親子リレーローンを使えば住宅ローンを借りやすい?
核家族化が進む現代では、成人した子供が親と同居するということは減ってきました。しかしいざという時のことを考えると、一緒に暮らしておいたほうが安心できるのは確かです。
たとえば二世帯住宅で、プライバシーを尊重しながら同居するというのは、現代的な1つの方法と言えるでしょう。そうした物件購入時に、今注目を集めているのが「親子リレーローン」です。
このページでは、親子リレーローンとはどんなものなのか、またどんなメリットとデメリットがあるのかについて説明していきます。
親子リレーローンって何?
「親子リレーローン」は、親と子供が住宅ローンを引き継ぎ、返済をおこなっていくシステムです。
通常は、親が主債務者になり、子供が連帯債務者となります。最初は親が借金の返済をしていき、定年などで返済が難しくなったら、子供が返済をしていくというパターンが多くなっています。
親子リレーローンは同居しないと使えないの?
親子リレーローンは、購入予定の物件に親子が共に居住するというのが、利用の前提条件となるのが原則です。
ただしフラット35の場合は、同居しなくても親子リレーローンを利用可能です。
フラット35は公的な側面も持つ住宅ローンのため、さまざまな条件が民間の金融機関とは異なっているのです。
また最近では、民間の銀行でも、同居を条件に含めないところも出てきました。そうした銀行を選べば、親が子供のための新居にリレーローンを使うというような事も可能です。
団信の設定は金融機関ごとに異なる
団体信用生命保険(団信)をどうするかは、金融機関によって異なります。
- 子供が団信に加入する。
- 親と子のどちらかを選び団信に加入する。
- 親と子の双方が二分の一ずつ団信に加入する。
子供が団信に加入する、という設定になっている親子リレーローンが一般的です。ただフラット35の場合は、親と子で任意に選べるタイプになっています。
※
団体信用生命保険にて詳しく知りたい方はこちらの特集記事をご覧ください。
団信は親と子のどっちが入るべき?
フラット35のように、親と子のどちらでも団信に入れるケースを考えてみます。この場合、「子供が団信に加入する」ことをおすすめします。
単純に考えると、高齢で子供よりも亡くなる可能性が高い親が、団信に加入した方が得のように思えます。
しかし親が団信加入した場合、子供が先に亡くなってしまうと、退職した親に借金が残される、というような致命的な問題が起こる危険性があります。
また、親を団信対象にした場合でも一定の年齢(80才など)に達した時点で、団信が破棄され、子供に団信加入させる、という契約になっているのが普通です。
日本の平均寿命から考えても、80歳までに亡くなる可能性は高くありません。親を団信対象にする、というような余計なリスクは抱えるべきではないと考えます。
親子リレーローンと親子ペアローンは何が違う?
親子リレーローンは、最初に親が返済し、返済が厳しくなったら、子供が借金を受け継ぐというシステムです。
対して親子ペアローンは、最初から、親と子の双方が借金を返済していきます。
このふたつで一番違いが出るのが、「借入上限額」です。親子リレーローンでも、親子ペアローンでも、借入上限額が増えるのは同じです。
しかし、親子ペアローンが両者の年収をフルに使えるのに対して、親子リレーローンの場合は、年収を割り引いて計算されることが一般的です。
親子リレーローンでは、一人ずつしか返済をしないために、もうひとりの分の年収まで完全に計算して上限額を設定してしまうと、返済が厳しくなってしまうことがあるためです。
ただし、金融機関によっては、親子リレーローンでも100%ずつの年収で計算してくれるところも存在します。
親子リレーローンの3つのメリット
親子リレーローンには、以下のような3つのメリットがあります。
- 返済期間を長く設定できる。
- 親の年齢制限問題を解消できる。
- 借入上限額が増える。
返済期間を長く設定できる
親子リレーローンは、親と子で債務を引き継ぐため、返済期間を長期に設定可能です。
返済期間が増えれば、借り入れられる総金額も増えますし、月々の返済額を抑えて余裕のある返済プランを考えることもできます。
ただし、返済期間が長くなれば、払うべき利息も増えるということは、頭に入れておく必要があるでしょう。
親の年齢制限問題を解消できる
高齢の親が単独で住宅ローンを組むことは困難です。60歳を超えているとかなり厳しく、70歳以上なら、審査すら受けさせてもらえないのが普通でしょう。
しかし親子リレーローンなら、若い子供の年齢で審査を受けられます。
