住宅ローンの返済
住宅ローン控除で損をしない!ベストな繰り上げ返済のタイミングとは

住宅ローン控除で損をしない!ベストな繰り上げ返済のタイミングとは

住宅ローンの返済で大きいのは、利息の支払いです。借入額と借入期間によっては、利息の支払いだけで500万円を超えることも珍しくありません。

支払い利息の金額を抑える方法としては繰り上げ返済が挙げられますが、借入残高が減れば住宅ローン控除が受けられる金額も少なくなって損をするのでは?となかなか繰り上げ返済できない方もいるでしょう。

そこで今回は、住宅ローン控除で損をしない、そして、総返済額で出来るだけ得をするためにベストな繰り上げ返済のタイミングについてご紹介していきます。

住宅ローンは早く返すと損?そう言われる理由は住宅ローン控除にあり

まず、住宅ローンは完済するまで1日ごとに利息がかかります。ですから、1日でも早く返した方が支払い利息額を抑えることができるのです。

通常、毎月指定日に引き落とされている返済とは別に返済をするのが、繰り上げ返済です。

繰り上げ返済をした金額は全額元本への返済に充てられ、元本が減った分だけ毎月の返済金額を減額する、もしくは返済期間を短縮するかのどちらかを選択をすることができます。

繰り上げ返済で期間短縮を選べば、返済期間が短くなって支払うべき利息も減額することができるのです。

ちなみに、収入の減少や教育資金などの支出の増額に伴って将来的に毎月の返済額が負担になってくることが考えられるのであれば、期間はそのままで毎月の返済額を軽減するという選択もオススメです。

じゃあ繰り上げ返済をすればするだけお得になるのでは?と思うかもしれませんが、そこでポイントになってくるのが住宅ローン控除です。

住宅ローン控除とは

年末のローン残高の1%(長期優良住宅は1.2%)が、控除されるというもの。

控除期間は10年間で、上限額は各年で40万円となる。

※住宅ローン控除を詳しくしりたいアナタはこちらへ
住宅ローン控除(減税)とは?その仕組を理解して上手に利用しよう

ローン残高に対して控除額が決まるので、繰り上げ返済によって借入残高が減ってしまった場合、受けられる控除額も減るために住宅ローン控除額も少なくなってしまいます。

ですから、住宅ローンで繰り上げ返済をすると住宅ローン控除で損をしてしまうと言われているのです。

住宅ローンの繰り上げ返済の特集記事もございます。コチラもご覧ください。

住宅ローンは繰り上げ返済で支払利息がお得になる一方で、住宅ローン控除が受けられる金額が少なくなるというデメリットがあるというわけですね。

つまり、繰り上げ返済はしない方が良いということでしょうか?

実は、住宅ローン控除額が減ってしまっても繰り上げ返済がお得になる場合もあります。

次で詳しくご紹介していきますね。

住宅ローンの繰り上げ返済時期は早いタイミングがお得!

住宅ローンは、繰り上げ返済をした方が支払い利息額が減り、お得になるのは間違いありません。

そこで気になるのが、住宅ローン控除との兼ね合いですよね。繰り上げ返済をした場合と、繰り上げ返済をしなかった場合で比較することが大切です。

ここでは、次のケースで見ていきます。

  • 借入金額…3,000万円
  • 返済期間…35年

では、金利別に住宅ローン控除額と繰り上げ返済による支払利息軽減額を比較していきます。

1年目から10年目まで毎年繰り上げ返済をしたケースと、住宅ローン控除期間である10年間が経過した後に一気に繰り上げ返済をする場合を試算しました。

繰り上げ返済額は、どちらも1,000万円です。

金利 繰り上げ返済内容 住宅ローン控除額
繰り上げ返済による支払利息軽減額
トータル軽減額
2.35% 1年目から10年間
年間100万円
2,090,000円
7,180,000円
9,270,000円
2.35% 11年目に
1,000万円
2,670,000円
5,380,000円
8,050,000円
0.85% 1年目から10年間
年間100万円
2,030,000円
2,310,000円
4,340,000円
0.85% 11年目に
1,000万円
2,580,000円
1,760,000円
4,340,000円

金利が2.35%の場合は、毎年繰上返済をすると住宅ローン控除合計額は減ってしまいます。ただ、繰り上げ返済による利息軽減効果が高いので、毎年繰り上げ返済をした方がお得という結果になりました。

