お墓・葬送

寺院墓地とは?霊園とは違う特徴とトラブルを防ぐための注意点

新たにお墓を建てる場合には、お墓を建てる土地が必要です。法律上、お墓は墓地や霊園に建てなければいけません。

霊園は公園のように広い土地に区画整理された墓地のイメージがありますが、大きな違いは運営主体です。

「墓地」は宗教法人が運営しており、「霊園」は地方公共団体や公益法人が運営しています。

そこでこの記事では寺院墓地に注目し、寺院墓地の特徴やメリットやデメリット、選ぶときのポイントなどについてご紹介します。

寺院墓地の管理者はお寺!利用者は檀家としてお寺とのつながりを持つ

寺院墓地の大きな特徴は、原則として各寺院の檀家や門徒、信徒などのための墓地であるという点です。寺院墓地の規模は様々ですが、日本の墓地や霊園の中では最も多く点在しています。

檀家とは

特定の寺院に所属している家のことをいいます。葬儀や供養などを専属で行ってもらう代わりに、お寺の経済的な支援を行う家です。

寺院墓地の概要
経営者
管理者
宗教法人
利用条件 ・お寺の宗派に属していること
・お寺の檀家になること
寺院墓地によって宗派が決まっているんですか?もし家に近い寺院墓地にお墓を建てたければ、オイラもそのお寺の宗派に合わなくてはならないのでしょうか?
原則として寺院墓地によって宗派は決まっていますが、家や宗派の重要性が薄れてきたことなどにより在来仏教であれば宗派を問わない寺院墓地が増えています。

ただし、在来仏教以外の信仰者の場合は寺院の宗派に改宗を求められることがありますので、事前に確認しておくと安心です。

寺院墓地で必要になる費用とおおまかな相場
永代使用料 全国平均77万円
(立地条件や区画の広さ、寺院設備の状態などによって異なる)
管理料
または護持会費
年間5千円~2万円程度
墓石代 70万円~200万円程度(墓石区画:4㎡程度の目安)
入檀料 10万円~30万円程度
お布施 ・お通夜、葬儀:15万円~50万円
・法要:3万円~10万円
・月命日:3千円~1万円
※:費用はお寺によって異なります
合計するとけっこう高額な費用になるんですね・・・。主人と相談して、慎重に決めないと。
寺院墓地を利用するメリットとデメリットを踏まえて家族・親族で相談し合うと良いですね。

寺院墓地への問い合わせ方法

寺院墓地寺院に直接問い合わせたり、寺院のホームページや墓石を取り扱う石材店などから申し込んだりできます。

中には資料請求ができる寺院もありますが、寺院の雰囲気や住職の人柄・家族との相性なども確認しておくと良いでしょう。

寺院墓地にお墓を建てる4つのメリット

はじめに寺院墓地にお墓を建てるメリットを見ていきましょう。

1.寺院にお墓の管理や葬祭、供養などを任せられる

寺院が墓地の運営や管理を行っているため、寺院にお墓の管理や葬祭、供養を任せることができます。さらに法要などについて疑問や困ったことがあれば相談にのってもらうことができるので安心です。

2.子孫の代まで手厚い供養を受けることができる

住職と会話する機会が増えるため、親密な関係となりやすく、子孫の代にも手厚い供養を受けることができます。また、万一、墓地の継承者が不在となった場合でも、永代供養料を支払えば、永代供養を受けることができるお寺がほとんどです。

3.立地条件が良い場所にあることが多い

寺院墓地は地域に密着しており、身近な場所にあることが多いです。また首都圏などの寺院墓地は、交通の便の良い立地にあることが多いため、高齢になってもお墓参りなどに行きやすくなります。

4.葬儀や法要などの場合、寺院を利用することができる。

葬儀や法要などを行う場合は、一般の葬儀会場に比べて格式の高い寺院を利用することができます。

寺院墓地にお墓を建てる5つのデメリット

一方、寺院墓地にはメリットだけでなくデメリットも存在します。

1.宗派や宗旨が決まっている

寺院墓地は基本的に宗派や宗旨が決まっているため、一般的には改宗を求められることがあり、宗派や宗旨を不問としている寺院であっても法要などを行う際は寺院の決まった宗派や宗旨で行われることになります。

