住宅ローンの返済
住宅ローンの一括返済はちょっと待って!押さえておくべき注意点とは

住宅ローンの一括返済はちょっと待って!押さえておくべき注意点とは

住宅ローンは、出来るだけ早く返したいと思う人が多いですよね。住宅ローンは繰り上げ返済をすればお得だということは知っているかもしれませんが、一気に全額を返済してしまう一括返済を考えている人はちょっとまってください。

実は、一括返済には知らないと損をする注意点があるのです。そもそも一括返済はどのように行うのか、そして一括返済で気を付けるべきポイントは何なのかについて、ご紹介していきましょう。

住宅ローンを全額繰り上げ返済するメリット・デメリット

住宅ローンは、契約する際に返済期間を決めます。20年や35年といった期間を設定し、その期間で返済していくのです。

しかし、住宅ローンは毎月の返済に加えて任意で繰り上げ返済をすることで、支払利息を軽減することが可能となります。

もちろん、全額繰り上げ返済(一括返済)も高い支払い利息軽減効果が期待できます。

  • 借入金額…3,000万円
  • 借入期間…35年
  • 借入金利…全期間固定1.5%

こちらのケースを例に、期間短縮型の場合を考えてみましょう。

項目 繰り上げ返済なし 20年後に一括返済
総返済額 3,857万円 3,663万円
返済期間 35年 20年

一括返済をすることで、100万円や200万円も支払い利息を軽減できる可能性があるのです。

また、全額一括返済には予定より早く完済することで老後の負担が減るっというメリットもあります。

定年で収入が減る、高齢になって医療費が増えてくる時期に住宅ローンの返済がなくなれば、だいぶ楽になりますよね。

定年後も住宅ローン返済が残っている契約になっているのであれば、全額もしくは一部繰り上げ返済をして返済期間を短縮化すれば定年後の負担を減らすことを検討しても良いでしょう。

若いうちに住宅ローンを申し込めば35年ローンにしても定年前に完済できるけど、40歳とかになると定年後もローンが残る可能性があるのか。

でも、そもそも定年後も返済が残るようなローンって審査に通るの?

勤務先や収入などの条件次第では、定年後まで返済する計画でローンを組むことはできます。

年齢を重ねてからローンを組むときには、将来的に収入が減ることも考えておきたいところですね。

住宅ローンの返済期間は、購入する年齢によっても異なってきます。各年代ごとの住宅ローン情報に興味がある方には、こちらの記事もオススメです。

一括返済のデメリットは要チェック

一括返済は、返済総額が軽減できる、早く完済できるので老後の負担が軽減できるといったメリットがあります。

ただ、一括返済はメリットばかりではありません。しっかりチェックしておかなければいけないデメリットもあるのです。それが、以下の点です。

  • 手持ちの現金が減る
  • 住宅ローン控除が受けられなくなる
  • 保険の保障がなくなる

まず、一括返済をすると言うことは当然多額の現金を支払う必要がありますが、将来的に支出が大きくなり手持ちの現金が足りないという事態も起こりかねません。

また、早いうちに一括返済をしてしまえば、最長10年間受けられる住宅ローン控除を受けられなくなってしまう恐れもあります。

10年未満で一括返済をしようと思った際には、住宅ローン控除を利用した場合とどちらが得なのかを一度シミュレーションしておくようにしたいですね。

住宅ローン控除を上手に活用する為のポイントは、こちらの記事で詳しくご紹介しています。

また、住宅ローンを利用する際にはほとんどの人が団体信用生命保険に加入します。これは、契約者が死亡したなど特定の条件を満たせば、以降のローン返済は免除されるというものです。

住宅ローンを一括返済をした後に契約者が死亡した場合、契約者の収入が絶たれてしまいます。

一括返済をした後で契約者が死亡した際、本来払う必要のなかったはずの住宅ローン返済をしたことで現金が残っていなければ、残された家族の生活が苦しくなってしまう恐れもあるのです。

繰り上げ返済のメリットとデメリットについて詳しく知りたい方は、こちらの記事も読んでみてください。

貯金をいくら残せば一括返済しても安心?

一括返済をすることによって生活が苦しくなるリスクがある、と紹介しました。では、一括返済をしても生活に支障が出ないようにするためには、いくら貯金を残しておけば良いのでしょうか。

実は、いくら貯金を残せば良いのかについては各家庭の状況に応じて異なります。家族構成や収入、毎月の支出が各家庭で異なるためです。

子供の人数や年齢によって必要となる教育資金も違ってきます。また、自身の年齢によって老後資金で確保すべき金額も出てきます。

目安として、生活費の6か月分~1年分は貯金として確保しておく、というものがあります。

  • 教育資金
  • 冠婚葬祭
  • 車の買い替え・車検

これらの支出もしっかり考えましょう。

現在の貯金、得られる収入、そして今後の支出をしっかり計算して考えるようにしたいですね。

住宅ローンの一括返済は手数料がかかる!利息とどちらがお得?

