退職金専用の定期預金は落とし穴に注意!失敗しない資産運用の秘訣
定年退職を迎え、手元に入った多額の退職金。そのまま寝かせておくのはもったいない、とお考えの方も多いのではないでしょうか?そこでよく耳にする「退職金専用の定期預金プラン」。
退職金定期預金は、通常の定期預金よりも高金利かつ退職時にしか利用できない特別な定期預金です。
しかし表面上の「高金利」ということばの通り、本当におトクな資産運用方法なのでしょうか?
今回は退職金専用定期預金プランのしくみや実態について、メリット・デメリットとともにわかりやすく解説します!
退職金専用の「定期預金」って何がちがうの?3つの特徴
特徴1:通常の定期預金よりも高金利
退職金専用の定期預金プランの特徴は、なんといっても「高金利」であることです。
銀行に一定期間(数カ月~年単位)の預け入れ期間を設定してお金を預けることで、金利が発生するしくみです。基本的には、預け入れる「期間」と「金額」によって利率が変動します。
通常の定期預金では年0.01~0.02%ほどの利率が普通です。しかし退職金定期預金であれば年0.5%や2.0%、さらに金融機関や運用プランによっては年5.0%以上など、破格の金利が設定されています。
しかしこれら高金利は、一概に預け入れた預金すべてに適用されるとは限りません。預け入れ金額や期間、または投資信託という資産運用との併用など、諸条件があるため注意が必要です。
特徴2:退職金を受け取ってから一定期間以内しか申し込めない
「退職金専用」と銘打つように、退職金専用の定期預金に申し込む資産は「退職金」であり、かつ基本的には退職金受け取り後1年以内に申し込む必要があります。
退職金であることを示すために、申し込み時に「退職所得の源泉徴収票」や「退職金受取口座の通帳」など、退職日や退職金の入金日を確認できる資料の提出が求められることもあります。
退職金を受け取り後、限られた期間のなかで定期預金の選択をしなければなりません。
特徴3:基本的には本人限り、1回のみの利用
退職金の定期預金プランは、基本的には退職金を受け取った本人名義で、1回のみ利用可能となっています。
なぜなら例えば退職金定期預金の優遇期間が「3カ月」であった場合、優遇期間の3カ月で解約をして、もう一度退職金プランに申し込む、という方法が可能となってしまうからです。
もしそのような申し込みができてしまえば、預け入れた側は大きな得となりますが、金融機関が損をすることになってしまいます。よって、申し込みの回数制限や、上限金額が金融機関ごとに設定されています。(金融機関によっては申し込み回数制限のない場合もあります。)
また基本的には退職金を受け取った本人名義であることが条件となっており、代理人での申し込みはできません。
よく確認しよう!退職金「定期預金」の詳しい申込条件
退職金の定期預金プランといっても、その内容や申し込み条件は千差万別です。ここでは、メガバンクと地方銀行を事例に解説していきます。
退職金特別プラン定期預金コースの場合 | |
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優遇期間 | 預け入れ後3ヶ月 |
優遇金利 | 年0.80% |
申込金額 | 500万円以上1億円以内 |
申込条件 | 退職金受取から1年以内/退職日・退職金を証明できる書類の提出/退職金受取人本人名義であること/メールドレスの登録とアンケートの回答 |
申込方法 | 店頭窓口のみ |
優遇期間終了後 | 3ヶ月後は自動更新、店頭表示金利(年0.015~0.020%)が適用 |
その他 | 家族サービスあり※ |
※退職金特別プランご利用の家族も退職金特別プランと同内容の金利上乗せを利用できるサービスです。
退職金円定期預金プラン | |
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優遇期間 | 預け入れ後3ヶ月 |
優遇金利 | 年1.5% |
申込金額 | 1円以上~退職金受取金額を上限とする |
申込条件 | 退職金受取から1年以内/鹿児島県・宮崎県・沖縄県在住/退職日・退職金を証明できる書類の提出/退職金受取人本人名義であること |
申込方法 | 店頭窓口のみ |
優遇期間終了後 | 3ヶ月後は自動更新、店頭表示金利(年0.01%~0.03%)が適用 |
その他 | 申し込み受付期間が限定されている |
退職金専用の定期預金プランは、金融機関によって金利や申込条件が大きく異なります。ここで見る例のように、預け入れ金額の上限や、申込者の居住地域が限定されている商品もあります。申込期間もさまざまで、同プラン内容がつねに用意されているとは限りません。
