
介護保険と医療保険は併用できる!覚えておきたい条件をご紹介
公的な医療保険は、病院で保険診療を受けたときに使えるものです。そして、介護保険は介護保険サービスを利用するときに使います。
ただ、介護保険サービスである「訪問看護」や「訪問リハビリ」などを利用する場合、利用者の状態によって、介護保険と医療保険のどちらが適用されるかが違います。
また、医療保険でのリハビリと、介護保険でのリハビリが併用できることもあります。
医療保険と介護保険の違いや、医療保険の適用、医療保険と介護保険の併用が認められる条件について紹介します。
保険の対象者や限度額の有無が違う!医療保険と介護保険の違い
まずは公的な医療保険と介護保険の違いについて、以下の3点にわけて説明します。
- 保険が適用される人・認定の有無
- 保険が効く内容
- 自己負担割合と限度額
保険が適用される人の違い!介護保険利用には認定が必要
介護保険は、原則として65歳以上の介護を必要とする人が対象です。特定の病気が原因で介護が必要な人は、40歳以上から対象になります。
ただ、65歳になったら、あるいは介護が必要になったら、自動的に介護保険の対象になるわけではありません。
介護保険を利用するには、要介護認定を受ける必要があります。
「あなたは確かに介護が必要ですね」と認められた人だけが、介護保険を利用できる仕組みです。
介護保険の対象者についてはコチラで詳しく解説しています。
一方、公的医療保険は年齢関係なく、0歳児から対象です。社会保険や国民健康保険の健康保険証があれば、誰でも利用できます。
介護保険と医療保険はいつどこで使う?保険適用される内容の違い
介護保険が使えるのは、介護保険サービスを利用した時です。
介護保険サービスには、介護施設の利用、訪問介護、訪問看護、福祉用具のレンタル、住宅改修の補助などがあります。
介護保険で利用できる施設やサービスについては、「老人ホームと介護施設の種類を解説!ニーズに合う施設を見つけよう」や「在宅介護サービスの種類を紹介!介護の負担を軽くしませんか?」にまとめています。
医療保険は、病院で治療を受けるときなどに適用されます。病院や調剤薬局の窓口で保険証を提示するのは、医療保険を利用するためです。
療養のために仕事を休む時の傷病手当金、出産時の出産手当金、死亡時の埋葬料なども、医療保険からの給付です。ただし、国民健康保険には傷病手当金や出産手当金はありません。
介護保険が効く金額には上限がある!自己負担割合と限度額の違い
介護保険の場合は、利用者の負担は原則としてサービス利用料の1割で、残りの9割を保険者(自治体)が負担してくれます。収入が多い利用者は、2~3割を自己負担します。
ただし、自己負担1割(または2~3割)で利用できる金額には、限度が設けられています。
介護保険の自己負担割合や限度額については、コチラで紹介しています。
医療保険の場合、現役世代は原則として3割を自己負担します。高齢になると1~2割負担となりますが、収入が多い高齢者は3割負担です。
医療保険は介護保険と違い、保険適用となる金額に限度額は設けられていません。
医療保険で介護サービスを利用できる!医療保険と介護保険の使い分け
要介護認定を受けている人なら、介護保険サービスの利用には、医療保険ではなくて介護保険の適用が優先されるのが原則です。
ただし、特定の病気であるなどの条件を満たすと、訪問看護などのサービスには医療保険が適用されます。
もちろん、そもそも介護保険の対象にならない人(40歳未満の人や、要介護認定を受けていない人など)は、医療保険で訪問看護を利用します。
要介護者・要支援者でも訪問看護が医療保険適用となる条件とは
要介護認定を受けて介護保険を利用している要介護者・要支援者が、医療保険で訪問看護を利用することになるのは、以下の場合です。
