定年前にやっておくことをチェック!定年退職に向けた準備マニュアル
会社員として働いていると気になるのが、定年前に何を準備すべきかということではないでしょうか。少子高齢化社会及び低成長時代に突入した日本では、社会保障制度などの維持に問題を抱えています。そのため政府も副業解禁や資産構築の推進を行っていて、定年前にやっておくことに変化が起きつつあります。
そこで今回は、定年退職前に準備しておくべきことをテーマに、資金計画や保険、退職金の効率的な運用方法などについて分かりやすく解説していきます。
定年退職前に資金計画を立てておくことが大切
定年前にやっておくことといえば、民間保険の見直しやローンの確認を行い、資金計画の見通しを立てておくことが大切です。この項目では資金計画を軸に、定年退職前に準備するべき項目を分かりやすく紹介していきます。
定年退職前に生活に必要な資金と支出を把握しよう
定年退職前に準備しておく項目について悩む方もいますが、まずは定年後のお金について把握する作業に入りましょう。
つまり「定年後の収入と支出についての確認」が大事だということ。定年前だと漠然と年金や預貯金から生活をしていく、と考えるものですが更に具体的な収支項目を整理していきましょう。
定年後の生活に必要な資金は家族構成や暮らしにも異なりますが、一般的に1000万~3000万円程とされています。
しかし定年後のアンケート調査の多くが、金融資産が500万円以下の人が多いという結果が出ており、年金や預貯金のみで暮らしていくには難しい現状といえます。
そこで次のような項目の整理・確認を定年前にやっておくことが大切なのです。
- 定年後の収支金額の確認
- ローンの見直し
- 民間保険の金額や契約内容の確認や見直し
定年後の収支金額の確認
定年後の収支バランスを確認するというと難しく感じますが、現在の貯金額や収入を1つずつ書き起こして、毎年の収支と差し引き1年ごとの残高を算出するだけですので、比較的簡単な作業です。
それでも難しい場合や忙しい方はFP(ファイナンシャルプランナー)などのお金の専門家に相談するといいでしょう。
ローンの見直し
次に算出できた収支の結果によっては、ローンや民間保険の支払い金額が大きく、赤字になる可能性があるケースも出てきます。そうした場合はローンの保険の見直しを準備しておくきましょう。
例えば住宅ローンの見直しの場合、借り換えや繰り上げ返済、返済プランの変更を行うなどの対応策が考えられます。借り換えとは、現在契約しているローンよりも金利が低いプランへ契約変更することを指します。金利が1%変わるだけで、最終的な返済額が大きく変わるのです。
繰り上げ返済とは、1回の返済額を大きくすることで返済期間を短縮するタイプや、返済額を変更せずに利息を減らして返済期間を短縮するタイプを指します。繰り上げ返済を行うことで、返済期間を短縮して定年後の負担を減らすことも可能です。
返済プランの変更というのは、固定金利や変動金利、元金均等型や元利均等型などの内容を見直すことを指しています。返済プランには、最終的な返済額を減らしたり、毎月の返済額を減らしたりと特徴があり、定年後の負担軽減に繋げることが可能です。
民間保険の金額や契約内容の確認や見直し
また民間保険も様々な契約プランが各社から販売されていますが、生命保険や医療保険の中には、契約者の現在の状態に対して不要なオプションが付いている場合があります。
保障内容が充実していると安心感がありますが、更新型の保険だと年々保険料が上がるケースなど定年後に負担が増えることも。定期的に見直したほうがよいでしょう。
各種ローンや保険は、しっかり見直すことで支出を減らすことができる項目です。
65歳まで定年延長とする企業が多いですが、60歳前もしくは58歳頃から準備をしておくことが大切です。
定年退職前に年金や退職金の確認などの準備も必要
定年前にやっておくことは、資金計画だけではありません。年金や退職金、雇用保険などの準備について取り掛かる必要があります。そこで年金・退職金・社会保険と3つに分け定年退職前の準備の基本について解説していきます。
定年後の生活を安定させるポイントは社会保険や年金などの確認を行うこと
1つ目の項目は、年金の見込み額の確認を定年退職前に行っておくことです。近年では、年金支給額の減額や消えた年金など、あまり良くないイメージがありますが、だからといっておざなりにするのは定年後に後悔する可能性が高まります。
