副業解禁はいつから?政府が禁止から推奨へ動いた理由と法律との関係
2018年は副業解禁元年とも呼ばれており、副業解禁のニュースについて多くの方が目にしているのではないでしょうか。また既に副業について興味が湧いている方もいることでしょう。
しかしなぜ副業解禁の年と呼ばれているか分かりくいですし、就業規則で副業禁止と定めている場合は、どのように変わるのか具体的な情報が乏しいです。
そこで今回は副業解禁と法律に焦点を当て、なぜ2018年が副業解禁元年と呼ばれるのかや副業と法律の関係、気を付けるべき点についてご紹介します。
副業を始める前に法律や就業規則についても正しく理解しておきましょう。
2018年が副業解禁元年とされる理由はモデル就業規則が変更されたから
2018年は副業解禁元年と呼ばれているのは、政府が副業推進へと大きく方針転換を行ったことが明確となったためです。
このような政府の動きは多くの企業が掲げている副業禁止の流れを変えるきっかけになり、会社員の働き方にも影響を与えます。
政府は「モデル就業規則の改定を行い副業を認める文章へと変更」「副業・兼業のガイドライン作成」の2点を行いました。
どのような内容か詳しく見ていきましょう。
モデル就業規則(就業規則のひな型)における副業規定が改訂
副業解禁元年と呼ばれる要因の1つ、モデル就業規則について概要を説明します。
政府が作成している就業規則のひな型です。正確には厚生労働省が作成し、同省のホームページ上で公開しています。
労働基準法第89条で、企業は就業規則を作成しなければいけないと定められています。
この就業規則を作成する際の見本として、政府がモデル就業規則の作成・公開を行ってています。
モデル就業規則の内容は、主に以下の通りとなっています。
- 就業規則の目的や規定など定義に関すること
- 賃金の計算方法や昇給など
- 退職手続きに関すること
- 労働者の労働時間や休暇・休日について
- 安全衛生や労災関係
- 職業訓練関係
モデル就業規則の改定は2018年1月31日に行われ、副業禁止の趣旨が副業OKへと切り替わりました。
一般の方からすると、政府の副業推進は突然の動きに感じます。また、副業推進に関する情報はよく見かけますが、具体的な理由については知らない方も多いのではないでしょうか。
政府の副業推進及び働き方改革の背景には、少子高齢化による人材不足や経済の低成長、社員への給与確保が難しい状況などへの対応策を打ち出す必要がありました。
副業・兼業のガイドラインは政府が作成した副業等に関する方針
副業解禁元年と呼ばれる理由は、他にも副業・兼業の促進に関するガイドラインにもあります。
副業・兼業の促進に関するガイドラインとは、政府が副業や兼業を促進するために設けたもので、企業や労働者に対して副業解禁のメリットや注意点をまとめています。
- 副業や兼業の現状
- 企業が副業を解禁するメリット
- 労働者が副業・兼業を始めるメリット
- 副業と社会保障に関する取り決めや考え方について説明
- 労働者の安全面の配慮や対応について
これから副業を始める方は、ガイドライン内の賃金や労災保険に関する取扱いも含めて確認しましょう。
最低限必要な知識ですし、トラブルを引き起こさないことに繋がります。
企業が副業を禁止したい2つの理由
なぜ企業側は副業を禁止するのか、次のような理由が考えられます。
- 他社への社内情報漏洩防止
- 本業へ支障が出ないようにするため
このように副業を解禁することによる企業へのリスクもあり、これまで多くの企業は副業を禁止、もしくは許可制にしていました。
一部企業も副業解禁を行い副業推進へ動き始めている
ここからは現在、副業解禁・推進している企業についてご紹介します。
- ソフトバンクグループ
- ヤフー株式会社
- 株式会社サイバーエージェント
- ロート製薬株式会社
- 丸紅株式会社
- 新生銀行
- 日産自動車株式会社
- レノボ・ジャパン
- リクルートグループ
- LINE株式会社
業種問わず、様々な大手企業が副業を認めています。
企業が副業を認めている背景には人材流出を防ぐため
なぜ副業を禁止していた企業が解禁したのでしょうか?その理由を考えてみましょう。
- 人材流出防止
- 自由な働き方を認める事でモチベーションに繋がる
- 副業で培ったスキルを社内で使ってもらう
- 賃金上昇が難しいため副業で収入不足を補ってもらう
企業にとっての大きなメリットは、従業員の確保や企業イメージのアップに繋がることです。まだ副業禁止の企業が多い中、先手を打って解禁することにより、副業もできる企業に就職したいと考えてもらえるようになります。
