生命保険の必要性を徹底検証!入るべき人といらない人の違いを解説
生命保険文化センターの平成28年度「生活保障に関する調査」によると、生命保険に加入しているのは男性で80.6%、女性で81.3%と非常に高くなっています。
この記事では生命保険とは何かをわかりやすく紹介。これから生命保険の加入を考えている人や見直しを考えている人の役に立てるよう、生命保険の必要性をケースごとに丁寧に解説していきます。
生命保険に加入すべきか、現在加入しているけどこのまま加入すべきかを悩んでいる人も多いでしょう。毎月の保険料を考えると、生命保険は決して安い買い物ではありません。自分や家族に生命保険が本当に必要かどうか、この機会にじっくり考えてみてくださいね。
生命保険とは?基本となる3つの保険を解説
そもそも生命保険とはどんなものなのでしょうか。実は期間と仕組みによって3つに分けることができるんです。他の保険や遺族年金などと比較しながら解説していきましょう。
1、定期保険
定期保険とは読んで字のごとく、「期間を定めて」その期間内だけ保障する保険です。
例えば1,000万円の定期生命保険をかけていた場合、期間中に被保険者が亡くなれば1,000万円が支払われます。しかし期間が1日でも過ぎれば1円も支払われません。
また保険期間が終了した後にお金が戻ってこないのも特徴で、いわゆる「掛け捨て保険」といわれる由縁にもなっています。
ただ以上の特徴から、3つの保険の中では最も保険料が安いというメリットがあります。
2、養老保険
養老保険は「老後を養う」保険という名前の通り、貯蓄性のある保険です。保障機能としては定期保険と同じで、ある一定の期間中だけ保障します。
例えば1,000万円の養老生命保険をかけていた場合、期間中に被保険者が亡くなれば1,000万円が保険金として支払われます。
ただ保険期間終了後1円も戻ってこなかった定期保険と違い、保険期間終了時=満期時に1,000万円が受け取れるのです。
当然保険料は定期保険より高くなりますが、保障と貯蓄、両方の準備ができる保険として人気があります。
3、終身保険
「身が終わるまで」という名の通り、期間の定めがなく、保障が一生続くのが終身保険の特徴です。
そのため自分の葬式代の準備のために契約したり、保険金を相続税支払いに充てるために契約するなどといった利用法もあります。
また終身保険の正体は、「期間の定めのない養老保険」です。
そのため養老保険と同じように貯蓄性があり、更に解約しない限り預けた保険料は運用され続けられるので、高齢化が進む現代においては、養老保険よりも「老後資金の準備」に向いている保険ということができます。
生命保険と死亡保険は同じ意味?ほかの保険との違い
保険は上の項目で説明した期間・仕組みのほか、保障する対象別に分類することもできます。
第1分野 生命保険
第1分野に分類されるのは「人の生命を保障の対象とする保険」、つまり生命保険です。
生命保険は人の生命に万が一の事があった場合=死亡時に保険金や給付金を受取ることができる保険です。
ただ「死亡保険」というのはあまりイメージが良くないので、「生命保険」と呼称しています。
第2分野 損害保険
第2分野に分類されるのは「財物を補償の対象とする保険」、つまり損害保険です。
自動車に関わる損害を補償する「自動車保険」、家に関する損害を補償する「火災保険」や「地震保険」などが代表的なものです。
第1分野と異なり、損害保険を販売できるのは損害保険会社のみとなります。
第3分野 医療保険
第3分野の保険は比較的新しく生まれてきた保険で、生命と財物の中間的な性格を持つものが保障の対象となっています。
具体的には「医療保険」「ガン保険」「介護保険」「傷害保険」といった第1分野、第2分野のどちらにも分類できないカテゴリーです。
この第3分野の保険は生命保険会社、損害保険会社の双方とも販売することができます。
生命保険に加入した場合、どのような時に保険金がもらえるのか
続いて生命保険に加入していたらどのような出来事があったときに、どのような保険金が給付されるのかを見ていきましょう。
1、死亡時(被保険者が亡くなったとき)
人の生命を保障するのが生命保険ですから、被保険者(保険の対象となる人)が亡くなった場合、保険金を受取ることができます。
2、高度障害時(被保険者が高度障害状態になったとき)
