退職金の確定申告が必要なケースを紹介!所得税が還付される可能性も
会社を辞めるときにもらえる退職金の「確定申告」について、考えてことはありますか?会社に勤めているときは、自身に代わって会社が税金の対応をしてくれますが、いざ会社を辞めてしまったあと、所得や税金の管理を自分自身でおこなわなければなりません。
正しい知識を持っていれば、確定申告によって払いすぎた税金が戻ってくる可能性があるかもしれません。
今回は確定申告の基礎知識と、退職金の確定申告が必要なケースについてご説明します。退職金を受け取る方は、ぜひチェックしてみてくださいね。
そもそも確定申告ってなに?サラリーマンは年末調整で所得税額を確定
確定申告とは、個人や法人が課税期間ごとの所得を計算し、納付する所得税額を確定する手続きのことです。確定申告をすることで、税務署に収めるべき税金の額がわかるほか、納めすぎた税金が還付されることもあります。
基本的には1年間の収支を計算し、所得に応じて税額が確定されます。会社に勤めるサラリーマンの場合は、会社がおこなう「年末調整」によって確定申告の手続きが不要となります。
サラリーマンや公務員などが支払う給与から、事業所が事前に天引きしている所得税について、年末の12月に再計算をし正しい所得税に精算することです。
所得税は基本的に確定申告によって納税をすることが原則ですが、サラリーマンや公務員の場合は事業所単位でまとめて納税額を調整しています。
つまり、企業勤めをしているうちは確定申告をする必要がなく、実際の手続きについても知る機会がありません。
しかし、会社を退職すると会社が肩代わりしていた納税手続きを自身でおこなう必要が出てきます。そこで気になるのが、退職したときに受け取る「退職金」の所得について確定申告が必要かどうか?ということです。退職金の確定申告について詳しくみてみましょう。
退職金が確定申告の対象になる?「退職所得」が示すこと
退職所得の受給に関する申告書を提出すれば、基本的に確定申告は不要
退職金は、退職時に勤務先で「退職所得の受給に関する申告書」を提出することで、基本的に確定申告の必要はありません。そもそも退職金には退職所得控除が設けられており、「退職所得の受給に関する申告書」を提出することで控除を受けることができます。
もし本申告書を未提出のままだと、退職所得に一律約20%の所得税が課税されてしまうこととなり、納税者にとっては多額の税負担となるので注意が必要です。
なお、ここで気をつけたいのが、確定申告が「不要」なだけであり「してはいけない」という意味ではない点です。
場合によっては、確定申告をすることで納めすぎた税金の還付を受けられることもあります。課税の対象となる退職金を理解するために、退職所得と退職所得控除の考え方についてみてみましょう。
退職所得と退職所得控除額の算出方法
退職所得とは、退職時に勤務先から受け取る退職手当のことをいいます。退職所得の金額は、以下の計算式により算出することができます。
(源泉徴収される前の退職金—退職所得控除額)×1/2=退職所得
また、退職所得控除額の計算方法は勤務年数によって異なります。
勤続年数 | 退職所得控除 |
---|---|
20年以下 | 40万円×勤続年数 |
20年越え | 800万円+70万円×(勤続年数-20年) |
この退職所得にかかる税金は「分離課税」の対象となっています。分離課税は複数の所得を合算して税率をかけるのではなく、個別で税額を計算します。
退職金の場合、「退職所得控除」により特別な算出方法の対象となり、通常の所得に比べて税負担が軽減されるようになっています。
退職所得が通常の所得と色合いが異なることもあり、事業者が支払った金額や徴収した所得税額を記載する「源泉徴収票」に関しても、給与所得とは別に退職所得の源泉徴収票として発行されます。この退職所得の源泉徴収は、退職金の確定申告をする際に必要となりますので取り扱いに注意してくださいね。
本当に確定申告をしなくても大丈夫?退職金の確定申告が必要なケースも
「退職所得の受給に関する申告書」を提出することで、基本的には確定申告の必要がない退職金ですが、確定申告が必要なケース、した方がよいケースもあります。どのような場合に確定申告をすべきか、詳しくみていきましょう。
「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない
前途の通り非常に高い税率が課されてしまいます。「退職所得の受給に関する申告書」は退職をする際に、会社に提出をすることが一般的となっていますので、提出を忘れないようにしましょう。
年度の途中で退職をし、以後再就職をしていない
退職をしたあと再就職をせず、12月31日の年末調整を受けていない場合は自身で確定申告をして税額を確定させる必要があります。退職後仕事をしていなければ所得は少なくなるため、多くの場合納めすぎた税金が返ってきます。
不動産所得や雑所得がある
退職金以外にも所得がある場合、確定申告が必要なケースがあります。もし不動産所得や雑所得によって赤字が発生している場合は、損益通算をすることで払いすぎた税金が返ってくることもあります。また、確定申告をした所得は翌年度の社会保険料や住民税の算出基準ともなるため、翌年度の税額にも影響します。
死亡退職金の税制度については別記事で詳しく解説しています。
「退職所得の受給に関する申告書」を提出することで確定申告は不要になりますが、だからといって確定申告をしてはいけないわけではなく、場合によっては確定申告をすることで払いすぎた税金を取り戻すことも可能です。
ご自身が確定申告をすべきかどうか、状況や所得に合わせてしっかりと見定めてくださいね。
確定申告をするにはどうしたらいいの?必要書類と手続き方法
企業に勤めていたサラリーマンが、いざ自分で確定申告をしなければいけなくなったとき、一体どのような手続きを踏めばいいのでしょうか。まず、退職所得の確定申告に必要な書類には以下のようなものがあります。
- 確定申告書B
- 申告書第三表
- 退職所得の源泉徴収票
- 公的年金などの源泉聴取票
- 退職前の給与所得の源泉徴収票
- 地震保険や生命保険の控除証明書
これら必要書類を管轄の税務署へ提出し確定申告をおこないます。管轄の税務署は、国税庁のホームページから調べることができます。
また、確定申告の時期は毎年2月中旬〜3月中旬となっています。
確定申告が期限に間に合わない場合は、「期限後申告」として扱われ、高い税率が課されることがあるため注意が必要です。
なお、給与から源泉徴収された所得税額の還付申告(納めすぎた所得税の還付を受けること)は、過去5年にさかのぼって提出をすることが可能です。サラリーマン時代に所得税を納めすぎている可能性がある場合は、還付申告を検討するようにしてみてくださいね。
退職金の確定申告はケースバイケース!詳しい相談は専門機関へ
退職金の確定申告について、初めてだと申請方法が難しくわからないことも多いですよね。もちろん、税理士や専門家へ相談をするのが一番はやい方法ですが、国税局や各管轄の税務署でも相談窓口や確定申告説明会などを設けています。
退職金について不明な点がある場合は、わからないまま放置したり、誤った申告をしたりしないよう専門機関の相談窓口を積極的に利用するようにしましょう。
退職金の確定申告についても、少し複雑な点はありますが、しっかりと理解をすれば納めすぎた税金が返ってくる可能性もあります。難しいからといってうやむやなままにせず、各種相談窓口も活用しながら、退職所得のベストな対処方法を実践していきましょう。