定年退職・退職金

定年後は再雇用されるべき?知っておくべき再雇用制度とリアルな待遇

最近では定年退職後に再雇用で働いている方は当たり前のようになってきました。その原因の一つは法改正によるものですが、一番の原因は人生100年時代と言われる老後の生活に不安を抱えている方が多いからではないでしょうか?

「定年退職後の再雇用とは一体何なのか?」「再雇用後の給与や待遇などの労働条件はどうなるのか?」「再雇用のメリットとデメリットは何なのか?」など、改正高年齢者雇用安定法や再雇用者の現状なども交えて、定年退職後の再雇用についてご紹介します。

定年退職後の再雇用制度がある会社は約9割

高年齢者雇用安定法によって会社は定年を定める場合、60歳以上とする必要があります。2017年の就労条件総合調査によると定年制を定めている会社は95.5%。

そのうち定年を60歳と定めている会社は79.3%、65歳以上の会社は17.8%となっています。

約8割の会社の定年が60歳であるにも関わらず、老後資金のひとつである老齢年金は60歳から段階的に引き上げられて65歳から支給されることを考えると、大部分の方が生活に困窮することになってしまいます。

そのため定年退職後に再雇用されて働いている方が増えてきているのですが、そもそも再雇用制度は法律上義務化されているものではないのです。

定年退職後の再雇用は会社の義務ではない

高年齢者雇用安定法では定年が65歳未満の会社は、労働者が65歳になるまで安定した雇用を確保するために次の3つの措置のいずれかを実施することが義務化されています。

  • 65歳まで定年を引き上げる
  • 65歳までの継続雇用制度を導入する
  • 定年を廃止する

つまり、定年後の再雇用は必ずしも義務ではなく、65歳までの雇用を確保することが会社に義務化されているということ。

公益財団法人日本生産性本部の2016年調査によると60歳以降の雇用確保措置として約9割(89.5%)の会社が再雇用制度のみで対応しており、65歳以上の定年の引き上げは5.3%の会社が実施しています。

この結果から大部分の会社は再雇用制度を導入することによって65歳までの雇用確保措置を実施しているといえます。あなたの会社はどうでしょうか?自分の会社の就業規則を必ず確認しておきましょう。

継続雇用制度の再雇用と勤務延長は異なる制度!

再雇用と勤務延長はどちらも同じ制度なのかの?
どちらも継続雇用制度ではありますが、再雇用制度は、定年時に一度退職して翌日に再雇用する制度であるのに対し、勤務延長制度は、定年時に退職することなく継続して雇用する制度です。

再雇用制度は定年で雇用契約が終了するため、退職金が支払われて新しい労働条件によって雇用されます。つまり、賃金や役職などが変わる可能性が大いにあるということ。

一方で勤務延長制度は、定年で雇用契約が終了しませんので、原則としてこれまでの労働条件によって雇用されます。退職金は退職することが支給条件であれば勤務延長後の退職時に支給されることになります。

ただし労働条件などについては就業規則などに定められていますので、自分の会社の就業規則をよく確認しておくことが大切です。

「改正高年齢者雇用安定法」とは?

2013年4月1日に高年齢者雇用安定法の一部が改正されたことにより、原則として60歳定年後の継続雇用希望者全員を「65歳」まで雇用することが義務付けられました。

ただし、2013年3月31日までに労使協定によって継続雇用制度対象者の基準を設けている会社については経過措置として「2019年3月31日までは62歳以上の方」「2022年3月31日までは63歳以上の方」「2025年3月31日までは64歳以上の方」に限定して労使協定に定める基準を適用することができます。

つまり、上述の年齢に達するまでは基準に該当しなくても希望すれば会社は継続雇用をする義務が生じるということになります。

なぜ「改正高年齢者雇用安定法」が定められたのか

かつては60歳から支給されていた特別支給の老齢厚生年金は2000年の法改正により2013年度から2025年度にかけて段階的に60歳から65歳へ引上げられています。

