障害年金の『子の加算』とは?受給条件や申請方法を分かりやすく解説
病気やケガで以前のように仕事できなくなった・生活が困難になったなどの場合にもらえる障害年金。子どもがいる方は、「子の加算額」も合わせて受給可能な場合があることをご存じですか?
「子の加算額」の対象となるのは、受給者・子のそれぞれが次の条件に当てはまる場合のみです。
障害年金の「子の加算」の条件 | |
---|---|
受給者 | 障害認定基準1級または2級 |
子 | ・次のいずれかに該当する (1)18歳になる年度の末日※まで (2)20歳未満で障害等級1級または2級 ・受給者に生計を維持されている |
この記事では障害年金の「子の加算」について、加算額や受給条件、申請方法などを解説。また「夫婦2人が受給者となる場合、加算額はどうなるの?」「児童扶養手当と子の加算は一緒にもらえる?」といった疑問にもお答えします。
障害年金の『子の加算』は親子それぞれに受給条件がある
まずは、それぞれの受給条件について確認しましょう。
【1】障害年金の『子の加算』は障害認定基準1・2級が対象
障害年金には「障害認定基準」というものがあり、「病気やケガがどれに当てはまるか」で等級や支給額が決定します。
障害の程度は次のように1級が一番症状が重く、障害年金の支給額も高いです。
・身体の機能の障害、または長期にわたる安静を必要とする病状
・日常生活を送るのが難しい状態
・他人の介助を必要とする状態
<2級>
・身体の機能の障害、または長期にわたる安静を必要とする病状
・日常生活に著しく制限を加える必要がある状態
・労働により収入を得ることができない状態
・必ずしも他人の介助を必要とするわけではないが、日常生活は困難
<3級>
・労働において著しい制限を受けるか、著しい制限を加えることを必要とする状態
障害基礎年金(国民年金)は「1級・2級」、障害厚生年金(厚生年金)は「1級・2級・3級」が支給対象となります。
そして子の加算分を上乗せして受け取れるのは、受給者が障害認定基準1級または2級の場合です。
障害年金の審査基準・注意点については、次の記事で解説しています。
また障害認定基準以外にも、障害年金には受給条件があります。詳しくは次の記事を参考にしてください。
【2】障害年金の『子の加算』で『子』と見なされるのは?
「子の加算」の対象となる「子」とは、次の条件を満たす人のことです。
・次のいずれかに該当する
(1)18歳到達年度の末日(3月31日)を経過していない
(2)障害者の場合:20歳未満で障害等級1級または2級
- 被保険者と同居している※
- 年間収入が850万円未満、または所得が655万5千円未満
障害年金の『子の加算』としてもらえる金額
1人あたりの加算額 | |
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2人目まで | 224,500円 |
3人目以降 | 74,800円 |
ちなみに障害年金の支給額は障害基礎年金・障害厚生年金で計算方法が異なり、傷病の程度が重いほど金額が大きいです。詳しい計算方法は、次の記事をご覧ください。
障害年金の『子の加算』に関する疑問を解消
障害年金の「子の加算」に関して、次のような疑問を持つ人も。それぞれ分かりやすく説明します。
障害年金の受給権者に子どもが産まれた場合も『子の加算』の対象
以前は「障害年金の受給権が発生した時点」で加算対象となる配偶者・子がいる場合しか、加算分を受給できませんでした。
しかし障害年金の加算制度が改正され、平成23年4月からは「受給権発生後に産まれた子」も加算対象に。
ただし、このような場合は新たに届出が必要です。申請方法や必要書類については、のちほど「『子の加算』の申請方法・必要書類(障害年金を受給中の場合)」でお伝えします。
『子の加算』と『児童扶養手当』の受け取り方
ひとり親家庭や親のいない家庭(父または母が重度の障害の状態にある場合を含む)などに支払われる手当。
給付される金額は、子どもの人数や所得により異なります。
詳しく知りたい方は、別記事「子育て世代の大きな味方!お金が支給される児童手当とは?」をご覧ください。
そのため「子の加算額」が「児童扶養手当」より少ない家庭は、不利な状況だったのです。
この対策として平成26年12月分からは「児童扶養手当と子の加算の差額分」も考慮されるようになりました。
夫婦2人が障害年金をもらう場合は、どちらも「子の加算」の対象
障害年金の『子の加算』の申請方法
『子の加算』の申請方法・必要書類(障害年金が未申請の場合)
障害年金をこれから申請する場合、まずは障害年金自体の申請のため、「年金請求書」に次の書類を添えて年金事務所へ提出する必要があります。
- 年金手帳
- 戸籍謄本または住民票など
- 医師または歯科医師の診断書
- 受診状況証明書※
- 病歴・就労状況等申立書
- 受取金融機関の通帳など
「子の加算」も申請する場合は、次の書類を合わせて提出しましょう。
- 戸籍謄本(記載事項証明書)
- 世帯全員の住民票
- 子の収入が確認できる書類(※1、2)
- 医師または歯科医師の診断書
※2:高等学校などに在学中の場合は在学証明書または学生証など
申請方法・必要書類についてさらに詳しく知りたい方は、次の記事をご覧ください。
『子の加算』の申請方法・必要書類(障害年金を受給中の場合)
障害年金の受給中に子どもが産まれた場合は、次の書類を最寄りの年金事務所へ提出し「子の加算」を申請しましょう。
書類 | 補足 |
---|---|
障害給付加算額・加給年金額加算開始事由該当届 | ― |
親子関係を証明できる書類 | 次のいずれかを提出 ・戸籍の抄本 ・市区町村長の証明書 (住民票は不可) |
生計維持の関係を証明する書類 | 世帯全員の住民票など |
医師または歯科医師の診断書 | ・子どもが障害等級1級または2級の場合のみ提出※ ・傷病によってはレントゲンフィルムも必要 |
児童扶養手当証書など | 平成26年11月以前に、配偶者が児童扶養手当を受給している場合のみ提出 |
障害年金の『子の加算』は、審査で不支給となる場合もあるので注意
「子の加算」の対象者・もらえる金額については、次の3つのポイントをお伝えしました。
・これから障害年金を申請する人も、すでに受け取っている人も、「子の加算」の給付対象
・夫婦2人が障害年金を受け取る場合、2人とも「子の加算」の給付対象
・「子の加算」より「児童扶養手当」のほうが金額が大きい場合、「子の加算」に加えて児童扶養手当との差額分ももらえる
受給条件を満たす場合は申請手続きを行いましょう。
児童扶養手当を受け取っている人が、子の加算のある障害基礎年金を受け取ることになった場合、子の加算が優先されるため、過去にさかのぼって障害基礎年金を受け取る場合などにおいてこれまで受け取った児童扶養手当の返還が必要な場合もあります。
お住まいの市区町村への手続きも忘れずに行うようにして下さい。
日本年金機構、社労士法人勤務を経て開業。中小企業の労務管理に従事する一方、年金相談窓口や無料相談会などで年金相談を受けている。