訪問介護でヘルパーができること・できないことを紹介します!
訪問介護は、ヘルパーが利用者の自宅を訪問し、掃除や洗濯などの生活援助や、入浴やトイレなどの身体介護を行うサービスです。
ただ、掃除ならなんでもできるわけではありません。例えば、利用者が使う部屋の掃除はできますが、家全体の大掃除はできません。
身体介護でも、訪問看護員(ホームヘルパー)が1回分の薬を取り分けることは認められていません。
訪問介護でヘルパーができること、できないことを紹介します。
まず基本をおさえよう!介護保険の基本的な考え方とは
訪問介護では、利用者や家族が希望することすべてを介助・支援できるわけではありません。
介護保険制度の目的にあてはまらないことは、できないんです。
訪問介護でできることとできないことを区別するために知っておきたい、介護保険の目的・基本の考え方を紹介します。
介護保険の目的は「利用者が自立した日常生活をおくること」
介護保険の目的は、「利用者が自分の能力に応じて、自立した日常生活をおくれるように支援するサービスをおこなうこと」です。
ですから、大前提として、日常生活の範囲を超えることは介護保険の対象外です。
以下のようなことはできません。
- 日常生活の範囲を超えるサービス
- 利便のためだけのサービス
- 趣味に関するサービス
訪問介護では利用者不在時のサービスや医療行為も不可
介護保険での基本的考え方に加えて、訪問介護でできないことの基本もおさえておきましょう。
- 利用者以外のためのサービス
- 利用者が不在中のサービス提供
- 医療行為
「本人が外出している間に掃除や洗濯をしておいてほしい」というのは不可です。
医療行為のうち「痰の吸引」と「経管栄養」は、研修を受けたホームヘルパーなら、医師の指示の下での実施が認められています。
口以外から水分や栄養をとる方法のひとつです。胃や腸に穴を開けてチューブやカテーテルなどの管から栄養をとる「胃ろう」や「腸ろう」、鼻の穴に管を通す「経鼻経管栄養」があります。
身体介護でできないことは?巻き爪の爪切りは医療行為なので不可
身体介護は食事やトイレの介助など、利用者の体に直接触れて行うサービスです。薬を飲むときの服薬介助なども含まれます。
身体介護でできること、身体介護のサービス内容と似ているけれどできないことを紹介します。
身体介護でできること一覧!外出介助や散歩に制限があるので注意
身体介護でできることを紹介します。
できること | 内容詳細 |
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食事、排せつ介助 | 配膳、摂食介助、食事後の後始末、流動食など特別な配慮が必要な調理、トイレへの移動、トイレの後始末、トイレ後の着衣など |
入浴、整容介助 | 脱衣、清拭、部分浴、洗髪、全身浴、入浴後の着衣、汚れた服の処理、浴槽の後始末、髪の乾燥、タオルで顔を拭く、爪切り、耳そうじ、ひげの手入れ、整髪、簡単な化粧、着替えなど |
体位変換、移動・移乗、外出介助 | 仰向けから横向きなどへの体位変換、車いすや歩行器への移乗、車椅子を押す、歩くときに手を引く、外出の準備、病院などへの外出など |
起床・就寝介助 | 起き上がりのサポート、ベッドへの移動、布団を敷くなど |
服薬介助 | 薬を飲むのを手伝う、後片付けなど |
見守り的援助 | 入浴・着替え・移動時の見守り、洗濯物干しや調理を一緒に行う、散歩など |
訪問介護は利用者の自宅内で行われるのが原則のため、身体介護の中の「外出介助」は例外的なサービスと位置付けられています。
外出の目的地は限定されていて、病院、日常品の買い物、市役所での手続き、選挙などです。
外出介助については特集記事でも説明しているので、合わせて読んでみてくださいね。
散歩については「見守り的援助」に当てはまる場合だけ可能です。
身体介護でできないことは?1回分の薬を取り分けるのは不可
「基本の考え方」でも紹介したとおり、趣味・娯楽目的の外出や医療行為については、介護保険の対象外です。
できないこと | 内容詳細 |
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医療行為 | 胃ろうチューブやカテーテルの洗浄、床ずれの処置、巻き爪を切る、医学的判断が必要な傷の処置、1回分の薬を取り分ける・仕分ける、口を開けて薬を飲ませる、本人に代わって医師から説明を受ける・症状の説明をするなど |
一部の外出 | 冠婚葬祭、地域行事、墓参り、外食、美容室、習い事、旅行、パチンコ、競馬、気分転換のための散歩など |
その他 | 入院中の付き添い、入院手続き、手術の同意など |
1回分の薬を取り分けたり、巻き爪の爪を切ったりすることも医療行為にあたります。
ただ、さきほども少し触れたように、研修を受けたヘルパーなら、医療行為である「痰の吸引」と「経管栄養」の実施は認められています。
散歩については、「単に気分転換で外に出たい」「日課だから」という場合には、身体介護の対象にはなりません。
生活援助でできること・できないこと!ATMでの振り込みは可能?
