この時、税率は20.315%となりますので、税金は1万157円となります。
税率は常に同じなので、利益が上がれば上がるほど、それに比例して税金も高くなるでしょう。
確定申告が必要な人とは?
それではどのような人がETFで確定申告が必要なのでしょうか?
- 年収2000万円以下の会社員で、投資の利益が20万円を越えた人
- 専業主婦や学生などの扶養者の場合、投資の利益が38万円を超えた人
源泉徴収ありの特定口座を使用しているなど、一部のケースを除き、この条件に該当する方は確定申告が必要になります。時期が来たら、必ず確定申告の手続きをし、税金を納めてください。
ちなみに、確定申告の義務がなくても、やっておいた方が良い方もいます。
例えば、ETFの取引で、年間の利益がマイナスで赤字だった方の場合、本来であれば確定申告の必要はありません。しかし、取引結果が赤字の場合、その損失を翌年に繰り越し、損益通算をすることができます。
損益通算や繰越控除ができるため、たとえ赤字で確定申告の必要が無かったとしても、確定申告はやっておきましょう。
そうすることで、翌年以降の税金を安くできます。
電子申告なら、ネットで確定申告ができるので、普段は忙しい方でも簡単に確定申告の手続きができるので、とても便利ですよ。
確定申告の流れ
ETFの取引について確定申告をする場合、まず手続きに必要な書類を用意してください。
- 源泉徴収票
- 取引報告書
この取引報告書は年間の取引記録が書かれている書類です。特定口座を使用している方ならば、証券会社が作成してくれます。証券会社が作成した年間取引報告書は、税務署に提出する必須の書類なので、必ず用意してください。
手続きに必要な書類を用意したら、次の手順で確定申告を行います。
- 確定申告の手続きをするための申告書を用意
- 申告書を記入
- 申告書と年間取引報告書を税務署に提出
申告書の準備
まず、確定申告の手続きをするための申告書を用意します。申告書はAとBの二種類があるのですが、株式などの譲渡所得の申告は「申告書B第一、第二表」および「申告書第三表(分離課税用)」の申告書を使用します。
申告書を用意したら、空欄に必要事項を記入します。ここで記入すべき数字は、証券会社が作成した年間取引報告書に書かれています。報告書の数字をそのまま記載するだけで大丈夫です。
もしもわからない点がありましたら、お近くにいる税務署の職員に質問し、書き方を教えてもらいましょう。
年間取引報告書の作成
申告書にすべて記入したら、あとは年間取引報告書を添付し、税務署に提出します。その後、支払うべき税金を納めたら、手続きはすべて完了です。この時、もしも税金の払い過ぎがあった場合、還付金として戻ってきます。
年間取引報告書は、特定口座ならば証券会社が代わって作成してくれるので、いちいち計算をする必要がありません。
ただし、一般口座を使用している方の場合、自分で計算し、報告書を作成する必要があります。一般口座を利用するメリットはほとんどないので、口座を選ぶ際には確定申告が簡単にできる特定口座を選択しましょう。
年間取引報告書以外に必要なモノというと、印鑑やマイナンバー、そして源泉徴収票などがあります。
必要書類を用意したら、確定申告の手続きの際に提出しましょう。
書類の提出
確定申告の大まかな流れは、必要書類を用意する、申告書を作成する、提出する、この手順となります。
今の時代はネット上からでも手続きができます。ただ、やり方がわからないのであれば、税務署で手続きをした方が良いでしょう。税務署で確定申告をすれば、職員の方に丁寧に教えてもらえます。
忙しくて確定申告に行く暇がないという方の場合は、ネット上で確定申告ができるe-Taxが便利です。
ただし、e-Taxを利用する場合、ICカードリーダーが必要になるため、コストがかかります。できるだけコストを削減しつつ、手間なく確定申告をするなら、国税庁のWEBサイトにある「確定申告書等作成コーナー」を利用してみましょう。
このコーナーを利用すると、オンライン上の画面に数値を入力するだけで必要書類を作成できるので、とても簡単です。作成した書類を郵送すれば、いちいち税務署で作業する必要なしに確定申告ができます。
損した場合でも確定申告した方がよい理由「損益通算」
ETFに投資をしたものの、利益が出ず、赤字で終わった場合、その年は本来であれば確定申告をする必要はありません。しかし、損失が出た以上、確定申告はやっておいた方が良いです。
赤字の年に確定申告をすると、その年の損失を翌年に繰り越し、翌年の利益と損益通算させることができます。
一年間における損失と利益を通算し、相殺することです。
例えば、今年一年のうちにETFへの投資で100万円の利益を得た場合、仮に税率を20%とした場合、本来であれば20万円の税金が課税されます。
損益通算では、この利益に対して損失を相殺させることで、税金を安くすることができます。
そして、ETFではこの余った赤字50万円の損失を、翌年に繰り越し、その年の利益と損益通算させることができるのです。
このように、赤字が多ければ大きいほど、税金を安くすることができます。
繰越控除を受けるためには、確定申告が必要です。ETFへの投資で赤字になったにも関わらず、確定申告をしないでいると、本来であれば払う必要のない税金を払うことになります。そのような事態を避けるためにも、たとえ赤字でも確定申告はやっておきましょう。
確定申告は必要なの?
納税は国民の義務である以上、確定申告は必要です。
源泉徴収で、既に税金を納めているというのであれば不要ですが、そうでないのであれば、必ず確定申告をしてください。
納税の義務があるにも関わらず、確定申告をしないという行為は、脱税にあたる行為です。脱税は犯罪です。悪質な行為だと見なされると、厳しいペナルティが発生します。
確定申告を怠ったところで、良い事など一つもありません。投資で利益を得た以上、必ず確定申告をしてください。手続きが面倒ならば、源泉ありの特定口座を利用しましょう。
海外ETFの税金は国内ETFとは異なるのか?
ETFの中には国内の銘柄だけでなく、海外の銘柄もあります。
国内の銘柄と違い、海外の銘柄に投資をする場合、日本の税金だけでなく、現地国に対しても税金を払う必要があります。
つまり、海外ETFに投資をすると、国内の税金と海外の税金とで、税金の二重払いが発生するということです。
税金の二重払いがあるため、国内ETFよりも海外ETFの方がコストが高くなります。
では、海外ETFへは投資をしない方が良いのかというと、そのようなことはありません。
海外ETFの中には、国内ETF以上のリターンが見込めるハイリターンな銘柄もあります。そういった利回りの高い銘柄に投資をすれば、国内ETF以上の利益を得られるでしょう。
何より、海外ETFならば外国税額控除を受けられます。
確定申告時に外国税額控除を受けることで、払い過ぎた税金を取り戻すことができます。
国内ETFと違い、海外ETFは税金が高い分、外国税額控除を受けられるという利点があるのです。
普段より、海外ETFに頻繁に投資をしているという方は、外国税額控除を利用し、払い過ぎた税金を取り戻しましょう。
海外ETFについては次の記事で詳しく解説しています。
ETFに投資するなら確定申告に気をつけよう
税金を納める義務が発生した以上、必ず確定申告の手続きをしてください。
確定申告の手続きは、税務署に行けば、職員の方に丁寧に教えてもらえます。忙しくて時間がないという方は、ネット上で確定申告をしましょう。
確定申告をすると、繰越控除や損益通算ができるので、必ずしもデメリットばかりではありません。むしろ、損失が多い投資家の場合、メリットの方が多いくらいです。
特に海外ETFへ投資をしている方の場合、払い過ぎた税金を取り戻すことも可能です。
納税は国民の義務です。投資で利益を得たら、必ず確定申告をしましょう。