お墓・葬送

お墓の相続問題をやさしく解説!継承者の決め方・相続したくない場合

もしお墓を管理していた自分の家族が亡くなったら故人に変わってお墓の管理をしなければいけなくなります。

お墓の承継者は「長男」がするものと昔からの風習で決められていると思っている人もいるかもしれませんが、実は決まっているわけではありません。

今回は祭祀財産・祭祀承継者のことを中心に説明していきます。また、承継したことによって税金がかかるのかについても初心者でも分かりやすく詳しく解説していくので参考にしてみてください。

お墓は誰が継ぐもの?承継者の優先順位や決め方

お墓を継ぐと聞くとなんとなく長男が継ぐものではないのかと思ってしまう人が多いかもしれませんが実は法律上では長男・長女が継ぐとは決まっていません。

ただし習慣として「長男」や「長女」が継ぐというのが昔は一般的でした。

実際に民法で決められている優先順位は以下のとおりです。

1.先代承継者の指定・遺言 先代の承継者から指定されている場合は誰でもお墓の承継者となります。指定できるのは1人と決まっています。
2.地方の習慣 実際には親族による相談で決められています。
3.家庭裁判所の調停 上の1と2で決まらない場合は調停で決めることになります。

複数人での共同承継はできないうえ、墓地の譲渡や転売ができないのでトラブルに注意しなければいけません。

承継人が指定されている場合、辞退したり放棄したりすることもできません。

承継者になりたくなくても先代の意思で決まってしまうかもしれないのですね。
本人がどうしてもお墓を継ぎたくないという場合は対処方法も一応あります。後ほど詳しく説明しますね。

祭祀財産とは?祭祀承継者は長男・親族でなくてもよい

祭祀財産とは、祖先の祭りのために使用される家系図や位牌、仏壇や墓地などのことを指します。相続財産とは異なり、共同の財産にはならないものです。

祭祀財産を承継する人のことを祭祀承継者といいます。

祭祀承継者は冒頭でも話したように長男である必要はありません。親族以外がお墓を承継したいという場合もあるかもしれませんが、霊園によっては親族でなければ承継することを認めていないところもあります。

生きているうちに財産を承継することはできるのですか?
土地や不動産であれば生前贈与をすることができますが、祭祀財産は死後の承継が基本となります。

なぜ生前承継ができないのかというと、生前承継を認めてしまうと祭祀承継のトラブルが起きた場合に墓地の管理者も巻き込まれる恐れがあることが理由として考えられます。

しかし生前承継できる例外のケースもあります。自治体で管理している公営墓地では以下のような場合に生前承継を認めた例があります。民間の霊園でも以下のようなケースであれば認められる可能性もあります。

  • 墓地使用者が外国に帰化・永住している
  • 婚姻・養子縁組により氏を変更した
  • 離婚・離縁した
  • 高齢や疾病により管理が困難になった

承継しなければ管理費を支払ってもらえないなど、霊園の管理者にとって不都合が生じてしまうようなケースであれば生前承継を認めてもらえるかもしれません。

お墓を相続したら何をすれば良い?しなければいけない3つのこと

祭祀継承者になったらお墓を管理責任者になるだけではなく、法要の主宰や遺骨の管理もしなくてはなりません。

る戸籍謄本や葬儀の領収書が対象となります

1.お墓の維持管理 命日やお彼岸・お盆の時にお参りができるようにお墓のお手入れをします。霊園に支払う管理費やお寺へのお布施などの管理に関わる費用を支払う義務もあります。
2.法要を主宰する 一周忌などの法要やお盆、お彼岸の供養行事のために親族へ連絡したりと中心になって行います。
3.遺骨やお墓の所有権を持つ 遺骨やお墓の所有権は承継者が持っています。親の遺骨を分骨して兄弟それぞれ手元に置きたいという場合は承継者の同意が必要になります。
お墓を相続したら相続税はかかるんでしょうか?
お墓は相続財産に該当しないので相続税がかかりませんよ。

祭祀承継者になる人が決まったらまずは墓地の管理者や菩提寺に連絡しましょう。

祭祀承継者の名義変更に必要な書類と手続き

名義の変更手続きをする必要があるので、連絡をして必要な書類を確認してください。基本的には以下のような書類が必要となってきますが、場所によって異なる可能性があるので連絡をしたときに必ず聞いておくよう注意しましょう。

実印 役所で登録している印鑑
印鑑証明書 市区町村で取得
承継者の戸籍謄本や住民票 市区町村で取得
墓地使用者の死亡が記載された戸籍謄本 市区町村で取得
墓地使用許可証、永代使用承諾証 霊園で取得

