退職金の相場は自己都合と会社都合で変わる!損しないための予備知識
定年退職や転職、結婚や出産などさまざまな理由で会社を辞めるき、会社から支給される『退職金』は、従業員にとって見逃せない大切な給与制度ですよね。
しかし、退職金の支給制度にも退職理由が「会社都合」か「自己都合」かによって大きな違いが生じることをご存知でしょうか?
今回は、会社を辞めるときに損をしない「会社都合退職」と「自己都合退職」の違いをわかりやすく解説します!退職に際してお悩みの方も、こちらのページをぜひお役立てくださいね。
そもそも会社都合と自己都合は何がちがうの?判断基準はコレ
退職理由は会社都合と自己都合に分けられる
会社を退職すると、その退職理由によって「会社都合退職」もしくは「自己都合退職」に分類され、国の制度や企業の退職金など所々の待遇に違いが生じる場合があります。退職理由の違いは以下の通りです。
会社側の倒産や経営破綻、業績悪化による人員整理により一方的に労働契約を解除する場合の退職です。従業員は、意思にかかわらず退職を余儀なくされます。
労働者側が自身の都合によって退職を希望する場合の退職です。結婚や出産、介護や病気療養による退職も自己都合にあたります。
簡単にいえば、退職の理由が「会社側」にあるか「労働者側」にあるかの違いです。
多くの退職者の退職理由が「自己都合退職」に該当します。会社都合による退職においては、労働者を一方的に不利な立場へ立たせるため、国からの失業手当が早く&長く受け取れます。
定年退職はどっち都合?判断ポイントを解説
そこで気になるのが「定年退職」の退職理由ですよね。定年退職はもともと会社ごとに決まっていた年齢に達すると自然に会社を退職する流れになります。
この定年による退職は、会社都合・自己都合どちらにもあてはまりません。
ただし、企業が業績によらず人事制度として設ける『選択定年制』においては、退職年齢を45歳・50歳・55歳などから社員が自分の意思で退職年齢を選ぶことができます。
この選択できる年齢や条件は企業に委ねられていますが、選択定年制はあくまで社員が自分の意思で退職を選択するため「自己都合退職」として扱われる場合があります。(※企業の就業規則によって異なる)
ただし、「定年退職」扱いであればこの3ヶ月の給付制限がなく、失業手当が支払われるまでの期間が短縮されます。
会社都合と自己都合、もらえる退職金の違いは60万円?!
東京都産業労働局による退職金のモデルケースの場合
会社から支払われる「退職金」にも、退職理由が会社都合か自己都合かによって差が生じるのが一般的です。
もちろん、退職金の金額や支給条件は企業ごとに異なるため、あくまで一例ではありますが、東京都産業労働局の「中小企業の賃金・退職金事情(平成28年版)」を参考にしてみましょう。
勤務年数 | 自己都合退職 | 会社都合退職 |
---|---|---|
10年 | 912,000円 | 1,222,000円 |
15年 | 1,747,000円 | 2,257,000円 |
20年 | 2,982,000円 | 3,617,000円 |
25年 | 4,447,000円 | 5,235,000円 |
30年 | 6,171,000円 | 7,040,000円 |
勤務年数 | 自己都合退職 | 会社都合退職 |
---|---|---|
10年 | 959,000円 | 1,274,000円 |
15年 | 1,862,000円 | 2,356,000円 |
20年 | 3,130,000円 | 3,762,000円 |
25年 | 4,681,000円 | 5,407,000円 |
30年 | 6,357,000円 | 7,165,000円 |
勤務年数 | 自己都合退職 | 会社都合退職 |
---|---|---|
10年 | 1,148,000円 | 1,527,000円 |
15年 | 2,251,000円 | 2,847,000円 |
20年 | 3,805,000円 | 4,577,000円 |
25年 | 5,626,000円 | 6,467,000円 |
30年 | 7,490,000円 | 8.560,000円 |
本調査によるモデル退職金では、平均して高卒で約66万円、高専・短大卒で平均60万円、大学卒で約73万円ほどの退職理由による支給額の差が出ています。
こちらはあくまでモデルケースですが、自己都合退職の場合は退職金が減ってしまうことがほとんどです。
さらに、退職金とは国の法律で定められた制度ではないため、支給条件や金額は企業にすべて一任されています。「会社をやめれば退職金がもらえる!」と決まり切ったルールはなく、退職理由や勤務年数によって個人ごとに状況が異なるので注意が必要です。
よくある退職金トラブル5選!退職金が支払われない、減らされるときの対処法
会社でリストラされた!退職金は上乗せされる?
