介護老人保健施設の上手な使い方~在宅での生活を目指して~
介護施設というと特別養護老人ホームやデイサービスなどを思い起こします。そして利用者のニーズの多様化に伴い、さまざまな施設が作られています。
もちろん利用する目的にもよりますが、一体どの施設を選べばよいのか迷うところです。今回お伝えする介護老人保健施設(以下、老健)もその選択肢の一つといえます。
特別養護老人ホーム(以下、特養)など一般的な施設では利用者の看取りまで対応していきます。しかし老健では在宅での生活ができるように持っていくことを目的としています。老健の特性はここにあります。
また一般的な施設ではそこを住居として扱うため「入居」といいます。一方、老健では一時的な滞在であることから「入所」という言い方をします。
では老健を利用するためにはどうしたらよいのでしょうか。特別養護老人ホームとの違いはどこにあるのでしょうか。費用や入所するための条件などについてみていきましょう。
これだけは知っておこう!老健の役割と特徴
老健とは介護を必要とするものが、自宅で自立した生活ができるよう支援していく施設です。
一般的な介護施設より医療色がより濃くなるわけですが、全く介護サービスが受けられないわけではありません。ここでは老健の役割や特徴についてみていきましょう。
老健のしくみと医師の役割
老健では医師の指導管理のもとに看護・介護サービスを提供しています。また作業・理学療法士によるリハビリテーションなども行っています。利用者の在宅復帰に向けてさまざまな支援をしています。
利用者や家族にとって質のよい介護サービスを提供することを主な目的としています。一般向けに介護予防教室を開くなど、地域に密着した施設としての役割も担っています。
施設により看護師が24時間常駐するところもあり、利用者は安心してサービスを受けられる体制が整っています。
医師の役割は利用者の健康管理にあたることです。利用者の定期健康診断や必要に応じてインフルエンザなどに対する予防接種を行います。
またサービス担当者会議では専門的立場から意見を述べる、あるいは外部の医療機関との調整を図るなど多岐に渡ります。利用者だけでなく職員に対しても医学的業務を行っていきます。
利用者のよりよい支援に向けて医療職や介護職をはじめ、多職間で話し合いをすること
どんな人が利用できるの?費用や入所条件などを解説
特養やグループホームと同じように、老健を利用するためには一定の条件を満たす必要があります。
老健はリハビリなど医療的ケアを必要とする要介護者が利用する施設となります。といっても病院とはまた違い、在宅での生活に向けたリハビリを主に行います。
したがって老健では入所期間も限定されています。基本的には3カ月から6カ月となっていますが、病状や退院後のご自宅の状況によっては1年と長引く場合があるようです。また65歳以上(要介護1以上の認定を受けている)ものに限定されているのも特徴です。
ただし例外的に特定疾病などにより介護認定を受けている40歳以上64歳以下のものも利用が認められています。
入所の条件を満たしていても受け入れができないこともあります。看護師が常駐していないため夜間に点滴など医療的行為が実施できない場合などです。
老健を利用すると費用はどれくらいかかるのでしょうか。これについては特集を組んでいますのでそちらをご覧ください。ここでは簡単にご紹介しておきます。
初期費用 | 月にかかる費用 |
---|---|
不 要 | 10~20万円ほど |
※費用について詳しく知りたい方はコチラへ。
特養とどこが違うの?
あまり介護に馴染みのない人にとっては、どの施設も同じように見えます。そこで介護の代表格である特養との違いについてみていきます。
老健では
入所できる期間は約3ヵ月~6ヵ月です。最終的に在宅での生活を目的としているために日数が決められています。
自宅での受け入れが難しい場合や利用者の状態により長引くこともあります。
もちろん老健でも食事、入浴といった身体介護や生活支援が受けられます。ただリハビリが中心となるためレクリエーション、イベントなどは充実しているとはいえません。
医療的要素が強いため医師、看護師、介護士、作業・理学療法士など専門職の体制が整っています。看護師が24時間常駐している施設では、たんの吸引など医療行為も行われます。
特養の場合
老健では一定の期間を設けていますが特養は終身利用が基本となるため期限はありません。介護度の高い方にも対応しており、体調の変化がみられたときは病院に転院することもできます。
ターミナルケア(看取り)に関しては面談時に話し合います。職員の配置も医師や各療法士は必要時に応じてとなります。また看護師は日中のみの配置です。
※特養について詳しく知りたい方はコチラ
老健で受けられるサービス内容を紹介!
