障害年金の受給期間はいつまで?停止したら審査請求・支給再開も検討
病気・ケガにより障害が残り、日常生活や仕事などに支障が出た場合にもらえるのが「障害年金」です。いざという時、金銭的なサポートを受けられます。
審査が通った場合、国民年金加入者は障害認定1級・2級であれば「障害基礎年金」の支給対象です。
厚生年金加入者は1・2級なら「障害基礎年金」に「障害厚生年金」を上乗せした形での受給が可能で、3級の場合でも「障害厚生年金」を受給できますよ。
この記事では、障害年金は申請手続きから支給までどのくらいの期間を要するのか、また受給期間はどれくらいかをお伝えします。
障害年金の支給期間は申請から約半年後に始まる
病気やケガで仕事ができなくなった人に支給される障害年金。障害が残ったら、なるべく早くもらえたほうが安心ですよね。
しかし障害年金は、申請手続きを行ってから支給されるまで約半年かかります。
まず必要書類を提出したら、支給決定までの審査期間が約3~4カ月。それから1回目の障害年金支給まで、約50日も期間が空いてしまいます。
障害年金の申請方法や必要書類、注意点については「障害年金の申請前に確認!受給資格や申請方法」で説明しているので、これから申請する人は参考にしてください。
では障害年金がいつまでもらえるのか、詳しく見ていきましょう。
障害年金の失権・支給停止するケース
障害年金は基本的に、具体的な支給期間が決まっていません。しかし途中で給付されなくなる場合も。
障害年金の支給がなくなるのは、大きく分けて「受給権が消滅する(失権する)ケース」と「支給が停止するケース」です。
まずは受給権が消滅する場合を見てみましょう。
- 死亡した場合
- 3年以上※のあいだ障害等級に該当せず、かつ65歳以上である場合
障害認定基準とは、障害年金の支給・不支給や支給金額の基準となるもの。障害基礎年金の場合は下の表の1・2級、障害厚生年金の場合は1・2・3級に該当する人が受給対象者です。
内容 | |
---|---|
1級 | ・身体の機能の障害、または長期にわたる安静を必要とする病状 ・日常生活を送るのが難しい状態 ・他人の介助を必要とする状態 |
2級 | ・身体の機能の障害、または長期にわたる安静を必要とする病状 ・日常生活に著しく制限を加える必要がある状態 ・労働により収入を得ることができない状態 ・必ずしも他人の介助を必要とするわけではないが、日常生活は困難 |
3級 | ・労働において著しい制限を受けるか、著しい制限を加えることを必要とする状態 |
症状が軽くなってこれらの障害認定基準に該当しなくなると、障害年金は支給停止となります。
また支給停止期間が続くと、障害年金の受給権がなくなります(失権)。
失権となるのは、次のうち「いずれか遅い方」です。
- 支給停止のまま3年が経過した場合
- 支給停止のまま65歳になった場合
支給停止となるのは、障害認定基準に該当しなくなった場合だけではありません。次の章で解説します。
障害年金はいつまでもらえる?支給停止になるケースを紹介
障害年金の支給停止とは、障害年金を受け取る権利があるものの、特定の理由によって支給が止められること。支給停止の理由がなくなれば、支給は再開されます。
次のような場合は、障害年金が支給停止になります。
それぞれの内容について、詳しく見ていきましょう。
障害認定基準に該当しなくなったら障害年金は支給停止
先ほどもお伝えしたように、障害認定基準に該当しなくなったら障害年金は支給停止します。
認定基準に満たない程度まで傷病が回復した場合は、障害年金の支給を停止するため「障害給付受給権者 障害不該当届」を提出する必要があります。
障害年金が支給停止になった際、納得できなければ不服申し立てを行うことも可能です。その方法については「障害年金の支給停止が決定しても『審査請求』で不服申し立てができる」の章で説明します。
また障害厚生年金を受給していた人の場合「障害年金の基準には満たない症状だけれど、仕事には大きな支障がある」という状態であれば、障害厚生年金ではなく「障害手当金」を受給することが可能です。
障害年金の支給停止後、病気やケガが障害認定基準に該当するくらいに悪化してしまった場合は、ふたたび障害年金を受け取れるよう申請することもできます。
障害年金の受給期間中にも書類提出が必須!未提出だと支給停止に
障害年金の更新手続きが必要な場合、期日までに必要書類を提出しないと支給停止になってしまいます。
「有期認定」となっているのは、障害の程度が変化する、または完治する可能性がある場合。
障害の状態から「引き続き年金を支給するか」「年金額を変更(減額)するか」などを定期的に確認し、認定を更新する必要があるのです。
有期認定の期間は人により異なり、1年~5年ごとに診断書の提出が必要です。障害年金の更新手続きが必要な人は、次の書類を期日までに必ず提出しましょう。
- 年金受給権者現況届(現況届)
- 障害状態確認届(診断書)
現況届には、住民票の添付またはマイナンバーの記入が必要です。
現況届は、誕生月の月初に日本年金機構から送られてきます。ただし有期認定の場合でも、次のいずれかに該当する場合、現況届は提出する必要がないため送られてきません。
- 住民基本台帳ネットワークで生存が確認できる
- 年金の全額が支給停止となっている
- 年金の支給が決定した日※から、次の誕生月末日までの期間が1年以内
