住宅ローンの審査
住宅ローンを組むなら自動車ローンは全額返済しないといけない?

住宅ローンを組むなら自動車ローンは全額返済しないといけない?

日本では、自家用車の購買意欲が低下していると言われています。しかしそれでも7割以上の家庭がマイカーを所有しています。ですから、自動車ローンと住宅ローンの関係について気になっている人も多いのではないでしょうか。

このページでは、自動車ローンが残っていると住宅ローンが組めなくなるのかどうかと、住宅ローンを組める場合に影響は無いのかについて説明していきます。またこれからマイカーを持ちたい場合に、どうしたほうが良いのかについても考えていきます。

自動車ローンがあると住宅ローンが組めないって噂はホント?

自動車ローンが残っていると、住宅ローンの審査で落とされるという噂があります。しかし自動車ローンがあるからといって、それだけで住宅ローンが組めなくなるわけではありません。

ただし自動車ローンがあると、住宅ローンを組むのに不利なのは事実です。まったく他の借金が無い人に比べると、自動車ローンがある人のほうが住宅ローン審査でハネられる可能性は高くなります。

とはいえ自動車ローンの、住宅ローン審査に対する重要度は、他の要素より低めになっています。収入や年齢、健康状態などのほうが、自動車ローンがあるかどうかよりも重視されます。

それでは住宅ローンを組む時に、自動車ローンがあると問題になるのはなにか?それは住宅ローンの「限度額」です。

自動車ローンがあると、借りられるお金の上限が減ってしまうのです。

あー、つまり、車のローンが100万円残っていると、住宅ローンで借りられる限度額が100万円減ってしまうってことですね!
そうではないんです。ふつう、自動車ローンの額よりも大きい金額が住宅ローンから減額されます。

自動車ローンと住宅ローン限度額の関係については、次の項で解説します。

自動車ローンがあるとどれくらい住宅ローンの額が減るの?

自動車ローンがある場合、ローン残高ではなく、月ごとの返済額によって住宅ローンの上限額が変わります。

住宅ローンの上限は「返済比率」によって決まるのが基本です。

「返済比率」とは、収入に占める返済額の割合の事を示していて、返済負担率とも言われています。返済比率は以下の式であらわされます。
【年間の返済額÷年収(税込み)×100=返済比率(%)】

例として、月ごとの支払いが10万円で「1年間の返済額が120万円」、「年収が400万円」のケースを考えてみましょう。この場合、「120(返済額)÷400(年収)×100=30」という計算により、返済比率は30%となります。

住宅ローンの審査で通る融資上限額は、返済比率「30%~35%」ぐらいであるのが普通です。

つまり年収が400万円の場合、35%の返済比率で考えたとしても、年間返済額は140万円が限界という事になります(140÷400×100=35)。

住宅ローンの返済期間が20年なら、140×20で2800万円、30年なら、140×30で4200万円が借入上限額という事になります。

なぜ自動車ローンが問題になるかというと、自動車ローンの年間返済額が、そっくりそのまま住宅ローン審査時の返済額に足されてしまうからです。

上の例に、年間返済額が「50万円」の自動車ローンが残っている場合を考えてみます。

年間返済額のうち50万円分は自動車ローンで取られてしまいます。返済比率35%の場合、140-50=90で、90万円が住宅ローン分の年間返済額となります。

この場合、20年ローンだと1800万円が借入上限になり、30年ローンでも最大2700万円しか融資してもらえません。

つまり自動車ローンの残高が100万円でしかなかったとしても、自動車ローンの年間返済額が50万円あれば、大きく住宅ローンの上限額が減ってしまうということです。その差は、20年ローンで1000万円、30年ローンで1500万円という大きなものとなります。

自動車ローンを住宅ローンに含めてしまえばお得?

自動車ローンの金利は、安い銀行系ローンでも「年利2~3%」程度で、審査に通りやすいディーラー系ローンだと「年利5~6%」ほどになっています。

対して住宅ローンの金利は、変動型なら「年利0.4~0.8%」程度で、固定型でも「年利1.4~2%」くらいのものが主流で、非常に安くなっています。

もしも自動車ローンの残高を住宅ローンでまかなってしまえるなら、非常に得になります。まず金利の差額分支払うお金が減りますし、自動車ローン分の返済額が無くなるために住宅ローンの限度額も上がります。

