【売主視点】不動産取引で見られる6つの詐欺!対策法を理解しよう
不動産取引においては未だに詐欺が横行しており、直近では不動産のプロともいえる大手ハウジングメーカーが地面師と呼ばれる詐欺集団の被害に遭う事件も発生しています。
不動産取引は金額が大きいだけに、詐欺がおこなわれるとその被害額も大きくなる傾向にありますので注意が必要です。
そこでこの記事では不動産売買の際に起こりうる詐欺の事例や必要な対策方法、さらに被害に遭った場合には誰に相談すればいいのかについてお伝えしていきます。
不動産売買でよく見られる詐欺の事例や手口
不動産売買における詐欺でよく見られる手口としては、以下のようなものがあります。
- 物件の囲い込み
- 悪質な所有権の移転登記
- 所有者なりすまし(地面師)
- 原野商法
- 手数料の持ち逃げ
詳しくみていきましょう。
物件の囲い込み
不動産売却などの仲介依頼を売主から受けた不動産業者が、買主も自分だけで探し出すことで、売主と買主の双方から仲介手数料を受けようとする行為のこと。
囲い込みでは、不動産流通機構が運営している不動産情報ネットワークに不動産情報を登録しなかったり、登録はしても問い合せのある他の不動産業者には売却済みであると虚偽の報告をして、あくまで自社で買い手を見つけたりします。
不動産売買の仲介を不動産会社に依頼する場合、媒介契約を結びます。その契約が専任媒介契約や専属専任媒介契約である場合には、不動産業者にはレインズに登録する義務があります。
本来仲介業者は、売主がより良い条件で売却できるようにレインズに登録し、その情報を閲覧した他の不動産業者からの物件についての売買情報については正確に答えなくてはなりません。
代金受け取り前に勝手におこなわれる悪質な所有権の移転登記
一般的な不動産取引では、登記を代行してくれる司法書士の立会いのもと、売主から買主への所有権の移転登記と代金の授受が同じタイミングでおこなわれます。
しかし悪質なケースでは、所有権の移転登記に必要な書類を代金の支払いよりも先に渡すように要求され、詐欺の被害に遭う事例が見られます。
代金を払わずに不動産登記がおこなわれると、騙した相手はすぐに第三者に転売し、そのまま行方をくらましてしまうのです。
しかし実際には、行方のわからなくなった相手を探し出して、騙されたお金を取り戻したり、所有権の登記を元に戻させることは非常に難しいと考えられます。
所有権の主張と引渡しを要求できるのは、転売による買主が「詐欺の結果得られた不動産と知っていた場合のみ」となるのです。
しかし実際、この買主が詐欺を知っていたと証明することは、ほとんど困難です。
所有者なりすまし(地面師)
他人の不動産の所有者になりすまして、第三者に売りつけ代金を騙し取る詐欺がありました(地面師)。
この地面師は、所有権の移転登記に必要な印鑑や印鑑証明書の偽造をおこなうことで持ち主になりすましてしまうのです。
最近では、大手ハウジングメーカーがこの地面師と呼ばれる詐欺集団の手口にひっかかり、63億円が騙し取られる事件が発生しています。
不動産のプロと呼ばれる大手企業でさえ引っかかるほどの、恐ろしい手口なのです。
原野商法
原野商法とは、価値がほとんどないような土地を「近い将来に大きく値上がりする」と騙して高く売却する詐欺の手口です。
1970年代から80年代にかけて、多く見られました。
近年では新たな手口として、「土地の所有者から高く買い取るという話を持ちかけ、所有している土地の買取りをおこなうと同時に価値の無い別の土地を購入させる」ということもあります。
この場合、騙された所有者には税金面でも問題が発生する可能性も。
それは土地を売却して利益が発生すると、所得税の課税対象となってしまうからです。
つまり、二束三文で価値のない土地を買わされるだけでなく、新たに譲渡所得税も払わなければならないという二重の損害を被る結果となってしまう可能性があります。
手数料の持ち逃げ
不動産取引では「仲介手数料」や「測量費」、「調査費」、「広告費」などの費用が発生します。
これらを巧みなセールストークで先に払わせ、そのまま持ち逃げしてしまう詐欺がありました。
