親を扶養に入れる条件は?メリット・デメリットをわかりやすく解説!
「親の扶養に入っていた」「子どもを自分の扶養に入れた」という経験はあっても、「親を扶養に入れる」という経験はないという方も多いでしょう。
一方で、「家計の見直しをしたい」「親が退職した」などといった状況から、「親を扶養に入れる可能性が出てきたけど、よくわからない」という方もいるのではないでしょうか。
「親を扶養に入れる」ことで、子どもは税金の面で、親は社会保険料の面で節約ができる可能性があります。
この記事では、知識がまったくない方も親を扶養に入れるか判断しやすいよう、扶養に入るメリット・デメリット・注意点、また手続方法をお伝えします。
「親を扶養に入れる」には税法上と健康保険法上の2つ見方があります
まずは、扶養という言葉の意味から確認していきましょう。
自分の力や収入で生活することが厳しい人と一緒に暮らしたり面倒をみたりするなど、生活の援助をすることをいう
また扶養には、2つの見方があります。
「税法上」での扶養と、「健康保険法上」での扶養です。
税法上で扶養される方のことを「扶養親族」、健康保険法上で扶養される方のことを「被扶養者」といいます。それぞれ、詳細をみていきましょう。
税法上で親を扶養に入れる条件・メリットを確認!実はデメリットなし
まずは「税法上」での扶養から説明します。ここでいう「税」というのは、「所得税」と「住民税」のことです。
税法上(税金面)で親を扶養に入れる場合、この「所得税」と「住民税」による子どもの税負担を軽くすることができます。
年金をもらっているけど大丈夫?税法上で親を扶養に入れる条件
税法上で親を扶養に入れるには、その年の12月31日時点で、次の条件をすべて満たす必要があります。
(仕送りをしている別居の親も該当する)
2:親の年間所得が38万円以内であること
3:親が青色申告者の事業専従者としてその年を通じて、一度も給与の支払いを受けていないこと、また白色申告者の事業専従者でないこと
では親の収入源が年金の場合、「年間所得が38万円以下」とはどういう場合でしょうか?
年金生活を送る老後、そこから税金をたくさん引かれたら大変ですよね。その負担を軽減するため、年金には「公的年金控除」というものがあります。これを必要経費として計算するので、所得金額は実際の年金額よりも少なく計算されるのです。
そして、その控除額は年齢や年金額によって異なります。親が年金収入だけの場合、所得が38万円以下になるのは次の場合です。
65歳未満の親 | 年金収入108万円以下 |
---|---|
65歳以上の親 | 年金収入158万円以下 |
親に給与収入がある場合は、年金収入と給与収入(給与の所得控除額は65万円)の合計所得が38万円以下になることが条件です。
ちなみに、遺族年金や障害手当金・死亡一時金などの非課税給付の年金は、税金面では所得に含まれません。詳細は、次の記事を確認してくださいね。
不動産所得・事業所得・山林所得を生ずる事業の主が、国の定めた特定のルールにのっとって確定申告をすることで、税務上の特典を受けられる制度のこと。青色申告をしない、白色申告という確定申告もある。
子の手取り収入増額?税法上で親を扶養に入れるメリット・デメリット
税法上で親を扶養に入れるメリット・デメリットはなんでしょうか?
先にも少し述べましたが、メリットは「子どもの税負担を軽減させることができること」です。
税法上で親を扶養に入れると、子どもの税計算に「扶養控除」が適用されるため、その分税金が安くなります。所得税の扶養控除額は次のとおりです。
控除額38万円
<70歳以上の親族(老人扶養親族)>
控除額48万円(同居58万円)
子どもの年収にもよりますが、所得税と住民税を合わせて年5万~10万円の節税ができると言われています。
親の所得には株投資の配当金や退職金なども含まれ、税法上で親を扶養に入れる条件を満たすかどうかは状況によります。そのため、税法上での扶養において正確に知りたい場合は、最寄りの税務署への相談がオススメです。
健康保険法上で親を扶養に入れる条件・メリット・デメリット
続いて、健康保険法上で親を扶養に入れる場合について解説します。
日本の公的医療保険のうち、ここでは「健康保険」と「国民健康保険」の2種類を扱います。その他の船員保険や共済組合などは、健康保険と同様に扱って大丈夫です。
「健康保険」は、いわゆる会社員の方が入る保険のこと。会社が所属する健康保険協会(組合)を通して、加入します。
「国民健康保険」は、健康保険・船員保険・共済組合などに加入している勤労者以外すべての方が入る保険のこと。市区町村を通して、加入します。
親が現役の頃に健康保険加入だった場合は、退職後2年間のみ継続が可能です。しかしその後は、次のいずれかを選択します。
- 国民健康保険に加入する
- 健康保険の被扶養者になる
- 新しい勤務先で健康保険に加入する