一方、金利が0.85%の場合は、トータル軽減額は繰り上げ返済をしてもしなくても同じという結果になっています。

つまり、早く繰り上げ返済をした方がお得なのか、住宅ローン控除期間が終わってから繰り上げ返済をした方がお得なのかについては、適用する金利や借入金額などの条件によって異なるのです。

住宅ローン控除期間を考慮した方が良いケースは、借入期間や借入金額が少ない場合です。繰り上げ返済をすることによって、住宅ローン控除の適用条件が満たせなくなる可能性があります。

逆に、借入金額が多い、金利が高いというケースでは出来るだけ早く繰り上げ返済をした方が、住宅ローン控除を受けるよりも結果としてお得になります。

住宅ローン控除額が低くなってしまうからという理由で、繰り上げ返済をしないという選択をすると損をする可能性があるということなのですね。
繰り上げ返済は、早ければ早いほど効果が高くなります。

だからこそ、住宅ローン控除が受けられる10年の間に繰り上げ返済をするかどうか、いろいろシミュレーションをして検討してほしいですね。

住宅ローン控除を考えると年末よりも年始の繰り上げ返済がお得!?

住宅ローン控除は、基本的に年末調整で手続きをします。ただ、1年目に関しては自分で申請をする必要がありますので注意しましょう。

2年目からは年末調整での手続きが可能となりますが、税務署から9年分、つまり9枚の書類が1回で送られてくるので住宅ローン控除を受ける間はしっかり保管しておくことが大切です。

ここでポイントとなるのが、住宅ローン控除は年末のローン残高に対して計算されるという点です。

年末に繰り上げ返済をしてしまうと、年末のローン残高も減ってしまうので受けられる控除金額も少なくなってしまいます。しかし、1か月待って年始に繰り上げ返済をすれば、少しでもローン残高が多い状態での住宅ローン控除が可能となるのです。

100万円の繰り上げ返済を考えているとします。12月に繰り上げ返済をしてしまうと100万円×1%=1万円ほど住宅ローン控除額が減ってしまうことになりますよね。

ここで、3,000万円を全期間固定金利3%で借り入れして、5年後に繰り上げ返済をするケースを考えてみます。

繰り上げ返済の時期 支払い利息差額
5年0か月目 1,396,660円
5年1か月目 1,390,829円

1か月繰り上げ返済を遅くすると、期間短縮による支払利息軽減効果が減ってしまいますが、1か月遅らせたことによる支払利息の差額は6,000円弱です。

つまり、繰上を1か月遅らせて住宅ローン控除を受けた方が得をするのです。
 

繰り上げ返済をしようと思ったタイミングが12月なら、1か月待った方が良いって覚えておかなきゃね。

住宅ローン控除と繰り上げ返済どちらがお得かは試算が必要!

住宅ローンは、返済期間が短い方が支払い利息額が軽減されて得をします。ただ、最長10年適用される住宅ローン控除は、年末のローン残高に対して計算しますので繰り上げ返済で残高が減った分だけ控除額も減ってしまうのです。

ただ、長期的に見れば毎年繰り上げ返済をした方が、住宅ローン控除額は低くなっても結果的に支払い利息の軽減額が大きくなって得をする場合が多くあります。

借入金額や適用金利など、条件によって繰り上げ返済をした方が得なのかどうかは違ってきます。自分の条件ならどっちがお得なのか、しっかりシミュレーションをするようにしたいですね。

監修者メッセージ

返済シミュレーションといわれると、金利タイプの違いによる返済額のことばかり考えますが、繰上げ返済のパターンをいろいろ検討するのにも役立ちます。

年末に繰上げ返済するよりも、年始に繰上げ返済したほうが得になるのは、なかなか気がつかないポイントです。

ただし年始の繰上げ返済は1月より遅くならないように。

プロフィール
不動産売却カテゴリー記事監修(弘中純一)
弘中 純一
宅地建物取引士、一級建築士の資格を保有。
中古住宅・中古アパートの媒介業務・調査業務に従事し、現在は札幌市内の宅建業者にて専任の取引士を務めている。
2006年より、住宅に関する無料の相談サイトを開設し、住宅リフォームや中古住宅購入の相談に応じている。