
住宅ローンの変動金利は損?お得?メリット・デメリットを解説
住宅ローンの金利は、固定金利と変動金利から選択することになります。超低金利と言われている現在は、変動金利が固定金利よりも低くなっていますので、変動金利を選択する人が多いのも事実です。
ただ、変動金利は将来的に上がる可能性もあり、絶対にお得だとは言えません。変動金利がどのように決まるのか、そして今後の見通しはどうなるのか、結局は固定金利とどちらがお得なのか、詳しく解説してきましょう。
住宅ローンの変動金利はどう決まる?その仕組みをチェック
まず、変動金利がどのように決定するのか、その仕組みを見ていきましょう。
変動金利を決めるのは、短期プライムレートです。
この短期プライムレートが上がっていれば変動金利は上昇し、短期プライムレートが下がっていれば変動金利も低くなるのです。
金融機関が優良企業向けの短期(1年以内)融資の際に適用する最優遇貸出金利。
短期プライムレートに1%ほど上乗せしたものが住宅ローンの金利となることが多いですが、金融機関ごとに様々な差別化が図られています。
※正確には「新短期プライムレート」と呼ばれていますが、一般的には「短期プライムレート」が浸透しています。
住宅ローン変動金利の基本情報
では、住宅ローンの変動金利はどのようなものなのか、基本的な情報についてご紹介します。
住宅ローンの返済方法には主に「元利均等返済」と「元金均等返済」の2つの方法があり、民間ローンの場合「元利均等返済」が主流です。
「元利均等返済」は基本的に、以下の条件で変動していきます。
- 金利見直しは年に2回
- 返済額見直しは5年ごと
- 返済額の増額は現支払い額の1.25倍まで
1つずつ、解説していきます。
まず、住宅ローンの変動金利は、年2回見直されることが一般的。
見直し月の金利が適用されるので、前後の月と比較してその月だけ金利が高いor低いとなっても、半年間はずっとその適用されます。
ただ、月々の返済額が年に2回のタイミングで変わるわけではありません。
元利均等返済は、元金と利息を合わせた月々の返済額が一定となる返済方法で、返済額の見直しは5年ごとです。
毎月10万円で返済していれば、5年間は返済額10万円で継続します。
また5年ごとの見直しにも1.25倍ルールがあり、金利がどんなに上昇してもこれまでの返済額の1.25倍以上になることはありません。
他に元金部分の返済に伴って利息部分も減っていく「元金均等返済」という返済方法もあります。
元金均等返済のほうが総合的な返済額は少なくなりますが、5年見直しルールも1.25倍までというルールも無いため、金利変動によるリスクに最も影響されやすい返済方法です。
金利が上がれば利息支払いが増え、金利が下がれば元金の返済が増えていくのです。
例を挙げてみましょう。借入金額3,000万円、返済期間35年のときの返済を考えます。
最初は金利1%で返済、金利見直しによって1.5%に変動した場合がこちらです。
項目 | 金利1% | 金利1.5% |
---|---|---|
元金 | 71,428円 | 64,257円 |
利息 | 13,257円 | 20,428円 |
月々の返済額 | 84,685円 | 84,685円 |
同じ返済額でも、元金と利息の割合が違うので、金利が変動することで利息の支払いが増える、元金のヘリが遅くなるという事態が起こってしまうのです。
変動金利が動くタイミングは景気!?その要因とは
変動金利は、どのようなタイミングで動くのでしょうか。変動金利を決める要素として重要な短期プライムレートは、景気によって変動します。
つまり、変動金利は景気が要因となって変動すると言えるのです。
一般的に、金利は好景気で上がり、不景気で下がります。では、どういうときに景気が上下するのでしょうか。その要因を簡単にまとめてみます。
好景気 | 不景気 |
---|---|
・物価や株価の上昇 ・消費の増加 ・賃金が上がる ・円安 |
・物価や株価の低迷 ・消費の落ち込み ・賃金が伸びない ・円高 |
これらの傾向に注意しながら、景気動向、そして金利の動向をチェックしていきたいですね。
今後の見通しはどうなっているのでしょうか。
過去の金利推移については、次でご紹介しますね。
過去の住宅ローンの変動金利推移をご紹介
ではここで、過去の住宅ローン変動金利がどのように推移してきたのかを見ていきましょう。
過去、変動金利が最も高かったのはバブルの絶頂期である1990年頃で、その金利は8.5%にもなりました。
ただ、バブルがはじけると変動金利は年々低下し、リーマンショックの影響もあって現在に至っています。つまり、ここ20年はほぼ横ばいの推移となっているのです。
では、固定金利はどうでしょうか。実は、この20年で見ると固定金利もリーマンショック前に1%ほど金利が上昇するということもありましたが、リーマンショック後は緩やかに金利が下がってきていてこの10年は横ばい、もしくは緩やかな下降傾向にあります。
参考として、平成28年4月の民間金融機関住宅ローン金利を挙げてみます。
