不動産投資が節税になる仕組みは?税金の種類と失敗を防ぐ注意点
不動産投資を検討している方で、「節税」や「経費計上」・「減価償却費」という言葉を見たことがあるでしょうか?
実は不動産投資を行っている方の中に、節税対策の一環として物件を所有している事例があります。しかし節税といっても、具体的に不動産投資の何をどのようにすれば、節税に繋がるか分からないことが多いです。
ここでは、不動産投資と税金の関係、特に節税や経費の種類・確定申告と経費計上について分かりやすく解説していきます。
不動産投資を始めるのであれば、経費の基本や節税対策の仕組みや方法を知っておくべきなので、今回の記事を参考にしてみてくださいね。
不動産投資で節税できるのは主に所得税や住民税など
まずは、不動産投資で節税できる税金の種類と、節税方法について解説します。
不動産投資の税金と聞くと、所得税が思い浮かびやすいですが、実際には他にも節税できる税金や方法があるので、それらもしっかりと覚えておきましょう。
また、所得税以外の税金の方が、節税効果が高い場合もあるので要注目です。
不動産投資で節税できる税金対策の種類は様々
- 経費を増やし、課税所得を減らす
- 経費の1つである減価償却費を活用する
- 法人化を行い役員報酬や法人税を活用する
- 確定申告を青色申告にする
- 相続税対策を行う
そのほかの所得税や減価償却費、相続税については後ほど詳しく解説します。
法人化による節税を行うと、課税所得が900万円を超えた段階で、個人の時に負担する所得税・住民税を下回ります。
従って、不動産投資の規模が大きい方や不動産投資を事業として行っている方におすすめです。
青色申告による節税方法は、不動産投資を事業規模として認められた場合、65万円の「青色申告特別控除」を受けることができます。具体的な要件はありませんが、アパートであれば10室以上の貸与が可能であるなどが挙げられます。
不動産投資で節税できる税金は4種類に分けられる
不動産投資には、不動産取得税や登録免許税など様々な税金がありますが、節税できる税金については4種類になります。
- 所得税
- 住民税
- 相続税
- 贈与税
所得税
不動産投資を行う個人の方が当てはまる「建物・土地の貸付」(不動産売買)の場合、総収入-必要経費が所得税となります。
従って不動産投資の所得税は、必要経費を適正な範囲内で多くすることで節税に繋がります。
住民税
所得税の金額に応じて課税される税金が変わるので、こちらも所得税の節税効果によって連動します。
相続税
相続税は、不動産を相続する際に課税される税金のことを指します。そして、相続税は節税次第で、所得税や住民税よりも節税効果が大きくなります。
簡単に説明しますと、相続税は現金で所有していると、その現金の金額が全額税金の課税対象として定められます。しかし、不動産(資産)として所有していた場合、購入金額が仮に1000万円だとしても、評価額が1000万円よりも低い場合には、税金として課税対象となる金額が評価額によって算出されます。
つまり、現金は増減しませんが、不動産は毎年算出する評価額によって資産価値が増減し、結果的に節税に繋がります。また、資産価値を節税に活用しているので、所得税と比較して相対的に節税効果が大きくなります。
贈与税(生前贈与)
生きている人から財産(不動産含む)を受け取った人が支払う税金のことで、こちらも相続税のように節税効果が期待できます。
仕組みそのものは相続税と違いがあり、節税方法もいくつかありますが代表的な方法が、評価額によって税金が決まる仕組みです。
従って、相続税のように毎年算出されている不動産の評価額に応じて、課税される金額が変化し、現金で贈与する場合と比較して節税になります。
ただし、相続性と贈与税については、更に細かな決まりや算出方法、要件が定められており、状況によって節税効果も変化します。
節税効果の期間は不動産投資の運用と工夫次第
不動産投資で節税ができる仕組みの基本的なポイントは2つ。
- 必要経費を多くして所得税の税金を抑える
- 相続税や贈与税の評価額などを活用して税金を抑える
そして、節税効果は長期的に期待できるのか、という疑問が湧くかと思いますが、安定して長期的な節税は期待できない可能性が高いです。
まず、所得税の節税方法は、経費を多く計上することで帳簿上は所得を少なくして、支払う税金を抑えます。
そのためには経費となる項目が必要になりますが、減価償却費は計上できる期間が定められていますし、その他手続き関係の経費は初年度であらかた済んでしまいます。
