定年退職後の税金を徹底解説!社会保険料・確定申告にも注意を
定年退職後は、現役時代と異なり退職金や貯蓄を切り崩しながらの生活になると考えられます。そうすると支出をできる限り抑えていくことが必要となりますが、どうしても必要な支出の一つに税金があります。
現役時代は給与より天引きされ会社が年末調整を行ってくれるため、意外と自分がいくら税金を納めているかは把握できていないもの。
ここでは「定年退職後に支払う必要のある税金」や「定年退職後1年目に注意すべき点」「税金以外に必要な出費」「定年退職後にできる税金対策」「定年退職後の確定申告の手続き方法」などについてご説明します。
定年退職後にいくらくらいの税金が必要になるのか、しっかり確認しておきましょう。
定年退職後に支払う主な税金は所得税・住民税・固定資産税の3つ!
「2017年家計調査報告(家計収支編)」(総務省統計局)によると、夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯の1ヶ月の家計収支は、「実収入:209,198円/支出:263,717円(非消費支出 28,240円、消費支出235,477円)」です。
毎月の赤字は54,519円となっており、老後資金の必要性を認識することができますが、注目すべきは、非消費支出が支出合計額の約11%、赤字額の約52%を占めているという結果です。
この「非消費支出」とは、税金や社会保険料など原則として消費者の自由にならない支出のことを指します。ここでは、定年退職後に支払う税金として所得税、住民税、固定資産税の3種類を見ていきましょう。
【1】定年退職後に支払う所得税
現役時代に給与から天引きされていた所得税ですが、定年退職後も再雇用などで働かれる場合は給与に応じて所得税が天引きされることになります。
もちろん働かなければ給与における所得税を納める必要はなくなりますが、株や不動産の売買、公的年金などを受け取る場合は金額に応じて所得税が発生します。
定年退職後の無職である方の主な収入源は公的年金(老齢年金)であると考えられますので、ここではほとんどの人が関係ある老齢年金にかかる所得税について詳しくご説明しましょう。
老齢年金の金額が65歳未満の方は108万円未満の場合、65歳以上の方は158万円未満の場合は所得税がかかりません。
これらの金額を超えた場合、年金より所得税が天引きされて受け取ることになります。
しかしながら、「扶養親族等申告書」を日本年金機構へ提出した場合は、108万円または158万円を超える年金額であっても、独身者で65歳未満の方は月額9万円、65歳以上の方は月額13.5万円までであれば所得税が天引きされることはありません。
【2】定年退職後に支払う住民税
所得税と同様、現役時代には給与より天引きされていた「住民税」。所得割額と均等割額により成り立っており、市区町村によって異なりますが、目安として所得割額は前年の課税所得の10%、均等割額は5,000円~6,200円(年額)がかかります。
公的年金(老齢年金)を受け取る方の場合は、65歳以上に受け取る老齢年金より天引きされることになります。
ただし年額18万円に満たない年金の場合は天引きされません。
退職時期が1月~5月の場合
原則として未納付分を最後の給与から一括で天引きされ、6月以降は市区町村より送付される納税通知書によって納付します。
退職時期が6月~12月の場合
翌年5月までの住民税を退職金などから一括で天引きされるか、市区町村より送付される納税通知書によって納付するかを選択します。
ご自身で納める方法は普通徴収とよばれていて、年4回の納付期限までに納付しなければなりません(第1期:6月末、第2期:8月末、第3期:10月末、第4期:翌年1月末)。
定年退職後の住民税がいくらになるのか、あらかじめ試算しておくことをおすすめします。
【3】定年退職後に支払う固定資産税
固定資産税はあなたが所有している住居や土地に対してかかるものであるため、収入の有無は関係ありません。
つまり収入がなくても固定資産の価値(評価額)によって税額が決まり、地価が高騰すれば現役時代よりも高い固定資産税を納める可能性も考えられます。
【4】定年退職後に支払う(軽)自動車税
自動車を保有していない方はかかりませんが、自動車がなくては生活に困る地域にお住まいの方は定年退職後も支払い続けなくてはなりません。
(軽)自動車税は毎年4月1日時点の所有者に対して発生するものであるため、手放す場合は抹消手続きが必要です。総排気量が少ない自動車への乗り換えやエコカー減税の対象となる自動車への乗り換えなどを検討すれば税金を軽減することが可能となります。
