内縁関係でも遺族年金は受給できる?条件や手続きについて解説します
残された家族の生活を支える遺族年金。ただ、この遺族年金を受け取るにも年齢や性別などによって制限があることがあり、意外ともらえなかった…という声もあります。
となると、さまざまな事情で婚姻届を出していない、いわゆる「内縁関係のカップル」だと遺族年金はもらえないものだとあきらめていませんか?
内縁関係の妻(夫)でも、遺族年金をもらえる可能性があります。
ただし事実婚の状態を客観的に証明できなかったり、収入などの条件によっては受給できないこともあるので、無条件にもらえるというわけではありません。
そこで今回は、内縁関係、いわゆる事実婚の夫婦でも遺族年金をもらえる条件や手続きなどについて、詳しく解説したいと思います。
内縁関係でももらえるって本当?遺族年金の基本を押さえよう
残された家族の生活を支える遺族年金ですが、家族であれば無条件にもらえるわけではありません。
そこで、まずは遺族年金について「そもそも誰がもらえるのか?」そして「内縁関係でももらえるのか?」について押さえていきましょう。
遺族年金の種類は2つ!ただし、誰でも受け取れるとは限りません
遺族年金はその名のとおり、残された家族=遺族が受け取る年金のこと。
ただし遺族年金には2種類あり、年金を受給できる家族の条件も異なっています。
遺族基礎年金 | 子のいる配偶者または子 |
---|---|
遺族厚生年金 | 妻・子・孫・55歳以上の夫・父母・祖父母 |
例えば「子」の条件で説明します。
子が遺族年金を受け取れる条件は、「18歳到達年度の3月末日を経過しない者(障害年金の障害等級1・2級の場合は20歳未満)であること」と定められています。
亡くなった方の子供であれば、無制限に遺族年金を受給できるわけではないのです。
このように遺族年金は、たとえ亡くなった方と家族であったとしてもかなり細かい支給要件があります。詳しくはこちらの記事にまとめていますので、確認しておきましょう。
内縁関係でも大丈夫!条件を満たせば遺族年金をもらえるのは本当
遺族年金をもらえる対象者について詳しくみてみると、次の事実がともに重要となってきます。
・亡くなった方と家族であったこと
・生計維持関係にあったこと
国民年金法や厚生年金保険法によると、婚姻の届けを出していない、いわゆる「事実婚」状態だったとしても婚姻関係と同様な事情がある場合には、法律婚で定める配偶者として認めると定められています。
つまり、内縁関係でも遺族年金をもらえる可能性があるということです。
内縁でも遺族年金を受けるには、事実婚と生計維持関係の認定が必要
内縁関係でも遺族年金はもらえます。しかし事実婚だった事実を客観的に証明できなければ、遺族年金はもらえません。
法律婚では戸籍謄本によって家族であることを証明できますが、事実婚ではそうはいかないですよね。
そこで遺族年金を受け取るには、次のような認定によって内縁関係であるという証明をする必要があります。
- 事実婚の認定
- 生計維持関係の認定
事実婚の認定には、社会通念上「夫婦」として認められているかどうかが条件。ただしきちんと認定できるような書類を準備する必要があります。こちらについては後述しますので、しっかり確認してくださいね。
また忘れてはならないのが、生計維持関係の認定には「収入要件」もあるということ。
次のような条件もクリアする必要があるのです。
- 前年の収入が850万円未満であること
- 前年の所得が655.5万円未満であること
これは法律婚のカップルでも適用される条件なのですが、しっかり確認しておきましょう。
これはNG!内縁関係と認められないカップルの例(近親婚・重婚)
ちなみにいくら上記のような事実婚であるという事実を証明できたとしても、内縁関係であると認められないカップルの例があります。
それは、法律で禁止されている近親婚や重婚である場合です。
ただし、「離婚はしていないが事実上婚姻生活が破綻しており、内縁関係のカップルの方に事実婚の認定がおりた」というケースも少しは存在します。
自分が遺族年金の対象であるかどうか、年金事務所などに問い合わせてみましょう。
事実婚を証明する書類は重要!遺族年金を請求するための手続きを解説
内縁関係であったことを証明できるのであれば、遺族年金を請求しましょう。
しかし、どうやって手続きしたらいいのか?また、事実婚を証明する書類はどういったものがあるのか?など疑問に思われるかもしれません。
そこで、ここでは遺族年金の請求手続きについてわかりやすく解説したいと思います。
遺族年金を請求するために理解しよう!事実婚を証明する手続きとは?
