
住宅ローンと転職の意外な関係性!審査をクリアするコツは?
現在は終身雇用の神話も崩れ、勤める会社を変えることも一般的になってきました。しかし、住宅を購入しようとしている場合は、転職する前によく検討すべきです。なぜなら、転職が住宅ローン審査に不利に働いてしまう事があるからです。
このページでは、住宅ローン審査と転職の関連について解説していきます。また、すでに転職をしていた場合に、どうすればよいのかについても説明します。
住宅ローン審査では勤続年数が重視される
住宅ローン審査の要件にはさまざまなものがありますが、その中に「勤続年数」という項目があります。そのため、転職してすぐに住宅ローンを組もうとすると、勤続年数で引っかかり審査が通らない事があります。
住宅ローン契約の時には「年収」を意識しがちですが、勤続年数は年収と同等かそれ以上に重要な要件となっています。
住宅ローン審査に通るのは勤続何年以上?
具体的に何年以上の勤続年数が、審査のクリア条件になるかは、金融機関ごとに異なります。
「3年以上」の勤続年数であれば、大多数の金融機関で審査基準をクリアできます。
たとえば住宅ローンの審査に落ちてしまった場合などでは、とりあえず同じ会社で3年間働いてみるというのが一つの解決策となるわけです。
ただし最近では勤続年数の条件を緩めている銀行もあり、全体の50%ほどの金融機関で「勤続年数1年以上」が合格ラインとなっています。
そのため数多くの金融機関に申し込めば、お金を貸してくれるところもあるかもしれません。しかしどちらにせよ、最低1年間は同じ会社で働くのが必須事項と言えるでしょう。
自営業の場合、3年以上の営業年数が審査クリアの基準になります。また営業年数だけではなく、営業成績自体も審査されます。
普通、直近3年間の収益が安定していなければ、住宅ローン審査に通りません。3年以内に赤字があるようだと、審査を通過するのは厳しくなるでしょう。
転職は住宅ローン審査に通った後が望ましい
上記のように、住宅ローン審査には勤続年数が大きく関わってくるため、「転職をするならローン契約が済んでから」にする方が無難です。
特に独立しようと考えている人は、注意してください。自営業になると、審査基準が厳しくなりますので、住宅ローンを組めなくなる可能性が高くなります。独立するなら、ローン契約後が基本です。
転職直後でも住宅ローン審査が通るケースもある
住宅ローン審査には勤続年数が重要ですが、実は転職直後でも審査が通る場合もあります。それは以下の3つの条件のどれかを満たす場合です。
- キャリアアップになる転職。
- 信頼性の高い会社への転職。
- グループ会社への転職。
これらの条件にあった転職なら、審査に影響しない、もしくは少ない影響で審査を受けられます。
キャリアアップ転職と住宅ローン審査
キャリアアップ転職の場合は、転職して間もなくても住宅ローン審査に通ることが期待できます。
ただしこの場合の「キャリアアップ」とは、同業種への転職を指しています。たとえ年収がアップしたとしても、前職と無関係の職種についた場合はキャリアアップとはみなされません。
金融機関が重視するのは収入の安定性ですから、まったく違う職種への転職は、不安材料として審査のマイナスポイントになってしまうのです。
また、資格を活かした転職の場合もキャリアアップとみなされ、審査への影響が小さくなります。たとえば、公認会計士の資格を取って、コンサルティング会社へ転職するような場合が考えられます。
信頼性の高い会社への転職と住宅ローン審査
銀行がお金を貸すのは、「個人への信用」というより、その人が勤めている「会社への信用」であると述べました。つまり社会的信用の高い会社への転職なら、住宅ローン審査の減点材料にはならないということです。
たとえば中小企業から一部上場企業へと転職した場合などでは、審査のマイナスにならず、むしろ審査に有利な条件になる可能性があります。会社の規模が大きく、業績が良いほど、住宅ローン審査にも良い影響を与えます。
グループ企業への転職と住宅ローン審査
グループ内企業への「転籍」の場合も、手続き上は、新しい会社と労働契約を結び直す「転職」とみなされます。
しかし住宅ローン審査という点から考えた場合、転籍で勤続年数が途切れたとはみなされません。転籍は、あくまで会社の都合による人事異動のようなものですから、住宅ローン審査で問題にはならないのです。
子会社への転籍する場合も、基本的には問題ありません。ただし、著しく給与が下がる場合や、転籍先企業の存続が危ぶまれる場合などでは、審査に悪影響が出ます。
転職後に住宅ローンを組むならフラット35がおすすめ
どうしても転職後に住宅ローンを組みたい場合や、すでに転職をしてしまっている場合、「フラット35」を活用するという手段があります。
フラット35は住宅金融支援機構の長期固定金利住宅ローンですが、審査要件に勤続年数がありません。
そのため、転職して1年未満の場合でも、住宅ローンの契約をおこなうことが可能です。ただし、転職した会社に収入を証明する書類を用意してもらう必要があります。すでに得た分の給料を基準にして年収が計算され、ローン審査の材料になります。
理論上は、1ヶ月だけ働けば、その給与を12倍して「みなし年収」を導き出すことが可能です。しかしフラット35の場合でも、3ヶ月分程度の給与明細はないと、審査を通過するのが難しくなっています。
※フラット35について詳しく知りたい方はコチラの記事へ
住宅ローン審査中に転職するとどうなる?
住宅ローンの審査中に転職することになった場合、審査の前提条件がまったく違ってしまいます。ですから、ローン審査中は転職をしない、というのが基本です。
住宅ローンの審査中に転職する場合は、転職する旨を金融機関に連絡し、ローン審査を中止してもらうのが無難です。会社の倒産などでやむを得ず転職する場合は、住宅ローン契約は延期したほうが良いでしょう。
ローンを返済している期間に転職する場合は?
住宅ローンの契約が完了し、ローンを返済している期間に転職した場合はどうなるのでしょう。この場合、どのような転職をしようと問題はありません。
ローン契約後は、返済がちゃんと行なわれているかどうかだけが問題になります。
転職は住宅ローン審査に不利に働く
つまり転職は、住宅ローンなどのローンを組んだ後にするのが望ましいと言えます。ただしフラット35なら勤続年数は関係ありませんので、転職したばかりでも大丈夫です。
住宅ローンの審査中に転職することになった場合、本文に述べてあるように住宅ローン契約は延期したほうがよいのですが、売買契約は締結されており手付金の支払いは終わっています。
「ローン特約条項」にもとづき白紙解除するのですが、解除期限や売主の対応によりむずかしいこともあります。住宅購入の判断時期は慎重に。

中古住宅・中古アパートの媒介業務・調査業務に従事し、現在は札幌市内の宅建業者にて専任の取引士を務めている。
2006年より、住宅に関する無料の相談サイトを開設し、住宅リフォームや中古住宅購入の相談に応じている。