死亡時以外にも保険会社が定める「高度障害状態」に該当し、回復の見込みがない場合も死亡保険金と同額の保険金が支払われます。
これは極度の障害状態の場合、日常生活を営むことはできず、死亡時に準ずると考えられるからです。
ただ保険会社が定める高度障害状態は、身体障害者福祉法などに定められる障害状態とは異なるので、その点注意が必要です。
生命保険の保険金が支払われない場合に注意
1、免責期間内の自殺
意外に思われるかもしれませんが、「自殺」の場合も保険金は支払われます。ただし保険金目当ての自殺を排除するため、各生命保険会社は1~3年の免責期間を設けています。
そのため契約直後に自殺をしてしまった場合、保険金は支払われません。
2、告知義務違反による契約解除の場合
保険に加入する時には、被保険者の健康状態について過去の病歴、通院歴などを正確に告知する必要があります。
これを故意または重大な過失によって告知しなかった場合や、事実とは異なる告知をした場合、保険契約は解除となり、保険金は支払われません。
3、重大事由による保険契約の解除、詐欺・不法取得目的の場合
いわゆる保険金詐欺を目的として事故を起こした場合などで、保険契約が解除・取消・無効になった場合、保険金は支払われません。
4、麻薬や覚醒剤など薬物使用によって死亡した場合
麻薬や覚醒剤など違法な薬物を使用し、その結果死亡(自殺も含む)した場合、保険金は支払われません。
保険金の請求手続き
保険金は保険会社に請求しないと支払ってはもらえません。保険事故(生命保険の場合は被保険者の死亡など)があった場合、すぐに保険の担当者かカスタマーセンターに連絡をします。
そうすると保険会社から書類が送られてくるので、必要事項を記入してその他以下のような必要書類と共に返送します。
- 保険金支払請求書
- 死亡証明書
- 被保険者の死亡記載のある戸籍謄本または住民票
- 保険金受取人の印鑑証明書
- 保険証券
返送した書類などに不備がなければ、一般的に保険会社に書類が到着してから5営業日~1週間ほどで保険金が支払われます。
ただ保険金の請求権には3年の時効があり、それを過ぎると請求権自体が消滅してしまいます。しばらくは忙しいでしょうが、なにかあったときのための保険です。時効には注意してくださいね。
もしものときの支出と生命保険の必要性
大黒柱が亡くなった時、残された家族が困らないように生命保険に加入する人も多いでしょう。もしものときにどれくらいのお金が必要かを考えるにあたって、公的年金の一種である遺族年金についても知っておくとよいでしょう。
遺族年金は3種類!それぞれの違いを知っておこう
遺族年金とは一家の生計を支えていた用意された公的年金制度です。遺族年金は亡くなった人の職業によって大きく3種類に分けられます。
- 遺族基礎年金
- 遺族厚生年金
- 遺族共済年金
遺族年金の支給対象や支給金額は法律によって細かく定められています。詳しくは「遺族年金とは?その仕組とどのくらいサポートがあるのか解説」を参考にしてください。
遺族年金は月額にすると10~15万円程度の額が給付されることが多く、ほとんどの人が遺族年金だけでは最低限の生活費しか賄えない状態だと言われています。
では生活するためにはどのくらいの費用がかかるのでしょうか?主な出費を見ていきましょう。
住居費
住居費用は「持ち家」と「賃貸」の場合で大きく異なります。それぞれの違いを見ていきましょう。
持ち家の場合は団体信用生命保険が適用される
一戸建てやマンションを購入し、ローンを組んでいた場合、契約者はほぼ確実に団体信用生命保険というものに加入しています。
これは契約者に万が一のことがあった場合、ローンの残金を保険金で全額精算するために加入する生命保険です。そのためローンを組んで住宅購入をした家庭では、基本的にその後の住居費はかかりません。
賃貸の場合
問題は賃貸だった場合です。賃貸の場合は一家の大黒柱が亡くなって収入の道が閉ざされたとしても残された家族が暮らす限り賃料が発生します。
遺族年金の月額を考えると、賃料と生活費の双方をカバーするのは難しいと言えるでしょう。
教育費
子供が幼稚園から大学を卒業するまでには、すべて公立に通ったとして1,000万円、大学を私立にすると1,300万円もの教育資金がかかります。
2人、3人子供がいれば、当然この2倍、3倍の資金が必要です。これはとても遺族年金でカバーできる額ではありません。
