障害年金
障害年金のデメリットが生じるケースは?就職に影響しない理由も解説

障害年金のデメリットが生じるケースは?就職に影響しない理由も解説

障害年金には次のようなデメリットがあるため、「必ずもらうべき!」とは言えません。

障害年金を受給するデメリット(注意点)
  1. 申請から受給までに半年ほどかかる
  2. 家族の扶養から外れ、保険料が自己負担になることもある
  3. 障害基礎年金(国民年金)の場合、受給者の死亡時に寡婦年金・死亡一時金が支給されないこともある

この記事では、これら障害年金のデメリットについて解説します。

夫がケガをして、以前のように働けなくなりました。障害年金を申請してみるよう言ってみたんですが、夫は「障害年金はもらいたくない」と言うんです。
そうなんですね。旦那さんが障害年金をもらいたくない理由は、何でしょうか?
「障害年金をもらったことが勤務先に伝わると、職場に居づらくなるから」って言ってました・・・。
いえいえ、傷病手当金などを受けない限り、障害年金の受給を会社に知られることはないですよ!
えっ、そうなんですか?
はい。これについては記事の後半で説明しますね。

障害年金には、「働きながら受給できる」「税法上は非課税扱いである」というメリットもあります。

自分が受けるデメリットをよく確認したうえで、申請するかどうか決めましょう。

障害年金を受給する3つのデメリット(注意点)

冒頭でもお伝えしたとおり、障害年金には次のようなデメリット(注意点)があります。

障害年金のデメリット
  1. 申請から受給までに半年ほどかかる
  2. 家族の扶養から外れる場合がある
  3. 障害基礎年金の場合、寡婦年金・死亡一時金が支給されない場合がある

それぞれのデメリットが生じるケースを、詳しく見ていきましょう。

「障害基礎年金」とは、国民年金加入者が対象となる障害年金です。厚生年金に加入している方は、1・2の項目を確認してくださいね。

【1】障害年金は申請から受給まで半年ほどかかる

障害年金は、申し込んだらすぐもらえるものではありません。

申請したら審査が行われ、支給・不支給や支給金額の決定までには約3~4カ月、そこから初回支給までは約50日かかります。

障害年金は申請から受給まで半年ほどかかる

申請から受給までは、半年ほどかかると考えておきましょう。

【2】障害年金の受給額に注意!扶養から外れる可能性も

障害年金の受給者が社会保険上の被扶養者である場合、障害年金額を含めた年収が180万円を超えると、扶養から外れます。

扶養から抜けると、健康保険・年金などの社会保険料を納付しなければなりません。

障害年金を含めた年収が180万円を超えると、家族の扶養から外れ、保険料の納付義務が生じる

ちなみに障害年金は、所得税などの税法上は非課税。そのため障害年金についての確定申告・年末調整は必要ありません。

納付すべき社会保険料の額は人それぞれです。障害年金の支給額も、傷病の程度などにより異なります。

障害年金の支給額については、次の記事をご覧ください。

第1号被保険者なら『法定免除』で保険料の免除を受けられる

せっかく障害年金をもらえても、保険料分が差し引かれる形になってしまうんですね。
はい。でも国民年金の第1号被保険者であれば、法定免除といって年金保険料を免除してもらえる制度があるんです。

障害年金の受給者が法定免除となった場合、国民年金保険料が免除されるのは「障害年金の認定をされた日を含む月の前月」からです。

それなら安心だわ!
しかし法定免除を行うと、将来受け取る老齢年金を減額されてしまいます。
いくら減ってしまうんですか?
減額されるのは「本来の受給額の2分の1」です。

障害年金を含めた年収が180万円を超える場合は、法定免除を行うかどうか考える必要がある

そんなに減るんですね・・・。
しかし法定免除を受けても、国民年金保険料を後払い(追納)すれば減額分を補えます。

障害年金の受給中、保険料を納める余裕がない場合は制度をうまく活用しましょう。

国民年金保険料の追納については、別記事「国民年金は滞納せず免除・猶予制度を利用!追納して年金額を補おう」で解説しています。

また老齢基礎年金・老齢厚生年金以外にも、老後の収入を増やす方法はあります。詳しくは次の記事を参考にしてください。

法定免除を受けたい場合は、「国民年金保険料免除事由(該当・消滅)届」を、市役所または町村役場に提出してください。

【3】障害基礎年金の場合は寡婦年金・死亡一時金がもらえない

障害年金の受給でデメリットを受けるのは、受給者本人だけではありません。亡くなった後、その家族も影響を受けることになります。

障害年金には、国民年金加入者が対象の「障害基礎年金」と、厚生年金加入者が対象の「障害厚生年金」があります。

障害基礎年金を受け取った場合、死亡後に妻や家族へ支給される寡婦年金(※1)と死亡一時金(※)は対象外になってしまうのです。

寡婦年金とは

国民年金の加入期間・免除期間の合計が10年以上ある夫が亡くなったとき、一定条件を満たす妻が受給できる年金のこと。

・婚姻関係が10年以上継続している
・夫に生計を維持されていた

死亡一時金とは

国民年金の保険料を36月以上納付した人が亡くなった場合、その人と生計同一関係にあった遺族が受けられる給付金です。

ちなみに死亡一時金の受給者となる遺族は、優先順位の高い順に「配偶者・子・父母・孫・祖父母・兄弟姉妹」。生計同一関係の条件は、受給者により異なります。

ほかにも寡婦年金・死亡一時金には「老齢基礎年金を受けた場合は支給不可」などの受給条件が設けられています。詳しくは日本年金機構の公式ホームページで確認してください。