定年退職前に年金見込み額の確認を行い、定年後の生活設計をしましょう。見込み額は日本年金機構から送られてくる「ねんきん定期便」で確認することができます。
- 年金加入期間
- 老齢年金の見込み額
- 保険料納付額
- 年金加入履歴
- 厚生年金の標準報酬月額の月別状況
- 国民年金の納付状況
ただ見込み給付額を確認するのではなく、各項目に間違いがないかよく確認することが必要です。万が一、納付額などが間違っていたら、受給額に大きな影響を与えます。早急に日本年金機構へ問い合わせましょう。
「ねんきん定期便」による確認は59歳を迎えた際に送られる書類が最後になるので、この機会を逃さないことが大切です。
続いて退職金の確認も行いましょう。定年退職前に確認する項目は退職金の金額と退職金の運用などを整理しておくことが必要です。
具体的には次の4つの項目を、定年退職前に確認しておくのがおすすめです。
- 退職金の金額
- 退職金の支払い日
- 退職金の申告書の提出
- 退職金に掛かる住民税の納付
これらの項目は各企業の退職規定をチェックすればわかります。
退職金には退職所得と呼ばれる所得税が掛かるので、確定申告が必要です。退職所得の受給に関する申告書を提出すれば、源泉徴収以外の手続きは会社側で行われます。
受け取った退職金の運用方法を考える
一般的に退職金の運用方法として次の3つが挙げられます。
- 投資信託
- 外貨預金
- 円預金
定年後の生活に非常に大切な資産である退職金は、リスクを抑えた運用が優先されることが多いのです。
万が一投資対象に問題が生じても、リカバリーできる分散投資をしながら資産管理を行うことが大切です。
退職金の資産運用については、次の記事で詳しく紹介しています。
社会保険に関する手続きの準備
他にも定年退職前にやっておくことがあります。それは社会保険(雇用保険と健康保険)に関する手続きなどについて確認・準備しておくことです。
(1)失業保険(雇用保険の基本手当)の準備
雇用保険の準備は「失業保険(失業手当)の受給に関すること」。定年退職前6カ月分の給与が、失業保険の給付時の計算に組み込まれるのですが、失業手当は年金と同時に受給することができません。
予め試算しておくことで、年金と比較してどちらかより多く受給できるか、自分にとっての最良の選択肢を検討できます。定年退職後に再就職を考えている方は、失業手当を受給しながら仕事を探すケースになるので、受給しながらの生活設計も事前に準備しておきましょう。
(2)健康保険をどうするかを考える
健康保険は加入が義務のため、定年退職をすると自身で改めて健康保険を探して加入しなくてはなりません。定年退職後に準備をしていては遅いので、定年前にいくつかの健康保険への加入パターンを考えておきましょう。
健康保険の選択肢には次の4つのパターンがあります。
- 国民健康保険に加入
- 任意継続保険者になる
- 家族の健康保険に扶養として加入
- 再就職先の健康保険に加入
1つ目の「国民健康保険」は定年後に再就職しない場合、多くの方が選ぶ方法です。退職翌日から14日以内に加入手続きを完了させる必要があります。
2つ目の「任意継続被保険者」は、勤務時に加入していた健康保険に退職後も加入し続けるタイプです。しかし会社と折半していた保険料負担は全額自己負担となります。こちらの場合は、退職翌日から20日以内に手続きを完了させましょう。
3つ目は「家族の健康保険に扶養者として加入すること」です。年収が180万円以下ということ、健康保険加入者本人の年収に対して半額以下であることなど複数の条件があります。
退職後すぐに移行するためには、退職翌日から5日以内に手続きを行わなければいけません。家族の扶養に入れてもらう場合は、被保険者となる家族と予め話し合いを進めておきましょう。
どの健康保険に加入する場合でも、退職翌日からの期限が短いので定年退職前に自身で予定を決めて計画的に準備しておくと安心ですね。
それぞれのメリット・デメリットは別の記事で解説しています。
定年前に!考えておきたい退職後の仕事の選択肢
退職後の仕事は人によって大きく異なります。再就職をする人や定年延長という選択をする人もいるでしょう。
