在宅介護サービス
介護保険で福祉用具の購入やレンタルが可能!費用や条件をご紹介

介護保険で福祉用具の購入やレンタルが可能!費用や条件をご紹介

「介護保険サービスを利用する」というと、訪問介護やデイサービスがすぐ思い浮かびます。でも、介護保険のサービスって、それだけじゃありません。

介護保険には「福祉用具貸与」「特定福祉用具販売」というサービスもあって、安く車椅子や電動ベッドを借りたり、ポータブルトイレを購入できたりするんです。

ただし、誰でも、なんでも、いくらでも、借りたり買ったりできるわけではありません。購入金額に上限があったり、要介護度によってレンタルできる用具に制限があったり、利用には条件があります。

レンタル・購入できる福祉用具の種類、条件、費用について解説します。

福祉用具貸与とは?レンタルサービスの利用条件と費用

福祉用具貸与では、在宅での生活を助けてくれる福祉用具を借りられます。

レンタル可能な福祉用具の種類、利用条件、レンタル方法、費用をご紹介します。

福祉用具貸与の対象者は在宅で介護を受けている人

福祉用具貸与を利用できるのは、次にあてはまる人です。

  • 要支援1~2、要介護1~5
  • 在宅で生活している

入院中や介護施設入居中の人は、対象外です。

レンタルできる福祉用具の種類と対象要介護度

福祉用具貸与の対象となるのは車椅子、スロープ、手すりなどで、性能や形の条件を満たしたもの。例えば手すりやスロープは「取付工事が不要なもの」などと決まっています。

また、要介護度ごとに、借りられる福祉用具が決まっています。要支援1~2や要介護1だと、原則として車椅子や特殊寝台(介護用の電動ベッド)は借りられません。

ただ、症状によっては要介護1でも車椅子などがレンタル可能なので、その例外についてはあとで説明します。

福祉用具と対象要介護度
福祉用具 対象要介護度
手すり
スロープ
歩行器
歩行補助つえ
自動排泄処理装置(排便機能なし)
要支援1~2
要介護1~5
車椅子と付属品
特殊寝台と付属品
床ずれ防止用具
体位変換器
認知症老人徘徊感知機器
移動用リフト(つり具部分除く)
要介護2~5
自動排泄処理装置(排便機能あり) 要介護4~5

車椅子には「電動車椅子」も含まれ、電動カート・シニアカー(3輪または4輪のスクータータイプ)も対象です。

補聴器は、残念ながら福祉用具貸与の対象には含まれていません。

借り物は気を遣うのう。借りるんじゃなく、介護保険を使って安く買うことはできるかね?
上で紹介した用具は、介護保険を使っての購入はできません。購入するなら全額自己負担です。
長期間借りると、ずっとレンタル料がかかるじゃろ。全額自己負担でも、買うほうが安くないかい?
確かに、購入金額や使用年数によっては、買うほうが安いです。ただ「症状が変わって、買った用具が体に合わなくなる」可能性には注意しましょう。

福祉用具貸与の利用方法とは?まずはケアマネージャーに相談

福祉用具貸与は、ケアプラン(介護保険サービスの利用計画)に基づき、以下のような順序で利用します。

  1. ケアマネージャーに希望を伝える
  2. 福祉用具専門相談員から説明を受ける
  3. 納品・契約

契約は1ヶ月ごとに更新します。症状が変わって用具が合わなくなったら、ケアマネージャーや福祉用具専門相談員に相談し、交換やレンタル契約の終了をします。

福祉用具専門相談員とは…

福祉用具貸与・販売事業所に所属する、専門知識を持ったスタッフ。福祉用具についてのアドバイスや説明をしてくれます。

電動ベッドが月600円!レンタル費用の自己負担は1~3割

福祉用具貸与では、レンタル料の1~3割(収入によって違います。平成30年8月から自己負担が3割となる人もいます)が自己負担です。

用具の機種などにとって、かかる金額は違います。例を紹介しますね。

福祉用具のレンタル料金例
事業所 1ヶ月のレンタル料
関東地方A社 車椅子 5,000円~
特殊寝台 8,000円~
関東地方B社 車椅子 車椅子 3,000円~
特殊寝台 6,000円~

表では金額を10割額で記載していて、記載金額の1~3割が自己負担額です。自己負担1割だと、特殊寝台が月600円や800円ほどで借りられますね。

要介護1でも車椅子やベッドがレンタル可能!その条件とは

要介護1や要支援だと、原則、車椅子や特殊寝台は借りられません。

しかし「軽度者に対する福祉用具の例外給付」という制度があり、例外的なレンタルが認められる人がいます。

軽度者に対する福祉用具の例外給付とは?対象者の条件を紹介

例外で福祉用具貸与が利用可能なのは、こんな人です。

例外給付の対象
福祉用具 対象となる状態
車椅子と付属品 日常的に歩行困難、または日常生活での移動支援が特に必要
特殊寝台と付属品 日常的に起き上がり困難、または日常的に寝返り困難
床ずれ防止用具 日常的に寝返り困難
体位変換器 排便が全介助で、移乗が全介助
認知症老人徘徊感知機器 意思伝達、介護者への反応、記憶・理解のどれかに支障があり、移動に全介助不要(自分で動けてしまう)
移動用リフト(つり具部分除く) 日常的に立ち上がり困難、または移乗に一部介助・全介助が必要、または段差の解消が必要

