障害年金と傷病手当金の仕組みと違い、併給調整を理解しよう!
病気やケガをしたときにもらえるお金には、「障害年金」や「傷病手当金」があります。
これまでこの2つの手当ての支給を受けたことがない人にとっては、その違いがよくわからなかったり、中には両方を同時にもらえるのかという疑問を抱いている人もいることでしょう。
障害年金と傷病手当金は併給可能ですが、それぞれの支給額によっては傷病手当金が減額(または支給停止)される可能性があります。
この記事では「障害年金」や「傷病手当金」の仕組みや違い、さらに併給されるのかといったトピックを取り上げて解説していきます。
障害年金と傷病手当金について詳しく解説!大きな違いは受給可能期間
それぞれの受給要件も、しっかりチェックしておきましょう!
障害年金や傷病手当金について、詳しく知らない方もいらっしゃるでしょう。
この章ではまず、それぞれの制度の仕組みについてご紹介し、違いについて説明していきます。
障害年金は、年金保険から支払われる補償のこと
病気やゲガをして仕事や生活に支障をきたすような状況になった際に、支給される年金のこと。
障害年金は病気やケガをしたらすぐに貰えるものではなく、「医療機関の初診日」から「1年6カ月」を経過した後に請求することで初めて受け取ることができます。
障害年金にはさらに「障害基礎年金」と「障害厚生年金」があります。
障害基礎年金は、初診日の時点で自営業者など国民年金加入者だった人が受け取れる年金。障害厚生年金は、サラリーマンなどの厚生年金加入者が受け取れる年金です。
いずれの障害年金の場合も受給するには、次のような3つの要件をすべて満たしていることが必要になります。
- 初診日が、国民年金または厚生年金いずれかの被保険者期間中であること
- 障害基礎年金と障害厚生年金で定めている障害の等級※に該当する程度の状態であること
- 国民年金ないし厚生年金の納付状況に問題がないこと
納付状況に問題がないかの具体的な判断は、次のような点で行います。
- 初診日時点で、加入期間の3分の2以上納めていること※
- 「1」を満たさない場合、初診日前日までに前々月までの1年間で滞納がないこと
また障害基礎年金か障害厚生年金かによって、支給額が異なります。自分はどの年金に該当するか、確認しておきましょう。
傷病手当金とは、健康保険に加入している人がもらえる手当のこと
健康保険に加入している人が、業務以外が原因で病気やケガとなり働けなくなった場合にもらえる手当のこと。給与(総支給額)の「約3分の2の金額」まで、最長「1年6カ月間」受給できる。
傷病手当金は健康保険協会、健康保険組合、共済組合から支給される手当金であるため、国民健康保険の加入者には支給されません。
なおこの手当金を受給するには、以下に挙げる一定要件を満たしていることが必要になります。
- 業務外の病気やケガで療養中であること※
- 療養のために仕事ができないこと
- 4日以上仕事を休まざるをえない状況であること
- 療養期間中に給与の支払いがないこと
手当金は、仕事を休んだ日から4日目以降に対して支給されます。1~3日の休みでは申請できませんので、注意して下さい。
障害年金制度と傷病手当金の違い
障害年金は年金保険に加入している人、傷病手当金は健康保険に加入している人という違いがありました。
もっとも大きな違いは、障害年金は受給期間が限定されないのに対し、傷病手当金は最長1年6カ月の期間制限があるという点でしょう。
傷病手当金は仕事を休んで4日目以降の分から申請できますが、障害年金は初診日から1年6カ月以降、仕事や生活に支障をきたす場合が続けばその間ずっと支給されます。
完治するまでの状況によって、障害年金のほうが長い期間受給できる可能性があるのです。
障害年金の支給額よりも多いか少ないかで、傷病手当金は支給額が決定
併給調整で傷病手当金が一部カットとなるのか全額カットとなるのかは、次のように判断されます。
一部カット | 傷病手当金の受給額が障害年金よりも多い場合 |
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全額カット | 障害年金の受給額のほうが傷病手当金よりも多い場合 |
一部カットでは傷病手当金の一部を支給停止とすることで、傷病手当金の受け取れる金額以上にはならないように調整されることになります。
傷病手当金を返金(返還)しなければならないケース
過去に遡って障害年金を受給する権利が得られる場合、その期間内に既に受けていた傷病手当金はその一部(または全部)を返還しなければなりません。
この場合、返還すべき金額については、月単位で計算されることになります。
障害年金の申請について詳しくは、次の記事をご覧ください。
障害年金や傷病手当金の仕組みをよく理解してから支給を受けよう!
病気やケガで働けなくなった場合の公的な保障はありがたいものですが、その適用要件を含めた仕組みは複雑で理解しづらいと感じる人も多いのではないでしょうか。
しかし自分で申請しなければ、これらのお金は支給されません。
満額ではないにしても、これらの資金があれば生活を支える糧になります。
不明な点などがあれば、最寄りの年金事務所や所属する健康保険組合などに問い合せてみましょう。傷病手当金であれば、勤め先の担当者に問い合わせても大丈夫です。
病気やケガを負いながらの生活は不安なものです。安心して過ごせるよう、事前に準備しておくのがおすすめです。
障害認定日は初診日から1年6ヶ月経過後であるので、そもそも傷病手当金と障害年金の支給時期が重ならないように制度設計されていますが、初診日から1年6ヶ月前に障害認定日が到来するイレギュラーなケースがあります。
このときに併給調整が問題となりますが、原則としては障害年金の支給が優先されます。
日本年金機構、社労士法人勤務を経て開業。中小企業の労務管理に従事する一方、年金相談窓口や無料相談会などで年金相談を受けている。