障害年金の不服申し立て方法!審査請求書の書き方・診断書の修正に注意
障害年金は審査によって、支給の有無や支給額が決まります。
2回目の審査に不服があった場合は、さらに再審査請求を行うことができます。
障害年金の不服申し立て方法は、次の2通りです。
- 書類提出
- 口頭意見陳述
この記事では、書類提出の形で障害年金の不服申し立てをする場合に焦点を当て、手続きの流れや書類の書き方・注意点などを解説します。
また審査請求・再審査請求の結果が出るまでには、6カ月~9カ月ほどかかる可能性も。このことを理解したうえで、読み進めてくださいね。
障害年金の不服申し立てができるケース一覧
障害年金の不服申し立ては、次のような場合に行うことができます。
- 受給条件を満たしているはずなのに、不支給の決定通知を受け取った
- 不支給になったあと症状が悪化し、受給対象となった可能性がある
- 遡及請求※が認められなかった
- 障害認定基準が希望より低く、支給額が低かった
- 受給していたが、途中で支給額が減額・支給停止された
障害年金の受給条件・受給対象となる傷病の程度については「障害年金の審査のポイント・対処法【状況確認による支給停止に注意】」を参考にしてください。
「実際はもっと重い症状のはずなのに、障害認定基準が低いと見なされた」という場合も審査請求が可能。
障害認定基準が高い(障害の程度が重い)ほど、障害年金の支給額は高くなります。
また傷病の程度の変化によって障害年金が支給額変更・支給停止になった場合も、不服申し立てを行えます。
障害年金が支給停止になるケースについては「障害年金の受給期間はいつまで?停止したら審査請求・支給再開も検討」で確認してください。
障害年金の不服申し立ては自分で行う?社労士に依頼する?
障害年金の不服申し立てを自分(または家族など代理人)で行う場合と、社労士に依頼する場合のメリット・デメリットは次のとおりです。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
自分で行う | ・社労士への着手金、成功報酬などの出費がない | ・手間がかかる ・申請が遅れる可能性がある ・書類作成が難しい場合がある |
社労士に依頼する | ・手間がかからない ・知識豊富なので信頼できる ・結果が有利になる場合がある |
・報酬の支払いが必要 |
障害の種類・程度によっては、自分で申請するのが難しい場合もあります。代理人が見つからない場合は、専門家である社労士に依頼するのが良いでしょう。
障害年金の不服申し立ての流れ・審査請求が可能な期間
障害年金の審査から不服申し立てまでの全体的な流れは、次のとおりです。
- 1回目の審査によって、障害認定または不支給の決定がされる
- 不服がある場合は、審査請求をする
- 2回目の審査により「容認」または「棄却」が決定される
- 3の決定に不服がある場合は再審査請求する
- 3回目の審査により「容認」または「棄却」が決定される
- 決定に不服がある場合は行政訴訟を起こす
行政訴訟は、「3」の審査請求結果がわかった後に行うこともできます。
期限を過ぎると原則手続きできないので、次の表を確認してください。
期限 | |
---|---|
審査請求 | 「決定があったことを知った日の翌日」から3カ月以内 |
再審査請求 | 「決定書の謄本が送付された日の翌日」から2カ月以内 |
行政訴訟を起こすことができるのは、原則として審査請求の結果が出たあと。しかし次のような場合、審査結果が出ていなくても訴訟の提起が可能です。
- 審査請求した日から2カ月を経過しても、審査請求の決定がない
- 決定の執行等による著しい損害を避けるため、緊急に訴訟を起こす必要がある
- その他正当な理由がある
また裁判でも決定が覆らない可能性もあることを知っておきましょう。
行政訴訟は、審査請求または再審査請求の決定から6カ月以内に行えます。この期限を過ぎると訴訟を起こせないので注意してください。
では次の章から、障害年金の不服申し立てをする際の書類の入手方法や書き方、注意点などを説明します。
障害年金の不服申し立ては『審査請求書』の書き方が重要!
場合によっては、診断書・初診日を証明する資料も用意する必要があります。
ちなみに、この社会保険審査官が「審査請求書の提出先」となります。
自分で不服申し立てを行う場合、審査請求書には次の事項を記入しましょう。書き漏れのないよう注意してください。
項目 | 内容 |
---|---|
請求人 | 本人の住所及び電話番号、氏名、押印など |
代理人 | 代理人が審査請求をする場合に記入 ・代理人の住所、氏名、押印など ・請求人との関係 |
被保険者もしくは被保険者であった者 | ・住所、氏名、事業所名及び所在地など <記号及び番号欄> ・基礎年金番号 |
給付を受けるべき者 | 被保険者が死亡した場合に記入 |
原処分者 | ・審査決定を処分した保険者(保険料の徴収・給付金の支払いをする者)
決定通知書を見て記入 |
原処分があったことを知った日 | ・通知書を受け取った日 |
審査請求の趣旨及び理由 | ・どんな処分を受けたのか ・なぜ審査請求をするのか ・どのような決定をしてもらいたいのか |
添付資料 | 文書や物件を証拠として提出する場合に記入 |
委任状 | 代理人が審査請求をする場合に記入 ・審査請求人の氏名、押印※ ・代理人の氏名 |
1回目の審査の際に受け取った「決定通知書」は添付必須なので、審査請求書の「添付資料」の欄に記載する必要はありません。
希望どおり設定してもらうために必要なポイントを、お伝えします。
- 審査請求する理由・目的を具体的に書く
- 初診日を特定できなかった場合は、他の方法で証明する
- 診断書を修正・再提出するか、審査請求書に詳細な症状を記載する
診断書を修正しない場合は、症状についてより具体的に記載することが重要です。これについては次の章「障害年金の不服申し立ては『診断書の修正』が必要な場合も」で説明します。
まずは次の章から、1・2の項目について見ていきましょう。
審査請求書の書き方ポイント1:理由・目的を具体的に書く!
