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住宅ローン契約時に地震保険は必要?メリット・デメリットを徹底解説

住宅ローン契約時に地震保険は必要?メリット・デメリットを徹底解説

住宅ローンを契約する際に、ほとんどの場合で火災保険への加入を求められることになります。地震による火災や、地震による津波による損害に備えるのであれば、地震保険への加入が必要となります。

ただ、地震保険は本当に必要なの?保険料って高いんじゃないの?と疑問に思う方も多いはず。

今回は、地震保険のメリット・デメリット、そして地震保険は本当に必要かどうかについて解説していきましょう。

地震保険ってどういう保険?保険金の支払い条件をチェック

まずは、地震保険について基本的な情報を押さえていきましょう。

地震保険は、火災保険とセットで加入しなければいけません。そして、その補償金額は火災保険の保険金の30~50%と上限が決められています。

つまり、火災保険の金額が1,000万円であれば最高でも500万円の補償しか受けられないということです。

なるほど。つまり、地震保険の補償額を高くしたければ火災保険も高額にしなきゃダメってことか。
ただ、地震保険は建物は5,000万円、家財で1,000万円と補償額の上限も決められています。

火災保険が高額でも、保険金額の上限があるということは覚えておきましょう。

ちなみに、地震保険は必ずしも火災保険契約のタイミングで加入しなければならないというわけではなく、あとから地震保険を追加することができるタイプもあります。

では、地震保険はどのような補償内容になっているのでしょうか。

地震保険の保障範囲は、地震によって引き起こされる損害・被害となります。

具体的には、次の内容が挙げられます。

  • 地震による火災
  • 地震による噴火
  • 地震による津波
  • 地震による土砂崩れ

これらの損害が生じた場合、地震保険では建物の被害だけでなく家財についても補償の対象となります。

同じ火災でも、地震が原因によって起こった火災については火災保険の対象外となりますので、地震による火災に備えるためには地震保険への加入が必要なのです。

火災保険について気になる方は、こちらの記事で特集していますのでチェックしてみてくださいね。

地震保険の保険金が支払われる状況はコチラ

実際地震によって損害を受けた場合、どのような損害でも保険金が満額受け取れるというわけではありません。

地震保険によって受け取ることができる保険料は、損害の程度によって異なるのです。損害と支払われる保険料の関係について見ていきましょう。

損害程度 保険金支払い条件 支払い額
全損 建物:主要構造部の損害額が
   建物の時価の50%以上
   消失または流出した床面積が
   建物の延べ床面積の70%以上
家財:損害額が家財全体の時価の
   80%以上
時価を限度として
保険金額の全額を支払う
大半損 建物:主要構造部の損害額が
   建物の時価の40%以上50%未満
   消失または流出した床面積が
   建物の延べ床面積の50%以上70%未満
家財:損害額が家財全体の時価の
   60%以上80%未満
時価の60%を限度として
保険金額の60%を支払う
小半損 建物:主要構造部の損害額が
   建物の時価の20%以上40%未満
   消失または流出した床面積が
   建物の延べ床面積の20%以上50%未満
家財:損害額が家財全体の時価の
   30%以上60%未満
時価の30%を限度として
保険金額の30%を支払う
一部損 建物:主要構造部の損害額が
   建物の時価の3%以上20%未満
   建物が床上浸水または
   地盤面より45㎝を超える浸水を受け
   損害が生じた場合で
   全損・大半損・小半損に至らない場合
家財:損害額が家財全体の時価の
   10%以上30%未満
時価の5%を限度として
保険金額の5%を支払う

地震保険は、建物と家財それぞれで保険に加入することができ、建物のみの加入であれば家財は補償されません。家財の補償も希望する場合は、家財補償も付与する必要があるので注意が必要です。

家財については、テレビや食器が壊れた、ということで対応してくれるわけではなく、その損害額が家財全体の何%だったかによって保険金が支払われるのです。

現金や有価証券、あとは1つ(組)30万円を超える貴金属や骨董品、自動車や船舶については補償の対象外となります。もし非常に高額なものを所有している場合には、別途「動産保険」を検討しましょう。

地震保険の損害区分が変更!?