- 支給停止になっていた障害年金の再開から1年を過ぎていない
書類の提出期限を確認したい人・現況届の提出が必要かどうかを知りたい人は、「ねんきんダイヤル」に問い合わせてみてください。
損害賠償金を受け取る人は要確認!障害年金が支給停止になる期間
交通事故など第三者行為による病気・ケガで損害賠償金を受け取る場合は、事故などに遭った日から最大36カ月間、障害年金が支給停止になります。
労働基準法の規定による障害補償で、障害年金の支給が6年間停止する
業務上で病気・ケガを負った人は、国から障害補償給付が支払われる場合もあります。
障害補償を受ける場合は、障害年金の支給が6年間停止することも覚えておきましょう。
20歳前傷病による障害基礎年金の支給停止
国民年金の加入者が20歳前傷病※によって障害基礎年金を受給する場合、通常の支給停止要件のほか、次のような事由があると支給停止となります。
国民年金の加入開始年齢である20歳になる前に、病気・ケガにより障害を負った場合のことです。
- 恩給や労災給付などが受けられる
- 刑事施設・労役場などに拘禁されている
- 少年院などの施設に収容されている
- 日本国内に住所がない
- 受給権者の前年所得が、政令で定める限度額を超える
上の1~4に該当する場合、その期間中の年金は支給されません。
前年所得が制限額を超える場合は、その年の8月から1年間、全額または半額が支給停止となるのです。
・障害基礎年金・恩給や労災給付などの額が、いずれも71万2千円に満たない(※1)
・障害基礎年金の額が71万2千円以上で、恩給や労災給付などの額を超える(※2)
※2:超える額に相当する額の障害基礎年金が支給される
また20歳前傷病による障害基礎年金受給は、「日本年金機構が市区町村から所得情報の提供を受けられないときは、」年に1回「所得状況届」を提出しなければなりません。提出しなかった場合も一時的に支給停止となるので、注意しましょう。
障害年金の支給額について詳しく知りたい方は「障害年金の金額と計算方法!傷病時の給付金も紹介【平成30年度版】」を読んでみてください。
障害年金の停止が決定したとき・支給再開したいときの対処法
では障害年金が支給停止になったときの不服申し立てや、停止されていた障害年金の支給を再開してもらう方法について説明します。
障害年金の支給停止が決定しても『審査請求』で不服申し立てができる
障害年金の受給期間中は、定期的に更新手続きがあります。提出した診断書などの内容によっては、障害年金が支給停止になってしまうことも。
障害年金の支給停止に対して不服がある場合は、審査請求(再審査請求)※をしましょう。
障害年金の不支給・停止が決定した場合や、希望より下の等級に認定された場合、社会保険審査官に対して不服申し立てを行うこと。
「審査請求」の結果にも納得がいかない場合は「再審査請求」をすることが可能です。
ただし審査請求・再審査請求は、必ず次の期限までに行ってください。
請求期限 | |
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審査請求 | 停止する旨を知った日の翌日から数えて3カ月以内 |
再審査請求 | 決定書の謄本が送付された日の翌日から数えて2カ月以内 |
ちなみに「再審査請求」は地方厚生局の社会保険審査官ではなく、厚生労働省内の「社会保険審査会」に行います。
再審査請求の結果にも異議がある場合は、国を相手に訴訟を起こすことも可能。期限は、再審査の結果が送られた日の翌日から6カ月以内です。
障害年金の不服申し立てを行う方法や、ポイント・注意点に関しては「障害年金の不服申し立て方法!審査請求書の書き方・診断書の修正に注意」の記事で詳しく解説しています。
支給停止していた障害年金は傷病が悪化・再発した場合に再開できる
「障害年金の支給が止められたけれど、また病気・ケガの状態が悪化した」という場合、受給要件を満たした65歳未満であれば、障害年金の受給再開が可能です。
障害年金の支給を再開してもらうためには、次の書類を提出する必要があります。
- 老齢・障害給付 受給権者支給停止事由消滅届
- 医師か歯科医師が作成した診断書
障害年金が打ち切りになったときの対処法については、次の記事でも詳しく説明しています。参考にしてください。
障害年金をもらえる期間に注意!停止されたら審査請求してみよう
障害年金の支給停止が決定した場合でも、傷病の状態などから不服申し立て(審査請求)を行うことで、打ち切りを免れる可能性があります。
また病気やケガの状態が再び悪化した場合は、早めに支給再開の手続きを行いましょう。
このような年金制度の仕組みをきちんと知ることは、「本来ならもらえたはずの障害年金がもらえない」という事態を防ぐためにも大切なことです。
受給予定の人・受給中の人は、障害年金が支給停止となる条件を把握し、停止になったときは審査請求ができることも覚えておきましょう。
障害年金の決定に不服がある場合、審査請求や再審査請求をして争うことはできますが、請求人の主張が認められるケースは決して多くありません。
職場の理解を得ながら、無理のない範囲でパートやアルバイトで働いて収入を得るなど、障害年金だけに頼らない生活を意識しておくことも大切になるでしょう。
日本年金機構、社労士法人勤務を経て開業。中小企業の労務管理に従事する一方、年金相談窓口や無料相談会などで年金相談を受けている。