
退職金の平均はいくら?勤務年数や退職理由別の相場をチェック
会社を退職したときにお金がもらえる「退職金」という制度。
しかし、一つの企業でに定年まで勤め上げる「終身雇用」といったシステムが衰退していくなか、退職金も時代の流れとともにさまざまな変化が起きています。
退職金制度の有無から、制度の多様化、さらに支払額や支払い条件に至るまで、退職金がどのような変遷を経てきたかその実態を追ってみましょう。退職金はこれから一体どうなるの?と気になる方必見の、退職金最新情報をまとめてご紹介します。
退職金制度の変遷。データから見る定年退職金の平均額とその推移
毎年実施される中央労働委員会の賃金事情等総合調査では、2年ごとに退職金調査がおこなわれています。過去10年分の推移をみてみると、退職金支給額は以下のような変遷を辿っています。
調査年/学歴別 | 大学・院卒 | 高校卒 |
---|---|---|
平成21年度 | 2290,2万円 | 1883,4万円 |
平成23年度 | 2646,2万円 | 1904,9万円 |
平成25年度 | 2260,9万円 | 1850,9万円 |
平成27年度 | 1978,1万円 | 1541,4万円 |
平成29年度 | 2212,9万円 | 1260,2万円 |
平成27年度調査までは、年度ごとに差はありますが平均して退職金が減少傾向にありました。しかしここ数年、退職金の支給方法にさまざまなパターンが増えたことで企業が退職金制度を採用しやすくなり、退職金支給額の減少に歯止めがかかっている現状です。
退職金制度の多様化
そもそもの退職金とは、企業側が長年にわたる従業員への功労をねぎらう意味で支払うお金でした。基本的には長く働けば働くほど支給額が増え、給与の「後払い」としての意味合いもあります。
しかし、ここ数年転職市場が活性化し、一つの企業で定年まで勤め上げるスタイルだけでなく、転職を繰り返してキャリアアップを図る働き方が増えるようになりました。
そこで、最近では転職をしても転職先の企業に退職金を移せる制度や、定年前でも在職中に年金を受け取れる前払い制度など、時代に応じた退職金制度が登場しています。
退職金の種類は大きくわけて3つ
「退職金」と聞くと、退職時に多額のお金を一括でもらうイメージをお持ちの方もいるのではないでしょうか?退職金は、年金型や前払いなど支払い方法にも複数パターンがあり、企業ごとに定められたルールに基づいて支払われます。
現行の退職金制度には、大きく分けて以下3つの支払い制度があります。
(1)退職一時金
退職時に、会社から従業員へ一括で退職金を支払う制度です。終身雇用があたりまえだった時代に一般的だった支払い方法です。現在でも多くの企業で導入されており、基本的には勤務年数に応じて退職金額が変わります。(※会社の就業規則による)
(2)企業年金
従業員が退職をしたあと年金として退職金を分割して支払う制度です。支払い期間や金額は各企業の規定によって異なり、5年や10年などの一定期間タイプや、生涯にわたって支給する終身タイプがあります。企業年金のなかには、確定給付年金・確定拠出年金・厚生年金基金の3つの種類があります。
(3)退職金の前払い
退職金を分割して、月々の給与や賞与に上乗せして受け取る制度です。基本的に、企業においては退職金の前払い制度だけでなく、複数の年金制度と併用して従業員が自分で選択できることがほとんどです。
ご自身の勤務先でどのような退職金制度が設けられているかどうかは、社内の就業規則や人事や総務などの担当部署で確認してみてくださいね。
退職金の金額はどうやって決まる?勤務年数や退職理由による違い
退職金のルールは企業に一任されている
「退職金」という制度は国の法律で定められているものではなく、企業が独自で設ける給与制度の一つです。そのため、支給条件や支払額については、すべて各企業の独自のルールのもと決められています。
そもそも「退職金制度」を導入する・しないも企業に一任されているのです。
厚生労働省の「平成30年就労条件総合調査」では、調査対象企業の有効回答数の80.5%で退職給付制度を設けていますが、残る約1/5の企業では退職金制度自体がありません。
勤務年数/学歴 | 大学・院卒 | 高校卒 |
---|---|---|
20〜24年 | 1,267万円 | 525万円 |
25〜29年 | 1,395万円 | 745万円 |
30〜34年 | 1,794万円 | 928万円 |
35年以上 | 2,173万円 | 1,954万円 |
※管理・事務・技術職
勤続年数が多いほど、支払われる退職金が多くなる傾向があります。しかし、退職金の支払額はあくまで各企業のルールによって異なるため、実際の支払額は勤務先の企業ごとに確認をする必要があります。
