介護老人保健施設の活用方法を紹介!費用をおさえて賢く利用
前回の記事では介護老人保健施設(以下、老健)についてお伝えしてきました。特別養護老人ホームなどの一般的な介護施設と比べて、老健は医療色が濃くなるのが特徴です。
それは最終的に自宅で生活できるようにすることを目的としているためです。そこで今回は老健を利用するにあたり、医療保険などが使えるのかなど金銭的な面についてお伝えしていきます。
また利用するための条件や受けられるサービスについては前の記事をご覧ください。併せてお読みいただくことでよい理解が深まることでしょう。
おさらいしておこう!老健とはこんなところ
ここでは老健について簡単におさらいしておきましょう。
老健と特養との違い
老健の最大の特徴として在宅復帰を目指した支援やケアを行っていくことにあります。
医師の管理指導のもと、リハビリを中心としたケアを行っていきます。
看護師、介護士、作業・理学療法士など医療体制が充実しているのもポイントです。食事においても栄養士の指導によりバランスのよいものが提供されます。
老健は病院と自宅との中間的な役割を果たしている施設といえます。
入所条件は次のとおりです。
- 65歳以上であること
- 原則として入所期間は3ヵ月~6ヵ月程度となる
- 要介護認定を受けている高齢者(介護度が1度以上)
※ただし特定疾病により40歳~65歳以下でも入所可能です
また老健は一般向けに介護予防教室を開催するなど、地域に開かれた施設として活動をしています。
介護のことで困ったことがあれば、こういった機会を利用することもよいでしょう。
入所期間が短いのは在宅復帰が目的であるからです。老健では3ヵ月に一度、在宅復帰が可能か判定されます。
利用者の病状や受け入れる自宅の状況によっても利用できる期間が変わってきますので注意してください。
※気になる方はコチラの特集記事を御覧ください。
初期費用って何のこと?払わなければいけないもの?
初期費用とは私たちがアパートなどを借りるときに支払う敷金・礼金とみてもらえればよいでしょう。家賃もですが敷金なども中々の金額ですので、部屋を選ぶときの判断材料になります。
では介護施設に入るにも初期費用が必要なのでしょうか。特養と比較してみます。
介護老人保健施設 | 不 要 |
---|---|
特別養護老人ホーム | 不 要 |
表のように老健、特養ともに初期費用については不要です。これは老健などが公的な介護施設であるからです。
また特養が終身利用であるのに対し、老健では利用期間が限定されています。一般の施設と同じように必要経費はかかりますが、老健を利用するために基本的なものをざっとあげてみました。
- 施設サービス費
- 食費・居住費
- 日常生活費
施設サービス費はその施設で受けた看護・介護ケア費になります。その他、居住費、食費、日常生活費が必要です。
利用者によっても異なりますが入所期間が長ければ長いほど快適に暮らしたいものです。そこで登場するのが日常生活費になります。
これは個人的にかかった医療費や薬代、あるいは理美容代といったものをさしています。場合により携帯端末などの通信費や新聞代がかかる人もいます。ただし利用する施設で血液や尿などの検査、傷に対する消毒といった処置、治療のための投薬や注射については施設サービス費に含まれています。
したがって別途医療費を負担することなく、医療を受けられます。
老健の相場ってどれくらいなの?
老健は公的な介護施設ですが、その相場はどうなのか気になるところです。費用について目安となるものがあるので参考にしてください。
- 一般的には9~15万円が相場(全額自己負担の場合)
- 収入によって負担額が変わる
- 8万~10万円ほどと個室より多床室がお得!
自宅のように生活していただくことを理念としたユニット型の施設も増えてきました。老健でも取り入れていますが、目的が在宅復帰であるためにそれほど主流ではないようです。
ユニット型にも完全に個室、準個室があります。やはり料金も多床室より割高です。
9~10名を1ユニットとしキッチン、リビング、トイレなどは共用となります。ユニットごとに職員も違います。
少人数のため行き届いたケアが提供されます。家庭的雰囲気に近いのが特徴で、各ユニットでご飯やみそ汁を調理するところもあります。
サービス費って一体何のこと?
これは施設介護サービス費のことを指しています。施設によっては介護サービス費、施設サービス費ともいいます。毎月にかかる費用のことです。その他、食費、居住費、日常生活費があります。
ここがポイント!基準を上回ると加算されます
施設で受けるサービスが基準以上で、なおかつそのための体制が整っていることで通常のサービス費に加算されるしくみになっています。ここは注意が必要です。
自己負担額を減らせる!?介護保険の負担限度額制度とは
介護保険には公的な施設である特養、老健、介護療養型医療施設があります。その他、ショートステイなどの入所サービスがあります。
収入が低いためにこれらの介護サービスが受けられないといったことを防ぐために設けられたのが介護保険負担限度額制度になります。
この制度を用いることで、所得が少ない方でも安心して介護サービスが利用できます。
ただし2015年8月より一定の資産がある方については負担額(最大3割)が変わっていますので注意して下さい。
段階に応じて費用が軽減される
老健においてもこの制度を活用できるのです。第1~第4まであり自己負担額が一番低いのが第1段階となります。
- 第1段階:年金受給者・生活保護受給者
世帯全体で市町村民税が非課税である。世帯に一人でも納税するものがいれば対象外 - 第2段階:高齢者本人の所得が80万円以下
課税年金収入と所得税の合計が80万円以下で、世帯全体で市町村民税が非課税である - 第3段階:世帯全体で市町村民税が非課税
高齢者本人の収入が80万円以上のもの。80万円以下であれば第2段階となる - 第4段階:世帯の誰かが市町村民税の課税対象である
高齢者本人が非課税でも、世帯のうち一人でも納税している場合
世帯で一人でも収入があり納税していると、それほど経済的に困窮していないと判断されます。第4段階では限度額が設定されていないため、各担当窓口にて問い合わせが必要です。
医療費控除は使えるのか?
ここでは各種保険についてみていきます。
医療費控除
この控除の対象となるのは次の3つです。施設サービス費(介護費など)、食費、居住費が控除対象となります。
老健でも支払った施設サービス費については全額医療費控除の対象です。
ただし特養については施設サービス費として支払った額の2分の1となるので注意が必要です。これは医療の側面が大きいためといわれています。
- 特別養護老人ホーム
- 介護老人保健施設
- 介護療養型医療施設
扶養控除
次に扶養控除です。こちらの制度は条件を満たすことで扶養控除の対象となりますが、利用者本人が同居であったか、あるいは被扶養者の年齢により受けられる控除額が変わります。
- 主たる納税者と生計をともにしている
- 被扶養者の所得の合計が38万円以下
- 青色申告者の事業専従者であり、その年を通じて一度も給与を受けていない。あるいは白色申告者の事業専従者でないもの
- 被扶養者が配偶者以外の親族である(6親等内の血族、3親等内の姻族。また都道府県知事から養育を委託された児童、市町村から養護を委託された老人)
控除額については被扶養者の年齢が70歳以上であれば48万円で、70歳未満は38万円となります。
また現在、民間の介護施設では医療費控除の対象となるところはありません。
減免制度を有効活用しよう!
有料老人ホームなどと比較しても初期費用が無料であること、通常の医療行為であればサービス費にて賄われるなどメリットは多々あります。もちろんデメリットとなることもあります。
老健の特徴や控除のしくみなどをうまく活用することで、自己負担額をおさえながら手厚い介護サービスを受けることができるでしょう。