「審査請求の趣旨及び理由」の欄には、次の項目をなるべく具体的に書いてください。
- 最初の審査で、どのような決定を受けたのか
- なぜ審査請求をするのか
- 社会保険審査官にどのような決定をしてもらいたいか
- 傷病により仕事・生活にどのような影響が出ているのか
ただし「内容が多い・長いほどいい」というわけではありません。
社会保険審査官に審査請求の必要性が伝わるよう、なるべく読みやすく簡潔に書くことも大切。文章だけでなく、箇条書きを入れることも可能です。
審査請求書の書き方ポイント2:初診日が特定できなかった場合の証明
障害年金を受けるには、「初診日が年金の加入期間中にあること」の証明が必要。
しかし初診日が特定できないことにより、障害年金が不支給とされるケースも多いのです。
初診日不明のため不支給となった場合は、次のように対処しましょう。
- 初診日の目安がわかる資料を複数「添付資料」として添付する
- 第三者証明を行う
まずはカルテ以外に「初診日の目安がわかる書類」を用意しましょう。
初診日の目安がわかる資料とは、勤務先の健康診断記録やお薬手帳、健康保険の給付記録などです。傷病により提出可能な書類が異なります。
提出書類が多く、それらが複合的に証拠と判断されれば、請求が通る可能性も高くなるのです。
そしてさらに「第三者証明」を行い、初診日をより確実に証明します。
第三者証明とは、初診日を複数の第三者(友人・隣人・民生委員など)に証明してもらうことです。
このように対処した場合、審査請求書には、次の事項も必ず記載してください。
項目 | 追記内容 |
---|---|
審査請求の趣旨及び理由 | 初診日の証明が可能である旨 |
添付書類 | 「初診日の目安がわかる書類」の名前 |
初診日の目安がわかる書類・第三者証明の方法については「障害年金の審査ポイント1:初診日の証明をしっかりとる」の記事で、さらに詳しく解説しています。
障害年金の不服申し立ては『診断書の修正』が必要な場合も
障害年金は審査で「障害認定基準に満たない」と判断され不支給になったり、認定基準を低く判断されて少ない支給額になったりする可能性も。
障害の程度は、主に医師または歯科医師が作成した診断書で審査されます。
「実際の症状と診断書の記載内容にズレがある」場合は、診断書の修正・再提出が必要です。
診察では実際の症状の重さが伝わらず「それほど重症ではない」と思われ、診断書の記載内容が実際と異なっている可能性もあります。うつ病など、精神障害の場合に多いケースです。
障害厚生年金の場合は、3級以上の基準に満たない障害が残った場合に「障害手当金」を受給可能です。
それでは診断書を修正・再提出する場合と、しない場合に分け、審査請求する際のポイントを見ていきましょう。
診断書を修正・再提出して障害年金の不服申し立てをする場合
医師または歯科医師に診断書を修正してもらう場合、次の点に注意しましょう。
- 「現症日」を変更したいなら「不服申し立て」ではなく、再申請も検討する
- 修正した理由を詳細に書いてもらう
障害年金を申請する際、診断書には「現症日」が記載されています。
この現症日は「1回目の申請時に記載した現症日」のこと。
審査請求の際にも、初回と同じ現症日の診断書を提出しなくてはなりません。
現症日自体を変えるには、もう一度障害年金の申請をするしかありません。新しく診断書を作成してもらう必要があります。
また不服申し立てをする際、「なぜ診断書を修正したのか」の理由も診断書に明記してもらうことが重要です。
ただし社労士へ依頼した場合は、報酬を支払う必要があります。
診断書を修正せず障害年金の不服申し立てをする場合
診断書を修正しない(初回請求時の診断書の記載内容に問題がない)場合、審査請求書の「審査請求の趣旨及び理由」の欄には、症状についても詳しく記載しましょう。
診断書だけでは伝わらないことを記載することで、審査請求が認められる可能性もあります。
不服申し立ては「正当な理由がある場合」に行うもの。「自分の希望どおりに障害年金を受け取るためのもの」という解釈はやめてください。
障害年金の不服申し立てで、正当な金額を受給できる可能性あり
不服申し立ては自分でも行うことができます。自分でできない場合・身近で代理人が見つからない場合は、社労士への依頼も検討してみてください。
不服申し立てをする際、重要なのは「審査請求書の書き方」と「診断書を修正する場合・しない場合の対処法」です。
審査請求をする目的や、自分の症状、診断書を修正する理由が社会保険審査官にしっかり伝わるよう、書類の記載内容をよく確認しましょう。
不服申立てについては、期限を設けられていることから迅速な対応を心がける必要があります。もちろん文書で対応することも可能ですが、口頭での請求も認められます。専門知識が必要な場面も多々出てくると思いますので、信頼できる専門家のサポートを受けて対応することがベターであると考えます。
ネットワークエンジニアとして活動後、都内社会保険労務士事務所に勤務。
現在は個人事務所(労務・年金相談安達事務所)として活動している。
以前のように働けず収入が減ったので、年金がもらえないと困ります!どうしましょう・・・。