副業解禁と呼ばれているが会社ごとに就業規則の線引きは違う
副業解禁と呼ばれていますが、条件付きで副業OKと定めている企業も存在します。就業規則に関しても副業禁止を変更せず、何らかの処分規定を設けているケースもあるため、やはり副業を始める前には就業規則を確認したほうが良いでしょう。
例えば次のようなケースでは、就業規則違反ととられる可能性が高くなります。
- 副業規定に許可が必要と書いてあったが、許可なく副業を始めた
- 競合他社で自社のノウハウを提供しながら働いている
- 反社会的な行為が含まれる副業・公序良俗に違反する副業を始めた
- 副業で長時間労働を行い、体調不良等で本業に支障をきたしている
このように違法な副業や、会社が不利益を被る可能性が有る場合には、処分の対象となるケースもあるため、事前に会社へ確認を取ることが大切です。
もし就業規則違反ととられた場合、次のような処分が考えられます。
- 減給処分
- 停職処分
- 懲戒解雇
ただし今後法律が改正され、副業を全面的に認める条文が追加された場合は、就業規則も大きく変わる可能性があるでしょう。
自分の会社が出している就業規則に副業禁止と明記しているか確認する
自分が働いている会社が、副業をどのように取り扱っているか調べるためには、就業規則を確認します。また、一般的には就業規則内の、服務規定と懲戒に記載しています。
服務規定とは、会社に所属している労働者が守るべきルールのことで、懲戒とは社内でルールを違反・不祥事を起こした方に対する罰則を指します。
どちらも就業規則に記載されている項目ですので、まずは2つの項目から副業に関する取り決めがないか調べましょう。
副業禁止に関して条件等が記載されている場合、会社の許可を得れば副業OKといったケースがあります。
副業禁止という言葉以外に、条件が記載されていないかよく確認しましょう。
副業とボランティアの違いは一般的に労働と社会奉仕で分ける
副業を始める上で気になる点が、ボランティアとの線引きではないでしょうか。
副業は、会社や業務委託で労働を行い、労働の対価として収入を得ます。
対してボランティアの場合は、労働を行うのではなく社会貢献活動が前提にあります。分かりやすい所では、街の清掃活動などが代表的です。
例えば清掃活動を行った対価として金銭を受け取る行為は、副業活動とみなされる可能性があります。
ただし一般的に考えた場合、社会貢献活動であるボランティアで、交通費を受取ったくらいでは副業として考えられることは少ないでしょう。
もし就業規則に詳細が記載されていない場合は、会社に相談してみることが問題を生じさせずに済みます。
副業を始めるメリットとデメリットを考えよう
ここからは副業を始める労働者側にとってのメリット・デメリットについて、いくつかご紹介していきます。
副業のメリットは収入を増やしながらスキルも身に付けられる
副業を始める主なメリットは次の5つです。
- 本業以外に収入源を確保できる
- 収入が増え
- 本業以外のスキルが身に付く
- 自分がやってみたい仕事にチャレンジできる
- 副業のやりがいが本業に繋がる
副業解禁で副業を始めた場合にメリットとなるのは、やはり収入が増えることでしょう。また、本業以外のスキルを身に付けることができるのも、副業ならではのメリットです。
利益相反とならなければ本業でスキルを活かしてもよいでしょうし、会社側にとっても利益となります。
副業のデメリットは健康管理などが問題
副業を始める主なデメリットは次の4つです。
- 長時間労働になりかねない
- 心身ともに疲弊する可能性がある
- 副業を行うことで本業がおろそかになる可能性がある
- 副業の勤務先との機密保持管理等の手間がある
気を付けたいのは、副業解禁だからといって良い面だけではないことです。特に体調管理については気を付けましょう。
副業解禁は就業規則の話、法律の改正は未定
モデル就業規則に関する内容に副業を認める文章を入れたり、ガイドラインを制定したりと義務化されていない部分での改革に限定されています。
しかしそれだけでも政府の本気度が企業に伝わっている側面もあり、一部企業では就業規則に副業を認める趣旨を盛り込んでいます。
副業のメリットは収入を増やすことだけでなく、スキルアップもあります。新たに身に付けたスキルを本業で活かす場面があれば、企業としては研修に掛かるコストを抑えられます。
ただし長時間労働のリスクや、本業と副業の間でトラブルが生じるリスクも考慮する必要があるでしょう。
課題は残っていますが、国の方針が大きく変わった出来事でもあり、今後は法律改正まで行われるかが注目です。