障害年金のデメリットが生じるケースは?就職に影響しない理由も解説
障害年金には次のようなデメリットがあるため、「必ずもらうべき!」とは言えません。
- 申請から受給までに半年ほどかかる
- 家族の扶養から外れ、保険料が自己負担になることもある
- 障害基礎年金(国民年金)の場合、受給者の死亡時に寡婦年金・死亡一時金が支給されないこともある
この記事では、これら障害年金のデメリットについて解説します。
障害年金には、「働きながら受給できる」「税法上は非課税扱いである」というメリットもあります。
自分が受けるデメリットをよく確認したうえで、申請するかどうか決めましょう。
障害年金を受給する3つのデメリット(注意点)
冒頭でもお伝えしたとおり、障害年金には次のようなデメリット(注意点)があります。
それぞれのデメリットが生じるケースを、詳しく見ていきましょう。
【1】障害年金は申請から受給まで半年ほどかかる
障害年金は、申し込んだらすぐもらえるものではありません。
申請したら審査が行われ、支給・不支給や支給金額の決定までには約3~4カ月、そこから初回支給までは約50日かかります。
【2】障害年金の受給額に注意!扶養から外れる可能性も
障害年金の受給者が社会保険上の被扶養者である場合、障害年金額を含めた年収が180万円を超えると、扶養から外れます。
扶養から抜けると、健康保険・年金などの社会保険料を納付しなければなりません。
ちなみに障害年金は、所得税などの税法上は非課税。そのため障害年金についての確定申告・年末調整は必要ありません。
障害年金の支給額については、次の記事をご覧ください。
第1号被保険者なら『法定免除』で保険料の免除を受けられる
障害年金の受給者が法定免除となった場合、国民年金保険料が免除されるのは「障害年金の認定をされた日を含む月の前月」からです。
障害年金の受給中、保険料を納める余裕がない場合は制度をうまく活用しましょう。
国民年金保険料の追納については、別記事「国民年金は滞納せず免除・猶予制度を利用!追納して年金額を補おう」で解説しています。
また老齢基礎年金・老齢厚生年金以外にも、老後の収入を増やす方法はあります。詳しくは次の記事を参考にしてください。
【3】障害基礎年金の場合は寡婦年金・死亡一時金がもらえない
障害年金には、国民年金加入者が対象の「障害基礎年金」と、厚生年金加入者が対象の「障害厚生年金」があります。
障害基礎年金を受け取った場合、死亡後に妻や家族へ支給される寡婦年金(※1)と死亡一時金(※)は対象外になってしまうのです。
国民年金の加入期間・免除期間の合計が10年以上ある夫が亡くなったとき、一定条件を満たす妻が受給できる年金のこと。
・婚姻関係が10年以上継続している
・夫に生計を維持されていた
国民年金の保険料を36月以上納付した人が亡くなった場合、その人と生計同一関係にあった遺族が受けられる給付金です。
ほかにも寡婦年金・死亡一時金には「老齢基礎年金を受けた場合は支給不可」などの受給条件が設けられています。詳しくは日本年金機構の公式ホームページで確認してください。
障害年金の受給を勤務先などに知られる心配はない
・偏見の目で見られるのではないか
・再就職に不利になるのではないか
・入社後に障害があるとバレたら、虚偽申告で雇用契約を解除されるのではないか
やっぱり障害年金をもらうと、職場に知られてしまうのかしら?制度利用は決して悪いことではないけど、夫が働きづらくなるのは避けたいです・・・。
労働者の年金受給は個人情報なので、民生委員や職員には守秘義務があるのです。
ただし傷病手当金※を受けた場合は、障害年金の受給が勤務先に知られる可能性も。
業務外の病気・ケガが理由で会社を休み、十分な報酬を受けられない場合、休業中に受けられる給付金のこと。一定条件を満たした人が受給可能です。
傷病手当金を申請する際は、支給申請書を会社に提出します。その申請書の中に、障害厚生年金を受給したかどうかを記入する欄があるのです。
- 被扶養者が障害年金を受給し、扶養から外れた(年収180万円を超えた)場合
- 障害年金の受給者が、新たに被扶養者となった場合
扶養から外れるとき・家族の扶養に入るときには、年金通知書などの写しを扶養者の勤務先に提出しなければなりません。
障害年金の審査に注意!受給条件・審査基準を必ず確認して
ここまで、障害年金のデメリット・注意点などについてお伝えしてきました。
障害年金には、次のような受給条件が設けられています。
- 一定の障害の状態にある
- 年金の加入期間中に初診日※がある
- 初診日前日の時点で、保険料納付要件を満たしている
また受給条件を満たしていても、審査に通らないと障害年金はもらえません。
また診断書に書かれた症状が実際より軽かった場合、障害年金が不支給となる・希望の金額をもらえなくなるというケースもあるんです。
障害年金の審査基準については、次の記事で詳しく解説しています。
障害年金の申請は自分でも行えますし、家族や社会保険労務士(社労士)などが代理申請することも可能です。申請方法については、次の記事も参考にしてください。
「申請が遅れて過去の障害年金がもらえなかった」ということにならないよう、手続きの流れ・必要書類をよく確認してくださいね。
障害年金の受給でデメリットが生じるか確認してみよう
障害年金を受給すると「扶養から外れ、保険料の納付義務が生じる」「死亡一時金や寡婦年金が支給されなくなる」などのデメリットが生じる可能性があります。
自分が該当するかどうか、確認しておくのがオススメです。
障害年金の申請・受給について、年金機構から勤務先へ連絡されることは基本的にありません。ただし傷病手当金を受ける場合などは、勤務先に知られる可能性があることも知っておきましょう。
当サイトでは審査基準や支給停止になるケース、審査決定に対する不服申し立ての方法を紹介した記事もあるので、参考にしてください。
障害年金は、障害を負ってしまった方への生活保障です。
そのため、ほとんどのケースでは受給要件を満たしている場合には受給申請をするに越したことはありません。
ただし、ある一定のデメリットも存在するので、正しい知識を持ったうえでベストな選択をすることをお勧めします。
ネットワークエンジニアとして活動後、都内社会保険労務士事務所に勤務。
現在は個人事務所(労務・年金相談安達事務所)として活動している。