住宅ローンの名義変更はできないって本当?借り換えで解決する場合も
あなたは住宅ローンの名義変更を考えたことはありますか?
通常、住宅ローンの名義変更を検討するような場面はそう多くはありません。ただし、場合によっては名義変更をした方がいい場合があります。
例えば次のような場合。
- 離婚する予定なので、名義変更を考えている。
- 親の住宅ローンを肩代わりする場合。
ただ問題なのは、基本的に住宅ローンの名義変更は銀行側が認めてくれないことが多く、非常に難しいということ。
でも断られてしまった場合は、住宅ローンの借り換えで解決する場合もあるのです。
そこで今回は、住宅ローンの名義変更が認められるケースや住宅ローンの借り換えで解決する方法などについてご紹介します。
住宅ローンの名義変更は実質不可能なのか?その理由について解説
住宅ローンの名義変更はできるのか?を調べてここにたどりついたあなた。
住宅ローンの名義変更は法的には可能だが、実際はかなり難しい、というのが答えです。
では、どうして法律上は問題ないのに住宅ローンの名義変更は難しいのでしょうか?詳しく解説していきたいと思います。
所有権の移転登記をするなら法的問題はない
住宅ローンに関わる名義変更と言えば
- (自宅の)所有権の名義変更
- 住宅ローンの契約者の名義変更
この2点が考えられます。ここでは①の所有権の名義変更をみていきたいと思います。
結論から言えば、自宅の所有権を名義変更するのは法律上問題ありません。法務局で移転登記を完了させればOKです。
住宅ローンの契約上問題がある場合、名義変更は実質不可能となります。理由は次で詳しく解説していきます。
名義変更は住宅ローンの契約に違反する可能性あり
法律上、抵当権の付いた不動産でも所有権の移転をすることは問題ありません。
しかし銀行との住宅ローン借入契約には、大抵の場合「名義変更をするには銀行の承諾が必要」という内容が記載されています。
なぜ銀行側は住宅ローンの名義変更を認めてくれないのでしょうか?
理由は、名義変更した後の契約者が住宅ローンをきちんと返済できるか?疑問が残るからです。
私たちは住宅ローンの借り入れ申請をする際、年収や勤続年数の証明など様々な書類を提出しましたよね?それは銀行側が「きちんと住宅ローンを返済していける能力があるか?」を厳密に審査するためなのです。
しかし、住宅ローンの名義変更を認めてしまってはその審査も台無し。ゼロから審査をやり直さなくてはなりません。このため、銀行側は住宅ローンの名義変更を基本的には認めてくれないのです。
他にも問題あり?名義変更で「贈与」の問題が発生することも
住宅ローンの名義変更には「できる・できない」の問題だけではなく、贈与の問題が発生する場合があります。
例えば、夫婦それぞれが住宅ローンを組んで返済していた場合。住宅ローンの契約を夫単独名義に変更するため、自宅の所有権も夫婦共有名義から夫の単独名義に変更したとしましょう。
すると、妻から夫へ贈与があったとみなされる場合があります。贈与税における年間の非課税枠は110万円となっていますが、住宅の持分贈与でこの非課税枠を超えてしまうことで、多額の贈与税が発生する可能性があります。
そこで贈与が発生するか?心配な方は名義変更を行う前に税務署や税理士に相談すると良いでしょう。
【パターン別】こんなときどうする?住宅ローンの名義変更は可能か
住宅ローンの名義変更をしたいな・・・という場合は、どんな時でしょうか?
