住宅ローン保険
団体信用生命保険の審査内容と加入できなかった場合の対処法

団体信用生命保険の審査内容と加入できなかった場合の対処法

団体信用生命保険への加入は、住宅を購入して住宅ローンの契約をする際の必須条件となっているケースがほとんどです。

しかし、団体信用生命保険はあくまでも生命保険の一種になりますので、加入するために審査をクリアしなければいけません。団体信用生命保険の加入条件や審査内容はどのようなものなのか、気になりますよね。

そして、万が一審査にクリアできなかった場合、住宅ローンを利用することはできないのでしょうか。実は、団信なしで住宅ローンを利用する方法はあります。

今回は、団信の加入審査内容、そして加入できなかった場合の対処法についてご紹介していきましょう。

団体信用生命保険の加入条件や告知内容をチェック

団体信用生命保険に加入する条件は、主に以下の2つです。

  • 年齢
  • 生命保険会社の加入承諾を得られる

つまり、年齢条件と生命保険会社の審査にクリアすることが、団体信用生命保険に加入する条件となるわけです。

では、具体的な条件を見てみましょう。年齢制限については、各金融機関によって異なるケースがあります。

たとえばみずほ銀行の場合、満20歳以上満71歳未満で、最終返済時の年齢が満81歳未満が年齢条件となっています。

一方で三井住友銀行では満20歳以上満70歳の誕生日まで、完済時満80歳までとされています。ワイド団信や三大疾病保障では満50歳未満が条件となる場合もあるなど、選ぶローン商品によって様々ですので、でしっかりとチェックすることが大切です。

では、生命保険会社の加入承諾を得るために必要なのは何でしょうか。

生命保険会社の加入承諾を得るためには、健康状態に問題がないと判断してもらう必要があります。つまり、生命保険会社の審査をクリアする必要があるのです。

団信は金融機関によってそれぞれに引き受ける生命保険会社があります。例えば、りそな銀行やみずほ銀行は第一生命、UFJ銀行では日本生命か明治安田生命となっており、団信に加入するためにはそれぞれの生命保険会社の審査を受けることになるのです。

申し込み時に健康告知をするのですが、それをもとに審査を行います。

団信の告知事項とは

団信申し込み時に記載する告知事項には、どのようなものがあるのでしょうか。主な項目は次の3点です。

  • 過去3か月以内に医師の治療(指示・指導を含む)・投薬を受けたことがあるか
  • 過去3年以内に下記(*)の病気で手術を受けたまたは2週間以上にわたり医師の治療・投薬を受けたか
  • 手・足の欠損または機能障害があるか、背骨・視力・聴力・言語・咀嚼機能に障害があるか

*指定された病気の一部を挙げてみます。

分類 病気
心臓 狭心症・心筋梗塞・心臓弁膜症・先天性心臓病
心筋症・高血圧症・不整脈・その他心臓の病気
脳卒中・脳動脈硬化症・その他脳の病気
精神疾患 精神病・うつ病・神経症・てんかん・自律神経失調症
アルコール依存症・薬物依存症・知的障害・認知症
気管支系 ぜんそく・慢性気管支炎・肺結核・肺気腫
胃腸 胃潰瘍・十二指腸潰瘍・潰瘍性大腸炎・すい臓炎
肝臓 肝炎・肝硬変・肝機能障害
腎臓 腎炎・腎不全
緑内障・網膜の病気・角膜の病気
がん等 がん・肉腫・白血病・腫瘍・ポリープ
女性特有 子宮筋腫・子宮内膜症・乳腺症・卵巣嚢腫
その他病気 糖尿病・リウマチ・膠原病・貧血症

これらの病気について該当するのであれば、きちんと告知するようにしましょう。

告知する際には、病名だけでなく治療内容や現在の状態などについて詳細を記載することになります。

病名、治療・投薬を受けた年月、薬の名前や用法・容量など、きちんと確認しながら記載するようにしましょう。

団体信用生命保険はどこまで調べる?健康診断不要の真偽とは

告知事項があったからと言って、団信の審査に落ちることが決定するわけではありません。

大切なのは、正しく告知すること、そして現在しっかり治療を行っている、もしくは完治していることを示すことです。

たとえば、自身の状態については出来る限り詳しく書いておきましょう。現在治療中であり病状は回復に向かっている、または治療を受けて完治しているというところまで詳しく伝えなければ、本来通過するはずであった審査にも落ちてしまうことがあります。

記載された告知内容について団体信用生命保険の審査ではどこまで調べられるのでしょうか。

 

実は、多くの団信で健康状態を示す健康診断結果の提出は求められません。

つまり、告知書だけで健康状態を把握するわけです。

ただ、金融機関によって、または告知内容によって健康診断結果の提出を求められるケースもありますので、その時はきちんと対応しましょう。

特に、同じ団信でも三大疾病保障や八大疾病保障の特約を付ける場合、健康診断結果や人間ドックで検査の異常を指摘されたか、という項目が設けられている場合があります。

ここで指摘事項があったと記載した場合は、健康診断結果の提出を求められる可能性もあります。死亡や高度障害以外の病気を保障する保険内容になっているからこそ、健康診断で異常がないかどうかが重要となります。

団信の三大疾病保障については、こちらで特集しています。

更に保障範囲が広くなった八大疾病保障について興味がある方には、こちらの記事がオススメです。

団体信用生命保険の告知義務違反をしたらどうなるの?