実は、平成29年1月以前の契約では、損害の程度は全損・半損・一部損の3段階でした。

しかし、半損と一部損の差が大きいことで、損害程度が3区分から4区分へと変更されたのです。

変更前の3区分についてご紹介します。

区分 内容
全損 ・主要構造部の損害額が建物の時間の50%以上
・家財の損害額が時価の80%以上
半損 ・主要構造部の損害額が時価の20%以上50%未満
・家財の損害額が時価の30%以上80%未満
一部損 ・主要構造部の損害額が時価の3%以上20%未満
・家財の損害額が時価の10%以上30%未満

ただし、この変更が適用されるのは平成29年1月以降の契約となりますから、それ以前の契約では3区分のままであるということに注意が必要です。

地震保険のメリット・デメリットとは

地震保険に加入するメリットとデメリットについて見てみましょう。

メリット デメリット
・火災保険で不足する部分をカバーできる
・住宅ローンが残っている場合の足しになる
・国の制度なので地域で保険料が一律で
 確実に保険金が受け取れる
・地震保険料控除を受けることができる
・保険料が割高で地域によって差がある
・火災保険とのセットでのみ加入可能
・受け取れる金額が少ない

先ほど紹介した通り、地震保険は火災保険で補償されない部分についても補償してくれるメリットがあります。

また、地震によって損害を受けても住宅ローンの返済が免除されるわけではありませんので、保険金が支払われることでローン返済の足しすることは可能です。

地震保険は火災保険と同じように、保険会社によって保険料が変わるわけではないのですか?
火災保険とセットで加入する地震保険ですが、実はその保険料と補償内容は国が定めた内容となっています。

ですから、保険会社が違うからといって金額や補償内容が違うことは無いのです。

火災保険は保険料控除の対象外ですが、地震保険は控除の対象となります。5万円を上限として保険料の全額が課税所得金額から控除されるだけでなく、住民税も2万5千円を上限として保険料の2分の1が控除されるようになっています。

デメリットとしては、地域によって保険料が決められているので、その差が大きいという点が挙げられます。保険料については、後ほど詳しくご紹介します。

また、地震保険単独で加入することはできないので、火災保険に加入する必要があります。

更に、地震保険の保険金上限額は火災保険の30~50%です。

つまり、建物が地震によって全損しても、建物を再建できるだけの保険金を受け取ることができないというのが最大のデメリットだと言えるでしょう。

また、支払われる保険金額は時価になりますので、建物の価値が下がっていれば受け取ることができる保険金額も少なくなる可能性はあります。

ちなみに火災保険の算定は「新価(今もし同じ建物を建てるとしたら必要となる金額)」で考えられます。

値段が地域で違う?地震保険料金の相場をご紹介

地震保険の保険料は地域などによって一律で設定されているとご紹介しましたが、具体的にいくらぐらいが相場になっているのでしょうか。

気になる地震保険の保険料についてご紹介していきます。

まず、地震保険の保険料を決める要素として以下の点があります。

  • 地域(都道府県ごと)
  • 建物の構造(木造か鉄筋コンクリート造か)

地震発生リスクが高い地域ほど保険料が高くなっていますし、地震発生時の倒壊・破損被害が大きいと予想される木造の方が鉄筋コンクリート造よりも高くなっているのです。

保険金額1,000万円あたりの保険料目安は、次の通りです。

非耐火 耐火
11,600円~38,900円 7,100円~25,000

同じ非耐火、耐火でも、地域によって3倍ほどの保険料差が出てくることが分かります。現在は首都直下型地震が予想される東京都・千葉県・神奈川県が最も高額で、秋田県・石川県・福岡県などは最も安価となっています。

地域ごとの保険料については、財務省のホームページで紹介されていますのでチェックしておくと良いでしょう。

地震保険の保険料はかなり高額になるのですね…。

これだけの金額を支払うとなれば、家計の負担も大きくなってしまうのでどうしても躊躇してしまいます。

確かに地震保険は地域によって割高にはなってしまいますが、築年数や耐震等級による割引制度もあります。

次でご紹介していきますね。

地震保険料金の割引制度をチェック

地震保険の保険料は、割引制度の適用を付けることが可能です。地震保険料金の割引には、次の4つがあります。

割引名 内容
建築年割引 対象建物が昭和56年6月1日以降に
新築された建物
割引率:10%
耐震等級割引 住宅の品質確保の促進等に関する法律に基づいた
耐震等級を有している
または国土交通省の定める耐震等級を有している
・割引率
耐震等級1:10%
耐震等級2:30%
耐震等級3:50%
免振建築物割引 住宅の品質確保の促進等に関する法律に基づき
免振建築物であると認められた場合
割引率:50%
耐震診断割引 地方公共団体等による耐震診断または
耐震改修の耐震基準を満たす場合
割引率:10%

