
Jリートファンドとは?不動産投資信託の仕組みや選び方について解説
不動産投資を検討している方で、「Jリート」という言葉を目にしたことはありませんか?
不動産投資を投資信託にしたものがJリートのことで、元はアメリカで生まれた金融商品です。日本でも多くの投資家が活用していて、不動産投資よりもコストを抑えやすいメリットがあります。
そこで今回は、Jリートの仕組みから各Jリートファンドの特徴、銘柄の探し方やおすすめのJリートまで紹介していきます。
資金面の負担が少ないJリートは、初心者でも始めやすいので今回の記事を参考に検討してみてくださいね。
ちなみにリート自体の基本的な意味や仕組みについては、次の記事で詳しく説明しています。
Jリートファンドとは日本版不動産投資信託
Jリートファンドとは日本版不動産投資信託のことで、元はアメリカで生まれたリートという不動産投資信託の仕組みをベースにしています。
不動産投資とは違い、投資家が直接不動産を購入しません。
Jリートの仕組みは、Jリートの投資法人が市場へ証券を発行し、投資家から資金を調達します。そして、Jリートの投資法人が委託している、不動産の運用会社で実際に不動産投資を行い、収益が発生したら投資家へ分配金という形で投資家に還元されます。
また、Jリートファンドは、複数の企業と連携・委託しながら運営されています。
- 運用会社
- 資産保管会社
- 事務受託会社
- 金融機関
次の表のようにJリートファンドは、ファンドを設立した企業が不動産の運用や資産管理などを行うのではなく、各専門の会社に委託しています。従って、通常の不動産投資と違い、投資家は運用しませんので負担が少ないメリットがありますが、手数料コストが掛かります。
運用会社 | Jリートファンドの投資法人から委託されて不動産投資の運用を行う |
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資産保管会社 | 投資家から集めた資金等を保管・管理する業務を行う |
事務受託会社 | Jリートファンドに掛かる一般事務業務を行う |
金融機関 | 事業運営に必要な融資を受けるための取引 |
Jリートは、各投資家から資金を調達する仕組みなので、投資家は1万円前後の少額資金から手軽に始めることができるのも魅力的です。
Jリートファンドは大きく分けて3種類に分ける事ができる
Jリートファンドは、市場に54の個別銘柄が上場しているのですが、それぞれに特徴もあり大きく3つのタイプに分けることができます。
- 単一用途特化型リート
- 複数用途型リート
- 統合型リート
単一用途特化型リートとは、例えば住宅やオフィスビルといった用途を1つの分野に絞って組み立てられたファンドのことです。単一用途特化型リートに関しては、用途別に更に細かく分けることができ、
- 賃貸住宅特化型
- オフィス特化型
- 物流施設特化型
- ホテル特化型
- 商業施設特化型
- ヘルスケア特化型
主に上記のようになります。
賃貸住宅特化型
文字通り住宅用として活用されている不動産のみのJリートファンドで、撤退・空室リスクが他のファンドと比べて低い特徴があります。
また、住居用不動産という性質から、多数の入居者が長期的に利用する傾向が強いので、分配金利回り(収益)も安定傾向というメリットがあります。
オフィス特化型
オフィスとして用いられている不動産を対象に、投資を行っているJリートファンドのことです。
事業に活用される不動産は、景気に左右されるためオフィス特化型Jリートも同様に、収益率の変動が大きいです。従って、好景気の時は分配金利回りが高く、不景気の時は分配金利回りが低くなります。
物流施設特化型
商品・物の保管・管理や流通拠点となっている施設を投資対象としたJリートファンドです。
特徴としては、住宅やオフィスビルといった施設よりも、維持管理費が安く済んでいる事や中途解約不可のケースが多いです。そのため、分配金利回りや長期的な収益の確保という点で優れています。
ホテル特化型
文字通りホテルとして利用されている不動産を対象にしたJリートのことで、Jリートファンドの中でもハイリスク・ハイリターンとして知られています。
ホテル業界は競争が激しく、尚且つ景気に左右されやすいため、分配金利回りの変動も大きく不安定な側面があります。従って、Jリート初心者には難しいファンドでしょう。
商業施設特化型リート
一般消費者向け商用店舗(ショッピングモールやアウトレットパークなど)を対象に投資を行うJリートファンドを指します。