会社が経営状況悪化のためにリストラを断行する場合、企業によっては希望退職を募る場合があります。
この希望退職制度において、退職希望者には優遇条件として退職金の割り増しや再就職の斡旋(あっせん)などがおこなわれます。
このようなリストラによる希望退職は、企業側の経営に起因する退職であるため「会社都合退職」として扱われます。勤め先が希望退職を募るような場合、割り増し退職金を目当てとして早期に退職を選ぶ人もいます。
会社都合のはずなのに、退職金が支払われない!なぜ?
そもそも、企業による退職金には法的義務がありません。
つまり、退職金が支払われるか、支払われないかは、企業ごとに定める退職金規定の内容によって決まります。
もしも経営不振や業績悪化により「会社都合」で退職しても、企業の就業規則や退職金規定によっては退職金が支払われないケースがゼロではありません。
また、退職金の制度自体があるかないかも企業によって異なります。
2018年現在、退職金制度を設けている企業は約75%といわれ、4社に1社は退職金制度がないことになります。
もともと退職金制度を設けていない会社であれば、退職理由によらず退職金の給付を受けられないかもしれません。退職金はあくまで企業ごとの労働契約に基づいて支払われるため、勤め先の退職金規定をあらかじめ確認しておくことが賢明です。
自己都合退職だと退職金が減らされると言われた!
従業員が自らの意思で退職をする「自己都合退職」を選んだ場合、企業側は退職金の減額もしくは不支給をすることが可能なのでしょうか?
答えは「会社の社内規定による」ことになります。
企業の就業規則において退職金の減額や不支給等の規定があり、その内容が合理的であると判断されれば、違法であるとは認められません。
さらに、退職金は基本的に勤務年数を基準に支給されることが多いため、休職や休業によって勤務年数にカウントされない期間があれば、その分退職金も減ることになります。退職金の減額対象となる「勤務年数に含まれない期間」として、以下の例が挙げられます。
- 私傷病による休業
- 育児や介護による休業
もちろん企業によっては育児・介護休業も勤続期間に参入するケースもあります。もしも退職金の減額や不支給をされ、会社の対応に疑問を持つ場合は、まず企業の社内規定を確認するようにしましょう!
社内規則に明記があるにもかかわらず退職金が支払われない!
もしも万が一、社内規定に退職金の定めがあるにもかかわらず規定通りの支払いがない場合は労働基準監督署へ相談することができます。
企業が就業規定を守らず従業員への賃金給付を怠った場合、労働基準監督署により違法行為が認められ、指導や処分が命じられます。
労働基準法に基づいて労働条件の確保や改善指導、労災保険の給付などをおこなう厚生労働省の出先機関のこと
それでも企業が退職金の支払いに応じない場合は、裁判へ発展するケースもあります。必要に応じて退職金に関して記載のある書類や社内資料などを用意しておくと安心です。
退職金の割り増し交渉をしたい!どうやって相談しよう?
企業によるリストラで退職を余儀なくされた場合、企業側へ退職金の割り増しを交渉することはできるのでしょうか?交渉できる主張として、以下の項目が挙げられます。
- 不当な退職推奨であることを主張する
- 未消化の有給休暇の買取を求める
- 退職時期を交渉する
会社都合による退職によって従業員が一方的に不利を被ることを主張すれば、退職金の割り増し交渉ができる可能性があります。退職推奨がおこなわれた個別面談の記録や、有給休暇の残数などを確認できる証拠を残しておくとよいでしょう。
また、退職時期を早めることを交換条件として退職金の割り増しを主張することもできます。企業側は雇い期間を短縮できるため、賃金を減らせる代わりに退職金の増額に応じる可能性が高いです。
リストラによる解雇の理由に納得ができないようであれば、一度は会社との交渉を検討してみましょう。
退職金制度のルールは会社次第!泣き寝入りする前にしっかり確認を!
退職理由が「会社都合」か「自己都合」かによって退職金に差が生じたり、退職金の減額や不支給がおこなわれたりする場合も、すべては企業ごとに定める就業規則や退職金規定に基づいて判断されます。
退職金は「当たり前にもらえる」ものではなく、勤め先によって大きく条件が異なることを大前提として捉え、ご自身の勤め先における制度をしっかりと把握しておきたいですね。
退職金制度は時代とともに変化をしているため、これからもアンテナを張り最新の退職金情報をチェックしていきましょう!