遺族年金

【ひとり親家庭必見】遺族年金と児童扶養手当は併給できる場合あり

配偶者と死別した妻(または夫)が受け取る遺族年金。

そして配偶者と死別した場合だけでなく、離婚したご家庭など、いわゆるひとり親家庭の方が受け取る児童扶養手当。

どちらも受け取れたらいいなぁ…と考えたことはありませんか?

以前は遺族年金と児童扶養手当、どちらかを選ばないといけませんでした。

しかし平成26年12月以降、両方もらえる可能性が出てたのです。

ただし両方の受給には条件があり、また併給できたとしても受給額に調整が入ったりと仕組みは少々複雑。

そこで今回は、母子家庭(父子家庭)の強い味方である「遺族年金と児童扶養手当の違い」や「両方を受給するために必要な条件」などを、わかりやすく解説していきたいと思います。

子供の有無でもらえる年金額が異なる?遺族年金を知っておこう

ところで、あなたはどれほど「遺族年金」のことを知っていますか?

聞いたことある!という人や全然知らないという人も、まずは遺族年金について概要を押さえておきましょう。

遺族年金とは

国民年金や厚生年金の被保険者だった方が亡くなった場合に、その遺族が受け取る年金のこと。

子供の有無でもらえる年金額が変わるって聞いたことあるんですけど、どうしてかしら?
それはズバリ「遺族基礎年金の受給には子がいることが条件」となっているからなんです

遺族年金では、被保険者が生前「厚生年金」「国民年金」どちらに加入していたかによって、その遺族が受給できる年金の種類が決まります。

遺族年金の種類
遺族厚生年金 厚生年金の被保険者が亡くなった場合、遺族基礎年金と合わせてその遺族に支給される
遺族基礎年金 18歳未満の子がいる配偶者または子に支給される

遺族厚生年金は、被保険者が会社員などで厚生年金に加入していた場合にのみ支給されるものです。

また遺族基礎年金は、国民年金・厚生年金どちらに加入していた場合でも支給されます。

遺族厚生年金は、「子」がいなくても受給できる場合がありますが、遺族基礎年金は「18歳未満※の子がいること」が必須条件です。

※子が障害等級1・2級の場合は20歳未満。

このためもし被保険者が厚生年金の加入だった場合、子がいない(または子が18歳以上)の家庭には遺族基礎年金分の額が支給されません。

また被保険者が国民年金の加入で子がいない家庭には、遺族年金自体の支給がないのです。

ただし厚生年金でも、遺族の年齢や性別によって遺族年金を受給できないことがあります。

遺族基礎年金や遺族厚生年金について詳しく知りたい方は、こちらの記事「遺族年金とは?その仕組とどのくらいサポートがあるのか解説」を確認ください。

ひとり親家庭を支える児童扶養手当とは?制度や受給額について解説

次にご説明させていただくのが、児童扶養手当。シングルマザー家庭が受け取ることも多いので「母子手当」なんて呼ばれることもありますが、正式な名称は児童扶養手当です。

この児童扶養手当っていったいどんな制度なのか?わかりやすく説明していきたいと思います。

ひとり親家庭を支援する国の制度!児童扶養手当の概要とは?

児童扶養手当とは、ひとり親家庭を支える国の制度です。

ただし申請は、お住まいの市区町村へ行う必要があります。

児童扶養手当は誰がもらえるのかのぉ?
児童扶養手当は、両親が離婚したり、親が亡くなってしまった子を育てる母や父です。もしくは祖父母もOKです!

児童扶養手当の支給対象となる「子」の条件は、次のとおり。

児童扶養手当の対象となる子の条件
  • 両親が離婚した
  • 父(母)が死亡した・生死が不明
  • 父(母)に一定程度の障害がある
  • その他(未婚の母など)

詳しくは厚生労働省や自治体のホームページなどで確認できますので、チェックしておきましょう。

児童扶養手当っていくらもらえるの?受給額の決まり方を解説

ここで気になるのが、児童扶養手当っていくらもらえるの?ということ。

児童扶養手当の金額は、基本的に子の人数によって決まります。

手当額
子ども1人目 全部支給41,020円/月
(所得に応じて一部支給となる)
子ども2人目 5,000円/月
子ども3人目 3,000円/月
※自治体により金額が異なる。

児童扶養手当には所得制限があり、一定の所得以上の場合は一部支給または支給なしとなります。

この「所得」には給与収入などの他に、元配偶者からの養育費(8割程度)も算入されるため注意が必要です。

また児童扶養手当の他にも、自治体独自の手当制度として「児童育成手当」があるところもあります。

詳しくは、「子供の補助金・助成金を紹介!子育て・育児でお金がもらえる公的制度」でご紹介していますので、こちらもあわせて参考にしてみてください。

両方もらえる?一方のみ?遺族年金と児童扶養手当を併給できる条件

さて、ここまでにご紹介してきました遺族年金と児童扶養手当ですが、両方もらえないだろうか?と考える方もいることでしょう。

原則どちらかを選択することになりますが、場合によっては両方受給できることがあります。

そこで、遺族年金と児童扶養手当を両方受給できる条件について説明したいと思います。

【原則】遺族年金or児童扶養手当のどちらかを選択することになる

基本的に遺族年金と児童扶養手当は、どちらか多い金額の方を選ぶ必要があります。

そもそも遺族年金と児童扶養手当の目的はやや異なるものの、母子家庭や父子家庭の子供を助けるという点においては同じですよね?そういう意味でも、やはりどちらも受け取るということはできないようです。