商業店舗の場合は、テナント契約が長期となる場合が多く、それに応じて安定的な賃料収入が見込めます。また、近年では訪日観光客も増加傾向なので、景気の影響がありつつも比較的安定的な分配金利回りが期待できます。
ただし、競争が激しい業界でもあるので、業績のよい商業用店舗を投資対象としているかがポイントです。
ヘルスケア特化型
近年目立っているタイプで、老人ホームといったシニア住宅を対象としたJリートファンドのことを指します。
少子高齢化社会ですので、今後も需要が高まってくるファンドですが、人材不足など様々な課題が残されている業界でもあるので、賃料収入にバラつきが起こるリスクも考える必要があります。
複数用途型リートと統合型リートは非特化型のJリートファンド
続いて紹介するタイプは複数用途・統合型リートで、各単一用途の不動産を複数組み合わせた、Jリートファンドを指します。
両者の主な違いは、
- 複数用途型リートは2つの用途に投資を行う
- 統合型リートは3つ以上の用途に投資を行う
という点が挙げられます。
特徴については共通点が多く、単一用途型リートと比較してリスク分散ができます。
複数の用途に投資を行うということは、利回りが高くハイリスクなホテル特化型と、安定した利回りが期待できる賃貸住宅特化型を組み合わせて、リスクとリターンのバランスをとることが可能です。
また、運用会社としても柔軟且つ選択肢が広いため、都度リスク回避しながら投資対象を選ぶことができるメリットがあります。
Jリートファンドの平均利回りは3%前後
続いてJリートファンドの利回りについて基本から解説していきます。
Jリートファンドの平均利回りについては、時期によって変動があるので違いが生じますが、2018年時点では約3%台が平均といえます。Jリートの利回りをチェックする際は、7%以上が高利回りと覚えておくといいでしょう。
また、Jリートの利回りは、高ければ良いということではありません。
利回りが高いと収益も増えると考えるかもしれませんが、業績等に問題が生じている可能性もあることに注意が必要です。
簡単に説明しますと利回りは、基準価額(販売価格)で分配金を割った数値の事を指します。
従って、高過ぎる利回りはリスクがあると言われています。
しかし、基準価額が維持された状態で、ファンドの収益力が上がって分配金も増えれば、同じく利回りが高くなります。この場合は、Jリートファンドが順調に推移している証ですので、利回りが高くても問題はありません。
Jリートの利回りを確認する際は、Jリートファンドの運用実績と組み合わせて見ることが大切です。
この内容に関しては次の項目でも詳しく解説していきます。
Jリートファンドを選ぶ際は用途や利回りなどをチェックする
Jリートファンドの銘柄を選ぶ際には、利回りやタイプを確認することは勿論ですが、それ以外の指標についても確認・比較することがポイントです。
- NAV倍率
- LTV
- 予想分配金利回り
- Jリートファンドの投資対象のチェック
1、NAV倍率
NAV倍率で何を確認するのかといいますと、Jリートファンドが現在割安か割高か判断するために活用します。そして、NAV倍率で算出された数値が、1より大きい数値ですと割高、1より小さい数値ですと割安という判断です。
計算式は、JREITの価格を1口当たりのNAVで割ります。NAVの算出方法は、Jリートの純資産総額から含み損益を引いた数値です。
計算は少々難しい内容となっていますので、1より小さいと割安という点を覚えておきましょう。
2、LTVのチェック
LTVを簡単に説明しますと、ファンドが抱えている借入金(有利子負債)の割合を確認することができます。また、ファンドは融資を受けて新たな不動産投資を行うので、借入金が発生するのですがLVTの数値が高いと財務上の問題が考えられます。
従って、LTVでJリートファンドの健全性を判断するには、45%以下の数値が算出される銘柄を選びましょう。
3、予想分配金利回り
予想分配金利回りとは、予想される分配金を1口の取引価格で割ったものです。この計算を覚えておけば、分配金利回りを投資家自身で算出することができます。
また、前述で説明していますが、利回りは高ければ高い程良い訳ではありませんので、Jリートファンドの運用実績やLTV、NAV倍率なども確認しつつ総合的に、収益を考えましょう。
分配金利回りの判断基準ですが、4~6%もしくは3~5%に収まるJリートファンドを選ぶことがおすすめです。
場合によっては、6%は財務上の問題が発生している可能性もありますが、中には成長中のファンドも存在するので見極める力も必要です。
4、Jリートファンドの投資対象の構成確認
