入院の90日ルールなんてまだマシ!実際入院できる期間はもっと短い
私の祖母が倒れて入院したとき、自分でトイレにも行けない状態なのに、病院からは「症状が安定したので退院してください」と言われました。
なんとか別の病院に転院できましたが、あの時は家族一同とても焦りました。
次の患者のためにベッドを空けたいとか、長期入院の患者が増えると病院は儲からないという事情があるため、「えっ、こんなに早く?」という時期に退院を促される人がたくさんいます。
入院90日以内に退院させられる「入院の90日ルール」が有名ですが、90日どころではなく、2週間や3週間で退院させられる人も。
そのため、入院直後から退院後の受け入れ先を探しておく必要があります。早めに退院させられる理由や、退院後の選択肢についてご説明します。
長期入院は儲からない!病院に入院できる期間が短い理由
急性期の治療が終わって患者の症状が安定すると、まだ自宅での療養は困難と思われても、病院は患者に退院するよう促します。
病気やけがで命が危険にさらされている不安定な状態のこと。病気やけがの発生から14日程度が急性期の目安とされています。
次の患者のためでもありますが、「長期入院する患者が増えると病院の経営が苦しくなる」という理由もあります。
実は、私たちが病気やケガをして入院する一般病棟では、入院が長くなると入院料が安くなり、病院の収入が減ってしまうのです。
3つのポイントに分けて、その仕組みをご説明します。
- 平均在院日数
- 入院基本料の逓減性(ていげんせい)
- 特定患者
平均在院日数とは?看護師の配置が手厚い病院ほど早く退院させたがる
日本全国にある病院は、看護師1名に対する患者の数、平均在院日数(入院してから退院するまでの平均日数)、医師の数、重症患者の割合などをもとにランク分けされています。高ランクの病院ほど、もらえる入院料が高くなります。
患者:看護師の数 | 平均在院日数 | 入院料 |
---|---|---|
7:1 | 18日以内 | 15,910円 |
10:1 | 21日以内 | 13,320円 |
13:1 | 24日以内 | 11,210円 |
15:1 | 60日以内 | 9,600円 |
(2018年6月9日現在)
ただし、「看護師1名に対する患者の数」が7:1で、医師数などの条件を満たす病院でも、平均在院日数が19日以上になると、15,910円の入院料をとれなくなります。
そのため病院は、何とか決められた平均在院日数におさめたいのです。
看護師の配置が手厚く高ランクの病院ほど、決められている平均在院日数が短いので、早く患者を退院させたがります。
入院基本料の逓減性とは?長期入院の入院料は徐々に安くなる
入院基本料の逓減性も、病院側が患者を早く退院させようとする理由です。長期入院している患者の入院料は、徐々に安くなっていくのです。
病院のランクに関わらず、入院初期には入院基本料に加算(上乗せでもらえるお金)がつきます。
しかし、入院15日以上だと加算が少なくなり、31日以上ではなくなります。患者が長く入院するほど、病院の収入は減りますね。そのため、早めに退院させたがるのです。
入院期間 | 加算 |
---|---|
1~14日 | 4,500円 |
15~30日 | 1,920円 |
31日~ | 0円 |
(2018年6月9日現在)
入院の90日ルールとは?91日目から入院料と治療代が安くなる
「入院の90日ルール」とか「3ヶ月以上は入院できない」という話を聞いたことはありますか。
91日以上入院している患者は「特定患者」と呼ばれ、どのランクの病院でも入院基本料が1日9,280円と安くなります。しかもこの9,280円は、検査代や薬代も含めたコミコミ価格です。
これだと病院は大赤字ですよね。ですから、入院90日目までになんとか退院させようとします。
入院期間に制限がない病院に転院も!退院後の選択肢5つ