年齢問題が解決されるため、その他の条件さえクリアできるなら、住宅ローンを利用できる可能性が大きく高まります。
借入上限額が増える
親子リレーローンも、親子共同での住宅ローンですので、基本的には借入上限が増えます。しかしすでに述べたように、借入上限という点だけで考えると、親子ペアローンの方が有利な場合が多くなります。
- 1.親の年収の50%と子供の年収100%を合計する。
- 2.親の年収の100%と子供の年収50%を合計する。
- 3.親の年収の50%と子供の年収50%を合計する。
- 4.親の年収の100%と子供の年収100%を合計する。
以上は収入審査で使われる計算式の一例です。数は多くありませんが、4番の場合は、返済負担率の問題により、親子ペアローンよりも借入上限額が高くなります。
親子リレーローンの4つのデメリット
親子リレーローンには、以下のような4つのデメリットがあります。
- 親子双方が住宅ローン審査に通る必要がある。
- 所有権が分散するため相続などが面倒になる。
- 完済まで別の住宅ローンを組めない。
- 取り扱っている金融機関が少ない。
親子双方が住宅ローン審査に通る必要がある
親子リレーローンを利用するためには、親子両方が住宅ローン審査に通らなければいけません。つまり双方に、一定の収入があることが条件になるということです。
どちらかがカード事故でブラックリストに入れられていたり、税金を滞納している場合などは、親子リレーローンを組むことは不可能です。
所有権が分散するため相続などが面倒になる
親子リレーローンでは、親と子供の両方に物件の所有権があります。どれだけの権利があるかは、最初に設定する持分割合によって決まります。
親に権利があるということは、親が亡くなった時に遺産相続がなされるということです。
たとえば、親と子で50%ずつの権利で親子リレーローンを組むとします。また、返済を担当する子供の他に、もうひとり子供がいる2人兄弟だとします。
この場合、遺産相続で親の所有権50%が2人に分けられ、25%ずつが相続されます。
返済を担当している子供としては、これから自分だけで借金を返済しなければいけないのに、兄弟までが所有権を持っているというのは、納得しにくいことでしょう。
完済まで別の住宅ローンを組めない
基本的には、住宅ローンは1人1つしか組めません。つまり、親子リレーローンで連帯債務者になっていると、他の住宅ローンは組めないということです。
これが問題になるのは、名義貸しをしている場合です。
たとえば、高齢の親が家を改築する時に、住宅ローン審査に通らないから、子供に名義だけを貸してくれと頼む事があります。
じっさいの返済は親が全部するから、子供に経済的な負担はかからない、と言われればオーケーしてしまう子供も多いでしょう。
しかし親子リレーローンの契約をすると、子供は「連帯債務者」になります。そのため、子供が自分のマイホームを建てようとしても、住宅ローン審査で落とされるという結果になってしまいます。
取り扱っている金融機関が少ない
親子リレーローンは、まだまだ取り扱っている金融機関が多くありません。
選択肢が少ないということは、金利や団信特約などのサービスを比較検討できないということです。
親子リレーローンはどんな人に適しているのか?
親子リレーローンが適しているのは、同居している親子となるでしょう。離れて暮らしている親子でも、親子リレーローンを組める事もありますが、後でトラブルが起きる危険性が高いため、あまりおすすめはできません。
また、所有権の問題から、兄弟が多い家庭ではなく、一人っ子の方が親子リレーローンに適しているといえます。
同居するなら親子リレーローンがおすすめ
親子リレーローンなら、返済期間を長く設定でき、借入上限額も増えるため、物件購入の選択肢が大きく広がります。
しかし所有権の問題などもありますので、よくよく親子で相談してから利用するのが良いでしょう。親に頼まれたからと言って、安易にサインするのはおすすめできません。
親子リレーローンを利用する場合、住宅の計画や購入する住宅の選択など、「子」が主導権をとって進めるほうがよいと思います。
「親」が主導するケースでは、返済しきれないので子に継承させるといったニュアンスがありますが、「子」が主導する場合は親子の共同作業として取り組めるのではないでしょうか。
中古住宅・中古アパートの媒介業務・調査業務に従事し、現在は札幌市内の宅建業者にて専任の取引士を務めている。
2006年より、住宅に関する無料の相談サイトを開設し、住宅リフォームや中古住宅購入の相談に応じている。