告知の際に嘘をつく告知義務違反をしてしまうと、保険金が下りなくなってしまいます。せっかく万が一に備えて加入した団信ですが、保険料だけ支払って受け取ることができなくなってしまうのです。

申告時には健康診断書などの提出がなくても、保険金を請求した際には徹底的なチェックが行われますから、その過程で虚偽申告が判明すれば保険金の支払いが行われない可能性があるわけです。

また、虚偽申告をしても契約後2~3年程度経過していれば問題ない、という噂もありますが、決して騙されてはいけません。

もし加入から2年以内に告知義務違反が発覚した場合、保険契約そのものを解除されてしまいます。そうなると住宅ローンそのものが解除されるわけではなく、万が一ローン契約者が死亡したときに保険金が支払われなくなります。

つまり、配偶者や子供などの相続人に多額の借金を背負わせる可能性があるということです。

また契約から2年を経過している場合でも、悪意があるような告知義務違反の場合、詐欺による取り消しとして保険金が支払われないこともあります。

虚偽申告は決してしてはいけないこと、何年経過しても詐欺だと判断される可能性があることは、十分認識しておきましょう。

告知事項があっても、現状をしっかり記載することで借り入れできるケースは多々あります。恐れず、正確な申告を心がけましょう。

団体信用生命保険の審査に落ちたらどうする?考えられる2つの対処法

団体信用生命保険は審査がありますから、残念ながら落ちてしまう人がいるのも事実です。

審査に落ちてしまったら、住宅ローンは利用できないの?と不安になるかもしれませんが、審査に落ちても住宅ローンを利用する方法はあります。それが、次の2つです。

  • ワイド団信に申し込む
  • 団信不要の住宅ローンを申し込む

それぞれの方法についてご紹介していきましょう。

ワイド団信に申し込む

団信には、ワイド団信と呼ばれるものがあります。

ワイド団信とは

通常の団信よりも加入条件が緩和されている団体信用生命保険。第一生命や明治安田生命のように日本の生命保険会社ではなく、クレディ・アグリコル生命保険など外資系の大手保険会社を採用している金融機関が多いです。

団信の審査に通らなかった病歴もワイド団信なら通ったというようなこともありますが、ワイド団信では一般団信と違い、年齢要件だけは50歳未満とされている場合もあります。

加入条件が緩いって、どのくらい緩いの?
ワイド団信は高血圧症や糖尿病などの持病があっても、金利を上乗せすることで入りやすくなっているので、持病などの不安要素がある方は一度検討してみると良いでしょう。

ただ、ワイド団信は無料というわけではなく、通常金利に+0.3%程度の上乗せが生じます。

また、ワイド団信は取り扱っていない金融機関もありますので、団信の審査に不安がある方はワイド団信を取り扱っている金融機関を探してみると良いでしょう。

団信不要の住宅ローンを申し込む

住宅ローンは、団信に加入しなければ契約できないと思っていませんか?確かに、民間金融機関が取り扱っている住宅ローンを利用する際には、団信の加入が基本条件となっていることが一般的です。

2017年10月よりフラット35そのものが改正され、標準で団信に加入する「団信付きフラット35」となりました。

これまではローンの返済額に上乗せして団信保険料が上乗せされるという形でしたが、リニューアルされてからはローンの返済額の中に組み込まれています。

また、それに合わせて金利も少し上がっているので、実質の返済額はあまり変わりませんが、身体障碍保障や介護保障が追加されるなど保障の範囲が広がっています。もちろん、団信に入らず金利を-0.2%にして返済額を安くするという選択肢も依然として可能です。

フラット35で団信の加入をしなかった場合、通常の新機構団信付きの商品より0.2%お得に住宅ローンを利用できます。

ただ、団信に加入しなければ契約者が死亡・高度障害といった万が一の事態に陥っても返済義務は残りますので、慎重に検討する必要があるでしょう。

フラット35の団信については、こちらの記事で詳しくご紹介しています。

団体信用生命保険に入らないという選択も?団信の代わりになる保険とは

団体信用生命保険に加入せずに住宅ローンを利用した場合、契約者が死亡する、または高度障害状態になってしまった場合、家族に住宅ローン返済が残ってしまうことになります。

