介護保険の申請から結果通知までを解説!おさえるべき注意点も紹介
介護保険のサービスを使いたいときには、まず自治体に要介護認定を申請します。
申請書類を提出したあと、認定調査、判定(一次判定、二次判定)、結果通知の順で進み、申請開始から結果通知まで1ヶ月ほどかかります。
この記事では、介護保険の申請方法や認定調査について時系列で解説します。
意見書作成を依頼できる主治医がいない場合はどうなるか、訪問調査のときの注意点、認定結果に納得できない場合にできる対処法など、申請の前に知っておくべき情報がたくさんあるので、ぜひ参考にしてください。
申請代行も可能!介護保険の申請方法と必要書類とは
介護保険サービスを利用したい場合、自治体に要介護認定を申請して、「あなたには介護がこのくらい必要ですね」と認めてもらう必要があります。
最初のステップである書類の提出について説明します。
申請書の「主治医」欄を記入できない場合の対処法もご紹介しますよ。
申請先は市区町村の窓口!地域包括支援センターで申請代行も可能
申請は、介護を受けたい本人が住んでいる市区町村の役所で行います。
本人や家族が申請できない場合、地域包括支援センターや、居宅介護支援事業者、介護保険施設に申請代行を依頼できます。
要支援にあてはまりそうな人は「地域包括支援センター」、要介護になりそうなら「居宅介護支援事業者」に申請代行を依頼するのが望ましいとされています。
都道府県知事の指定を受けていて、ケアマネージャーが所属している事業所。ケアプラン作成の窓口となります。市区町村のWEBサイトなどで、一覧を確認できます。
入院中なら、病院のソーシャルワーカーに相談してみましょう。
申請書や保険証が必要!介護保険申請の必要書類をご紹介
どの自治体でも必ず必要なのは以下の書類です。申請書は役所の窓口に置いてありますし、WEBサイトからダウンロードすることも可能です。
- 申請書
- マイナンバーがわかるもの
- 介護保険の保険証(65歳以上)
- 健康保険の保険証(40~64歳)
市区町村によって、あるいは申請するのが本人か家族かによって、次の書類が必要な場合もあります。市区町村や申請代行を依頼するところで確認してください。
- 主治医・病院の名前・住所がわかるもの
- 身分証明書
- 申請者の印鑑
「医師の意見書」を書く主治医がいない場合の対処法
介護保険の申請書には、主治医(かかりつけ医)の名前を書く欄があります。主治医は、要介護認定に必要な「医師の意見書」を書きます。
継続してかかっている病院があるなら、その医師の名前でOK。診療科は問いません。
必ず、申請前に、家族や本人から主治医に「要介護認定を受ける」と伝えておいてください。
かかりつけ医がいなくて主治医欄が空欄の場合、自治体が紹介する医師の診断を受けて、意見書を書いてもらいます。ただし、その場合、本人の状況を的確に把握してくれるとは限りません。
介護保険を申請するきっかけになった病気やケガがあるなら、その治療を担当している医師に主治医になってもらうのも、ひとつの方法です。
認定調査って?訪問調査の調査項目と注意点
要介護認定を申請すると、自宅や入院先の病院に調査員が来ます。本当に介護保険サービスが必要なのか、そしてどれくらい介護が必要かを調査するためです。
同時期に、自治体から主治医に対して、意見書作成の依頼がされます。
認定調査の内容や注意点について説明します。
訪問調査ではなにを聞かれる?74項目をすべて紹介
訪問調査では、調査員が以下の74項目について、本人や家族に聞き取り調査をします。
ジャンル | 調査項目 |
---|---|
身体機能・ 起居動作 | 麻痺、拘縮(関節の動く範囲の制限の有無)、寝返り、起き上がり、座位保持、両足での立位保持、歩行、立ち上がり、片足での立位保持、洗身、つめ切り、視力、聴力 |
生活機能 | 移乗、移動、えん下、食事摂取、排尿、排便、口内清潔、洗顔、整髪、上衣の着脱、ズボンなどの着脱、外出頻度 |
認知機能 | 意思の伝達、毎日の日課を理解、生年月日や年齢をいう、短期記憶、自分の名前をいう、今の季節を理解、自分が今いる場所を答える、徘徊、外出すると戻れない |
