住宅ローンの基礎知識
フラット35の仕組みとは?どんなメリットとデメリットがある?

フラット35の仕組みとは?どんなメリットとデメリットがある?

フラット35という言葉を知っている、という人は増えてきました。しかし、フラット35の仕組みや、フラット35にも種類があることまで知っている人は少数派です。

このページでは、フラット35の仕組みや、フラット35のメリットやデメリットについて解説していきます。

フラット35は政府の意向を反映しているから、絶対に得なはず、などと思いこむのは危険です。しっかりとデメリットについても把握してから、選ぶかどうか決定しましょう。

フラット35ってどういう仕組の住宅ローンなの?

「フラット35」は、住宅ローンの中でも特殊な位置にあります。

「独立行政法人」である住宅金融支援機構と、「民間金融機関」が提携して提供している住宅ローンなのです。

住宅金融支援機構は、住宅ローンを申し込む人と直接取り引きはしません。民間金融機関が窓口になって、フラット35という商品を販売するという形になっています。

昔は住宅金融公庫というお国の組織が住宅ローンを提供してくれていたものじゃがのう。どうして銀行と提携するようになったんじゃろうか。
もともと住宅金融公庫は、1950年という戦後間もない時期に、余裕がない国民を支援するために作られたものですから。
今の若者は余裕があるから支援しなくてもいいってことですか?ぜんぜん余裕なんてないんだけどなあ~。
……住宅金融公庫は住宅ローンで圧倒的なシェアを取っていましたから、民間金融機関の発展の妨げになると考えられたのでしょうね。それに今でも、金利を抑えたフラット35を住宅金融支援機構が提供していますよ。

フラット35には2種類ある

知らない人も多いのですが、フラット35にはまったくシステムの違う2つのタイプがあります。これはフラット35子育て支援型やフラット35sといった、優遇プランによる違いとはまったく異なります。

フラット35の2つのタイプとは、「買取型」と「保証型」の2つです。

へえ、買取型と保証型なんてのがあったなんて、初耳だ。またしちめんどくさい事をいろいろ覚えなきゃいかんのか。オイラ頭が痛くなっちまうな。
ふふ、大丈夫ですよ。買取型と保証型の違いは、あくまで貸し手側のシステムの違いですので、利用者は気にせずに、好きな金融機関でフラット35を選べば良いだけです。

フラット35の買取型とは?

フラット35買取型では、以下のステップで取引がおこなわれます。

  1. 家を買った人が、民間金融機関にフラット35の申し込みをする。
  2. 民間金融機関は、契約した住宅ローンの債権を住宅金融支援機構に売却する。
  3. 民間金融機関は、住宅ローンの債権の売却で得た資金を、家を買った人に融資する。
  4. 家を買った人は、民間金融機関に住宅ローンの返済をする。
  5. 民間金融機関は、家を買った人からの返済金を、債権者である住宅金融支援機構に受け渡す。

ステップを見れば分かる通り、民間金融機関は、自己資金を用意せずに住宅ローンの販売が可能になります。住宅金融支援機構から受け取った債権売却費を、債務者に流すわけです。

フラット35買取型は、民間金融機関にとって非常に低リスクな住宅ローン商品です。仮に債務者が返済不能になっても、困るのは債権者である住宅金融支援機構だけです。

そのためフラット35買取型では、民間金融機関の審査は非常にゆるくなります。ただし住宅金融支援機構側の審査もありますので、誰でも簡単に契約できるというわけではありません。

フラット35買取型は、民間金融機関にとってローリスクですが、利益もあまりない商品です。

フラット35の保証型とは?

フラット35保証型では、以下のステップで取引がおこなわれます。

  1. 家を買った人が、民間金融機関にフラット35の申し込みをする。
  2. 住宅金融支援機構が、住宅ローンの保証をする。
  3. 民間金融機関は、自己資金を家を買った人に融資する。
  4. 家を買った人は、民間金融機関に住宅ローンの返済をする。

フラット35保証型での住宅金融支援機構の役割は、保証会社の代わりです。お金を出すのは、貸し倒れがあった場合だけであり、融資金は民間金融機関自体が用意します。

フラット35保証型の場合、民間金融機関が販売する住宅ローン商品の一種と考えたほうがわかりやすいでしょう。

買取型に比べて、金利や物件購入費に対する融資額割合などを、民間金融機関が自由に設定できます。

買取型では団信に加入しないという方法が取れましたが、保証型では団信加入が必須となっている点には注意が必要です。

買取型と保証型の違い

買取型と保証型の違いがわかりやすいように、表にしてみました。

買取型 保証型
金利 一定範囲に固定 安め
団信 加入は任意 加入が必要
債権者 住宅金融支援機構 民間金融機関
審査基準 普通 厳しい
取扱機関 332機関 7機関

保証型は金利を自由に設定できるため、買取型よりも金利が安いのが普通です。

ただし返済負担率を低く設定されていたり、高額な頭金が必要だったりと、審査に通るのが買取型よりも難しくなっています。

また、保証型は取り扱っている金融機関が非常に少なくなっています。しかし住宅ローンで大きなシェアを持つ、「日本住宅ローン」と「ARUHI」が入っているため、特に問題は無いはずです。

フラット35のどんなメリットがある?