内縁関係にあった方が遺族年金を請求する場合、年金事務所に以下の書類を用意し提出して審査を待つことになります。
- 事実婚関係及び生計同一関係に関する申立書
- 事実婚であることを客観的に証明できる書類
まず必要なのが、この申立書です。内縁関係であったことがわかるようにできるだけ詳しく記入しましょう。
ちなみにこの申立書では、第三者による証明も必要となりますのでお忘れなく。
さらに「事実婚であることを客観的に証明できる書類」も集めておきましょう。
というのも、自分たちで「事実婚です」というだけでは、客観的に証明できたことにはならないからです。
客観的に証明できるものを!事実婚を証明するための書類の例
他にも次のような書類がないか、探してみて下さい。
- 賃貸契約書
- 被扶養者を証明する健康保険証
- 生命保険の証券
- 結婚式を挙げた証明
- 葬儀の喪主を務めた証明
- 夫婦連名宛ての年賀状など
これらはたくさん用意すればそれだけ信憑性も増すので、有効であるといわれています。
1枚だけ見つけて安心するのではなく、できるだけ多く探し出すようにしましょう。
本妻vs内縁の妻?事実婚の妻が遺族年金を請求する場合の注意点
事実婚カップルだった場合、「事実婚を証明できるのか?」または「本妻がいた場合はどうするのか?」などと、事実婚特有の問題があります。
そこで、内縁関係だった場合の注意点について説明したいと思います。
事実婚を証明できなかったらどうなる?
事実婚カップルの方でパートナーに万が一のことが起きた場合、遺族年金を請求できなかったらどうしよう?と心配になるかもしれません。
残念ですが、事実婚を証明できなかった場合には遺族年金を受け取ることができません。
他にも、賃貸物件を借りる場合には同居人の欄にパートナーの名前があると事実婚を証明するばかりか同居の事実も証明できるのでおすすめです。
ただ内縁関係の事実を証明することはなかなか難しいケースもありますので、できるだけ生前に対策できることはやっておきましょう。
本妻vs内縁の妻?遺族年金を請求できるのはどちら?問題
内縁関係にある夫に戸籍上の妻(本妻)がいた場合、内縁関係にある妻は遺族年金を請求できるのでしょうか?
当然ながら法律婚が重視されるので、本妻の方に請求権が認められます。
では、もし本妻との間で婚姻関係が破綻しているような場合はどうでしょうか?
婚姻関係の破綻を証明でき、かつ内縁関係にある妻が事実婚を証明できた場合は、内縁関係の妻に遺族年金の請求が認められる可能性があります。
逆にいうと本妻の立場においては、婚姻関係が破綻していたとしたら例え戸籍を残していたとしても遺族年金の請求権が認められない場合があるので注意してください。
遺族年金を受給中に再婚(事実婚)したらどうなる?ケース別に解説
例えば、若くして夫に先立たれた妻が再婚したとします。そうすると、今もらい続けている亡き夫の遺族年金はどうなるのでしょうか?
そこで再婚(事実婚)した場合をケース別に考えていきたいと思います。
新しいパートナーと正式に再婚した場合(法律婚)
遺族年金を受給中に新しいパートナーと正式に婚姻届を出して再婚した場合、遺族年金の受給権がなくなります。
ちなみに再婚相手と離婚してしまったとしても、元内縁者の遺族年金の受給権は復活しませんので注意してください。
新しいパートナーと内縁関係にある場合(事実婚)
新しいパートナーと内縁関係となった場合でも、新しく内縁関係を持ったことが認められてしまうと遺族年金の受給権がなくなります。
もし内縁関係にあるのに遺族年金をそのまま受け取ってしまうと、不正受給として返還を求められる場合も。遺族年金をもらうために婚姻届の提出を迷っているという方は、必ず覚えておきたいポイントです。
内縁関係でも遺族年金は請求できる!事実婚の証明がポイントに
ただし事実婚や生計維持関係の認定を受ける必要があるため、内縁関係であることを客観的に証明しなくてはいけません。
この内縁関係を証明するには、申立書はもちろんのこと、社会的に見ても夫婦であると証明できる「客観的な証拠」も必要です。
この証明をできなければ、本来請求できたはずの遺族年金も請求が難しくなってしまいます。
ただ、生前から対策できることはあります。例えば健康保険の扶養者にしておく、連名で賃貸物件を借りるなど、できる限りのことは事前に対策しておくと万が一の時に役に立つでしょう。
内縁関係でも遺族年金を請求することはできますが、実際に認められるかどうかは日本年金機構の審査によります。
基本的には書類審査となりますので、内縁関係を証明できる書類はできるだけ用意した方が良いでしょう。
また、判断に迷うときは社会保険労務士などの専門家に相談することをおススメします。
日本年金機構、社労士法人勤務を経て開業。中小企業の労務管理に従事する一方、年金相談窓口や無料相談会などで年金相談を受けている。