退院後の選択肢としては、自宅、病院(転院または同じ病院の別病棟へ移る)、介護施設などがあります。
- 自宅
- 療養病棟
- 回復期リハビリテーション病棟
- 地域包括ケア病棟
- 老人介護保健施設 (老健)
入院後の早い段階から、退院後はどこに移りたいか検討し、どんな病院や施設があるのかを調べるのがおすすめです。
各病棟や老健の特徴や、入院・入所できる日数をご紹介します。
自宅に戻るなら介護サービス利用で家族の負担を減らそう
体がまだ弱っている状態で自宅に戻ったら、日常生活のサポートを担う家族の負担が大きくなります。
要介護認定を受けて介護サービスを利用する、家に手すりをつけるなど、家族の介護の負担を減らしながら、本人が自宅で生活できる環境を整える必要があります。
退院前に、自宅療養に向けて患者・家族・病院スタッフなどが集まって話し合う場(カンファレンス)を設けている病院もあります。ここで不安を解消してから、自宅に戻りましょう。
長期入院が前提!自宅復帰を目指す療養病棟
療養病棟は、これまで説明してきた一般病棟とは違い、長期入院して自宅復帰を目指す病棟です。急性期の治療終了後、継続して治療が必要な患者が入院できます。
入院できる期間は、「入院日数に制限はない」とする病院や「原則として3~6ヶ月」としている病院があるので、確認が必要です。
病気の種類と入院日数に制限がある回復期リハビリテーション病棟
回復期リハビリ病棟とは、日常生活(食事、トイレ、歩くなど)のリハビリを行い、自宅復帰を目指すための病棟です。
特定の病気やケガで、発症から1ヶ月または2ヶ月以内の患者が入院できます。入院できる期間には上限があります。
病気・ケガの例 | 発症から | 入院期間の上限 |
---|---|---|
重度の脳梗塞など | 2ヶ月以内 | 180日 |
脳梗塞、脳卒中など | 2ヶ月以内 | 150日 |
大腿骨骨折など | 2ヶ月以内 | 90日 |
股関節の靭帯損傷など | 1ヶ月以内 | 60日 |
退院後、訪問リハビリをしてくれる病院もあります。アフターフォローがあると、自宅に戻ってからも安心ですね。
原則60日間まで入院可能な地域包括ケア病棟
地域包括ケア病棟は、急性期の治療後、まだ自宅での療養・介護が難しい患者が入院できる病棟です。入院して、治療やリハビリを行います。
一般病棟で受けていたような特殊な検査や手術はできず、症状が悪化すると一般病棟に移ります。
入院期間は原則として最長60日間です。
地域包括ケア病棟を持つ病院は多いですが、病床数(入院できる患者数)は10床や20床などと少ない病院がほとんどです。
老人介護保健施設は原則3ヶ月までの利用
介護老人保健施設(老健)は、要介護認定を受けて要介護度1~5となった人が入所できる介護施設です。入所者は自宅復帰を目指してリハビリを行います。
老健には医師と看護師がいて、注射や吸引などの医療ケアが可能。看護師が24時間常駐する施設もあります。比較的利用料が安いので人気があり、空き待ちになっている施設もあります。
入所期間は原則3カ月ですが、3カ月ごとの面談で「まだ自宅での生活は困難」と判断されると延長できます。
退院後に特別養護老人ホーム(特養)への入居を希望する人もいますが、特養はどこも空き待ちの状態で、すぐ入居できる可能性はゼロ。特養に入るまでのつなぎとして、老健に入所している人もいます。
病院に入院できる期間は短い!入院初期から転院先の情報を集めよう
早期退院を見越して、退院後について入院初期から考え、情報収集や専門家への相談を始めるのがおすすめです。そうしないと、私の家族のように「退院して」と言われてから、焦って転院先を探す羽目になります。
病院のソーシャルワーカーが、退院後の自宅療養、転院、施設入居に向けた相談に乗ってくれる専門家です。
本人の状況や家族の希望を伝え、アドバイスをもらいましょう。目先の転院先のことだけではなく、転院先を退院した後に自宅に戻るのか施設に入るのかも、家族で話し合っておくといいですよ。