末期の悪性腫瘍(がん)、多発性硬化症、重症筋無力症、スモン、筋萎縮性側索硬化症、脊髄小脳変性症、ハンチントン病、進行性筋ジストロフィー症、パーキンソン病関連疾患、多系統萎縮症、プリオン病、亜急性硬化性全脳炎、ライソーゾーム病、副腎白質ジストロフィー、脊髄性筋委縮症、球脊髄性筋委縮症、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、後天性免疫不全症候群、頸髄損傷、人工呼吸器を使用
終末期、急性増悪、退院直後で、頻繁に訪問看護が必要な状態
認知症以外の精神疾患
それまでの症状に比べて、急激に状態が悪くなること。悪い状態から、さらに悪くなっている状態です。
医療保険で訪問看護を受けながら、福祉用具レンタルなどのその他の在宅サービスは、介護保険で利用します。
訪問看護より厳しい!訪問リハビリが医療保険適用になる条件
要介護認定を受けている人が、医療保険で訪問リハビリテーションを受ける条件は、以下のとおりです。
- 急性増悪などによりバーセル指数かFIMが5点以上悪化
- 一時的に頻繁に訪問リハビリを行う必要がある
訪問看護よりも限定されている印象ですね。
どちらも日常生活動作などを評価する指標です。食事、排せつ、着替え、移動などに点数をつけて評価します。
医療保険と介護保険でのリハビリを併用できる条件とは
「機能回復のために、リハビリをたくさんしたい」と希望する人も多いです。そのような場合、医療保険と介護保険で同時期にリハビリを受けることはできるのでしょうか。
医療保険でのリハビリは急性期と回復期、介護保険でのリハビリは維持期に行うとされていて、目的が違うため、基本的に併用はできません。
要介護認定を受けている人のリハビリは、介護保険が優先されます。
急性期リハビリは、病気やケガが起き、意識が回復した直後から行います。回復期リハビリは、急性期が過ぎたらリハビリ専門病棟などで行い、日常生活への復帰を目指します。維持期リハビリは自宅などで行い、日常の生活動作の維持が目的です。
ただし、例外として併用ができる場合がありますので紹介します。
リハビリを必要とする病気・ケガの診断名が違う場合
Aという病名・症状で、介護保険でリハビリを受けているとします。
その後新たなBという病気やケガでリハビリ(疾患別リハビリ)の指示が出た場合には、医療保険でリハビリを受けることができます。
例えば、脳梗塞で介護保険リハビリを受けていて、その後骨折してリハビリが必要になった場合などがあてはまります。
回復期リハビリから維持期リハビリの移行期間にあたる場合
同じ病気・ケガでのリハビリでも、期間限定で併用が認められるケースがあります。
急性期・回復期に医療保険でのリハビリを受けていて、その後介護保険での維持期リハビリに移行する場合には、2カ月間に限って、医療保険でのリハビリと介護保険でのリハビリを併用できます。
回復期から維持期への円滑な移行を目指すための制度です。
この制度が適用されるのは、医療保険のリハビリと、介護保険のリハビリを行う施設が別々の場合です。
医療保険でのリハビリと訪問看護でのリハビリを併用する場合
訪問看護の一環としてリハビリを行うこともできます。
訪問看護で、看護師の代わりに理学療法士が派遣されて、自宅でリハビリを行うものです。
この場合、医療保険のリハビリと訪問看護(での介護保険を使ったリハビリ)は併用可能です。
条件を満たせば医療保険と介護保険の併用は可能です
原則として、要介護認定を受けた要支援者・要介護者は、介護保険の適用が優先されます。決められた条件に当てはまった場合のみ、医療保険の適用や併用が可能です。
「こっちのほうが得だから」「都合がいいから」など、利用者の希望で使い分けや併用ができるわけではありません。
退院直後など、一時的・集中的に訪問看護が必要な場合、医療保険での訪問看護利用が可能なことはぜひ覚えておきたいですね。
「介護保険で頻繁に訪問看護を利用すると、限度額を超える」という悩みの解決法になるでしょう。