一括返済をする場合は残高のみを支払えば良いという訳ではありません。

住宅ローンの全額返済には、手数料がかかります。

この手数料は金融機関や手続き方法などによって異なりますが、およそ5,400円~32,400円程度となっています。この金額が手数料として必要となることを、しっかり認識しておきましょう。

住宅ローンを繰り上げ返済、もしくは一括返済すると、支払利息が軽減されます。これがメリットになるわけですが、繰り上げ返済や全額返済をすることで手数料が発生すれば、結果的に損をする可能性もゼロではありません。

繰り上げ返済の場合は、繰り上げ返済をした回数分だけ手数料がかかってしまいますので、細かい繰り上げ返済を重ねれば支払い手数料が軽減される利息よりも大きくなってしまうリスクがあります。

しかし、一括返済の場合は支払う手数料は1度だけです。一括返済をする際には手数料がかかりますが、多くの場合は軽減される利息の方が大きいので結果的にお得であるということを押さえておきましょう。

手数料を支払うことになっても、やはり一括返済の方がメリットが大きいのですか?
一括返済する時期や金額にもよりますが、一括返済をすると支払い利息が100万円程度軽減されるケースもあります。

それを考えると、30,000円程度の手数料を支払ってでも一括返済をするメリットはあると言えるでしょう。

一括返済をする前には事前に金融機関へ連絡が必須!

一括返済をすれば住宅ローンの返済は終了する、そう思っている人はいませんか?実は、住宅ローンを全額一括返済する場合は、事前に金融機関に申請をするといった手続きが必要となります。

申請をして、書類の記入、そして指定日に窓口もしくは口座へ振り込むことで、一括返済手続きが完了するのです。

こちらの手続き方法については、各金融機関で異なる場合がありますので事前にしっかり問い合わせるようにしておきたいですね。

住宅ローンを一括返済したら法務局へ!必要書類は金融機関で受け取ろう

住宅ローンを一括返済すれば、当然住宅ローンは完済したことになります。これで、もう住宅は自分のものになるのでしょうか。

実は、住宅ローンを一括返済した後にやらなければいけない手続きがあります。それが、抵当権抹消の手続きです。

住宅ローンを万が一返済できなくなったときのために、購入した住宅を担保にするため抵当権が設定されます。

この抵当権は、設定する際は自動で行ってもらえるのですが、抵当権の抹消は自分で行う必要があるのです。

抵当権を抹消するためには、住宅ローンを利用している金融機関に必要書類をもらわなければいけません。

必要書類には、以下のものがあります。

  • 登記申請書
  • 登記識別情報または登記済証
  • 登記原因証明情報
  • 抵当権者の委任状

手続きは、自分自身で行うことがが出来ますが、不安であれば司法書士に依頼することも可能です。

自分自身で手続き 司法書士に依頼
不動産1件につき1,000円
土地・建物両方だと2,000円
10,000円~20,000円

このように、自分で行うときと司法書士に依頼をする場合でかかる費用が変わります。

詳しくはコチラの特集記事をご覧ください。

住宅ローンを早く返したい!でも退職金で一括返済は危険!?

住宅ローンを一括返済したいと思っても、やはりある程度まとまった金額が必要となります。まとまった収入を得られる機会としては、退職時の退職金が挙げられますが、実は退職金で住宅ローンを一括返済するのはリスクもあるのです。

退職金で一括返済をするリスクとしては、一括返済をしたデメリットと同様の点が挙げられます。手元の現金がなくなってしまう、保険が適用されなくなるといった点ですね。

また、退職によって下がった収入を、退職金を運用することでうまく増やすこともできます。せっかく得られた退職金が1,000万円あったとして、その半分を住宅ローン一括返済に、残りの半分を手元に置いて資産運用をした場合、どちらの利回りが良いかは一目瞭然ですよね。

もちろん、より多くの資金を運用した方が、同じ利率でも多くの運用成果を得ることができます。
退職金の運用について知りたい方はコチラの記事へ。

特に現在は低金利ですから、住宅ローンの金利も低金利の物に借り換えて返済し続ける方が同額を借り入れするより少ない負担で済みます。手元に現金を残すことができ、その現金を運用することで老後資金を確保することが賢いとも言えるでしょう。

退職金が得られるとは限らない!?

退職金は必ずもらえるものではありません。退職前に会社が倒産する可能性もゼロではありませんし、実は退職金制度がない会社も少なくは無いのです。

退職金ありきで住宅ローン返済を考えるのは危険ですので、現実的に今ある収入でどう返済していくかを考えるようにする必要があります。

住宅ローンの一括返済は今後の生活資金も考えつつ決断しよう

住宅ローンを一括返済すれば、支払利息が大きく軽減されてお得になります。ただ、無理をして一括返済をすれば今後の生活が苦しくなる恐れもあるので注意が必要です。

特に退職金を使っての一括返済は、老後資金のための現金が大きく失われてしまうことになります。一括返済してしまえば、万が一のときに住宅ローンの返済が免除になる保険も適用外となりますので、慎重に検討するようにしましょう。

監修者メッセージ

定年が延長され仮に70歳で退職したあとでも、住宅に費用がかかります。

外部メンテナンスや住宅設備の交換など、数百万円の予算をみておく必要があり、退職金で一括返済するとこれらの費用を年金から積立しなければなりません。

老後の生活資金をしっかり計画する中で繰り上げ返済する金額を決めるようにしたいですね。

プロフィール
不動産売却カテゴリー記事監修(弘中純一)
弘中 純一
宅地建物取引士、一級建築士の資格を保有。
中古住宅・中古アパートの媒介業務・調査業務に従事し、現在は札幌市内の宅建業者にて専任の取引士を務めている。
2006年より、住宅に関する無料の相談サイトを開設し、住宅リフォームや中古住宅購入の相談に応じている。