これらの割引のうち、最も大きい割引率の項目が適用されることになります。割引率が50%となれば、保険料も半額になるのでぜひチェックしておきたいところです。

地震保険に加入すべきかを判断するポイント

地震保険への加入は、必要なのでしょうか。ご紹介してきた通り、地震保険による補償は建物や家財の損害によって受け取れる金額が異なり、その金額の上限も火災保険の30~50%と制限されています。

地震保険が支払われる金額についても、損害の程度に対して5%からと決して多くはないケースもありますから、地震保険に加入する意味について疑問視する人もいるかもしれません。

ただ、住宅ローンが多く残っている場合、そして貯蓄が少ない場合に関しては、地震による損害を受けた後の生活を確保するためにも地震保険は考えておきたい補償でもあります。

地震被害にあって建物が住めないような状況に陥った場合、被災者生活再建支援法による支援を受けることはできます。

建物全壊で新たに建設・購入する場合には、住宅の被害の程度に応じて基礎支援金100万円、住宅の再建方法に応じて加算支援金200万円の合計300万円の支援金を受け取ることができるというものです。

大規模半壊で賃貸暮らしになる場合は、100万円の支援金となります。地震保険に加入していればこの金額にプラスで受け取ることができるので、被災後の生活資金やローン返済のための大きな助けになることは間違いありません。

十分な貯蓄がある、すでに住宅ローンを完済しているということであれば別ですが、そうでなければ地震保険に加入する意味はあると言えるでしょう。

マンションで地震保険に加入する意味

分譲マンションの火災保険では、共用部については管理組合がマンション用の火災保険に加入し、専有部は各区分所有者が加入します。

共用部が地震で被害を受けると修繕で多大な金額がかかることが多いため、もしそこで地震保険に加入していなければ、次のような点でかなりの時間や手間がとられてしまいます。

  • その多額な修繕費を区分所有者たちでどれくらい負担するのかという話し合い
  • 修繕積立金を使うにあたっての必要な手続きなど
東日本大震災では、管理組合で地震保険に入っていたマンションは修繕費を取り崩す必要がなく、支払われた保険料で一定の修繕ができたため、住人たちの合意形成がスムーズに行われていました

火災保険にはオプションで様々な損害への備えも付与できますが、地震に関する損害だけは地震保険でしか対応できません。

火災保険に付与できる水災補償についてこちらの記事で紹介していますので、興味がある方はチェックしてみてください。

地震保険は万が一の備えとして要検討!

地震保険は火災保険とセットでしか加入できず、火災保険金額の30~50%しか設定できないというデメリットはあります。ただ、地震による火災は火災保険ではカバーできませんから、万が一の備えとして検討する価値はあります。

特に、住宅ローンが残っている人、貯蓄に余裕がない人は、万が一の備えとして建物と家財の補償を考えておきたいですね。

地震保険の保険料は割引制度や保険料控除の対象になるなど、お得になる要素もあります。まずは、自分が契約した際の保険料をチェックしてみると良いでしょう。

※記載の情報は、2019年11月現在のものです。

監修者メッセージ

近年、大規模な自然災害の発生が目立ちます。どんな被害を受けたら、どのオプションでいくらまで補償されるのかということは、よく確認しておいた方がよいでしょう。

特に地震保険は、オプションでありながらもリスクマネジメントにとても有効であるため、未加入の場合はこの機に検討してみることをおすすめします。

プロフィール
不動産売却カテゴリー記事監修(吉田成志)
吉田成志
宅地建物取引士、マンション管理士、消防設備士などの資格を保有。
4年ほど専任の宅建士として不動産業者に勤務し、現在はマンション管理士・消防設備士として独立。
宅建士としての知識や立場を活かし、不動産売買時の疑問点などの相談を受けている。