定年退職・退職金
退職金制度を徹底解説!企業年金の種類や金額・もらい方の違い

退職金制度を徹底解説!企業年金の種類や金額・もらい方の違い

老後資金の一つとして大切な退職金ですが、あなたは退職金をいくら受け取ることができるのかご存知でしょうか?自分の退職金額を知るには会社の退職給付制度を理解しておくことが重要です。

この記事では退職給付制度の基本的な知識をはじめ、退職金制度や企業年金制度の種類や特徴、退職金の給付額や計算式に関する知識に加えて、退職金の受け取り方によるメリットとデメリットを税金面についても触れながら説明していきます。

退職給付制度を理解して是非あなたの将来の退職金額を知っておきましょう。

退職給付制度には退職一時金制度と退職年金制度の2種類がある

退職給付制度とは、厚生労働省では次のように定義されています。

退職給付(一時金・年金)制度とは

任意退職、定年、解雇、死亡等の事由で雇用関係が消滅することによって、事業主又はその委託機関等から当該労働者(又は当該労働者と特定の関係にある者)に対して、一定の金額を支給する制度をいう。

退職給付制度は大きく2つに分けることができ、これらを総称して退職金制度とよばれているのです。

  • 退職時に一括して受け取ることができる退職金(退職一時金制度)
  • 一定期間または終身で分割して年金で受け取ることができる退職金(退職年金制度)

退職金がない会社もある!就業規則を確認してみよう

退職金がない会社もあるって聞いたことがあるのですが本当ですか?
退職金がない会社もありますよ。退職金は必ず会社が支払わなければならないものではありませんので。
えっ。法律で決められていないんですか?
そうなんです。退職金については労働基準法第89条に定められてはいますが、退職金制度を定める場合には「対象者の社員の範囲、退職手当の決定や計算、支払い方法・時期に関する事項」について就業規則に記載しなければならないと定められているのみです。

つまり、「退職金を支払わなければならない」とは法律上決められていないのです。ただし、退職金制度がない会社が退職金を支払っても問題ありません。

自分の会社の退職金制度を調べるには就業規則を確認しよう

自分の会社に退職金制度があるかどうかは、就業規則の退職金規定を確認すればわかります。会社によっては退職金規定は就業規則とは別の規程で定めているケースがありますので、退職金規程の有無についても確認しておきましょう。

また採用時に交わした雇用契約書に退職金の支給の有無について記載があるのかも確認しておきましょう。

もし退職金規定がなかったらどうしよう。もらうことができないのかしら?
退職金規定がなくても退職金を慣例的に支払っている会社はあります。過去の退職者が退職金を受け取っているのであればもらえる可能性がゼロというわけではありません。

退職金制度・企業年金制度の種類および特徴

ここでは退職金制度・企業年金制度を5種類に分けてご説明します。

  1. 確定給付企業年金
  2. 企業型確定拠出年金
  3. 中小企業退職金共済制度・特定退職金共済制度
  4. 退職金前払い制度
  5. 自社年金

企業年金制度とは会社が社員のために年金を支給する制度のことで公的年金に上乗せして受け取ることのできる年金です。自分の会社ではどの制度を採用しているのかを確認しておきましょう。

1.確定給付企業年金

確定給付企業年金は、2002年4月に施行された確定給付企業年金法に基づいて創設された現在日本で最も多く利用されている企業年金制度です。

確定給付企業年金はあらかじめ確定された給付額を退職後に受け取ることができる制度であるため、社員は将来の受取額を把握することができます。一方、会社が年金資産を拠出し、運用・管理・退職後の給付すべてに責任を負うため、企業業績や年金資産の運用が著しく悪化した場合などは給付額が減額される可能性があります。

確定給付企業年金には掛金の管理や運用を生命保険会社や信託銀行などの受託機関に任せる「規約型」と特別法人(企業年金基金)を設立して、特別法人が掛金の管理・運用・給付を行う「基金型」の2種類があります。

2.企業型確定拠出年金

企業型確定拠出年金は、会社が一定額の年金資産を毎月積み立ててくれたものを社員が自ら資産運用する制度です。

社員は金融商品の選択や資産配分の決定などの様々な運用により年金資産を増やすことができます。一方で運用成績によっては将来受け取ることのできる金額が目減りする可能性も十分あるため、年金資金や運用状況を定期的に確認しておく必要があります。

将来受け取る金額が確定している確定給付企業年金との大きな違いの一つです。

3.中小企業退職金共済制度・特定退職金共済制度

中小企業退職金共済制度(中退共制度)は、中小企業のための国の退職金制度です。この中退共制度は、独立行政法人勤労者退職金共済機構・中小企業退職金共済事業本部(中退共)が運営しており、掛金の管理・運用・給付のすべてを行います。

退職後、社員が自ら中退共に退職金を請求し直接社員の口座に振り込まれます。金額は法令で定められている基本退職金と予定運用利回りを上回った場合に上積みされる付加退職金が支給される確定給付型の制度です。

一方、特定退職金共済制度(特退共)は特定退職金共済団体(商工会議所など)が生命保険会社と実施する制度です。そのため中退共と異なり生命保険会社が破綻した場合には影響を受ける可能性があります。

特退共も確定給付型の制度であり中退共とほぼ同様の制度ですが、中退共と異なり企業規模に関係なく利用することができる制度です。

中退共は勤続1年未満の退職者の場合、給付はありませんが、特退共の場合は給付されるなど給付額に違いがあります。

4.退職金前払い制度

退職金前払い制度とは、退職金を在職中に毎月の給与や賞与に上乗せして受け取ることのできる制度です。社員としては「毎月自由に使える資金が増える」「転職するかもしれないから今のうちにもらっている方が得だ」と考えることもできますが、