住宅ローンは高額で、長期にわたる返済が必要です。ですから、万が一のことを考えて用意しておくことは必要となります。

ただ、万が一の保障だけを考えるのであれば、団信を選択しなくても一般の生命保険で代用できるケースもあり、そっちの方が保険料がお得に済む可能性もあるのです。

生命保険が団信の代わりになるってどういうこと?結果的にそっちがお得かもしれないって本当?
死亡や高度障害時の保障だけであれば、生命保険や収入保障保険で対応できる可能性もあります。

団信の代わりになる保険についてご紹介していきますね。

一般的な生命保険は、死亡保障や高度障害時に保険金が支給されるような制度になっています。つまり、この生命保険の保険金額が住宅ローンの返済をカバー出来る金額であれば、あえて団信を契約する必要はないのです。

また、生命保険ではなくても万が一のときに毎月一定額を受け取ることができる収入保障保険を選択する、という方法もあります。こちらも、結果的にお得になるケースがあるので検討しておきたいところです。

生命保険と団信の保険料を比較

また、加入時の年齢によっては一般的な生命保険の方が保険料がお得な場合があります。

団信は、加入時の年齢で保険料が決まるわけではなく、借入残高と特約料によって算出されます。

ここでは、次の条件のケースを比較してみます。

  • 団信…借入金額3,000万円、返済期間35年、借入金利1.5%
  • 収入保障保険…月額保障額10万円、保険期間35年
  • 生命保険…死亡保障3,000万円、保険期間35年

収入保障保険は、毎月のローン返済額を想定して月額10万円を受け取るよう考えています。

収入保障保険、生命保険は、ある生命保険会社のシミュレーションを参考にしています。

保険の種類 保険料総額 受け取り金額
団信 約202万円 最高3,000万円
(死亡時のローン残高全額)
収入保障保険 約112万円 約3,000万円
*就業不能状態が25年
生命保険 約290万円 死亡時に3,000万円

収入保障保険が圧倒的にお得に利用できることが分かります。また、収入保障保険は就業不能状態になれば給付されますので、死亡に限らず病気やケガで入院するなどの理由でもOKです。

また、保険会社によって、かかる保険料の総額は変わってきます。今回、生命保険の方が団信よりも割高な結果になりましたが、生命保険会社を変える、年齢が若いなどの条件になると、保険料総額をもっと低く抑えられる可能性もあります。

更に、団信はその時のローン残高しか保障されませんが、生命保険であればいつ亡くなったとしても3,000万円の満額が受取れるというのはメリットだと言えるでしょう。

健康的な問題で団信に加入できない場合は、収入保障保険や生命保険の審査にクリアするのは簡単ではないかもしれません。

費用面で団信への加入を迷っている場合は、収入保障保険や生命保険について検討してみるのも1つの方法です。

生命保険は、家族に生活費などの大切なお金を残すことが第一目的です。

そのため、生命保険が全額住宅ローンの返済に充てられてしまうと、その後の生活費がなくなってしまいます。その点、団信では死亡により住宅ローンを弁済する必要がなくなりますが、その後の生活費まで支払われるわけではありません。

一番良いのは団信にも生命保険にも加入することですが、もちろんそれだけ費用のかかることなのでしっかりと計画を立てた上で検討しましょう。

団体信用生命保険は健康告知だけで加入可能!

団体信用生命保険は、申し込み時の健康告知書の提出だけで審査を行います。その際、健康診断書などの提出は基本的に不要です。

ただ、正確な告知をしなければ虚偽告知として保険金が支払われない恐れがあります。嘘をつかず、正直に記載することが大切です。

団信の審査に落ちても、団信不要の住宅ローンを申し込むことは可能です。また、団信の審査基準が低い、ワイド団信を申し込むという方法もあります。

また、団信ではなく他の保険の方がお得になる可能性もあります。一般的な生命保険や収入保障保険も含め、いろいろな方法を検討しておきたいですね。

監修者メッセージ

近年、ネットバンクの隆盛に伴って低金利なローンが多数展開し、合わせて独自に団信も提供され、実に様々な選択肢がユーザーに与えられています。

通常の生命保険も踏まえると、その比較検討はかなり大変であることは事実ですが、万一の時のために遺される家族のためにも、しっかり考えておかなければなりません。

プロフィール
不動産売却カテゴリー記事監修(吉田成志)
吉田成志
宅地建物取引士、マンション管理士、消防設備士などの資格を保有。
4年ほど専任の宅建士として不動産業者に勤務し、現在はマンション管理士・消防設備士として独立。
宅建士としての知識や立場を活かし、不動産売買時の疑問点などの相談を受けている。