退職理由(会社都合・自己都合)によって退職金の支払額は変わる
「退職する」と一言にいっても、その退職理由によっても退職金の扱いに影響がでます。
会社を辞めると、退職理由によって「会社都合」もしくは「自己都合」に分類をされます。この「会社都合」「自己都合」による退職金の違いとして、東京都産業労働局の「中小企業の賃金・退職金事情(平成28年版)」の一例をみてみましょう。
<高校卒の場合>
勤務年数 | 自己都合退職 | 会社都合退職 |
---|---|---|
10年 | 91,2万円 | 122,2万円 |
15年 | 174,7万円 | 225,7万円 |
20年 | 298,2万円 | 361,7万円 |
25年 | 444,7万円 | 523,5万円 |
30年 | 617,1万円 | 704,0万円 |
<高専・短大卒の場合>
勤務年数 | 自己都合退職 | 会社都合退職 |
---|---|---|
10年 | 959,000円 | 1,274,000円 |
15年 | 1,862,000円 | 2,356,000円 |
20年 | 3,130,000円 | 3,762,000円 |
25年 | 4,681,000円 | 5,407,000円 |
30年 | 6,357,000円 | 7,165,000円 |
<大学卒の場合>
勤務年数 | 自己都合退職 | 会社都合退職 |
---|---|---|
10年 | 1,148,000円 | 1,527,000円 |
15年 | 2,251,000円 | 2,847,000円 |
20年 | 3,805,000円 | 4,577,000円 |
25年 | 5,626,000円 | 6,467,000円 |
30年 | 7,490,000円 | 8.560,000円 |
会社側の倒産や経営破綻、業績悪化による人員整理により一方的に労働契約を解除する場合の退職です。従業員の意思にかかわらず退職を余儀なくされる場合に該当します。
労働者側が自身の都合によって退職を希望する場合の退職です。結婚や出産、介護や病気療養による退職もこの自己都合にあたります。
一般的に、「会社都合」で退職をする場合は労働者が一方的に不利な立場へ立つことが多いため、労働者側へ有利な待遇が受けられるよう退職金の支払額にも差が生じます。
退職金は企業規模によっても大きく金額が異なります。もちろん、企業規模だけで一概に判断できるものではありません。小さな企業でも、大きな企業でも退職金の金額は千差万別です。
民間企業か公務員かによる退職金の違い
民間企業か公務員かによっても退職金の支払額に違いがあります。内閣人事局が実施している「退職手当の支給状況」によると、国家公務員の退職金について以下のデータが報告されています。
勤続年数/退職理由 | 定年 |
---|---|
5〜9年 | 153,8万円 |
10〜14年 | 348,6万円 |
15〜19年 | 649,2万円 |
20〜24年 | 1117,6万円 |
25〜29年 | 1662,4万円 |
30〜34年 | 2121,8万円 |
35〜39年 | 2410,6万円 |
40年以上 | 2291,8万円 |
これら退職金は、年度や各団体の設ける制度によって変更も生じやすく、将来にわたって確実に同レベルの退職金がもらえるかはわかりません。ご自身の勤め先における退職金については、各社の就業規則や賃金規程を随時確認するようにしましょう。
退職金の金額は会社次第だが、少ないと感じたら相談してみよう
退職金は企業ごとにルールを設けて支給する給与制度の一つです。支払い金額や条件に関して不明なことがあれば、人事や総務などの担当部署へ確認しましょう。
万が一もらえる退職金が想定より著しく少なかった場合は、弁護士への相談や労働基準監督署の紛争解決援助制度を検討してみてください。
退職金制度が多様化しているからこそ、各制度のメリット・デメリットを検討し、早いうちから資産運用に資金を回すことも将来の安心を得る一つの手段です。
確定拠出年金や退職金前払いなど近年増加している新たな制度を上手に活用して、退職金のメリットを最大限享受したいものですね。
退職金だけ頼るのは要注意。事前の資金計画で見えない将来に備えよう
今まで当たり前だった制度も、この先いつどうなるかは誰にもわかりません。
5年後、10年後も同じような状況が続くかどうかは見えないもの。そのためにも、まずはしっかりと現状の制度を確認し、退職金の正しい理解を深めましょう。さらに、見えない将来に備えて今からできる資金計画を練り、賢く資産運用をすることも考えておきたいですね。
時代とともに移りゆく退職金の動向にも注目しながら、上手に退職金制度と付き合っていきましょう。