しかし自動車ローン分を上乗せして、住宅ローンを借りることはできません。

住宅ローンは、あくまで家を買う用途でしか借りられないものなのです。自動車ローン以外でも、他のローンと合算することはできません。

あら?でも、前に工務店の方が、車のローンを住宅ローンに混ぜてしまいましょうか、って言ってきたことがあったのだけれど。
たしかに、そういう提案をする建築会社もあるようですね。家の価格を実際より水増しすれば、ローンを合算することは可能です。でもローン合算は、やってはいけない違法行為なんですよ。

住宅ローン契約をした場合、住宅ローン控除などで「減税」してもらえます。もしも自動車ローンを合算して住宅ローンを借りていると、自動車ローンの分だけ余計に減税してもらえることになります。

つまり自動車ローンと住宅ローンの合算は、脱税や詐欺で告発可能な犯罪行為という事になります。実際に摘発されるかどうかはまた別の話になりますが、危険な行為に及ぶのはやめておくべきでしょう。

自動車ローンが残っている人は完済してからの方がベター

自動車ローンが残っている人が住宅ローンを借りたいなら、まず自動車ローンを完済してしまうのが良い方法です。

自動車ローンがなくなれば、住宅ローン審査にも通りやすくなりますし、融資の上限額も上がります。自動車ローンの残高が少なくなっているなら、多少無理をしても、自動車ローン完済を優先したほうが良いでしょう。

自動車ローンが大きく影響するのは、住宅ローンの限度額と言いましたな。と言うことは、減った分の融資額で希望物件が買えるなら、そのままで問題無いということですかのう?
そうですね。融資額と希望物件価格の折り合いがつくなら、無理して自動車ローンを完済する必要はないでしょう。

車を買ったばかりで、かなりの自動車ローンが残っている場合は少し難しくなります。家の購入を延期するか、買う物件のグレードを下げるかを選ぶ事になるでしょう。

これからマイカーを買いたい人はどうすべき?

では、これから家とマイカーを買いたい、と考えている人はどうすべきなのでしょうか?

必ず家を購入してから、車を買うべきです。

先に住宅ローンを組んでおけば、その後に自動車ローンを買っても、住宅ローンで借りられる金額が下がることがありません。

また、自動車ローンは住宅ローンに比べれば、ずっと審査に通りやすいので、住宅ローンがあっても、自動車ローンを組める可能性はおおいにあります。

先生、家と車の購入用に現金を用意してあるんだけど、どっちに多く使うべきかな?
マイホーム購入用の頭金があるんですね。なら、自動車は現金で購入し、減った頭金の分は、住宅ローンの借入額を増やして対応するのはどうでしょうか?

自動車を購入する分だけ、住宅ローンの借入額は増えてしまいます。しかし、住宅ローンの方が金利が安いため、住宅ローン+自動車ローンの返済総額よりも、住宅ローンに一本化した返済総額の方が安くなる可能性が高くなります。

ただし自動車ローンを低金利の銀行系ローンにできる場合などは、返済総額が一本化するより安くなるケースもあります。

しかし返済総額が安くなる場合でも、自動車ローンと住宅ローンがかぶっている期間の年間返済額が高くなって家計を圧迫するという問題もあります。自動車ローンの方が借入期間が短いため、どうしても初期の返済額が高くなってしまうのです。

ゆとりをもって安定した返済プランを考えるなら、やはり現金は自動車の購入資金に当てたほうが無難です。

自動車ローンは住宅ローン契約に悪影響を与えるので要注意!

自動車ローンが残っていると、住宅ローンの審査でマイナスポイントになります。また審査だけでなく、借入可能な金額の上限も大きく下がってしまいます。ですから家を買う前には、なるべく自動車ローンは完済しておきたいところです。

まだ車を買っていない場合は、必ず家の購入を先にするようにしましょう。そのほうが住宅ローンの審査で有利ですし、借りられる金額も増えます。

監修者メッセージ

事前審査の時点ではなんの問題も無かったお客さんでしたが、本審査の申込をしたら否認されました。

詳しく状況を確認すると、事前審査承認後に乗用車を購入しクレジットを組んでいました。

結局このお客さんは、身内から借金して車の借金を返済し、住宅ローンを組むことができました……こんな例もあるのです。

プロフィール
不動産売却カテゴリー記事監修(弘中純一)
弘中 純一
宅地建物取引士、一級建築士の資格を保有。
中古住宅・中古アパートの媒介業務・調査業務に従事し、現在は札幌市内の宅建業者にて専任の取引士を務めている。
2006年より、住宅に関する無料の相談サイトを開設し、住宅リフォームや中古住宅購入の相談に応じている。