フラット35には、以下のような4つのメリットがあります。

  1. 固定金利のため返済額がはっきりわかる。
  2. 固定金利の住宅ローンの中では金利が安い。
  3. 正社員以外の人でも借りやすい。
  4. 保証会社・団信(買取型の場合)が不要。

固定金利のため返済額がはっきりわかる

フラット35は固定金利の住宅ローンですので、最初に総返済額を確定することができます。そのため、返済計画を立てやすいというメリットがあります。

また変動金利型のように、世上の金利上昇で返済額が急増してしまうといったリスクもありません。

※固定金利に関する情報はコチラの記事へ。

固定金利の住宅ローンの中では金利が安い

固定金利型の住宅ローンで金利を比較した場合、フラット35はトップクラスの安さを誇っています。

固定金利型の住宅ローンを選ぶなら、フラット35と考えても良いでしょう。

正社員以外の人でも借りやすい

民間金融機関の住宅ローンは、正社員でなかったり、勤続年数が短かったりする人は審査で落とされやすくなります。

しかしフラット35は、自営業の人や勤続年数が短い人でも契約しやすくなっています。

自営業者の住宅ローン審査に関する特集記事はコチラ。

保証会社・団信(買取型の場合)が不要

民間金融機関の住宅ローンは、保証会社を通すことが契約の前提条件になっています。しかしフラット35の場合は、保証会社が不要です。当然保証料も不要になります。

また、団信も民間金融機関では必須ですが、フラット35では任意加入となっています。そのため、持病があって団信の審査に通らないような人でも、フラット35なら住宅ローンを組めます。ただし保証型のフラット35の場合は、団信加入が必須の場合が普通です。

また、フラット35で団信を省いた場合、さらに0.2%金利を下げることができます。

フラット35のデメリットとは?

フラット35には、以下のような4つのデメリットがあります。

  1. 物件が「技術基準」をクリアしていないと利用不可。
  2. 変動金利型に比べて、金利が高い。
  3. 事務手数料が高い。
  4. 団信のサービスが弱い。
やっぱり、良い家を買わないとフラット35を使えないっていうのがネックよねえ……。
新築住宅を買う場合なら、技術基準をクリアしている事が多いと思いますよ。それに多少高くても、高品質な家を買うことにはメリットもたくさんありますから、無駄にはならないでしょう。

物件が「技術基準」をクリアしていないと利用不可

購入する物件が、住宅金融支援機構の定めた技術基準をクリアしていなければ、フラット35は利用できません。

新築住宅の場合、問題がないことが多いのですが、中古住宅の場合は大規模な改修を施さなければ利用できないことが多いでしょう。

変動金利型に比べて、金利が高い

固定金利型の中では最安値と言っても過言ではありませんが、変動金利型の住宅ローンと比べると、金利が高くつきます。

また、日本の金利がさらに安くなった場合は、変動金利型と比べて損が大きくなってしまいます。

事務手数料が高い

フラット35の事務手数料は、民間金融機関が設定するのですが、借入額の2.16%などと高額になっている事が多くなっています。

民間金融機関の住宅ローンの場合、事務手数料は数万円の固定であることが多いため、かなりの差額が発生します。

団信のサービスが弱い

民間金融機関の団信では、死亡や重度障害以外でも、がんや脳卒中など多くの病気に対応しているものが多くあります。

しかしフラット35で3大疾病に対応した団信にすると、金利が0.24%も上昇してしまいます。

団信に関する詳細情報はコチラの記事へ。

固定金利ならフラット35!ただし費用が高くなる事も

フラット35は、住宅金融支援機構と民間金融機関が提供している住宅ローンです。

フラット35は、固定金利型の住宅ローンでは最安値のため、固定金利ならフラット35と考えても良いでしょう。

ただし、物件審査が厳しかったり、変動型の住宅ローンより金利が高かったり、デメリットもありますので、よく検討してから選択しましょう。

監修者メッセージ

フラット35と民間の住宅ローンは融資対象の範囲が異なり、互いに補完し合う役割があります。

申込者の範囲は「フラット35>民間ローン」となり、対象物件は「フラット35<民間ローン」、このような式で表すことができます。

住宅を購入するかたにとって選択肢が広いことと、品質の高い住宅を取得できる利点があります。

プロフィール
不動産売却カテゴリー記事監修(弘中純一)
弘中 純一
宅地建物取引士、一級建築士の資格を保有。
中古住宅・中古アパートの媒介業務・調査業務に従事し、現在は札幌市内の宅建業者にて専任の取引士を務めている。
2006年より、住宅に関する無料の相談サイトを開設し、住宅リフォームや中古住宅購入の相談に応じている。