症状悪化や体調の変化が急激な場合もレンタル可能

日によって寝返りできたりできなかったりだと、対象から外れちゃう?
いえ、「日によって(上の表の状態に)あてはまる」「今後福祉用具が必要になるはず」「症状が重くならないよう福祉用具が必要」という人で、以下の条件を満たした場合も、レンタルが可能です。
  • 医師が福祉用具の必要性を認める
  • ケアプランの検討会議などで福祉用具が必要と判断される
  • 以上2つを自治体が確認している

利用が認められた具体例も紹介しますね。

  • パーキンソン病の薬によるON・OFF現象がある
  • 関節リウマチで、朝にこわばりが強い
  • がん末期の急速な状態悪化
  • ぜんそく発作による呼吸不全の回避のため

介護保険を使って購入できる特定福祉用具の種類と条件

トイレやお風呂に関する福祉用具(特定福祉用具)は、レンタルではなく購入となります。申請すれば、購入費用の7~9割が支給される仕組みです。

利用方法などをご紹介します。

トイレやお風呂に関する福祉用具はレンタルではなく購入

特定福祉用具は、すべて排せつや入浴に関するものです。

  • 腰掛便座(設置費用は対象外)
  • 自動排泄処理装置の交換可能部品
  • 入浴補助器具
  • 簡易浴槽
  • 移動用リフトのつり具部分

自動排泄処理装置本体はレンタルですが、交換可能部分は購入します。簡易浴槽は、注水や排水のための工事が不要なものが対象です。

実家のトイレは和式です。腰掛便座の購入か、いっそ洋式に交換するか、費用の面で悩んでいます。
和式から洋式への交換だと、住宅改修費用の支給制度が使えますよ。詳しくは「介護保険で住宅改修!対象のリフォーム内容や手続き方法を解説」で解説します。

福祉用具は指定された事業者で購入!購入費用支給の条件

特定福祉用具の購入費用の支給を受ける条件を紹介します。

  • 購入日時点で要介護・要支援認定を受けている
  • 都道府県指定の福祉用具販売事業所で購入(ネット販売は対象外)
  • 在宅で生活中

同じ特定福祉用具を複数購入した場合、原則として最初の1つだけが支給対象になります。

特定福祉用具購入の手順は2通り!事前申請と事後申請

特定福祉用具を購入し、支給を受ける手順には、2通りあります。

事前申請
受領委任払い
役所に事前申請してから購入し、店頭で価格の1~3割だけを払う
事後申請
償還払い
購入時は全額自分で支払い、役所に事後申請して購入費用の7~9割の払い戻しを受ける

自治体によっては、受領委任払いできるのは低所得者だけだったり、利用できる事業者が決まっていたりします。

事前申請・事後申請のどちらで購入する場合も、購入前にケアマネージャーや地域包括支援センターに相談してください。

購入したい福祉用具が介護保険の対象か、業者が指定事業者かを確認します。

特定福祉用具購入費用の支給は年間10万円が上限

特定福祉用具購入の支給金額には上限があります。

4月1日から翌年3月31日までの間で、購入費用10万円までです。

10万円を超えた分は自己負担になります。

自己負担額の例
年間購入額(税込) 自己負担額(自己負担1割の場合)
8万円 8万円×10%=8,000円
12万円 12万円‐(10万円×90%)=3万円

個々の用具の価格は機種によって違い、ポータブルトイレだと、2万円くらいから10万円を超えるものまであります。

用具の購入費用は、予想より少なく済みそうです!でも排せつでいうと、おむつ代が月2万円くらいかかることもあって、かなり負担です…
自治体では、おむつやおむつ代の一部を支給していますよ。寝たきりでおむつ使用が必要なら、医師が発行する「おむつ使用証明書」をもらって、医療費控除の対象にもできます。

福祉用具を安くレンタル・購入して生活を快適に

介護保険を使った福祉用具のレンタルと購入についてご紹介しました。1~3割の自己負担で、日常生活やリハビリを助けてくれる福祉用具をレンタルしたり購入したりできます。

業者のカタログなどを見れば「これがあれば楽になるはず!」「介護保険を使ったら、こんなに安く借りられるんだ!」という福祉用具がきっとあるはず。

室内での移動、寝返り、起き上がり、トイレや入浴に不便を感じているなら、福祉用具のレンタルや購入を検討してみてください。