10年固定金利 | 3年固定金利 | 変動金利 |
---|---|---|
3.05% | 2.90% | 2.475% |
超低金利と言われている現在、変動金利の方が安く借りられるのは事実ですが、その差はもはや1%未満となっている現状があります。
変動金利のメリット・デメリットをチェックすることが大切なのです。
変動金利を選択するメリット・デメリット
変動金利を選択するメリットとデメリットは、以下の通りです。
メリット | デメリット |
---|---|
・現在は固定金利よりも低金利 | ・将来的に金利が上がる可能性がある ・いつ金利が上がるか分からない |
こうして見ると、デメリットの方がメリットよりも多い印象になってしまいますね。
では、それぞれのポイントについて詳しく見ていきましょう。
メリット:現在は固定金利よりも低金利
今、変動金利を選ぶ最大のメリットは、低金利での借り入れが可能であるということです。
先ほど紹介した通り、現在は固定金利よりも約0.5%程度低い金利での利用が可能となっています。0.5%金利が違うと、返済総額はどの程度違ってくるのでしょうか。
借入金額3,000万円、返済期間35年の場合を考えてみましょう。ここでは、金利差による返済総額を見るので金利は期間中変わらないとして、返済総額の違いを見ていきます。
金利3.5% | 金利3% |
---|---|
52,074,257円 | 48,490,768円 |
0.5%の金利差で、およそ350万円の差が出てしまうのです。つまり、金利が低い変動金利を選択した方がお得になる、とも言えます。
デメリット:将来的に金利が上がる可能性がある
先ほど、低金利が変動金利のメリットだとご紹介しました。ただ、これはあくまでも低い金利を維持し続けたことを前提としています。
変動金利は、”変動”する金利です。つまり、いつかは上昇する可能性があるものであり、その上昇が大きくなれば固定金利よりも大きく損をする恐れもあるというわけですね。
では、先ほどのケースで金利が変動した場合を考えてみましょう。
金利 | 返済総額 |
---|---|
金利3%を維持 | 48,490,768円 |
ケース① 15年後から3.5% |
49,758,007円 |
ケース② 15年後から4.0% |
51,058,044円 |
ケース③ 10年後から3.5% |
50,419,977円 |
ケース④ 10年後から4.0% |
52,407,747円 |
このように、金利が変動する時期や変動率によっては、固定金利よりも返済総額が大きくなってしまいます。
固定金利のメリットについては、こちらの記事で詳しくご紹介しています。
デメリット:金利がいつ上がるか分からない
変動金利は、いつ金利が上がるのかが分かりません。先ほどご紹介した通り、早いタイミングで金利が上がれば損をしてしまう可能性があります。
ただ、変動金利の金利がいつ上がるのかは誰にもわかりません。だからこそ、変動金利を選択する際には出来るだけ早めに完済することを目指すようにしましょう。
金利が上がらないうちに完済できれば低金利のメリットを受けることができます。金利が上がることに備えて繰り上げ返済を行っておく、金利上昇後の想定をしておくのです。
変動金利に上限が設定されているローンなら金利上昇時にも安心
実は、変動金利の上限が決まっている金利上限つき変動金利タイプというものが存在しています。
上限付き変動金利タイプは、どのくらい金利が上がったとしても、あらかじめ決められた上限を超えた金利は設定されないというものです。
変動金利のデメリットを解消する魅力的な金利タイプではありますが、実は取り扱いはあまり多くありません。利用者にとって魅力的でも、貸す側、金融機関側にとってはリスクが高いのです。
ですから、一定期間は上限が適用されるといった条件つきのものになっている商品がほとんどです。一定期間で上限が決められているということであれば、固定金利を最初から選択しても変らないのでは、と考える人もいるでしょう。
ただ、変動金利のメリットを得つつも一定のリスク回避ができることは間違いありませんので、興味がある方は一度調べてみると良いですね。
住宅ローンの変動金利は将来的な金利上昇に注意
すぐに金利が上昇するというわけではありませんが、将来的な金利上昇に備えて繰り上げ返済などを活用し、できるだけ早く完済することを目指すことをオススメします。
また、変動金利は景気に左右されますので、景気動向に注意しておくことも大切です。
変動金利は、その低金利がメリットですが、金利が上昇した場合にはデメリットに転換されてしまいます。金利動向の予測は難しいですが、その判断材料のひとつとして、いろいろな銀行の借り入れ条件などをチェックしてみることも良いでしょう(たとえば、金利が上がる予測なら変動金利がプッシュされていることがある、など)。

4年ほど専任の宅建士として不動産業者に勤務し、現在はマンション管理士・消防設備士として独立。
宅建士としての知識や立場を活かし、不動産売買時の疑問点などの相談を受けている。
金利は関係ないってことじゃないよね?