家を売る人の悩み解消

売却時に事故物件の告知は義務!相場、円滑に売却するポイントも紹介

「事故物件」は売却が難しいと言われています。

事故物件とは、自殺や殺人・火災などの事件・事故があり、心理的に住心地が悪い物件のこと。所有したくないからといって売却しようとしても、実際は困難なケースが多いようです。

事故物件だって言わずに売ればいいんじゃない?
ダメです!事故物件だと告知せずに売却すると、後から多額の損害賠償を請求される可能性がありますよ。

当記事では事故物件の売却における、次のような疑問を解決します。

  • 事故物件とはどんな物件なのか?
  • 事故物件だと告知しないと、どんなリスクがあるのか?
  • 事故物件はいくらで売れるのか?
  • 事故物件を売るにはどうすればいいのか?

事故物件の売却で悩む方は、ぜひ参考にしてください。

「うちは事故物件じゃない」は間違い!?事故物件の明確な基準なし

不動産業界において、事故物件は「心理的瑕疵(かし)のある物件」などといわれます。

心理的瑕疵とは

物件そのものに欠陥はないが、「過去に自殺や殺人があった」「墓地や宗教団体・指定暴力団体の施設が隣接している」などで、住人の心理を著しく害する要因のこと。

うちの物件は過去に自殺があったけど、60年も前の話だから事故物件にはならないな!
そうとは限りませんよ!実は、心理的瑕疵(事故物件)に明確な基準はないんです。そのため、自分では事故物件じゃないと思っていても違う場合があります。

何か心当たりがある場合は、不動産会社に相談するのがオススメです。

事故物件の明確な基準はないので、不動産会社に相談しよう

実際の事故物件には、どんなものがあったんでしょうか?
過去の判決をみれば、事故物件の具体的な例がわかりますよ。

過去、「事故物件として心理的瑕疵がある」と判定された事例には、次のようなものがあります。

事故物件(心理的瑕疵)の例
  • ベランダで自殺があったマンション
  • 火事による死亡事故があったアパートの跡地
  • 室内での他殺が疑われる2名の死亡事故があったマンション
  • 元住人が腐乱遺体で発見された住宅
  • 寝室で睡眠薬自殺をはかった住人が、その後病院で死亡した事件のあるアパート

実際に自殺・他殺があった物件に限らず、「自殺をはかったあと病院で亡くなった」「自然死だが長い間放置されていた」などがあった物件も、事故物件として扱われました。

ちなみに、次のような「借り手が嫌だと感じる」可能性がある物件も、心理的瑕疵がある物件として扱われることが多いです。

心理的瑕疵がある物件の例(自殺・事故以外)
  • 一部が反社会勢力の事務所として使われている(いた)マンション
  • 風俗店などの店舗として使われている(いた)マンション
意外と身近な物件が該当しているかもしれないんですね。
事故物件ですなんて言ったら、絶対買ってもらえないよ~!隠して売っちゃおうかな!
ダメです!事故物件の告知は、不動産売買において義務化されています。守らないと大変なことになりますよ!次の章でしっかり確認してくださいね。

事故物件は告知が必須!怠ると後で多額の損害賠償を払う可能性も

民法によって、売主には「売却不動産について買主に説明する義務」があります。

事故物件の告知を売却時に怠ると、後から損害賠償を請求される可能性があるのです。

告知するかどうかの判断基準ってあるんでしょうか?
明確な基準は決まっていません。取引当事者の主観的事情に左右されるからなんです。実際は過去の裁判例を参考として、判断するしかありません。

過去には次のような裁判がありました。

事故物件として損害賠償を請求された裁判例
6年前にベランダで首吊り自殺があったマンションの売買
判決結果:売買契約解除および違約金640万円の損害賠償を認める。

1年11カ月前、睡眠薬自殺をはかり約2週間後に病院で死亡した賃貸物件の売買
判決結果:本物件内で直接死亡したものではないが、売買金額の1%(220万円)の損害賠償を認める。

過去存在した建物で起きた殺人事件が、8年経過後も土地の瑕疵にあたるとされた事例
判決結果:買主が売却しようとした際に、近隣住人の指摘により購入をとりやめた者がいたことから、いまだ嫌悪すべき心理的欠陥があるとして、売主に75万円の損害賠償を認める。

裁判事例のなかには、損害賠償を請求されたものの「告知すべき心理的瑕疵に該当しない」として棄却されたものも。しかし一方、残虐な殺人事件があった農家の土地売買で、50年以上経ったあとでも心理的瑕疵として認められたものもあります。

このように、事故物件や心理的瑕疵に関する判断や起こりうる賠償額については、経過年月やその後の物件の状況などに左右されるため、明確な基準を設けることが難しいのが現状です。