他にも祭祀承継者という証明する書類が必要になる場合もあります。墓地使用者との関係を確認される場合は関係が載っている戸籍謄本や葬儀の領収書が対象です。

お墓を相続した人は今後お墓の維持費を支払ったり、ご先祖様の供養の集まりや法要時に主宰をすることになることになります。

お墓を相続するときには名義変更手数料がかかることになります。1,500円〜5,000円程度が一般的な相場です。

お墓の名義変更手数料の相場
公営墓地 数百円から数千円
民営霊園 数千円から10,000円以上
寺院墓地 手数料+お布施

寺院墓地の場合はお寺との付き合い方によって支払う金額が異なってきます。具体的な金額を知りたい場合は直接お寺に確認すると良いでしょう。

お墓を相続したくない!辞退・放棄はできないので墓じまいを考えよう

お墓を相続することで祭祀承継者は金銭的に負担がかかっていきます。基本的に辞退したり放棄したりすることはできないものの、どうしても難しい場合は「墓じまい」をすることで祭祀承継者の義務を放棄することができます。

祭祀承継者はお墓の管理をする義務だけではなく、処分する権利もあります。

ただし墓じまいをするときには親族に事情を話しておきましょう。連絡もなく勝手に墓じまいの手続きをしてしまうとトラブルに発展してしまいます。親族に話してみると墓じまいをしなくても、費用面を援助してくれるかもしれません。

墓じまいでやることは「改葬(移転)」と「撤去」の2つに分かれます。

墓じまいの流れ
  1. 改葬先を決める
  2. 埋葬証明書の作成・発行
  3. 改葬証明書を受けとる
  4. 遺骨の取り出し
  5. 納骨(散骨)
  6. 墓石の撤去

遺骨を取り出すときにはご先祖様の魂を抜くために閉眼供養をする必要があり、新たな納骨先で開眼供養を行う必要があります。

菩提寺がある場合には改葬の手続きをする前にまず親族に相談するタイミングと同様に連絡をしておきましょう。

菩提寺に伝えて墓じまいをする場合は檀家をやめる(離檀)ということになり、使用していた墓地を返すので墓地使用契約解除の手続きが必要になってきます。

「改葬許可申請書」というものを提出することになりますが、墓地の管理者の署名と捺印が必要なので住職に記入してもらいましょう。

なお最近は檀家が減少しており、お寺もなるべく離檀してもらいたくないのが事実。伝えるときには十分に事情を説明して理解を得ましょう。

お寺への感謝の気持ちも忘れず伝えてくださいね。

お墓を相続する人がいない場合の解決方法

もし結婚できなかったり子供が生まれなかったりしたら俺の骨はどうなるんだ!?
もし跡継ぎがいない場合はお墓は無縁墓になってしまいますね。

お墓は先祖代々引き継がれるというイメージですが、最近は少子化や核家族化もありお墓を引き継ぐのが困難になるケースもあります。どうしてもお墓を相続する人がいない場合はどうすれば良いのか説明します。

少子高齢化社会のため、お墓の相続で悩んでいる人は年々増加しています。

お墓の相続における悩み
  1. 子がいない
  2. 娘しかおらず、すでに嫁いでしまった
  3. 子が遠方に住んでいるため、迷惑をかけたくない
  4. 子はいるが結婚・出産の予定がない

そもそも承継者は男性がするものというイメージがあり、娘しかいないので相続しにくい・子供に負担をかけたくなくて相続したくないという人もいるでしょう。

解決策(1)血縁関係以外の人以外を継承者にする

友人や知人などの血縁関係がない人をお墓の継承者にするという方法があります。そんなことできるの?と思うかもしれませんが、実は可能なのです。

ただし遺言書をきちんと作成しておく必要があります。

承継者になってもらいたい知人・友人や自身の親族にもあらかじめ伝えておきましょう。

解決策(2)永代供養・墓じまい・散骨をする

継承者が全く見つからないのであれば永代供養・散骨してもらう方法があります。

永代供養とは納骨堂などに納骨してからは霊園の管理者に供養してもらう方法で一定期間経ったら合祀墓に合葬されます。一定期間というのはだいたい三十三回忌・五十回忌までとなっています。

お墓に納骨することが一般的ですが、散骨という故人の遺骨を細かくして海や山などの自然に撒くという方法もあります。

散骨する場合は墓じまいの手続きをする必要があるので閉眼供養をしなければいけません。まずは菩提寺や石材店に連絡をしておきましょう。

祭祀承継者はやることがたくさんある

お墓は相続して終わりではなく、様々な手続きをしたり掃除や管理費の支払いなどの維持が待っています。一般的には長男や長女が承継することが多いですが、とても大変なので継がせたくないという人も多いでしょう。

少子化や核家族化の影響で最近ではお墓を持たずに散骨・永代供養する方法が増えてきています。

どうしてもお墓を継ぐことができない・お墓の跡継ぎがいないという人はこういった方法を検討してみてはいかがでしょうか?