
家の売却前にリフォームする必要はない!メリットとデメリットを解説
家の売却をこれから始めようと検討している人が悩む問題として、売却前のリフォームは必要かという点があります。
リフォームをするメリット・デメリットを理解してからでないと、ムダな出費だけがかかり、期待した効果が得られない可能性もあります。
今回は家の売却前のリフォームの必要性やそのメリット・デメリットなどについて解説していきます。
リフォームで必要な費用の概算についてもまとめていますので、検討する方はぜひご覧ください。
家を売る前にリフォームする必要はあるのか?
リフォーム費用の分だけ売却価格を安くして、現状販売することのほうがおすすめです
売却前にリフォームをしなくてよい理由は、次のとおりです。
- リフォーム費用の上乗せより値下げのほうが売れやすい
- 自分でリフォームしたい買主が増えている
詳しくみていきましょう。
リフォーム費用を上乗せした売却価格よりも安いほうが売れやすい
家の売却前にリフォームが不要な最大の理由が、リフォーム費用を上乗せして売却価格を高くするよりも、その分売却価格を安くしたほうが売れやすくなるからです。
国土交通省の調査結果によると、家の売却前に個人の売主がリフォームして売却した場合の成功率は17.6%という結果が出ています。つまり、残りの約80%以上の人は失敗していることになります。
リフォームすると見栄えがよくなり、家が売れやすくなると考える人もいますが、リフォーム費用を売却価格に落とし込まないとリフォーム費用の分だけ売主は損をすることになります。
そしてリフォーム費用を売却価格に上乗せして売却すると当然に周辺の同条件の物件に比べて割高な売却価格となってしまいます。
よほど内覧者に気に入られるようなケースでないと、実際には失敗することのほうが多いというのが実情なのです。
自分で中古物件をリフォームしたい購入希望者が増えているから
中古物件については、家の骨格となる躯体部分だけを残し、それ以外のほぼ全てを全面改修するスケルトンリフォームやリノベーションを前提として中古物件購入を希望する買主が増えています。
ライフスタイルや内装などの仕様については、人それぞれ好みの問題もあって異なります。
最初から売主側の勝手な判断でリフォームしても買主の好みに合わない可能性が非常に高く、また上述のように売却価格も高くなりがちです。
買主の希望のスタイルは予め知るよしもないため、そのような売主がおこなうリフォームはスケルトンリフォーム前提の購入希望者からはムダとなる可能性があります。
売却前のリフォームをする前に売主が知っておきたいこと
ただし物件に欠陥がある場合は売却時に買主へ説明しなければ、後々瑕疵(かし)担保責任を問われることがあります。
ここからはリフォームと修繕や補修の違いや売主の瑕疵担保責任についてお伝えしていきます。
リフォームと修繕・補修の違いは?修繕・補修は住むために必要な工事
リフォームは住み心地や見栄えを良くするために家全体を改修工事することもあり、必ずしも必要のない工事が含まれています。
例えば和室からフローリングの洋室に変更したり、部屋の間取りを変えたりすることは、住み心地をよくするための工事といえるでしょう。
これに対して修繕や補修は、基本的に壊れて本来の性能を発揮できない箇所を修理する工事のことです。
例えばキッチンの詰まりや水漏れの補修、外壁のひび割れの補修などがあります。
つまり、ひと言でいえばリフォームは環境を変えて本来の状態以上により良くする工事であるのに対し、修繕や補修は元の状態に戻す工事といえるでしょう。
当然にかかる費用も、リフォームのほうが高くなります。
隠れた瑕疵について売主側が負う瑕疵担保責任
不動産が使用上当然にあるべき性能を欠いているようないわば欠陥がある状態は「瑕疵」と呼ばれています。
売却物件に瑕疵があれば、リフォームや修繕・補修をしない場合でも売主が買主に対して契約時に説明する義務があります。
たとえ売主も知らないような瑕疵(隠れた瑕疵)であっても、引渡し日から一定期間内に見つかれば、基本的には売主負担で瑕疵を解消するための改修工事等をおこわなくてはいけません。
この売主による義務は、瑕疵担保責任と呼ばれています。
例えば、シロアリが家の柱を蝕んでいたような場合や有害物質が地中に埋まっていたような場合が挙げられます。
最悪の場合、契約を解除した上で売主に損害賠償請求をされる可能性があるのです。
民法では売主が負うべき瑕疵担保責任の期間を買主が瑕疵に気がついてから1年と定めていますが、実際には売主が個人の場合には3カ月程度とされる場合がほとんどです。
尚、不動産売却におけるインスペクションや瑕疵保険の加入に関しては、次の記事でも詳しく紹介しています。
築古物件など家の状況によっては瑕疵担保責任免除特約の設定も有効
瑕疵を解消するための費用は、時に想定外の金額となることも多くなります。
また、使用上の目的を果たせないような場合には買主側から契約解除されるリスクもあり、売主にとっては好ましいものではありません。
売主のこうした瑕疵担保責任については、契約当事者どうしの合意があれば特約で瑕疵担保責任を免責することも可能です。