「健康保険法上で親を扶養に入れる」ということは、「親を子どもが加入する健康保険の被扶養者にする」ということです。
この章では、親を子どもの健康保険の被扶養者にする条件や、メリット・デメリットを説明していきます。
会社員の方必見!健康保険法上で親を子どもの扶養に入れる条件
親を子どもの健康保険の「被扶養者」にするには、次の条件が必要です。
親の年収130万円未満(※1)で、子どもの年収の2分の1
<親子が別居の場合>
親の年収130万円未満(※1)で、子どもからの援助による収入より少額
<共通の条件>
・子どもが健康保険に加入
・親の年齢が75歳未満(※2)
※2:75歳以降は後期高齢者医療制度に加入するため
税金法と異なり、健康保険法上では親の年収に「遺族年金」なども含めます。
それでは、メリットやデメリットもみてみましょう。
健康保険法上で親を扶養に入れるメリット・デメリット
税法上で親を扶養に入れるデメリットはありませんが、健康保険法上で親を扶養に入れる際には、メリット・デメリットともにあります。次で確認をしていきましょう。
- 親の国民健康保険料の負担がなくなる
- 親が被保険者として給付を受けることができる
- 医療費が高額になった際の、自己負担額上限が高くなる
国民健康保険の場合、保険料を支払う人は「世帯主」となり、その金額は自治体や各世帯の所得・人数などによって異なります。両親2人が国民健康保険加入で父親が世帯主の場合、父親が母親分を含めた2人分の保険料を支払います。
しかし子どもが加入する健康保険の「被扶養者」になることで、親2人分の国民健康保険料負担をなくすことができるのです。
ネックなのは、「この自己負担額の上限が被保険者の収入によって決まる」ということなんです。
高額療養費制度については、次の記事で詳しく紹介しています。
ちなみに、「親の介護費用に関する自己負担額上限への影響」は、同居・別居いずれの場合も少ないでしょう。介護費用の決定は、税法上・健康保険法上とは異なる観点で判断されるからです。念の為、介護が必要な際には各自治体へ確認がオススメです。
親を扶養に入れる際に押さえたい注意点!メリットが少ない場合もあり
これまでの内容で、「うちは親を扶養に入れる方が良さそう」と考える方もいるのではないでしょうか。しかし、場合によってはメリットが少ないことがあります。
いくつか注意点を確認しましょう。
- 老人ホームに入所している親は別居の扱い(治療のための長期入院は同居とみなす)
- 兄弟で扶養することはできない
- 税金の軽減効果が、そこまで見込めないことがある(子がすでに医療費控除や住宅ローン控除などで、支払う税金が少ない場合)
- 親の介護保険料は無料にならない(年金から引かれる)
ただ親を扶養に入れても、状況に合わせて将来外すこともできます。これまでに説明したデメリットや注意点を気にしておけば、前向きに検討してよいと思いますよ。
親を扶養に入れる際の手続き方法!基本は子の勤務先で手続きをします
では実際に、親を扶養に入れるにはどのような手続きをすればよいのでしょうか。税法上・健康保険法上でそれぞれ、簡単にまとめました。
まずは、税法上で親を扶養に入れる場合の手続き方法を紹介します。ここでは、次のいずれかの手続きが必要です。
・子どもが確定申告※で手続きをする。
所得税や住民税は、前年の税申告を参考にして算出された税金が、本年分として毎月の給与から天引きされます。これを源泉徴収といいます。源泉徴収では新たな扶養控除を考慮していませんから、年末調整や確定申告を行うことで、超過分の税金が払い戻されるのです。
勤務先で年末調整を毎年行っている場合でも、次のような「税額控除」を適用させる場合は、個人で確定申告をする必要があります。
- 住宅ローン控除
(ローンを組んで1年目のみ) - 医療費控除
- 寄付金控除
- 雑損控除
不明点は、勤務先や最寄りの税務署に確認するとよいでしょう。
また、健康保険法上で親を扶養に入れる手続き方法は次のとおりです。
区分 | 内容 |
---|---|
手続き時期 | 事案発生から5日以内 |
手続き先 | 子の勤務先 |
手続き方法 | 子の事業主経由で、「被扶養者(異動)届」と添付資料を日本年金機構へ提出。 |
【親を扶養に入れる】検討する価値あり!親子で相談してみよう
「親を扶養に入れる」ということには、デメリットと注意点があります。そのため親を扶養に入れるかどうかは、子どもだけ、または親だけで決めることはできないでしょう。
しかし、子ども税負担や親の社会保険料負担を減らすメリットもあるので、検討する価値はあります。
1度、親子で相談してみてはいかがでしょうか。家族でお金について話をするきっかけにしても、よいかもしれません。
子どもは成長をして、親は老後を迎えます。双方がこれからも楽しく過ごす方法を、随時検討していけるとよいですね。