生活援助は、利用者本人に関わる掃除、洗濯、買い物などを行うサービスです。利用者本人ではなく家族のためや、日常の範囲を超えるものサービスは実施不可です。
お金の振り込みや引き出しなどをヘルパーに頼めるかどうかについても説明します。
生活援助でできることは?掃除できる範囲も紹介します
生活援助でできることの例です。
できること | 内容詳細 |
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掃除 | 利用者本人の居室・トイレ・テーブル上の掃除、ゴミ出し |
洗濯 | 洗濯機での洗濯、手洗いでの洗濯、物干し、取入れ、収納、アイロンがけ |
ベッドメイク | シーツ交換、布団カバー交換など |
服の整理と補修 | 衣替え、ボタン付け、破れの補修など |
調理 | 一般的な調理、配膳、後片付け |
買い物、薬の受け取り | 日常品の買い物(お釣りの確認含む)、薬の受け取りなど |
流動食など特別な配慮が必要な調理は、生活援助ではなくて身体介護です。
生活援助でできないことの具体例!窓ガラス拭きやエアコン掃除は不可
生活援助でできるか・できないかは「利用者本人のためのサービスか」「日常生活に必要か」「本当にヘルパーがやる必要があるのか(同居家族はできないのか)」という点で判断されます。
さきほどの「生活援助でできること」の表では「トイレの掃除も可能」としていましたが、同居家族がいる場合には、トイレなど家族みんなで共有する部分の掃除は、原則としてヘルパーに頼むことはできません。
トイレのほかには、キッチン、リビングダイニング、お風呂などもあてはまります。
できないこと | 内容詳細 |
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日常生活に必要な範囲を超えた掃除 | 大掃除、窓ガラス拭き、ワックスがけ、換気扇・照明・エアコン・ベランダ掃除、庭の手入れ、洗車、使わない部屋や主として利用者本人が利用している部屋以外の掃除、雪かきなど |
日常生活に最低限必要な買い物以外 | し好品の購入、生業に関係するものの買い出し、(近くに店があるのに)わざわざ遠くの店まで行っての買い物、利用者本人ではなく家族のための買い物など |
その他 | 単なる話し相手、来客対応、趣味の手伝い、(特別な手間がかかる)おせち料理などの調理、引越しの荷造り、ペットの世話、模様替えなど |
金銭管理を頼むのはトラブルのもと!別サービス利用がおすすめ
よくある質問が、「ATMでの現金引き出しや振り込みを、ヘルパーに代行してもらえるか」です。
振り込み、現金引き出し、現金書留の郵送などをヘルパーに代行してもらえるかは、自治体や事業者によって考え方が異なります。
「日常生活で最低限必要な振り込みの代行は可能」という自治体がある一方、「通帳を預かっての振り込みは不可」「訪問介護サービスとしては望ましくない」というところも。
どちらにせよ、ヘルパーが利用者のお金や貴重品の管理を行うと、トラブルが起きる可能性があります。利用者の預金を不正に引き出したヘルパーが逮捕された事件もありました。
金銭管理に不安があるなら、地域福祉権利擁護事業や成年後見人制度の利用も検討するのがおすすめです。
訪問介護ではできないことを把握して、トラブルのない介護生活を
ホームヘルパーはハウスキーパーではないですし、医療職でもありませんから、できないこともあります。
「やってあげたいけど、ルールは破れない」と、板挟みで困ってしまうヘルパーさんもいるんですよ。
ケアマネージャーや契約する訪問介護の事業所から、ヘルパーさんにお願いできることとできないことについて、事前にしっかりと説明を受けてください。
訪問介護でできないサービスを頼みたいなら、訪問看護や家事代行など、他のサービスを利用しましょう。金銭管理については、成年後見人制度や地域福祉権利擁護事業がありますよ。