特に築年数の非常に古い建物などの売却の場合、建物としての性能も著しく低下し、隠れた瑕疵が見つかる可能性も高くなります。
瑕疵担保責任によるリスクを減らすためには、瑕疵担保責任免責の特約を入れておくとよいでしょう。
家を売却する前にリフォームするメリット
ここでは、売却前にリフォームするメリットについてお伝えします。
- 買主の印象や見栄えが良くなる
- リフォーム内容に満足の買主からの成約率が高くなる
- リフォーム費用をかけずにきれいな家を購入できる
詳しくみていきましょう。
メリット1:買主の印象や見栄えが良くなる
内覧者からは見栄えがよくなった物件の印象は確実に良くなります。
周辺の同じような条件の家と同じような価格帯なら、付加価値は大きくなるでしょう。
反対に高ければ、デメリットになる可能性があります。
メリット2:リフォーム内容に満足の買主からの成約率が高くなる
もし、リフォーム内容が内覧者の希望通りなら買い手が見つかりやすくなる場合が考えられます。
価格面でも納得ということなら、成約率は上がることになります。
メリット3:リフォーム費用をかけずにきれいな家を購入できる
リフォーム費用やリフォームに要する時間をかけずにきれいな家にすぐに住みたいという買主には、メリットになるでしょう。
家を売却する前にリフォームするデメリット
売却前にリフォームするデメリットは、次のとおりです。
- リフォーム費用を売出値に上乗せすると、売れにくくなる可能性がある
- 買主の好みのリフォームにならない可能性がある
- リフォーム期間中は売却できない
詳しくみていきましょう。
リフォーム費用を売出値に上乗せすると、売れにくくなる可能性がある
既にお伝えしたようにリフォーム費用を売却価格に上乗せするのは、あまり得策ではありません。
もし、いつまでも高くなった売却価格にこだわって売却活動を続けた場合、売れ残ってしまうリスクもあります。
買主の好みのリフォームにならない可能性がある
リフォームしたい場合は、事前に不動産会社へ相談してみましょう。
不動産業者は、売却対象となる家ごとにどの箇所をリフォームすべきかについてアドバイスしてくれます。
勝手な思い込みでいたずらにリフォーム費用をかけるよりも、必要最低限の箇所に絞ったリフォームのほうが効果も高くなる可能性があります。
様々なリフォーム済の家の売却に携わっている不動産業者なら、ポイントを押さえたリフォームに関する意見を持っていますので相談してみるといいでしょう。
リフォーム期間中は売却できない
リフォームは早くても数週間かかり、大規模なものになると数カ月はかかります。
その間は当然に売却することができなくなりますので、早期に売却したい人の場合にはデメリットになってしまうでしょう。
売却前にリフォームするとしたら費用はいくら必要か?
売却前にリフォームする場合、かかる費用の目安は次のとおりです。ただしマンションと戸建てでも異なりますので、リフォーム箇所ごとの概算をお伝えします。
場所 | 費用 |
---|---|
畳交換費用 (6畳和室) |
約3万円 |
ユニットバス交換 | 50万円~70万円 |
キッチン交換 | 約60万円~ |
トイレ交換 | 約10万円~ |
洗面台交換 | 約10万円~ |
給湯器交換 | 15万円~20万円 |
フローリング工事 | 約35万円~ |
外壁塗装※ | 70万円~ |
なおリフォームではなく、ハウスクリーニングで済ませる場合の費用ですが、70㎡ほどのファミリー向けマンションで10万円前後、100㎡ほどの戸建ての場合で12万円~15万円ほどで抑えられます。
さらに費用を抑えるには、キッチンの油汚れなどプロのほうがきれいにできそうな箇所のみを依頼し、残りは自分で小まめにクリーニングすることも検討しましょう。
家の売却前のリフォームはせず、その分安く売却しよう!
家の売却前のリフォームは不要であるばかりか、むしろリフォームにかける分だけ安くして売却したほうが、結果として成功する可能性があります。
価格に上乗せできるような場合でも、リフォーム内容については事前に不動産業者などに相談するとムダなリフォームをせずに済みます。
リフォームについてのメリットやデメリットなどを冷静に検討し、リフォームではなく修繕や補修程度で済ませられるものはその程度に抑えておきましょう。
また買主側の購入動機は様々であることから、勝手な判断でとにかくリフォームすれば売れやすくなるだろうと決めつけず、客観的な意見を求めたほうが成功しやすくなります。
中古住宅市場にはリフォーム済の物件も数多くあります。ほとんどは不動産会社が買取りした後にリフォームしたもので、個人の方が売主でリフォーム済の物件はあまりありません。理由は記事にあるように「無駄な費用」になってしまうことが多いからです。
瑕疵がなければ現状のまま売却するのが賢い方法です。

中古住宅・中古アパートの媒介業務・調査業務に従事し、現在は札幌市内の宅建業者にて専任の取引士を務めている。
2006年より、住宅に関する無料の相談サイトを開設し、住宅リフォームや中古住宅購入の相談に応じている。