障害年金の受給を勤務先などに知られる心配はない

夫が障害年金を申請したがらないのには、「受給することが職場の人にばれると、気を遣わせてしまうのでは」という理由もあるみたいなんです。
そうなんですね。たしかに障害年金をもらいたくない人の中には、次のような不安を抱えている人もいます。
障害年金について、よくある不安
・周囲に腫れ物扱いされるのではないか
・偏見の目で見られるのではないか
・再就職に不利になるのではないか
・入社後に障害があるとバレたら、虚偽申告で雇用契約を解除されるのではないか
同じような状況の人もいるんですね。

やっぱり障害年金をもらうと、職場に知られてしまうのかしら?制度利用は決して悪いことではないけど、夫が働きづらくなるのは避けたいです・・・。

年金機構から企業・民生委員などへ「労働者が障害年金を受給している」という連絡をされることは、基本的にありません。

労働者の年金受給は個人情報なので、民生委員や職員には守秘義務があるのです。

ただし傷病手当金※を受けた場合は、障害年金の受給が勤務先に知られる可能性も。

傷病手当金とは

業務外の病気・ケガが理由で会社を休み、十分な報酬を受けられない場合、休業中に受けられる給付金のこと。一定条件を満たした人が受給可能です。

傷病手当金を申請する際は、支給申請書を会社に提出します。その申請書の中に、障害厚生年金を受給したかどうかを記入する欄があるのです。

障害年金を受給しながら就職・職場復帰する場合、障害を隠して通常業務を行うのは難しい場合もあります。無理せず働ける環境を見つけることも大切です。
自分じゃなくて、家族が障害年金をもらう場合はどうですか?
次のような場合は、家族(扶養者)の勤務先に障害年金の受給を知られます。
障害年金の受給を知られるケース
  1. 被扶養者が障害年金を受給し、扶養から外れた(年収180万円を超えた)場合
  2. 障害年金の受給者が、新たに被扶養者となった場合

扶養から外れるとき・家族の扶養に入るときには、年金通知書などの写しを扶養者の勤務先に提出しなければなりません。

このタイミングで知られてしまうんですね。でも、どうして書類を提出しなければならないんですか?
年収が180万円を超える・または180万円未満であることを確認する必要があるからです。

障害年金の審査に注意!受給条件・審査基準を必ず確認して

ここまで、障害年金のデメリット・注意点などについてお伝えしてきました。

私たちの場合、障害年金をもらっても問題はなさそうです。さっそく夫に知らせて、申請の準備をします!
ちょっと待ってください!申請する前に、障害年金の受給条件・審査基準も確認しましょう。

障害年金には、次のような受給条件が設けられています。

障害年金の受給条件
  • 一定の障害の状態にある
  • 年金の加入期間中に初診日※がある
  • 初診日前日の時点で、保険料納付要件を満たしている
※障害の原因となった病気・ケガについて医師または歯科医師の診療を受けた日。ただし国民年金(障害基礎年金)の場合、国民年金に加入していない20歳より前または60歳以上65歳未満でも、日本国内に在住中に初診日があれば対象となる。

また受給条件を満たしていても、審査に通らないと障害年金はもらえません。

障害年金の審査は、どのように行われるのですか?
基本的に、提出書類(年金請求書、医師または歯科医師の診断書など)をもとに行われます。
書類を提出するだけなら簡単そうですね。
いいえ、提出すべき書類は多く、揃えるのに手間や時間がかかります。

また診断書に書かれた症状が実際より軽かった場合、障害年金が不支給となる・希望の金額をもらえなくなるというケースもあるんです。

障害年金の審査基準については、次の記事で詳しく解説しています。

障害年金の申請は自分でも行えますし、家族や社会保険労務士(社労士)などが代理申請することも可能です。申請方法については、次の記事も参考にしてください。

障害年金の時効は、受給権が発生してから5年です。

「申請が遅れて過去の障害年金がもらえなかった」ということにならないよう、手続きの流れ・必要書類をよく確認してくださいね。

障害年金の受給でデメリットが生じるか確認してみよう

この記事では障害年金の注意点や、デメリットとして誤解されがちな事柄について解説しました。

障害年金を受給すると「扶養から外れ、保険料の納付義務が生じる」「死亡一時金や寡婦年金が支給されなくなる」などのデメリットが生じる可能性があります。

自分が該当するかどうか、確認しておくのがオススメです。

障害年金の申請・受給について、年金機構から勤務先へ連絡されることは基本的にありません。ただし傷病手当金を受ける場合などは、勤務先に知られる可能性があることも知っておきましょう。

当サイトでは審査基準や支給停止になるケース、審査決定に対する不服申し立ての方法を紹介した記事もあるので、参考にしてください。

※記載の情報は2019年12月現在のものです。

監修者メッセージ

障害年金は、障害を負ってしまった方への生活保障です。

そのため、ほとんどのケースでは受給要件を満たしている場合には受給申請をするに越したことはありません。

ただし、ある一定のデメリットも存在するので、正しい知識を持ったうえでベストな選択をすることをお勧めします。

プロフィール
年金カテゴリー記事監修(安達伸伍)
安達 伸伍
社会保険労務士。
ネットワークエンジニアとして活動後、都内社会保険労務士事務所に勤務。
現在は個人事務所(労務・年金相談安達事務所)として活動している。