一方で前払い分は退職所得とならないため、税法上の優遇措置を受けることができず、税金や社会保険料の負担が増えたり、前払い分を使いきってしまう可能性が考えられます。

退職金の前払い分については老後資金としてしっかりと自分で管理・運用していくことが大切であるといえます。

5.自社年金

自社年金制度を採用している会社も中には存在します。自社年金とは企業独自で退職金の積み立て、管理、年金給付を会社独自に行う年金制度です。

確定給付企業年金や確定拠出企業年金のように法律で定められている制度ではないため、規制がなく会社は自由に制度を定めることができる一方、税制面での優遇措置など制度上のメリットを受けることができません。

もし、あなたの会社が自社年金制度を採用している場合は、会社によって異なるため制度についてしっかりと会社に確認しておくことが必要です。

退職金の給付額と退職金の計算式

退職金制度は会社によって違うと思うけど、おおよそいくら位受け取ることができるのですか?
退職金額は会社が採用している「退職金の制度」や「退職金の計算方法」によって異なります。厚生労働省の平成 25 年就労条件総合調査によると、勤続35年以上の定年退職者における退職金額は次のとおりですので参考にしてください。
退職一時金制度のみ 退職年金制度のみ 両制度併用
大卒者(管理・事務・技術職) 1,567万円 2,110万円 2,562万円
高卒者(管理・事務・技術職) 1,470万円 1,822万円 2,272万円
高卒者(現業職)  1,184万円 1,541万円 1,872万円
退職金の計算方法にはどのようなものがあるのですか?
退職金の計算方法は主に「基本給連動方式」「定額方式」「点数(ポイント制)方式」「別テーブル方式」の4種類があります。会社の退職金規定を確認してどの計算方法が採用されているのかを理解しておきましょう。

それぞれの特徴と計算方法は次のとおりです。

1.基本給連動方式

基本給連動方式とは、社員の退職時の基本給(または基本給の一部)に勤続年数に応じた支給率を乗じる計算方法です。

従来より最も多くの会社が採用している計算方法です。退職時の基本給がいくらになるのかによって左右される方式といえます。

2.定額方式

定額方式とは、勤続年数に応じて一定額を支給する方式です。

例えば、勤続年数10年で200万円、20年で400万円というように、退職時の基本給は関係ありません。そのため、退職金額の予想がつきやすい制度であるといえます。

3.点数(ポイント制)方式

点数(ポイント制)方式とは、資格等級や役職などを基準にして1年あたりのポイントを定めて、入社時から退職時までの累計ポイントに単価を乗じることで計算する方式です。

例えば、「平社員:10点、課長:30点、部長:50点」「各勤続期間が平社員:15年、課長:10年、部長:5年」「単価:1万円」の場合

{(10点×15年)+(30点×10年)+(50点×5年)}×1万円=700万円となります。

能力や成果が反映される仕組みですので、中途入社であっても退職金額が多くなる可能性があります。

4.別テーブル方式

別テーブル方式とは勤続年数に応じて定められた基準額に、役職など等級別に応じた支給率を乗じて計算する方法です。退職時の基本給とは連動しませんが、退職時の役職などが退職金額を左右する方式といえます。

退職金の受け取り方によるメリットとデメリット

退職金の受け取り方は、「一時金のみ」「年金のみ」「一時金+年金」の3パータンがあります。会社によって受け取り方を選択できる場合もあればできない場合もありますが、ここでは受け取り方によるメリットとデメリットについてご説明します。

(1)一時金のみで受け取る場合

メリット

  • 税制上の優遇措置を受けることができる
  • 退職金が社会保険料の計算対象とならない

退職一時金の課税方法は「退職所得控除」というみなし経費を差し引くことができることに加えて差し引いた金額の半分のみが課税対象となり、更には他の所得と分けて税金を計算するため、退職金額と勤続年数によっては所得税や住民税が全くかからないケースもあり得ます。

デメリット

  • 計画を立てておかなければ無駄遣いするリスクが高い

(2)年金のみで受け取る場合

メリット

  • 退職金の運用収益を得ることができる
  • 定期的に収入が得ることができる

退職金の原資が受取期間中も運用されており、運用利率にもよりますが、金利が低い現状では定期預金に預けるよりもお得といえます。

デメリット

  • 年金の受け取りは雑所得として給与や公的年金などに合算して課税される

そのため所得税や住民税、国民健康保険料や介護保険料が高くなります。

(3)一時金と年金の両方で受け取る場合

一時金のみで受け取る場合と年金のみで受け取る場合のメリットとデメリットの両方をあわせもちます。

一般的には手取り額ベースで最も多いのは一時金で受け取る場合、支給額が最も多いのは年金で受け取る場合ですが、併用した場合はその中間といえます。

退職金のもらい方による税金の違いについては次の記事にて詳しく解説しています。

自分の退職金額を知るには退職金制度を理解すべし!

退職金制度は会社ごとによって異なるため、自分の会社の制度を詳しく知る必要があります。

・退職金制度は退職一時金制度と退職年金制度の2種類がある。
・会社は退職金を法的に必ず支払わなければならないものではなく、会社の退職金規定によって異なる。
・退職金制度、企業年金制度には「確定給付企業年金」「企業型確定拠出年金」「中小企業退職金共済制度・特定退職金共済制度」「退職金前払い制度」「自社年金制度」などがある。
・退職金の計算式には「基本給連動方式」「定額方式」「点数(ポイント制)方式」「別テーブル方式」などがある。
・退職金の受け取り方には「一時金」「年金」「一時金+年金」がある。

老後のライフプランを立てるためにも自分の会社の退職金制度はどのような制度なのかを退職金規定であらかじめ確認し、将来の退職金額を知っておくことは重要ですね。