定年退職後は社会保険料の支払いも忘れずに
60歳以上であれば年金保険料の支払いは必要ありませんが、健康保険料や介護保険料は支払う必要があります。配偶者がいれば配偶者の分の支払いも必要です。
なお60歳未満の配偶者を扶養している場合は「配偶者の国民年金保険料」の支払い義務も発生します。
例えば「前年の所得が400万円以下で、かつ今年の所得見込み額が前年と比べて2分の1以下に減少し、納付が困難な場合」などに対して住民税を安くしてくれる仕組みがあります。
市区町村によって取り扱いが異なるため、お住まいがある役所に相談してみましょう。
他にも国民健康保険料や固定資産税、軽自動車税についても減免制度があります。減免を受けるには自ら申請しなければならないので注意してくださいね。
定年退職後に確定申告は必要?還付金について知っておこう
定年退職後に、確定申告を行うと還付金があるかもしれません。現役時代は会社が年末調整を行ってくれていたと思われますが、定年退職後はご自身で確定申告を行う必要があります。
しかしながら、年金受給者であれば確定申告が不要なケースもあります。ここでは、「定年退職後に確定申告が必要な方はどのような方なのか?」「そもそも還付申告とは何なのか?」などについてご説明します。
定年退職後に確定申告が必要なケースは次の3つが考えられます。
1.公的年金などの収入合計金額が400万円を超える場合
収入の合計金額であることがポイントです。
2.公的年金など(雑所得)以外の所得金額が20万円を超える場合
雑所得以外の所得とは、給与所得、生命保険満期返戻金、株式などの配当金などをさします。
3.所得控除を受けたい場合
次のような所得控除があります。
- 医療費が一定額を超えて、医療費控除を受ける場合
- 災害や盗難、横領によって資産に損害を受けて雑損控除を受ける場合
- 社会保険料・生命保険料・地震保険料などの控除を受ける場合
- 日本年金機構へ「扶養親族等申告書」の未提出者で所得控除を受けたい場合
控除については次の記事でも詳しく取り上げているので、合わせて参考にしてくださいね。
納めすぎている所得税は還付申告で戻ってくる可能性がある
給与などから徴収された所得税額や予定納税をした所得税が計算した所得税よりも多い場合に、確定申告をすることによって納めすぎている所得税の還付を受けることをいいます。
年末調整されずに退職した場合は、給与や賞与から天引きされた所得税を清算していないため、確定申告をすることによって還付を受ける可能性が高くなるといえます。
還付申告は、確定申告期間とは関係ありませんので、その年の翌年1月1日から5年間提出することができます。
忘れていた場合は最寄りの税務署に行ってみるとよいでしょう。
確定申告の手続きの流れと必要書類
マイナンバーカード、ICカードリーダライタまたは税務署で発行されたID・パスワードによって、パソコンはもちろん、スマートフォンやタブレット端末よりe-Taxで送信することも可能なんですよ。
- 確定申告書AまたはB
- マイナンバーカード(ない場合は別途書類が必要)
- 申告する年の源泉徴収票(原本)
- 申告する年の公的年金などの源泉徴収票(原本)
- その他に収入がある場合:収入金額及び必要経費が分かる書類など
- 各種控除証明書
- 還付を受ける場合は申告者名義の預貯金口座番号が分かるもの
- 印鑑
書類の書き方は必要書類などを持って税務署などに行けば教えてもらうこともできますし、ご自宅などからであれば国税庁が公開している「確定申告書等作成コーナー」から画面の案内に従って金額などを入力すれば簡単に作成することができます。
作成した申告書はe-Taxで送信するか、印刷して税務署へ郵送しましょう。
定年退職後にかかる税金や社会保険料には要注意
これまで現役時代には会社が年末調整を行ってくれていましたが、定年退職後は自分で確定申告をすることが必要になってきます。定年退職後は特に還付金を受ける可能性が高いので忘れずに行っておきましょう。
今後、2019年10月の消費税10%への引き上げをはじめ、国の財政状況や少子高齢化を考えると、各種税金の引き上げ、年金の支給開始年齢の繰り下げ、年金給付額の減少、医療費負担割合の増加など想定され、非消費支出は増加傾向にあると考えられます。
そのため、税金や保険料などについて理解し、今後の税制改正や社会保障制度の見直しなどにも注目しておくことも大切であるといえます。