定年退職前に準備するポイントとしては、まず収支計画を立てた資金面の試算です。資金が足りない場合は、なんらかの手段で収入を得なければなりません。
定年退職前は仕事についてゆっくり考える暇はないかもしれません。しかし行き当たりばったりで、再就職や雇用延長を行うと生活基盤の安定に影響を与えます。
そうならないために、定年後に年金受給額で補えない不足分を補う再就職が必要なのかを事前に決めておきましょう。再就職をすると決めたら、職場や就きたい仕事を考えていけるとよいですね。
一般的には、雇用保険の失業手当を受給しながら新たな仕事を探すので、雇用保険の失業手当の受給額について、定年退職前に試算を行うなど準備します。
- シルバー人材センター
- 知人の紹介
- 人材紹介会社
シルバー人材センターは地域に1ヶ所拠点が存在しており、年会費数1000円を支払って仕事の紹介を待ちます。しかし時給や日当ベースではなく、報酬制なので安定した収入を得るには課題が残ります。
定年退職前に知人や人材紹介会社に相談するのもひとつの手段でしょう。
資金計画だけでなく相続関係も確認を
定年退職前には親の介護や相続関係の手続きについても準備する必要があります。
定年退職の前後に親を介護がはじまるケースは、珍しくありません。いつ自分が介護を行う立場になってもいいように、介護に関する準備をしておきましょう。
いわゆる介護疲れともいわれていますが、介護というのは一般の方が行うには大変なものであり、時に悩むこともあります。
このような状況に陥らないためにも予め「地域包括支援センター」への相談も視野に入れておくと良いでしょう。地域包括支援センターには、保健師や看護師が常駐しているので介護に関するサポートを受けられます。
これまで紹介した項目は、全てご自身が生きていることを前提とした内容です。しかし万が一という事も想定しておくことが、残された家族が安定した生活を送るために必要な準備ともいえます。
仮に定年退職前に亡くなった時には、会社から死亡退職金が支払われるケースがあります。しかし退職金の支払いは義務ではありませんので、会社によって死亡退職金の扱いは異なります。
死亡退職金が支払われるかどうか、金額はいくらなのかを会社の就業規則で確認しておくと良いでしょう。
ほかに「遺族基礎年金」という年金制度がありますが、18歳未満の子供がいる配偶者か、その子供のみが受給できる条件となっています。「遺族基礎年金」とは異なる「遺族厚生年金」もあり、それぞれの制度や受給条件については「遺族年金とは?その仕組とどのくらいサポートがあるのか解説」で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
最後に相続と相続に掛かる税金についても知っておきましょう。
相続の問題は珍しいものではなく、遺族の間で財産に関する揉め事は避けなければいけませんし、その対策は相続を行う人自身が生前に完了させることが必要です。
相続対策に必要な要素は、財産を平等に分配することと相続税の負担軽減策、残された家族が後々相続税を納税する際に、それぞれに資金を準備することです。
そのためには正しい方式で遺言書を作成して、相続財産の割合を明確に示します。そして、不動産など分割できない資産があった場合には、遺留分の放棄を相続人自身が家庭裁判所にて申し立てを行ってもらうことで対応することが可能です。
遺留分とは相続人が最低限相続できる資産のことで、法律では放棄することができません。
しかし前述のように相続人本人が申し立てを行えば、放棄が可能となるので財産を分配する人自身が、丁寧に説明を行い納得してもらった上で行うことが大切です。
また遺留分の放棄以外にも様々な相続対策があるので、定年退職直前ではなく更に前から少しずつ準備しておくことがスムーズに手続きを進めるポイントです。
老後破産に備えるために定年退職前の準備は必須!
様々な準備が必要ですので、どのような方針に決めたか1つ1つの作業を記録しておくこともおすすめです。各項目を整理して準備済みが明確になれば、作業漏れもなくすことができます。
そして定年退職前に趣味についても考えておくといいでしょう。仕事やお金に関する準備をシビアに考える機会がほとんどですが、定年後の生活を豊かに過ごすエッセンスも非常に大切な要素です。
仕事やライフプランから日々の生活や趣味まで総合的にシミュレーションし、万全の状態で定年を迎えられると良いですね。