精神・行動障害 | 被害的になる、作り話、感情が不安定、昼夜逆転、同じ話をする、大声を出す、介護に抵抗、落ち着きがない、一人で外に出たがる、ものを集めたり無断で持ってくる、ものや衣服を壊す、ひどい物忘れ、意味のない独り言や独り笑い、自分勝手に行動、話がまとまらない |
社会生活への適応 | 薬の内服、金銭の管理、日常の意思決定、集団への不適応、買い物、簡単な調理 |
例えば、歩行は「つかまらないでできる」「何かにつかまればできる」「できない」の3択、排便なら「介助されていない」「見守り等」「一部介助」「全介助」の4択で評価されます。
訪問調査の調査票には「特記事項」という欄もあり、要介護度を判定するときに考慮されます。
本人や家族が困っていること、普段行っている介護の様子など具体的に伝え、特記事項に書いてもらいましょう。
訪問調査の注意点!普段の様子を正直に具体的に答えよう
訪問調査では、本人が「調査だから」と張り切ったり、介護への抵抗感から、できないことも「できる」と答えたり、無理してやってみせたりすることがあります。
また、認知症の場合、日によって受け答えの様子が大きく変わることも。
これに備えて、調査には必ず家族の誰かが同席し、普段の様子を伝えてください。
本人の前だとプライドを傷つけることもあるので、調査後にメモを渡すのがおすすめです。
また、「調査日に、本人の部屋をいつもよりきれいに片づける」というのは禁物。普段から本人が自分で片づけられないのなら、そのままの状態を見てもらう必要があります。
ありのまま、正直に、具体的に伝えることで、適切な要介護度が判定されやすくなります。
要介護認定の判定方法と結果に納得できないときの対処法
要介護認定は、一次判定と二次判定の2段階で行われます。
一次判定はコンピューターで行い、二次判定はコンピューターが出した結果をもとに学識経験者(介護認定審査会)が行います。申請から1ヶ月程度で、結果が通知されます。
判定の方法と、通知結果に納得できないときの対処法をお伝えします。
要介護認定の一次判定はコンピューターが行う
「樹形モデル」を使って、コンピューターが「要介護認定等基準時間」を算出して行います。
要介護認定等基準時間の長さによって、「要支援1~2」「要介護1~5」の7段階に振り分けられます。
二次判定では一次判定をもとに学識経験者が判断
介護認定審査会が審査を行います。一次判定の結果をもとに、調査票の特記事項や医師の意見書も踏まえて、要介護度を判定します。
ここでは「一次判定の結果は介護の必要なしとなったけど、金銭管理が自分でできないから、介護が必要だろう」「口腔清潔が介助なしなら、要介護度は一次判定の結果より低いのでは」などと判断が行われます。
一次判定の結果から、要介護度を軽くすることもあれば、重くすることもあります。
認定結果に不満があるなら審査請求や区分変更申請ができる
通知された要介護度に納得できない場合、まずは市区町村の窓口で、理由の説明を受けます。それでも納得できない場合は、以下の対処法があります。
- 審査請求
- 区分変更申請
審査請求は、要介護認定を取り消す手続きで、結果通知日から60日以内に行う必要があります。この手続きには数カ月かかり、取り消し後にまた要介護認定を受ける必要があります。
区分変更申請は、本来は、認定を受けた後の本人の状態に変化があった場合に行う手続きですが、認定結果を不服とする人も利用しています。
いつでも申請でき、認定調査が再度行われます。
介護保険の申請は自治体へ!1ヶ月かかるので早めに手続きを
書類を提出すると認定調査が行われ、結果通知までは1ヶ月ほどかかります。結果通知までに前倒しでサービスを利用したい場合は、認定が下りたものとみなして利用することもできるので、申請時に相談しましょう。
通知された要介護度によって、利用できるサービスや限度額が違ってきます。
通知結果(要介護度)に納得できない場合は、区分変更申請を行うこともできます。必ず希望の要介護度になるとは限りませんが、対処法として知っておきましょう。
当サイトでは介護保険の対象者など、介護保険サービスに関する基礎知識をご紹介しています。ぜひ「介護保険を受けるには?手続きと流れをご紹介」もご覧くださいね。