また、定期預金はその名の通り「定期」でお金を預けるシステムです。基本的には中途解約をすることができません。万が一中途解約をする場合は、中途解約手数料が発生することを理解しておきましょう。
さらに高金利?「投資信託」とセットの退職金定期預金プラン
退職金専用の定期預金プランを見ていると、5.0%~7.0~などの超高金利商品があります。
これら商品の多くは、「投資信託」がセットになっていることがほとんどです。
株式や債券などを投資・運用するプロにお金を託し、その運用結果によって資産を増やすしくみです。
退職金の定期預金プランには、この投資信託の同時申込が条件となっている商品があります。とくに優遇金利が5%以上の超高金利な場合は、投資信託がセットになっている商品がほとんどです。この場合、退職金の一部を投資信託として資産運用をすることが必須条件となります。
この投資信託は、資産運用が上手くいけば資産を増やすことにつながります。しかし、逆にいえば元本割れリスクもつきまとうことを意味します。
さらに注意しなければならないのが、投資信託にかかる「運用管理費」や「販売手数料」といった諸費用が発生する点です。
投資のプロが自分に代わって資産運用をするため、手数料を支払う必要がありますが、それが投資によって得られる金利を上回るかどうかはわかりません。実際には、投資信託の高い手数料が、退職金定期預金の優遇金利を上回ってしまう可能性もあります。
投資信託とセットの高金利商品は、事前に手数料や諸経費がどれだけかかるかを把握したうえで、優遇金利以上のメリットが出るかどうかを確認することが大切です。
退職金「定期預金」を選ぶためのポイント2つ
ポイント1:定期預金プランの場合、優遇期間後の金利を理解しよう!
退職金を定期預金にする場合は、優遇期間が終了したあと基本的には自動更新され、通常の定期預金と同率の金利が適用されることを理解しておきましょう。
もし通常0.01%~0.02%の年利の定期預金を、退職金プランで0.8%の優遇を受けられたとしても年間で換算するとそれほど大きなメリットにはなりにくいといえます。
定期預金は「元本割れ」のリスクが少なく、安全に資産運用しやすい方法ですが、大きな儲けは期待できないのが実情です。
あくまで「資産を守りながら安全に増やす」という選択肢であることを理解しておきましょう。
ポイント2:投資信託セットの場合、手数料についても調べておこう!
高金利が魅力的な投資信託セット販売の退職金定期預金プランの場合、投資信託にかかる手数料についてしっかり把握をしていなければなりません。
投資信託セットプランのなかには、せっかくの優遇金利で得た利息を手数料が上回る可能性も考えられます。
高い金利数値に惑わされず、冷静な判断をもってトータルで利益を生み出せるかどうかを検討することが大切です。
まとめ:退職金を定期預金に入れるメリット・デメリットを振り返る
金額が大きいからこそ、定期預金に入れるかどうかは慎重に考えたいですよね。この記事で紹介してきた点を含めメリット・デメリットをおさらいしてみましょう。
- 元本割れリスクが少ない
- 通常の定期預金に比べれば、一定期間優遇金利が受けられる
- 使い道がないお金の浪費を防ぎ、貯蓄につながる
- 中途解約ができず、資金が拘束される
- 限られた期間での優遇のため、大きな儲けは期待できない
- 高金利商品には投資信託がセットになることがある
定期預金に預けるメリット・デメリット両方を踏まえて、自分にとってよりよい選択をしてくださいね。
退職金を「定期預金」に入れる前に考えたいこと
退職金の優遇定期預金プランは、期間や申込条件など各金融機関によってさまざまなパターンがあります。
たしかに通常の定期預金よりは高い金利が優遇されますが、あくまで一定期間のみ対象となり、総合的に判断してそれほどの高い金利が見込めるとは言い切れません。
さらに超高金利を謳う投資信託とセットの退職金プランには、手数料が発生することも忘れてはなりません。また定期預金は満期を迎えるまでは原則引き出すことができず、急な出費にも対応できないことも念頭に入れておきましょう。
退職金に定期預金は、当面つかう必要のないお金を安全かつリスクを少なく運用する方法としておすすめです。ただし、申し込める期間や条件が設定されていることがほとんど。
退職金の運用方法については、安易な情報に流されず、事前にしっかりと比較検証して納得のできる選択をしましょう。
※記載の情報は2018年10月現在のものです。