学資保険の受取人で変わる税金!所得税と贈与税を計算式で比較しよう
子供の将来の教育資金を貯めるため学資保険に加入しよう!いざ契約をするときに「受取人」をだれにすべきか悩む人も多いのではないでしょうか?
「受け取れればだれでもいいんじゃない?」と考えている人はちょっと待ってください。
実はこの受取人が誰になるかで、将来学資金を受け取る時に「税金がいくらかかるのか」が変わるんです。
ポイントは契約者と受取人の関係。そこで学資金を受取るときの税金が「所得税」になったり、「贈与税」になったりします。場合によっては税金がかからずに、そのまま無税で受取ることができる場合も。
せっかく子どものためにコツコツと貯蓄した学資保険です。1円でも多く教育や進学資金に利用できるよう「賢い受け取り方」をいっしょに考えていきましょう。
学資保険の受取人とは?契約者である必要はなし
学資保険に関係する人間は「受取人」の他に、「契約者」と「被保険者」が存在します。
契約者 | 学資保険の保険料を負担する人 |
---|---|
被保険者 | 学資保険の保険の対象となる人 |
契約者は保険料を負担する人
契約者とは保険会社と保険の契約を交わし、保険料の負担をする人を指します。
学資保険の場合両親のうちのいずれか、または祖父母が契約者となる場合もあります。そして学資保険にかかる税金を考える場合、この「保険料を誰が負担したか」ということが重要なポイントとなります。
被保険者は保険の対象となる人
被保険者とはその保険の対象となる人を指します。具体的に言えば生命保険の場合、「被保険者の生命」に保険をかけます。そしてこの被保険者が死亡した場合に保険金がもらえる仕組みになっているのです。
学資保険は被保険者だけではなく、契約者の生命も保障の対象
学資保険の目的は「子供の教育資金を貯めること」にあります。そのためその対象(被保険者)である子供が死亡してしまっては、保険自体の意味がなくなってしまいます。
そのため学資保険では被保険者である子供が死亡した場合、それまで支払った保険料の総額もしくは、その時点での解約返戻金相当額が支払われます。
その時点で保険を解約した場合に戻ってくるお金のことです。
さらに「払込免除特約」という形で「契約者」の生命の保障もかけています。この場合の払込免除特約とは契約者である親に万が一の事があった場合、それ以降の保険料の払込が免除されるというものです。
この払込免除特約を付けることによって、通常の生命保険と同じ「一家の大黒柱が亡くなった場合の経済的保障」も実現しています。
意外と重要!税金が変わる保険金の受取人
保険金受取人とは、その名の通り保険金を受け取る人のことを指します。学資保険の場合は契約者と受取人が同じ場合が多いですが、夫が契約者で妻が受取人、祖父母が契約者で父あるいは母が受取人という場合もあり、ケースによっては税金が変わってくるので注意が必要です。
受取人になれる人は配偶者と二親等以内の血族
学資保険の受取人になれるのは、次のどちらかです。
- 配偶者
- 二親等以内の血族
父母、子、子の配偶者、祖父母、孫、孫の配偶者、兄弟姉妹です。
学資保険に当てはめると、両親、祖父母、子供自身となります。
受取人を変更することは可能!保険会社に確認しよう
被保険者はその保険の対象ですから変更はできませんが、「契約者」と「受取人」は保険会社に申し出ることにより変更することが可能です。一般的な保険の場合は保険金殺人の可能性などがあるため、受取人の変更には被保険者の同意が必要です。
離婚の場合は注意!受取人変更をしないと学資金を受け取れないことも
離婚した場合、子供の親権は母親が持つことが多くなっていますが、学資保険の契約者や受取人が父親だった場合、そのままにしておくと学資金を受け取れないことがあります。
できれば離婚をする前に保険の契約内容を確認し、受取人を親権者または子供に変更しておきましょう。
学資保険と税金の関係は?受取時と契約中に注目
学資保険に税金が関わってくるのは「受け取るとき」と「契約しているときの控除」です。まずは一般の生命保険のから見ていきましょう。
一般の生命保険の場合
税金については「契約者」と「受取人」の関係で決まってきます。
- (契約者=被保険者)≠受取人・・・相続税
- 契約者=受取人・・・所得税
- 契約者≠受取人・・・贈与税
被保険者 | 契約者 | 受取人 | 税金の種類 |
---|---|---|---|
夫 | 夫 | 妻 | 相続税 |
夫 | 妻 | 妻 | 所得税 |
夫 | 妻 | 子 | 贈与税 |
学資保険の場合
続いて学資保険の場合です。学資保険の場合は被保険者は子供で固定されます。
払込免除特約があるため、契約者と被保険者が異なっても相続税が発生する場合があるので注意しましょう。この特約については後ほど詳しく説明します。
被保険者 | 契約者 | 受取人 | 税金の種類 | 特約の有無 |
---|---|---|---|---|
子 | 夫 | 妻 | 相続税 | 払込免除特約適用時 |
子 | 夫 | 夫 | 所得税 | 特約なし |
子 | 妻 | 子 | 贈与税 | 特約なし |
祖父母が契約者の場合は贈与税がかかる
祖父母が契約者になる場合は受取人が両親または孫になります。そのため贈与税がかかることになります。