そのため60歳定年後に継続雇用されなければ、給与も年金もない無収入者が生じることになります。

このような状態を防ぐことを大きな目的として年金をもらうまでは雇用を確保することを会社に義務付けるという改正が行われました。

この改正により、65歳までの雇用確保措置を行っていない会社に対して労働局などの指導や、改善がない場合は企業名の公表を行うことも定められています。そのため、継続雇用を希望しているにも関わらず会社が応じてくれない場合は労働局などに相談することも必要でしょう。

まずは自分の会社には継続雇用制度に関する労使協定が存在するのか?継続雇用制度はどのように定められているのか?など就業規則や労使協定を改めて確認しておくことが必要といえます。

定年後の再雇用の労働条件は定年前と同一とは限らない

65歳までの継続雇用が義務化されているんだったら安心じゃの。でも再雇用だったら労働条件も変わるのが当たり前なのかの?
まず、高年齢者雇用安定法で求めているのは継続雇用制度の導入であって、定年前の労働条件を維持した状態で働かせることを義務付けているわけではないということに注意が必要です。

つまり、定年前の給与を下回る労働条件であっても会社は必ずしも違法になるとは限らないということです。

えっ、ということは給与を4分の1にされても文句はいえんということなのか?
そんなことはありません。定年前と再雇用後の労働条件に不合理な相違(低額な給与水準や受け入れがたい職務内容など)が生じた場合は法の趣旨に反して違法とされています。

実際に、北九州市の食品会社で再雇用後の賃金を25%とした事例については不法行為であるとして慰謝料100万円の支払い命令が確定しています。

ちなみに60歳定年後の労働条件の目安になると思いますので、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が2017年10月~12月に実施した「60歳以降の社員に関する人事管理に関するアンケート調査」結果の一部を参考にしてみてください。

  • 役職の就任状況の割合を過去3年でみると「一人もいない(34.6%)」「少数(26.3%)」
  • 仕事内容の継続する割合を過去3年でみると「ほぼ全員(44.9%)」「8割程度(18.8%)」
  • 担当する仕事の内容・範囲の変化をみると「変わらない(42.4%)」「やや減っている(43.2%)」「減っている(13.2%)」
  • 59歳以下の正社員と同じ所定労働時間が適用される割合で最も多いのは「ほぼ全員(71.3%)」次いで「8割程度(12.7%)」
  • 基本給の水準で、最も多いのは60%~70%未満(25.2%)、次いで70%~80%未満(21.9%)、平均は71.6%
  • 昇給の実施状況で最も多いのは「全員にない(73.6%)」、次いで「一部にある(15.0%)」
  • 賞与・一時金の支給状況で最も多いのは「全員を対象としている(60.4%)」、次いで「全員を対象としていない(23.3%)」
  • 慶弔金や休暇の対象状況で最も多いのは「全員が利用できる(85.3%)、次いで「一部が利用できる(8.3%)」

会社によって事情が異なりますので、定年が近づいてきた頃に会社に定年後の働き方について相談しておくことが望ましいといえます。

定年後に再雇用された場合、退職金などの取り扱いはどうなるのか?

実際に再雇用された場合、退職金や社会保険、年金などはどうなるんじゃろ?何か手続きが必要なんじゃろか?
それでは、退職金や社会保険などについて再雇用後どうなるのかまとめてみましたのでみてみましょう。

退職金

退職金は定年時に受け取ることが一般的です。この際、退職所得として受け取ることになりますので、課税上の優遇措置を受けることも当然できます。

社会保険(健康保険・厚生年金保険)

定年退職の翌日に社会保険は一度喪失しますが、同日に社会保険に加入することになるため被保険者資格は継続されます。手続きは会社にしてもらえますが、健康保険証は一度返却して新しい保険証を使うことになります。

再雇用後、給与が大きく下がる場合は、通常、社会保険料は4ヶ月後に改定されますが、再雇用の場合はすぐに社会保険料も下がることになります。

ただし、週の所定労働時間が一般社員の4分の3未満となる場合は社会保険の喪失手続きが必要となります。

雇用保険

雇用保険については再雇用後も継続されますので特に手続きは不要です。ただし、週の所定労働時間が20時間未満となる場合は喪失手続きが必要となります。

在職老齢年金

再雇用後も社会保険に加入する場合は、働きながら受け取る年金(在職老齢年金)の全部または一部が支給停止されます。

毎月の給与(標準報酬月額)と前年の賞与の12分の1に年金月額を加算した額が28万円を超えなければ年金は停止されませんが、超えた場合は超えた額の半分の年金が停止されます。