り年々経費として計上できる項目や金額が少なくなってしまうので、いつまでも同じ方法で節税効果を期待することはできないのです。
このように、不動産投資に係る税金の節税は、長期的・永久にできるものではないことを知っておくことが大切です。
不動産投資では経費や減価償却費の計上で節税効果が得られる
不動産投資に係る税金を節税する方法の1つである、所得税・住民税の節税は経費計上によって効果が得られます。
そこで、ここでは不動産投資に関する経費と節税の関係や、減価償却費の概要について解説していきます。
不動産投資の所得税を節税する方法の1つが経費計上
前述でも税金について解説していますが、不動産投資をすることで節税できるのではなく、不動産投資に係る税金の仕組みを活用することで、節税を行うことが可能なのです。
その節税が可能な税金が、所得税・住民税と相続税・贈与税になります。
不動産投資の税金に係る経費及び、確定申告時に経費として計上できるのは、といった次の項目となります。
- 租税公庫
- 管理費
- 修繕積立金
- 賃貸管理代行手数料
- 修繕費
- 損害保険料
- 交通費や通信費など
- 減価償却費
これらの費用を、毎年3月に行われる確定申告の時期に、経費として計上すると不動産に係る収入が帳簿上減るので、所得税として支払う税金の金額も同様に少なくなります。さらに、住民税は所得税の金額から算出されるので、所得税で節税できれば住民税の税金も少なくなります。
ただし注意点として、節税を重視するあまり車や家電といった購入費用を経費に充てるのは、「不要な経費」ですので税務調査が来る可能性があります。
必要経費のみ計上することが基本です。
また、全て不動産投資に関わる費用なので、今後投資を検討している方は、節税に関係なく経費を覚えておく必要があります。
不動産投資の所得を確定申告時に赤字計上すると節税につながる
続いての節税方法は聞いたことのある方もいるかもしれませんが、赤字計上を行うことで、節税効果を得るという方法です。
不動産投資の所得も、増えれば税金が増えるので黒字化が進むと同時に、納税の負担が大きくなります。
確定申告時に減価償却費を使って赤字計上するとどうなる?
そこで、実際に行われている節税方法の1つとして、確定申告時に減価償却費を使って赤字で計上します。そして、課税される所得金額を少なくし、税金を抑えつつ還付金も受け取るようにします。
一見すると、赤字計上ということは、節税できても収入がマイナスなのではないか、と危惧している方もいるでしょう。確かに、前述で紹介した管理費や修繕費、損害保険料などは実際に費用として、収入から引かれています。
しかし、今紹介している「不動産投資の赤字計上は、あくまで帳簿上の赤字」を指しています。
建物の価値が下がっていく事を見越して、経費として計上しているので実際には現金として支払うものはなく、手元に収入・利益が残っている状態です。
従って、場合によっては経費が収入を上回る計算になり、確定申告時に不動産所得が帳簿上赤字として計上できます。
減価償却費は建物の価値を経費として計上するための項目
前述でも軽く触れていますが、減価償却費は建物や設備の取得費用を耐用年数に応じて、分割しながら計上する仕組みのことです。
減価償却費の計算方法には2種類。
- 定額法
- 定率法
定額法は減価償却費を総取得費用から分割、毎年定額で経費にする方法です。対して、定率法は毎年の末に残った償却費から、経費を算出するので定額にはならず、初年度の経費が多くなります。
給与所得 | 課税所得 | 所得税 |
---|---|---|
1200万円 | 1000万円 | 176万4000円 |
例えば、不動産投資による所得なしで、給与所得が上記のような場合に所得税は176万4000円となります。
ここに減価償却費を使って、不動産収入を赤字計上した所得、マイナス300万円を加えるとします。
その場合、不動産所得と給与所得は総合課税なので、合算して損益通算が可能となります。そうすると、今度は合計課税所得を700万円で所得税を計算することになります。
所得税は所得の金額に応じて税率と控除額が変化するので、この場合所得税が97万4000円で算出されます。
前者と比較すると79万円の節税が可能になるのです。
ちなみに損益通算の制度とは、利益が出た場合には税金を納めますが、1年を通して合計額が損失の場合は、マイナス分だけ税金を減らすことができます。
また、税金を減らした場合に、まだ損失が残っていると最大3年間、繰り越すことが可能です。