そのためもし寺院墓地の宗派と自分が希望する供養の宗派が異なる場合は、お墓を建てることは難しいのです。

2.墓石を自由に選ぶことができない

寺院によっては墓石の大きさや形、デザインから、石材店まで指定されるケースがあります。そのため、自由に墓石を選ぶこともできないケースも。希望する石材や費用に収まりきらない場合も想定しておきましょう。

3.費用が高い傾向にある

寺院によって異なりますが、寺院墓地の永代使用料や管理料などの費用は一般の霊園に比べると高い傾向にあります。加えて、檀家であるなら入檀料やお布施、寄付など寺院を維持するための費用が必要となることも。

自分たちの代だけではなく、お墓を継ぐ子ども世代の経済的な負担も考えておきましょう。

4.住職によって運営や管理に差が生じる

寺院墓地の運営や管理は寺院、つまり住職です。寺院の運営方針や住職によって運営(サービス)に差が生じます。相談にのってもらうことができる点はメリットの一つですが、住職と合わなければデメリットになってしまう可能性があります。

仮に相性の良い住職に出会えたとしても、住職が高齢であったり、寺院の後継者が決まっていないケースも少なくありません。

近年では寺院から離檀し、墓じまいを行うケースも多いため、先行きが不透明な寺院には注意が必要です。

5.離檀料を請求されることがある

寺院墓地は檀家によって支えられていますので、寺院にとって離檀は死活問題です。

檀家をやめると申し出たら「離檀料」が想定より高額だった、住職がお墓の移動に必要な「改葬許可証」に押印してくれないなどのトラブルが発生することも。

檀家になる前に、墓地の管理状況を見たり墓石や離檀などの不安なことは確認しておいたりすると良いでしょう。

トラブルを避けるには?寺院墓地を選ぶときに注意すべき5つの点

寺院墓地の契約を行う前に、あらかじめ次のポイントを確認しておけば大方のトラブルは防止することができます。

  1. お墓を維持できるか、護持会費やお布施の相場の確認をする
  2. 寺院の宗派と家の宗派を確認する
  3. 家族のみだけでなく、契約前に親族にも話をしておく
  4. お墓の跡継ぎ(祭祀承継者)のことも考え、寺院墓地の立地に気をつける
  5. 寺院墓地の使用規定や契約内容を確認しておく

しかしそれでもトラブルが起きてしまった場合は、石材店が設けているトラブル相談窓口や弁護士に相談するとよいでしょう。

寺院墓地とともに公営霊園や民間霊園についても検討してみよう

最初は近くの寺院墓地で検討していたんですが、費用面で敷居が高いです。
それでは寺院墓地以外の場所を検討してみてはいかがですか?公営霊園や民営霊園は宗派や宗旨が自由で、檀家になる必要がないため、比較的利用しやすいでしょう。

公営霊園は地方自治体などの行政が運営しているため管理が行き届いている所が多く、永代使用料や管理料などの費用も寺院墓地より割安であることが多いです。

そして民間霊園は財団法人などが経営主体となって委託を受けた民間が運営しているため、法要施設やサービスなどが充実しています。

義両親は絶対寺院墓地が良いと言っていたけど・・・。寺院墓地を選んだほうが良い人はどんな人なのかしら?
手厚い供養をお願いした人は寺院墓地に向いています。
寺院墓地の検討がおすすめの人
  • 伝統的な仏教の宗派に基づいた供養を受けたい
  • 日本の風習や文化を大切にしたい
  • 葬儀や法要などで頼ることのできる住職がほしい
  • お墓の管理や葬祭、供養などをゆかりのあるお寺に任せたい
  • 子孫の代まで手厚い供養を続けていきたい

しかしお墓はご自身のみならず後世まで影響することのため、家族や親戚とよく相談して決めるのがおすすめです。

手厚く故人の供養を行いたい人に寺院墓地は最適

寺院墓地を選ぶ大きなメリットは、「後継者に続く手厚い供養」であり、大きなデメリットは、「費用が割高である」ことです。

“故人への供養はプライスレス“と考えている方は寺院墓地を選ばれると良いでしょう。

寺院墓地を選ぶ際のポイントは、寺院の「宗派・宗旨」「入檀の有無」「運営方針」「立地条件」「住職」です。

お墓をどこに建てるかは継承者だけのものではありません。子孫の代まで影響のある選択であるといえます。「故人への供養をどのようにしていきたいのか」という視点で、選択肢の一つとして寺院墓地を検討してみてはいかがでしょうか?