老健では特養と同じように食事・入浴・排せつといった身体介護をはじめ在宅復帰に向けた支援が行われています。
身体介護と医療ケア
身体介護と医療ケアについて解説していきます。
三大介護と医療ケア
老健でも食事・入浴などの身体介護と医師や看護師による医療ケアを受けることができます。また在宅復帰に向け各種器具を用いて、作業・理学療法士の指導管理のもとリハビリが行われます。
医療ケアについては特養より手厚いサービスを受けられます。インスリンや経管栄養といった医療行為に対応しています。ただし夜間、看護師がいない、あるいは設備がないために人工透析の人については受け入れができない場合もあります。
入浴や生活支援、食事の提供については特養と同じです。衣類の洗濯はご家族か外部の業者に委託するかのどちらかとなります。
老健でのリハビリテーション
週に2回ほどのリハビリが行われています。1回の所要時間は約20~30分となっています。ベッドからの起き上がりや歩行訓練といった基本的なことを、利用者の状況に合わせて行っていきます。
また病院で実施されるリハビリと違い、状態を維持することを目的としていることから回数もそれほど多くありません。
利用者一人につき週2回以上が老健での規定となっており、そのうち1回は集団で行うリハビリでもよいとされます。
入所後3ヵ月以内であればリハビリの回数を増やすことも可能です。
それを過ぎた場合でも回数を増やすことはできますが、加算が取れないといった事情から実施されないこともあるようです。
ターミナルケアについて
老健は在宅での生活ができるように持っていくことを前提としています。ターミナルケアについては別途話し合う必要があります。また特養などより医療体制が整っていることから実際には行っている施設もあるようです。
部屋など施設の設えはどうなっているの?
生活の基盤となる部屋はどのようになっているのでしょうか。老健にはどういった設備が整っているのか詳しく解説していきます。
総合病院では個室と大部屋(介護施設では多床室という)が一般的です。最近の介護施設でも個人の尊厳やプライバシーを考慮したユニット型のものが増えています。
老健でも施設によりますが従来型のもの、ユニット型のもとあります。基本的には4種類になるといわれています。
部屋のタイプ
- 従来型個室
- 多床室
- ユニット型個室
- ユニット型準個室
こちらはベッドが一つ置かれています。一人一部屋が基本です。
病院などと同じように、一部屋の部屋を複数人で使用します。料金も安くおさえられます。
このタイプの部屋は特養などにみられるものと同じです。1ユニットを9~10名とします。トイレやキッチン、リビングなどは共有となります。ユニットごとに職員が違うのも特徴です。
ユニット型と違いはほとんどありませんが、2名で一部屋を利用するなど大部屋を仕切りで区切って使用します。こちらもユニット型と比べて料金を安くおさえられます。
終身利用の特養に比べ、老健では一時的な滞在となることから多床室が多いようです。共有スペースにはリビング(食堂も含む)、トイレ、浴室、調理室、機能訓練室、診察室、レクリエーションルーム、洗濯室、サニタリーが設置されています。
リハビリを行う機能訓練室や診察室は老健らしいといえます。これら共有スペースにあるものは老健では設置が義務付けられているのも大きな特徴です。
老健はこんな人におススメです!
老健は在宅での生活ができるよう支援していくことを目的としています。
- 介護度3以上だが、特養入所に難色を示している
- 年金など収入が少ないため特養に入りたいが、要介護度が3未満である
- 病院でのリハビリ回復期は終わっているが、自宅での介護が難しい
目標を定めることでリハビリに専念できるのも老健です。自宅での生活を目標としている人にとっては使い勝手のよい施設となるでしょう。
ここに着目!失敗しない施設を選び方
老健は一般的な介護施設のように、一人の利用者に対し複数の職員が対応しています。
どの施設を選べばよいのかは、職員同士のチームワークについて着目してみてください。
これによってその施設の善し悪しが見えてきます。リハビリには一長一短があり、思うようにならないこともしばしばです。待遇や利用料もさることながら、職員がどのように対応しているでしょうか。こういったところもぜひチェックしてみましょう。
老健の特徴をうまく利用しよう!
老健では目標を掲げることで希望を持ってリハビリに専念できるという利点もあります。医療が充実しており、在宅復帰に向けた支援サービスが受けられることもポイントです。
さらに一定の条件を満たすことで収入に応じて自己負担額を軽減できるという制度も利用することができます。この制度については別の記事で紹介しています。ぜひそちらもご覧ください。