在職老齢年金について詳しくは次の記事で解説しています。

再雇用前にあらかじめ自分のもらえる年金額を年金事務所で確認しておきましょう。

確定申告

これまでは会社が年末調整をしてくれていたため、確定申告を特に行う必要がなかった方も老齢年金をもらうようになると確定申告を行わなければならないケースがでてきます。

原則として次のいずれにも該当する方は確定申告不要制度の対象となりますので、確定申告は不要となります。ただし、医療控除の還付を受けたい場合などは確定申告をする必要があります。

公的年金等に係る確定申告不要制度
  • 公的年金等(老齢基礎年金、老齢厚生年金、企業年金など)の収入金額の合計額が400万円以下であって、これらの年金のすべてが源泉徴収の対象になっていること
  • 公的年金等以外の所得金額(給与所得、一時所得、不動産所得など)の合計額が20万円以下であること

住民税

再雇用された場合、住民税については何も手続きは必要ありません。これまで通り給与より天引きされて会社から納付してもらえます。

ただし住民税は前年の所得が影響しますので、再雇用後に給与が下がった場合は最初の1年間の手取り額は少なくなるということは覚悟しておかなければなりません。

どうしても支払えないときは、管轄の市区町村役場に相談に行きましょう。

定年後に再雇用されるメリット・デメリットを考えよう

定年度に再雇用されることはメリットばかりではなくデメリットもあります。メリットとデメリットをよく検討して定年後の働き方を考えることが必要です。

メリット

  • 安定的な収入を確保することができる
  • 就職活動をする必要がなく、慣れ親しんできた仕事を継続できる
  • 社会保険に継続して加入することによって年金額を増やせる
  • 社会保険に継続して加入することによって、万が一の時も傷病手当金などの補償を受けられる

デメリット

  • 給与が現役時代に比べて6割~7割に減額される可能性がある
  • 役職が外れるなどして現役時代の部下が上司になる可能性がある
  • 給与や年金の金額によっては年金が支給停止される可能性がある
  • 再雇用制度の上限年齢が65歳の場合、65歳以降も働くことができない可能性がある

現役時代と比べて給与が6割~7割に減額されては家計的に厳しくなると言わざるを得ません。そこで、60歳時点の賃金と比較して60歳以後の賃金が75%未満に低下した場合に、60歳以後の賃金の最大15%を給付してもらうことのできる高年齢雇用継続給付という制度があります。

高年齢雇用継続給付は非課税のため所得税や住民税がかからず、実質手取り額が多くなるというメリットがある反面、在職老齢年金との併給調整されるデメリットも。

下がった給与の一部を補うことができるのであれば活用してみましょう。

ちなみに同一の会社に限らず、退職日の翌日から1年以内に別の会社に再就職して、失業給付等を受け取っていない場合でも高年齢雇用継続給付を受け取ることができます。

再雇用後の働き方は70歳まで見据えて考えておくこと

改正高年齢者雇用安定法により65歳まで雇用が守られる仕組みとなりました。そのため多くの方は老齢年金を受け取るまでは健康であれば働くことのできる社会となったといえます。

しかしながら多くの会社では再雇用制度を導入しており、再雇用後は現役時代の給与や待遇を維持した働き方ができないのが実情のようです。

近年、国は老齢年金の受け取り開始年齢を、受給者の選択によって70歳超まで繰り下げる制度を検討していることも考えると、これからは70歳までの働き方を考える必要があるといえます。

再雇用制度によってこれまでの処遇を維持することは困難であったとしても、労働時間や労働日数を短縮して無理なく少しでも長く働くことのできる方法も十分に考えられます。

再雇用後の給与や処遇はもちろん、退職金、社会保険、高年齢雇用継続給付、年金、税金に加えて定年後の労働時間や労働内容などをあらかじめ総合的に考えておくことが必要といえます。