やっぱり世の中そう甘くはないッスね。ま、オレ結婚してないんですけど。
特に遺族年金と児童扶養手当は両方とも満額で受給できるもの、と誤って理解されている方は要注意ですね。

そこで、もしあなたが「万が一のときには遺族年金と児童扶養手当をもらえるから、民間の保険はいらないのではないか?」と考えているならば、今すぐ見直すことをおすすめします。

【例外】遺族年金と児童扶養手当の両方を受給できる場合もあり

原則、遺族年金と児童扶養手当は併給できません。

しかし次のような場合、遺族年金と児童扶養手当の両方を受給できることもあります。

遺族年金と児童扶養手当の両方を受給できる場合
公的年金等(遺族年金など)の受給額<児童扶養手当の金額
この場合、差額分の児童扶養手当が支給されることになりました(2014年12月以降)

ただし基本的に遺族基礎年金は児童扶養手当よりも高額となることが多いので、併給できる多くは「遺族厚生年金のみ支給の場合」となります。

例えば、次のような例を考えてみましょう。

離婚した後に元夫が亡くなった(再婚はしていない)。

生前に養育費をもらっていたので、子供は遺族基礎年金を受け取る権利を有するが、子供は母である私と同居しているため遺族基礎年金の受給権が停止。遺族厚生年金のみ受給している。

この場合、子供が父親(元夫)の遺族厚生年金を受給できる可能性は高くなります。

さらに遺族厚生年金が児童扶養手当の金額よりも低い場合、「その差額分の児童扶養手当も併給できる」ということなんです。

ちなみに離婚後に遺族年金を受給する条件については、次の記事でも詳しく紹介しています。確認してみてくださいね。

遺族年金と児童扶養手当を併給できるならいくら?計算してみよう

遺族年金と児童扶養手当を併給できる場合、気になるのはその受給額がいくらになるのか?ということ。

そこで、次のステップに分けて「遺族年金と児童扶養手当を併給できる場合の計算方法」についてご紹介します。

遺族年金と児童扶養手当を併給できる場合の計算方法

詳しくみていきましょう。

ステップ1:児童扶養手当の支給額を計算する

まずは、児童扶養手当の金額を出してみましょう。

児童扶養手当は、所得に応じて支給額が決まります。

たとえば、次のような母1人子1人の母子家庭の場合。

受給者本人の所得制限限度額
全部支給 49万円
一部支給 192万円
※子は16歳未満とする(扶養人数0人)。

この表によると、所得が49万円を超えると児童扶養手当が一部支給となり、所得192万円を超えると支給停止になるということがわかります。

んっ??所得??収入とはまた違うものなんですか?こういう計算はどうも苦手で…。
ここにある所得とは、収入から「控除分」を差し引いた金額のことです。

人によって異なるので、分からない場合はお住まいの市区役所などへ問い合わせてみましょう。

問い合わせには、「源泉徴収票」や「確定申告の写し」「収入が分かるもの」などを持参するとスムーズです。

ステップ2:児童扶養手当の金額と遺族年金の受給額を比較する

さて、児童扶養手当の金額がだいたいわかったところで、遺族年金と比べて児童扶養手当の金額が多いか?少ないか?を比べてみましょう。

先ほど説明しましたが、遺族年金の中でも遺族基礎年金をもらっている方は「そもそも児童扶養手当よりも金額が大きいことが多い」ため、その場合は併給できません。

遺族厚生年金のみもらっている方は、児童扶養手当の額と比べてみましょう(実際の金額は亡くなった被保険者により異なります)。

ただし離婚でなく死別でひとり親となった多くの場合、遺族年金の金額の方が多くなるので、児童扶養手当を併給できる可能性は極めて低くなります。

遺族年金と児童扶養手当は両方もらえる場合あり!該当するなら申請を

子育てを1人でしなければならないひとり親家庭というのは、体力的にも経済的にも大変。いろいろと厳しい状況の家庭も多いのが現実です。

ただ配偶者に先立たれた場合には遺族年金を、両親が離婚・死別などによってシングル家庭となった場合には児童扶養手当をもらえます。

もちろん、基本的にはこの2つを同時に満額受給できるわけではありません。

しかし近年の法改正により、児童扶養手当よりも少ない遺族年金を受け取る家庭へ、プラスして差額分の児童扶養手当を支給してもらえるようになりました。

しかし、差額をもらえるといっても全体としては遺族年金や手当だけで生活するのもなかなか厳しいでしょう。

そこで万が一の状況を想定し不足する生活費などは、あらかじめ民間の保険などでカバーしておくことをおすすめします。

当サイトではさまざまな保険についてもまとめています。ぜひ参考にしてみてくださいね。

※掲載の情報は2019年12月現在のものです。
監修者メッセージ

遺族年金額が児童扶養手当額より低い場合は、平成26年12月からその差額分の児童扶養手当を受け取ることができるようになりましたが、残された家族がそれだけで生活していくのは厳しいでしょう。

公的な保障だけに頼らずに、日頃から万が一のことがあったときの備えを意識しておくことが大切です。

プロフィール
年金カテゴリー記事監修(高橋淳也)
高橋 淳也
特定社会保険労務士、AFPの資格を保有。
日本年金機構、社労士法人勤務を経て開業。中小企業の労務管理に従事する一方、年金相談窓口や無料相談会などで年金相談を受けている。