払込免除特約適用の場合=契約者死亡の場合は相続税
契約者が死亡した場合、払込免除特約によって以後の保険料の払込は免除されますが、最後の学資金を受取るまで保険の契約は存続します。したがって新しい契約者を選ぶ必要があります。
夫が契約者だった場合、通常は妻が新しい契約者になることが多いと考えられます。すると今まで支払ってきた「学資保険という契約」を相続することになるので、ここで相続が発生し、相続税がかかります。
ただ学資保険の場合、通常の生命保険と異なり、この時点で学資金を受取るわけではありません。そのためこの時点での「保険の評価額」に対して相続税がかかってきます。
具体的に言うと、その時点の解約返戻金額(保険を解約した場合に戻ってくるお金)に対して課税されます。
学資保険は生命保険料控除の対象!年末調整や確定申告で申請を
学資保険は生命保険の一種なので、「生命保険料控除」の対象となります。
サラリーマンの方なら年末調整、自営業の方なら確定申告の時に申請すれば、所得税からは最大40,000円、住民税からは最大28,000円が課税所得額から控除されます。
また妻が扶養に入っている場合、妻が契約者となっていても夫の生命保険料控除として申請できます。
受取人を決める前に税金をシミュレーションしてみよう
所得税
満期の時に受取る満期金は、税法上「一時所得」に分類されます。
(満期時受取額-既払込保険料-特別控除50万円)×1/2
例えば返戻率が110%の学資保険で保険料を200万円支払った場合をシミュレーションしてみます。
(2,200,000-2,000,000-500,000)×1/2=-150,000
課税対象額がマイナスなので、他に一時所得がなければ税金はかかりません。高額な加入をしない限りは、学資保険の満期受取金に税金はかからないということですね。
学資年金は雑所得になるので注意が必要
学資金を一括で受け取る場合は上記の通り「一時所得」となるのですが、「学資年金」として分割で受け取る場合は「雑所得」となり税の扱いが変わるので注意が必要です。
学資年金月額ー(学資年金月額×保険料総額÷学資金総額)
見ていただくと分かり通り、一時所得にあった「特別控除」がありません。
学資金総額200万円、40万円を5分割の学資年金で受け取った場合で計算してみましょう。
400,000ー(400,000×1,864,800÷2,000,000)=27,040円
約27,000円の税金が「毎年」かかってしまいます。毎年定額を受取ることのできる学資年金タイプですが、税金のことを考えると注意が必要です。
贈与税
契約者と受取人が異なる場合、贈与税がかかることになります。
(贈与された金額ー110万円)×税率ー速算控除額
贈与税の税率と速算控除額
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | – |
300万円以下 | 15% | 10万円 |
400万円以下 | 20% | 25万円 |
600万円以下 | 30% | 65万円 |
1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
1,5000万円以下 | 45% | 175万円 |
3,000万円以下 | 50% | 250万円 |
3,000万円超 | 55% | 400万円 |
一時所得の計算では「契約者・受取人共に夫」で計算しましたが、これを受取人「妻」に変更すると、贈与税がかかることになります。
同じ金額で計算すると、(220万円ー110万円)×10%=11万円です。
契約者と受取人を同じにしておけば税金がかからなかったのに、受取人を替えただけで11万円もの税金がかかるようになってしまいました。
相続税
「契約者が死亡した時の解約返戻金相当額が相続税の対象」とされます。学資保険を含む生命保険は他の相続財産とは別途に「500万円×法定相続人の数」分の金額が控除されます。
そのため妻と子供2人であれば1,500万円までは税金はかかりません。
税金対策のために契約を分割する
祖父母が契約者となり、息子夫婦や孫が受取人になる場合、110万円を超えれば贈与税がかかってしまいます。そこで税金を払わずに済むようにするためには、以下の対策が必要です。
受取る年を分ける
税金は毎年計算され、課税されるものです。つまり贈与税の非課税枠(控除額)の110万円も毎年利用できることになります。
そこで110万円以下の学資保険を複数年に渡って契約します。例えば110万円の学資保険を3年間にわたり契約すれば合計330万円になります。
ただこの場合、子供に教育資金が必要な年に必要な資金額が受け取れないこと、また税務署から「税金逃れ」と判断され、合計した330万円の贈与とみなされてしまう場合もあるので注意が必要です。
学資保険のベストな受取人は?
その他の人を受取人にすると贈与税の対象となるため、上記のように複数年契約にしたり、受取人を複数に分けたりする工夫が必要となってきます。
ただ各家庭によって様々な事情があり、多少税金を収めても、それがベストな学資金の受け取り方な場合もあります。この記事を参考にして、ぜひあなたのご家庭のベストを検討してみてください。