法律上、仲介手数料は売買が成立するまでは事前に契約者からは受け取れないことになっています。
もし通常よりも多くの費用がかかるような宣伝広告をおこない、顧客の負担とする場合、不動産業者は少なくとも事前に顧客の了承を得てから行なわなければなりません。
勝手にそのような宣伝広告をおこなって、後から顧客に請求することは法律上もできないことになっていますし、ましてや事前に前払いで請求することは非常に悪質と言えるでしょう。
このような手数料や費用について予め請求されるようなことがあれば、一切応じる必要はありません。
不動産売買での詐欺を防ぐには、信頼できる業者選びが大切
- 信頼できる不動産業者を選ぶ
- 代金受取と所有権移転登記を同時に行う
- 業者を変更する
詳しくみていきましょう。
信頼できる不動産業者を選ぶ
詐欺の被害から身を守る上で最も大事な点は、信頼できる不動産業者を選ぶことです。
そのためにはまず、宅地・建物の取引仲介に必要な「宅地建物取引業免許」の有無を確認し、実在する業者かどうかを見極めましょう。
不動産業者が免許をもっているかをチェックするシステムとして、国土交通省が運営している宅地建物取引業者の検索システムがあります。
このシステムを利用し、業者名で検索すればその業者の所在地や免許の取得年月日などの詳細情報がわかり、業者の素性を確かめることができます。
また、同じ国土交通省のネガティブ情報等検索システムを利用すれば、特定の業者が過去に受けた行政処分の有無を確認することもできます。
もし、媒介契約や取引などをしようとしている業者が過去に何かしらの行政処分を受けていれば、その内容によっては取引を避けることもできるでしょう。
なお宅建業者には、国土交通大臣免許と都道府県知事免許があります。それぞれで監督処分情報などを公開していますので、参考にしてください。
不動産一括査定サイトについては、次の記事「おすすめな不動産一括査定サイトを厳選してご紹介!」で詳しくご紹介していますのでチェックしてみましょう。
代金受取と所有権移転登記は必ず同時におこなうこと
代金を受け取る前に所有権を騙し取られて、勝手に第三者に転売されたりといった事態を防ぐには、必ず代金の授受と所有権の移転登記を同じタイミングでおこなうことです。
悪徳業者は何かしらの理由をつけて、巧みにこのタイミングをずらそうとしてきます。
振込による決済の場合は「売主預金口座への着金」によって確認がとれますが、悪徳業者の中には小切手で代替しようとする者がいます。
悪徳業者が手渡す小切手はまず不渡りする可能性があるため、注意してください。
業者を変更する
先ほどの手数料や費用負担について何度も催促されたり、支払わなければ仲介できないなどと言われたら、すぐに業者を変えることが大切です。
詐欺の手口を理解し対策を講ずるとともに被害に遭ったら早目に相談!
また詐欺ほどの悪質性はなくても、業者による囲い込みなどをおこなう不動産業者は常に存在し、業界内でも問題になっています。
こういった詐欺などの被害に遭わないためには相手の手口を事前によく理解し、できるだけ被害に遭わないようにするための対策を講じておくしかありません。
少なくとも相手が不動産取引業者の免許を有しており、過去に行政処分などを受けたことがないかをチェックしておくだけでもかなりの詐欺の被害に遭うリスクを低くできます。
それでも相手は不動産取引や詐欺のプロであり、どんなに対策していたとしても被害に遭ってしまった場合には、警察などへ相談しましょう。
詐欺をはたらく組織はそもそも宅建免許を持っていないことが多いもの。宅建業者と偽っているわけですから、真正な宅建業者であることの確認はそんなに難しいことではありません。
また、契約手続きを行うのは宅建取引士が常駐する事務所でおこなうのが原則です。
宅建取引士と事務所が許可を受けたものかの確認も大切です。
中古住宅・中古アパートの媒介業務・調査業務に従事し、現在は札幌市内の宅建業者にて専任の取引士を務めている。
2006年より、住宅に関する無料の相談サイトを開設し、住宅リフォームや中古住宅購入の相談に応じている。