これまで紹介したJリートファンドは、用途型に分けたファンドの分類です。しかし、実際にはインデックス・アクティブという分け方で、ファンドを比較・判断することができるのです。
- インデックスは指数に連動するタイプ
- アクティブは指数を超える(反比例)運用結果を目指すタイプ
まず、指数について簡単に説明しますが、Jリートには東証リート指数という動向を表す指標があります。また、東京証券取引所に上場している、全Jリートファンドの時価総額を平均(加重平均)させた数値です。
そしてJリートファンドのインデックスタイプは、東証リート指数に含まれるJリートファンドを組み入れて、指数と連動する運用結果を目指します。従って、市場全体が上昇傾向であれば、インデックスタイプも上昇し、反対の場合は指数と連動して下落します。
有名な所では、ニッセイが発行しているニッセイJリートインデックスファンドがあります。ニッセイJリートインデックスファンドは、東証リート指数に組み入れられているファンドに投資を行います。
対してアクティブ型ファンドは、東証リート指数を超える動きを目指します。従って、変動が大きくなる傾向があるので、その分リスク・リターンも大きくなります。また、アクティブ型ファンドの場合は、指数と比例するベアと指数と反比例するブルがあります。
ベアは、指数が上昇相場であれば、指数の数倍の価格変動を推移しながら上昇します。対してブルは、指数が上昇相場で下落、下落相場で上昇する複雑なファンドとなります。
指数を意識した投資を始めるのであれば、リスクが大きく分析が難しいアクティブよりも、ニッセイJリートインデックスファンドのような、インデックス型Jリートファンドタイプが判断しやすいでしょう。
次に、各Jリートファンドの投資方針を確認する方法については、Jリートを取り扱っている証券会社のサイトから閲覧することができます。また、スクリーニングと呼ばれる、条件設定を行う機能が実装されているので、条件ごとに銘柄を選別することも可能です。
従って各ファンドの過去から現在の出来高(取引量)の推移で、需給状況を確認するといいですよ。需給状況は基準価額の上昇にも関係ありますよ。
おすすめのJリートは指標の結果が良いファンド
最後に解説する内容は、おすすめのJリートについてです。
Jリートのおすすめ銘柄は、人によって判断基準や求める結果が違うので、一概にいえません。そこで今回は、LTV・NAV倍率・予想分配金利回りの基本的要素を基におすすめの銘柄を紹介していきます。判断基準を簡単に説明しますと、割安な銘柄を中心に選んでいます。
1、いちごホテルリート投資法人
単一用途型Jリートファンドのホテル特化型タイプですが、NAV倍率が0,8台で利回りが5%を超える指標がでています。値上がり益重視の方には特におすすめです。
2、ラサールロジポート投資法人
複数用途型Jリートファンドで、物流施設とオフィスビルの不動産に投資しています。また、投資対象地域は、東京・大阪なので、需要も高いことが予想され、景気変動リスクがありつつも物流施設による安定化に期待が持てます。
3、MCUBS MidCity投資法人
統合型Jリートファンドですが、8割がオフィスビル・商業施設が1割・ホテルが1割未満、そしてその他で構成されています。また、オフィスビルに関しては、東京・大阪・名古屋の3大都市圏を対象としているので、2つ目と同じく需要の高さと収益率がおすすめポイントです。
しかし、1口辺りの価格が33万円台と少額資金では厳しい価格ですので、まとまった資金がある方におすすめです。
4、ニッセイJリートインデックスファンド
インデックス型は、突発的な価格変動の影響を受けにくいので、リスク回避を重視したい方におすすめのファンドです。
ここで紹介したJリートファンドは、ごく一部ですので更に証券会社の公式サイトで、更にスクリーニングしてみるのがおすすめです。
また、条件が良くても、実際の運用実績は下降している場合もありますので、少なくともJリートファンドの運用実績と基準価額の推移を確認してから、投資を行うことが大切ですよ。
Jリートファンドは始めやすく選択肢が多いのが特徴
そのような時は、投資方針を決める事が大切です。リターン重視であれば、積極的にホテル特化型やオフィスビル特化型に投資するのもありですし、リスク回避重視であれば複数・統合型リートがよいでしょう。
また、信託報酬と呼ばれる管理費用などのコストを考えたり、買い付け方法を工数か金額にするか選んだりといった、様々な部分で考慮する点が出てきます。
実際にJリートへ投資をする際は、指標とコスト・これまでの実績や格付け評価など総合的に判断することが必要です。