ちなみに「事故物件でも、そこから一人でも買主や借主が存在していれば告知義務がなくなる」という説がネット上などでたまに見られますが、実際にはそのような決まりはありません。

事故の程度や経過年数から勝手に判断せず、基本的には告知が必須と考えるべきでしょう。

また隣接地や近隣に事故物件がある場合、告知義務はありません。しかし、不動産業界では「告知が理想」とされています。
え、なんで!?
「義務はないから告知しなかった」というだけでは、もし訴訟などのトラブルに発展すると不利な立場に置かれてしまう恐れがあるからなんです。

ただし自分が所有者でない物件情報の告知は、関係者のプライバシーを侵害する可能性もあります。十分に注意しましょう。

事故物件の告知は買主が購入を決める前に!早い段階で告知しよう

事故物件の告知は、買主が購入を決める前の物件説明時に行うのがベストです。

事故物件の告知は、次の手順で行います。

事故物件を告知する手順
  1. 買主が購入を決める前の物件説明時に告知
  2. 売買契約時に「重要事項説明書」「売買契約書」の特記事項に記載
  3. 重要事項の説明時に再度告知

物件説明時の告知であれば、早いうちに買主は購入可否の判断ができます。

物件の販売図面やネット広告に「告知事項あり」などと記載しておくことも、トラブル防止策として有効ですね。

また物件の内覧時に買主から「なぜ売却を考えたのか」「欠陥はないか」と問われることもあります。

前もって答えられる準備をしておくとよいでしょう。

物件の内覧については、次の記事でも詳しく紹介しています。

また重要事項説明書の説明は、宅地建物取引士の有資格者でないとできません。そのほか事故物件の告知について不安な場合、信頼できる不動産会社などへ相談しましょう。

売却における必要書類や不動産会社の選び方については、次の記事を参考にしてみてください。

事故物件でも売れる可能性は十分あり!ただし2~5割の値引きは覚悟

事故物件だって告知したら、売れないんじゃないかな・・・。
事故物件の取引成功事例は、いくつもありますよ。過去に殺人事件が起こった店舗の跡地を、葬儀屋さんが買い取った例もあります。
へ~!気にしない人もいるんだね!
ただし相場価格での売却は難しいかも知れません。多くの事故物件は、相場よりも2~3割ほど安く売却されているようです。

自殺のあった物件は2~3割の値引きが多いのですが、殺人事件があった物件は3~5割程度の値引きが必要となる場合があります。また都心の人気エリアであれば、値引きせずに売却できることも。

ただし、心理的瑕疵の程度は「買い手の受け止め方」や「事故の程度」などによって異なるため、同じ事故物件でも買い手によって値引きの希望額が変わる可能性があります。

同じ事故物件でも買い手によって値引きの希望額が変わる

事故物件の場合、買い手はとことん値下げを要求してくる可能性があります。様子をみながら徐々に安くしていくとよいでしょう。その際、値引きできる許容範囲を決めておくことも大切です。

事故物件をスムーズに売却する3つの方法!トラブル防止のため慎重に

事故物件の売却って、時間がかかりそう・・・。
そうですね。事故物件を嫌がる人もいますから、買い手を見つけるのには苦労するかもしれません。

事故物件をスムーズに売るには、次のような方法があります。

事故物件をスムーズに売る方法

詳しくみていきましょう。

事故物件売却は信頼できる業者選びが肝心!業者選びは囲い込みに注意

事故物件の売却は通常物件よりもトラブルになりやすく、売却期間が長くなりがちなため、不動産会社も嫌がることがあります。

事故物件でも丁寧に売却活動をしてくれる不動産会社に、依頼するのがオススメです。

不動産会社は、大きく次の4種類に分けられます。

不動産会社の種類
  • 賃貸住宅などの管理が得意な会社
  • マンションや土地などの売買が得意な会社
  • 店舗などのテナント誘致が得意な会社
  • 都市開発などが得意な会社
不動産の売買では、「マンションや土地などの売買を得意とする会社」を選びましょう。ホームページなどで確認できる不動産会社も、たくさんありますよ。

ただし不動産売却が得意な会社でも、担当者によっては事故物件を軽くあしらってしまうことがあります。

次のようなことについてしっかり考え、明確な売り出し方を提示してくれる担当者がオススメです。

不動産屋の担当者に相談したいこと
  • ターゲットはどのような人か
  • この物件の魅力はなにか
  • どのように売り出すのか
  • 売出価格と成約価格の目安
  • なかなか売れない場合の対策
ネットで「事故物件専門」の会社を見つけました!連絡してみようかな。
専門家は心強いですね。ただし「両手仲介」を行っている会社は、囲い込みの恐れがあります。「片手仲介」の会社を選びましょう。
両手仲介ってなんですか?
売主と買主双方の仲介をおこない、両手から仲介手数料をもらうことです。売却できるチャンスを売主の知らないところで逃されてしまい、売主にとって大変不利な状態になるリスクがあります。