減価償却を使った節税のポイントは、所得税の総合課税と損益通算を活用したという点です。
投資用不動産に組み替える事で相続税を節税できる
不動産投資の節税方法には、相続税対策として活用できる側面があります。こちらも、冒頭で簡単に紹介していますが相続を行う財産を、一部投資用不動産へ投資することによって相続税を節税することができます。
投資用不動産による節税は建物・土地の評価額で節税効果が変わる
相続を行う財産を不動産に組み替えた評価額(価値)の場合、現金所有の時より最大で3分の1まで抑えることができます。そして、3分の1まで抑えた評価額を基に、相続税を算出するので結果的に相続税対策・節税になります。
土地の評価額=路線価×(1-借地権割合×借地家割合)
つまり、土地が約8割の評価額、建物は借地権割合(土地と建物の権利の割合)によって決まるので、価値が安くなる傾向にあります。
従って、不動産として財産を保有している方が、相続税を抑えられるようになるのです。
例えば1億円を相続する場合の現金と不動産による違い
一方、投資用不動産として1億円を使って取得し、評価額が約3分の1となったとします。そうすると、評価額は約3300万円まで下がり、税率が20%・控除額が200万円になります。
控除額を引いた3100万円で相続税を計算すると、660万円の相続税で算出され、2130万円の節税効果が期待できます。
実際に、評価額が3分の1にならなかったとしても、8割程度まで下がることが見込めるので、相続税の税金対策・節税として不動産投資が活用できます。
ただし、評価額と相続税率から単純に算出しただけですので、実際には節税の金額が異なる場合があります。
また、不動産を活用した節税を行ったとしても、納税分の税金は現金で支払うことに変わりはありません。
投資用不動産で相続した場合は現金化して受け取ることもできる
また、投資用不動産で税金対策した場合、建物・土地が資産として残りますが、遺産相続には数種類の受け取り方法があります。
- 現物分割
- 換価分割
- 共有
などといった、受け取り方法があり現物分割は、文字通り不動産の状態で受け取る方法です。換価分割は1度不動産を受け取ったのち、現金化させるために売却します。もし、相続人が複数の場合は、現金化した遺産を分割で受け取ることができます。
共有は、相続人が複数存在する場合、不動産を現金化せず分割で登記登録する方法です。
節税や赤字分は確定申告することで効果が出る
続いて紹介するのは、節税と確定申告の基本です。
一般的な疑問として、節税対策の方法は聞いたことがあるけれど、確定申告との関係性や申告をする必要について知らない方もいます。
結論から説明すると、不動産による利益が出れば原則確定申告が義務付けられていますし、損失が発生した場合も確定申告した方が節税になります。
つまり、納税の義務・節税の際にも経費計上などで確定申告が必要となります。また損益通算時も確定申告しなければ、税金の繰り越しなどができません。
最後に、不動産投資で節税効果を考える際に、気を付けなければいけない点がいくつかあります。
- 必要経費のみを計上する
- 赤字計上にし過ぎない
- 相続税対策をメインにしない
経費はあくまで「必要経費」を計上するのであって、不動産の税金対策のために全く関係ない購入品目を計上すると、税務調査が来ますので適正な範囲内で計上しましょう。
また、減価償却費や経費を活用して赤字計上を行い、限界まで節税を試みようとすると、費用がかさんで実際に赤字となる場合あります。不動産投資の節税は、無理のない方法で行う事が大切です。
そして相続税の税金対策として、評価額の低い建物を購入した場合、空室リスクによる家賃収入の下落や、ローン返済などによる支出の圧迫リスクがあります。相続税の税金対策としての不動産投資は、慎重に検討しましょう。
不動産投資の節税は適正な範囲内で行う事
経費計上といっても、実際に費用がかさんでいるのであれば、節税ではなく赤字経営に近いです。また、減価償却を活用した経費計上も、法定耐用年数で定められているので、いずれは経費として計上できない時がきます。
相続税の税金対策に活用する評価額も同様に、リスクとリターン両方の効果があります。
バランスを考えた場合、不動産投資を事業・メインとして考え、節税や相続税の税金対策は可能な範囲でムリせず行うのが、不要な損失を発生させずに済みます。
これから不動産投資を始める方は、節税・経費なども考えつつ投資を軸に物件を探すことや運用を考えましょう。