- 夫婦間で名義変更したい場合
- 親子間で名義変更したい場合
パターン別に見ていきましょう。
①夫婦間で名義変更したい場合
例えば、共働き夫婦が共有名義でペアローンを組んでいたとします。しかし、妊娠出産にともない妻が退職して専業主婦になったとしましょう。
専業主婦だと収入がないので、この際だから夫単独名に変更するとします。すると、ペアローンは夫婦合わせての収入で借り入れの審査をしているので、夫単独では収入の審査基準に足りず単独名義への変更は残念ながら難しい可能性があります。
次に離婚する場合を考えてみましょう。次のようなケースを考えてみます。離婚して妻が自宅に残り、夫は家を出るものの財産分与の代わりに住宅ローンの返済を続けるという場合。
妻は自分が住む家なので、自宅の所有権を妻単独名義に変更したいな…と考えるかもしれません。しかし、住宅ローンの返済を続けているのは夫なので変更は難しいものと思われます。
住宅ローンを残したまま離婚する場合はトラブルに発展する可能性が高いです。
そのため、自宅は売却処分し財産分与した方が平和に解決できるかもしれません…。
ペアローンについて詳しく知りたい方はコチラへ。
②親子間で名義変更したい場合
まず、親子が協力して住宅ローンを返済する方法に
- 親子リレー返済
- 親子ペアローン
があります。
親子リレー返済は、親の債務を子が引き継いでいくタイプの返済方法。親子ペアローンは親と子がそれぞれ住宅ローンを組んで返済する方法です。
まず親子リレー返済ではそもそも子が債務を引き継いでいくタイプの返済方法なので、債務を引き継ぐタイミングでの名義変更は問題ありません。
反対に親子ペアローンでは、それぞれの返済分に従って持ち分も定められているはず。例えば、子の単独名義に変更したい場合は、子が年収等の条件をクリアしていることやそれなりの理由がないと認められないでしょう。
最後に「親の住宅ローンを子が肩代わりする」ケースもご紹介します。例えば遠方に住む親が住宅ローンを返済できずに、子がローンの返済を肩代わりするような場合。
この場合ですと、そもそも子が住宅ローンを返済中の住宅に居住していないので住宅ローンの名義変更は認めらないでしょう。そのため解決策としては、子が親に対して生活費を仕送りするという形となることが多いです。
※親子リレーローンの特集記事はコチラ。
どうしても名義変更したい!それなら住宅ローンの借り換えはどうか?
住宅ローンの名義変更はそう簡単にはいかないことがお分かりいただけたかと思います。
しかし、どうしても住宅ローンの名義変更をしたい!そのような場合は「住宅ローンを借り換える」という手段もあります。
住宅ローンの借り換えで名義変更を解決できるのか?解説していきたいと思います。
住宅ローンの借り換えで名義変更ができる場合とは?
基本的には銀行側に断られる住宅ローンの名義変更。しかし、住宅ローンの借り換えなら解決できる場合もあるのです。
今借りている住宅ローンを全額繰り上げ返済し、新たに住宅ローンを借りる方法。これが住宅ローンの借り換えです。
住宅ローンの借り換えでは、借り換え先の金融機関が新たに住宅ローン契約者の審査を行うことになります。
要は、住宅ローンの借り換え先に借り入れ申請をする際、今の名義人ではなく新しくしたい名義人の名前で契約すればOKということ。
これで、現在の借り入れ先である銀行からの許可をとらずに住宅ローンの名義人を変更することが可能です。
住宅ローンの借り換えをする場合の注意点
住宅ローンの名義人変更をするにあたって、住宅ローンの借り換えでの解決法をご紹介しました。しかしこの方法にも注意点はあります。そこで注意しておきたい2つのポイントをまとめてみました。
- 住宅ローンの借り換え審査が通らない可能性があること
- 贈与にあたる可能性があること
まず①についてですが、住宅ローンの借り換えとは新しく住宅ローンの契約を結ぶことになります。すなわち、年収や勤続年数が足りなければ金融機関側の審査には通りませんし、健康状態に問題があれば団信には加入できないかもしれません。
また②については、贈与の問題があります。これは単なる名義変更の際も考えなくてはならない問題ですが、住宅ローンの借り換え時に名義変更をした場合でも贈与にあたる可能性があります。
たとえば住宅ローンを連帯債務で借りている状態からの借り換えであれば、債務額が110万円を超える部分に贈与税がかかってしまいます。
ただし負担付贈与なら、住宅の時価額から住宅ローンの残債を差し引いた分で考えるので、贈与税が発生しない程度に抑えることは場合によっては可能です。
一定の債務を与える代わりに、財産を贈与する場合のこと。ここでは、一定の債務(=住宅ローンの返済)であり、財産(住宅の所有権)と考えます。
住宅ローンの名義変更は難しいもの。できない場合は借り換えも検討を
もし名義変更が認められた場合や住宅ローンを借り換えると同時に名義変更も行った場合、金額によっては贈与税が発生する場合があります。手続きの前に税務署や税理士へ相談すると良いでしょう。
本文中にもある通り、住宅ローンの名義変更には困難を伴うことが多いです。
名義変更にこだわるよりも借り換えを検討したほうが、有利な条件で借りられて返済総額を抑えられたという結果につながることもあります。
借り換えに必要な諸費用なども検討する必要がありますが、ベストな方法をお選びいただけると幸いです。
4年ほど専任の宅建士として不動産業者に勤務し、現在はマンション管理士・消防設備士として独立。
宅建士としての知識や立場を活かし、不動産売買時の疑問点などの相談を受けている。