不動産会社の両手仲介の仕組み

実際に数年前、有名な大手不動産屋が両手仲介をとるために、「囲い込み」という違反行為を繰り返していたことが問題になりました。

囲い込みとは

自社で買主を見つけて「両手仲介」にするため、他社で購入希望者が見つかっても対応しないことです。

不動産売却における不動産会社の囲い込みとは何か、わかりやすく図解

「事故物件専門」だからといって、絶対に安心というわけではありません。複数の不動産会社を比較して、信頼できる業者へ依頼しましょう。

不動産会社の比較には、「不動産の一括査定サイト」の利用が便利です。こちらの記事「おすすめな不動産一括査定サイトを厳選してご紹介!」も参考にしてみてくださいね。

事故物件の悪いイメージをできるだけ脱却する方法!ただし告知は必須

事故物件である事実はなくせませんが、心理的瑕疵の程度を和らげることはできるかもしれません。

心理的瑕疵の程度を和らげるには、次のような方法があります。

心理的瑕疵の程度を和らげる方法(事故物件)
  • 更地にする
  • リフォームをする
  • 時間をおいてみる

過去に「建物内部で起こった事件のため、その建物が取り壊され更地となった以上は瑕疵が軽減されている」という判例もありました。

ただし解体もリフォームも費用がかかります。また更地にすると住宅用地のときより土地の固定資産税や都市計画税が格段にあがるということは、忘れないようにしましょう。

空き家の解体費用に関しては、次の記事を参考にしてください。

更地の固定資産税に関しては、次の記事も確認してみてくださいね。

また時間をおくことで、周囲の事故の記憶が薄れる可能性もあります。その間もしできれば、駐車場などの土地活用を試してみるのもよいでしょう。

土地活用の方法に関しては、次の記事でも詳しく掲載しています。確認してみてくださいね。

ただし心理的瑕疵の程度を和らげても、事故物件であることの告知は必須です。後々大きなトラブルにならないよう、売主は慎重に売却を進めましょう。

事故物件を安値でも早く売りたいなら、不動産会社に買い取り依頼を

一般の買主が見つからない場合、不動産会社による買い取りも検討してみましょう。

不動産会社による事故物件に買い取りには、次のようなメリット・デメリットがあります。

不動産会社に事故物件を売るメリット・デメリット
メリット ・買い手を探す手間が省ける
・周囲に知られずに売却できる
・売買決定から完了までの期間が短い
デメリット ・仲介での売却よりさらに値引きが必要
安価で売るのは嫌だけど、所有し続けるのも嫌だし・・・。背に腹はかえられないわね・・・。
そうですね、「時間をおく」か「すぐに売れるよう動く」かは悩ましいところ。不動産会社など、専門家に相談しながら決めていけると安心ですよ。

事故物件を売るときに告知は必須!売却成功の秘訣は放置しないこと

事故物件は、心理的にムリという理由でなかなか売却できないかも知れません。

だからといって事故物件であることを隠して売却すると、後々大きなトラブルとなる可能性があります。そのため事故物件であることの告知は必須です。

事故物件は値下げが必要かもしれませんが、物件自体がよいものであれば売却可能。

大切なのは、事故物件だとしても買いたいと思えるような不動産にしておくことです。

不潔で見た目がお化け屋敷のような事故物件には、到底買主は現れません。建物や土地の定期的な掃除など、メンテナンスはすべきでしょう。

また空き家を放置して「特定空き家」に指定されると、土地の固定資産税がぐっとあがります。

当サイトでは、土地の整地空き家管理サービスについてなども解説しています。ぜひ参考にしてみてくださいね。

監修者メッセージ

インターネット上でいろいろな情報が手に入りやすくなった今、事故物件の情報などが独り歩きしていることもあります。

“どのくらい過去まで起こった事件・事故まで告知するのか”という明確なルールが存在しない以上、知る限りの情報を真摯に告知し、できる限り気持ちの良い取引を目指そうという心がけが大切なのです。

プロフィール
不動産売却カテゴリー記事監修(吉田成志)
吉田成志
宅地建物取引士、マンション管理士、消防設備士などの資格を保有。
4年ほど専任の宅建士として不動産業者に勤務し、現在はマンション管理士・消防設備士として独立。
宅建士としての知識や立場を活かし、不動産売買時の疑問点などの相談を受けている。