だからといって子供の将来を閉ざすのは親としてとてもつらいことです。そのためこの教育費のためだけでも学資保険を含めた生命保険の利用を考えるべきです。
生命保険を使うと相続税的に有利
一家の大黒柱が亡くなれば、残された遺族はその遺産など暮らしていくわけですが、遺産には相続税がかかります。
相続税がかからない範囲、基礎控除の額は、3,000万円+600万円×法定相続人の数となります。
その上生命保険を使うと、この非課税枠を更に増やすことが可能です。生命保険の保険金で受け取った遺産分からは、500万円×法定相続人の数の額を控除できます。つまり、妻と子供2人なら、1,500万円を更に控除することができるのです。
生命保険に入るべき人とは?ポイントは生計を担っているかどうか
「守るべき人(妻・子供)」がいる人
一家の大黒柱であれば、妻と子供たちを養っていく義務と責任があります。そしてそんな大黒柱は、自分が死してなお、家族を路頭に迷わせるわけにはいかないのです。
そのためには生命保険でしっかりとした保障を準備する必要があります。
自分の収入で家族を養っている人
妻や子供がいなくても、自分の収入で支えている人がいる場合、例えば年老いた両親を自分の収入で養っている場合などは、自分がいなくなった場合のことを考え、生命保険に加入するべきです。
一方で生命保険への加入が不要な人もいます。
扶養家族がいない人
扶養する家族がいない人は、基本的に生命保険は必要ありません。よく「就職したんだから保険くらい入っておきましょう」などと保険の勧誘を受けますが、若くて独身で両親も元気であれば、すぐに保険に加入する必要はありません。
有り余る資産のある人でも相続税対策には必要
自分が死んでも、有り余る資産があれば家族は路頭に迷うことがありません。そのような場合は生命保険は不要です。
ただそのような資産家の場合、相続税対策をしっかりしておかないと、せっかくの資産が目減りしてしまいます。この相続税対策に生命保険が有効なのです。
遺族にお金を残す以外で生命保険を活用する
生命保険の利用法は遺族にお金を残すだけではありません。ここではそんな生命保険の意外な活用法をご紹介していきます。
貯蓄機能
養老保険や終身保険には優れた貯蓄機能があります。それは超低金利時代の今、預貯金の利息を有に上回るものです。
中途解約をすると元本割れをする可能性があるなどの注意点はありますが、学資保険を利用した子供の教育資金や低解約返戻金型終身保険を利用した老後資金の貯蓄はおすすめです。
相続税対策
さきほどご説明したように、生命保険を利用すると相続税の控除の枠を拡げることができます。
更にある程度まとまった資産を保有していて、多額の相続税の支払いが確実な場合、生命保険を利用して相続税支払い用のキャッシュを用意するという方法があります。
例えば、資産から算出して将来5,000万円の相続税を支払わなければならない場合、5,000万円の終身保険に入っておくのです。
資産がある場合、遺族は相続税の支払いに頭を悩ませるものですが、その心配を予め摘み取っておくことができます。
遺産を確実に渡すために使う(お金に名前をつける)
これも相続対策の一つですが、生命保険の利用法として、「お金に名前をつける」というものがあります。遺言状がない限り、遺産は相続人間で平等に分けられます。
そのため死亡した人が「○○にお金を残したい!」という希望を持っていても、それは叶わず、相続争いに発展してしまったりします。
その点生命保険の受取人に希望する人を指定しておけば、確実に資産を受け渡すことが可能です。
また最高裁の判例では、この保険金の受け取りは著しい不公平のない限り特別受益(簡単に言うとえこひいき)に当たらないとしています。つまり通常の遺産相続とは別枠で、希望の人にお金を残すことが可能になるのです。
多額である必要はないが、最低限の生命保険は必要である
ただその場合、子供にスマホを持たせてあげるのは難しいかもしれませんし、奥さんは子供に「ごめんね、うちはお父さんが亡くなってお金がないから大学に行くのは諦めて」と言わなくてはならないかもしれません。
万が一のときに「人並み」の生活を送れるお金を家族に残したければ、生命保険への加入を検討するのが良いでしょう。
生命保険が必要か、いくらの保険金が必要なのかは各家庭によって違うので、ぜひ一度自分のライフプランを見つめ直してみてください。
大切な家族を守ることができるのはあなただけなのです。